2009年3月27日金曜日

中国の軍拡継続を警戒する米国防省報告書




アジア太平洋 中国脅威 唯一の戦略核増強国 米国防総省報告書

■ICBM20基新配備

【ワシントン=古森義久】米国防総省は25日、「中国の軍事力」に関する年
次報告書を発表し、中国が戦略核戦力や東アジア地域での軍事能力、さらには
台湾の攻略能力などをいずれも増強しているという現状を明らかにした。報告
書はさらに、中国の軍事の態勢や戦略が不透明であり、アジア太平洋地域での
大きな不安定要因となっていることを指摘した。

                   ◇

同報告書は毎年一度、発表され、議会に送られるが、総括として中国がなお「
高度の外国製兵器の取得、防衛関連科学技術への急速度の投資、軍隊の組織的、
戦略的な改革などによって地域制圧の軍事能力や核、宇宙、サイバー戦争の軍
事技術を発展させ、アジア地域の軍事バランスを変えて、アジア太平洋地域を
も越える影響を発揮している」と警告している。

具体的には、米国本土にも届く戦略核戦力で中国が2006年以来、CSS4、
DF31などの大陸間弾道ミサイル(ICBM)計約20基を新配備したほか、
射程のやや短いCSS3を約20基、1隻に弾道ミサイル(SLBM)を12
基搭載した「夏」級潜水艦を新配備するなど、世界でも唯一、戦略核ミサイル
の増強を進めていることを指摘。また、西太平洋地域で水上艦、潜水艦、航空
機を増強し、対艦攻撃ミサイルや魚雷の強化で地域制圧の能力を高め、潜在敵
の側の航空母艦までを抑止する能力をつけ始め、東シナ海での尖閣諸島をめぐ
る日本との領土紛争への対処能力をも高めたことなどを強調した。

報告書によると、中国は台湾への攻撃、攻略の能力を依然として高め、台湾海
峡沿いの福建省などでは台湾に届く短距離弾道ミサイルの増強を継続。2008
年9月の時点で合計1150基にも達して、いまなお毎年約100基のペース
で新配備を続けている。

報告書は台湾の政権が変わり、独立を直接には目指さない国民党が政権を握っ
て、中国との政治的な緊張が和らいだのに増強がなお続いている点に懸念を示
し、「中国が台湾の独立を阻止するために攻略の軍事能力をつけることは理解
できるが、現在の増強は台湾をはるかに越えた有事までをも想定しているよう
にみえる」と指摘した。

一方で、中国海軍が航空母艦を保有する意思を公的に表明し、旧ソ連から購入
した旧式空母を活用し自国製の建造を目指す方針を進めていることを伝えてい
る。パイロット50人が空母艦載機の操縦訓練を受け始めたことも記している。

また、報告書は中国の人民解放軍の兵器装備や戦略作戦などがほとんど秘密に
され、透明性に欠ける点を批判的に取り上げ、国際情勢を不安定にする主要因
だと断じている。中国政府が公式に発表する国防費は08年度分は約600億
ドルで前年より17・6%の増加だが、外国からの兵器購入や航空宇宙での戦
争準備などの経費はそこには含まれず、実際は1050億~1500億ドルに
も達すると米側はみている。

(産経新聞 2009/3/27)

産経新聞の古森氏は、中米関係については、定評のあるニュースソ
ースです。
今回の記事でも、米国国防省の年次報告書「中国の軍事力」を上手
く纏めています。興味がある方は、以下のURLで、全文を読む事が
出来ます。


最初は、この報告書のエグゼクティブ・サマリーを抄訳しようかと
思ったのですが、上記の記事の方が、数段上手に纏めてありました
ので、それ以上という事であれば、あとは、原文を細かく見て行く
方が誤解がなくて良いのではないかと思います。

「中国の軍事力」は2000年以降、毎年一回、米国防省から議会への
報告書の形で纏められら公表されています。過去、同様の報告書と
して「ソ連の軍事力」がソ連崩壊まで、公表されていましたが、ソ
連軍事力の最新動向が盛り込まれており、米国内外の外交、安保担
当者、研究者の非常に有用な資料になっていました。「中国の軍事
力」は、まさにその中国版と言える報告書であると思います。

今回の報告書については、個人的には、中国第二砲兵学校で研究さ
れ、米空母対策として開発中の対艦弾道弾(ASBM)の概念説明図など
は面白いと思います。ただ、空母は、時速80kmで移動可能ですから、
弾道弾を終末誘導するには、弾道弾と観測装置及び両者のフィード
バックが余程上手く連動しないと上手く行かない様にも思います。
中国のC4ISRが、その様なレベルに達しているとDODが考えているの
であれば、それはそれで興味深い事です。

なお、この報告書が出る直前には、中国のEEZ内の公海で米国の海
洋観測船が中国船に執拗な追跡を受ける事件が起こっており、他国
の第一列島線内側の領域使用を拒否する中国の意思が明確に出てい
るのが、この報告書の指摘を裏付ける形となっています。

また、以下の記事に見られるように、この報告書に対して中国は素
早く抗議を行っていますが、その様に素早く、抗議を行うのも、中
国が痛い所を突かれたという意味ですので、報告書の視点はかなり
正鵠を得ているのではないかと考える次第です。


事実わい曲、誤った脅威を宣伝と中国 米国防総省報告書で


中国外務省報道官は26日、米国防総省が25日発表した、中国の軍事
力に関する年次報告書に関連し、事実をわい曲しており、中国政府
は断固反対するとの立場を示した。

報告書は、中国による長距離弾道ミサイルや対艦ミサイルの開発が
目立ち、地域の軍事バランスを乱していると指摘。また、ミサイル
開発の加速は海外資源確保や他国との領有権論争で中国を有利な状
況に置くとも分析していた。

同報道官は、米政府は中国の軍事的脅威に対する誤った考えを宣伝
し続けているとも主張した。

(CNN.co.jp 2009/3/26)


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2009年3月26日木曜日

潔く負けを認められない国民性も哀れ


※写真は、sportsnet.caからの転載

韓国紙「イチローは高慢」 “ダーティーサムライ”と批判

【ソウル=水沼啓子】日本が連覇を果たした第2回ワールド・ベースボール・
クラシック(WBC)について、25日付の「中央日報」はWBCの特集ペー
ジで、「勝利したがマナーで負けた“ダーティーサムライ”」との見出しで日
本チームを批判した。

同紙は日本について、「韓国との決勝戦で非紳士的なプレーが何回かあり、試
合後の記者会見場では一部の選手が高慢な態度をみせまゆをひそめさせた。優
勝チームらしいマナーとはほど遠い」と伝えた。

非紳士的と問題にしたのは、中島遊撃手が六回の守備で二盗を試みた走者の顔
にひざが当たったプレーと、七回の攻撃で一塁走者の中島が併殺を避けようと
二塁手に体当たりしたプレー。会見場での「高慢な態度」とはイチローを指し、
同紙は「イチローは試合後の記者会見場でいすのひじ掛けに片方の腕を乗せ、
斜めにもたれかかるように座りながら、質問に答えた。答える途中で一人で笑
った。勝者としての喜びや余裕と見るには見苦しい」と報じた。

「中央日報」は社説でもWBCを取り上げ、「韓国野球、本当によくやった」
と題して「(韓国代表チームは)収入が法外に少ない“いちばん腹を空かせた
チーム”だったが団結力と精神力で決勝にまで上がった」とし、「WBCで全
世界に誇示した韓国人の底力をもう1度発揮して、当面の経済危機を克服しよ
う」と主張している。

「東亜日報」は「スシだけを食べて、食あたりした」との見出しで、「韓国が
今大会で行った9試合中、5試合が日本と当たった」として、今回導入された
敗者復活戦がある対戦方法に疑問を投げかけた。同紙は「残念だが…あなたた
ちは我らのチャンピオン」と選手の健闘をたたえ、日刊スポーツも「偉大なる
2位」と、金寅植監督の采配(さいはい)などをたたえていた。

(産経新聞 2009/3/25)


WBCの最終戦を見ましたが、結果的には勝ったものの、日本チー
ムは、拙攻が目立った試合であったと思いましたし、先行されなが
らも執拗に追いついてくる韓国チームのガッツも素直に認めたいと
思っていました。

しかし、それにしても、上記のような記事を報じずにはいられない
韓国人のメンタリティというのは哀れとしか言いようがありません。

まあ、実力で及ばない時に、道徳的に自分の方が高い位置にあると
主張する事で、勝てなかった事を正当化するというのが韓国の通例
です。また、その為には、捏造をする事も厭わないという傾向があ
る民族であるという事は覚えておくべきだと思います。(これは北
朝鮮についても全く同じです。)

しかしながら、本当の実力を涵養するのであれば、勝者の粗を捜し
たり、言い訳するのではなく、何故負けたかを分析し、弱点を補強
される方が相手側からすれば、余程、怖い相手であろうと思います。

日本が相手の勝負となると韓国人の方でもわかっているけど、止め
られないというのもあるのかも知れませんね。

某巨大掲示板は、以下の様なニュースコレクションもありますから、
上記の記事で不愉快な思いをされた方は、口直しをされても良いか
も知れません。

●アメリカ
エンパイアステートビルに日本国旗のライトアップ WBC優勝で
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090325-00000535-san-int
●キューバ
カストロ氏「イチローは世界最高の打者」 原采配も絶賛
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090325/amr0903251425012-n1.htm
●メキシコ
日本WBC優勝で大喜び
http://www.nicovideo.jp/watch/sm6533414
●台湾
「韓国は4投手を投入したが、日本の攻勢を阻止できなかった」と日本の勝利をたたえた
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2009032400795


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2009年3月25日水曜日

アデュー! DDH141「はるな」



※上段写真はWikipediaより転載
 下段図面は「世界の艦船」サイトから転載

護衛艦「はるな」が退役 舞鶴で式典

海上自衛隊舞鶴基地の護衛艦「はるな」(4、950トン)が老朽化のため退
役するのに伴い、自衛艦旗返納行事が18日、京都府舞鶴市北吸の海自隊北吸
岸壁で行われた。隊員や市民ら約300人が参加し、初のヘリ搭載護衛艦とし
て36年間親しまれてきたはるなとの別れを惜しんだ。

はるなは1973年2月に就役し、98年3月に舞鶴に配備。2000年には
自衛隊初の海上警備行動で石川県・能登半島沖で不審船を追跡した。テロ対策
特措法に基づくインド洋での補給支援活動にも2度参加した。

行事では、艦尾の自衛艦旗が静かに降ろされ、星山良一艦長から方志春亀・舞
鶴地方総監に返納された。方志総監は「日本海の守りの要として活躍し、厳し
い海上勤務にあたる1人1人の命を見守り続けてきてくれた」と訓示した。
はるなに乗船経験のある元自衛官の渡邉浩さん(57)=同市亀岩町=は「入隊
時期とはるなの就役が重なり、一緒に歩んだという思いが強い。思い出がつま
り、とても寂しい」と見守っていた。
はるなの後は横須賀基地の護衛艦「しらね」が継ぐ。検査中で、秋ごろに舞鶴
に入港する予定。

(京都新聞 2009/3/18)


新造ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」の就役式が3月18日に行
われましたが、同日付けで初代のヘリコプター搭載護衛艦である
「はるな」の退役式典にあたる自衛艦旗返納行事が舞鶴で行われま
した。

記事にもある通り、「はるな」は、三次防の目玉装備として昭和42
年度艦として計画され、昭和47年度に完成し、就役しました。

当時、有人ヘリコプターを搭載する護衛艦(有人ヘリ搭載艦として
は砕氷艦「ふじ」があった)は、文字通り、初めてであり、基準排
水量も4750トンとそれまで最大であった「たかつき型」の3050トン
から一気に大型化し、また、旧帝国海軍の戦艦名を受け継いだ点か
らも従来の護衛艦とは一線を画する艦であったと言えます。特に、
マストと一体となったMAC構造の大型煙突からは排煙用の大型円形
パイプが二本突き出ており、竣工当時は、非常に斬新な印象を与え
ましたが、使用実績を踏まえ、二番艦の「ひえい」では、「たかつ
き」と同じ構造に改められ、「はるな」についても、後述のFRAM改
造時に改正されています。

「はるな」の装備は、当時最新の大型護衛艦であった「たかつき」
型の兵装の内、無人対潜ヘリDASHに替えて、有人大型対潜ヘリコプ
ターHSS2を三機を搭載したもので、この航空兵装関連装備を艦体後
部に集約した点に特徴があります。

「はるな」が建造された時期には、このように艦の前半部に通常の
軍艦同様の砲やミサイルを装備し、後半部を航空装備とし、ヘリコ
プターを複数搭載する艦が一種のブームであった時期であり、イタ
リアのアンドレア・ドリア級、フランスのジャンヌ・ダルク、ソ連
のモスクワ級等が、相次いで完成、就役していました。

しかしながら、「はるな」型の運用の実態や、諸外国でのその後の
建造状況を見ると、この種のハイブリッド艦型は必ずしも成功とは
言えなかったようで、後継艦としてはいずれもヘリコプター空母と
言える艦が導入されています。

「はるな」も同様で、大型ヘリを運用保守するには、格納庫、飛行
甲板共に過小であった事が「ひゅうが」型が現在の艦形になった理
由とされています。

「はるな」については、これ以外にも、後日装備となっていた可変
深度ソナーが最後まで装備されていなかった点や、システム化が個
々の装備レベルに留まっていた点、また対空ミサイルを装備してい
なかった点が欠点としてあげられますが、昭和62年にFRAM改装を行
い、システム面も含め、拡大改良型である「しらね」型に準じた兵
装を装備する事になりました。この改造の結果、艦齢が10年程度延
長されています。

なお、このFRAM改装時に導入され一新された電子機材は、今回「は
るな」が退役するに際しても廃棄されるのではなく、艦内火災を起
こし、CICを全焼した「しらね」に移植され、有効活用される事に
なっています。

他の多く自衛艦と同様「はるな」も、派手な活躍とは縁遠い艦でし
たが、第十雄洋丸事件での撃沈処分や、能登半島沖不審船事件での
不審船追跡にも参加している等、最後に至るまで、海上自衛隊の戦
力向上と我が国の安全に寄与した点は、高く評価できると思います。


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2009年3月24日火曜日

ミサイル防衛 政府高官がこの程度の認識では困ったもの


※写真は防衛庁サイトから転載

政府筋「7、8分たったら終わっている」北ミサイル迎撃に懸念

政府筋は23日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合に備える日本のミサイ
ル防衛(MD)システムについて、「(事前予告がなければ、ミサイル発射か
ら)7、8分たったら、浜田靖一防衛相から麻生太郎首相の所に報告に行った
ら終わってる」と述べ、政府内での迎撃手続きに時間がかかると、撃ち落とす
チャンスがなくなるとの見方を示した。
また、「『鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなもんだ。当たると思うか』と、石
破(農水相)と昔、話したことがある。すると、(石破氏は)『当たると思う』
と答えた」と、石破氏とのやりとりを紹介した。
さらに、政府筋は、「『実験で今から撃ちますよと言って、ぴゅーっと来るか
ら当たるんで、いきなり撃たれたら当たらないよ』と言ったら、石破氏は『そ
れは信じようよ』と語った」とも述べた。

(産経新聞 2009/3/24)


産経新聞と他の新聞のニュアンスは多少違いますが、昨日、政府筋
が、この様な事を述べたそうです。
ここでいう政府筋とは、マスコミ語法であり、内閣官房副長官や内
閣総理大臣秘書官を指します。内閣官房副長官は現在、松本純氏と
鴻池祥肇氏の二名です。発言の中で、石破氏とのやり取りを紹介し
ていますが、概ね同格というイメージを与えますので両氏の内で年
齢的に近い松本氏の可能性が高いのかも知れません。
もっとも、松本氏、鴻池氏共に安全保障関係の経歴はなく、技術的
な面の素養もなさそうです。

さて、この発言は、前段と後段に分かれます。この内、前段につい
ては、全くその通りで、いつ発射されるか判らない弾道ミサイルを
迎撃するミサイル防衛を行う上で、発射から迎撃までのリアクショ
ンタイムを極力短縮する必要があります。ミサイルが発射されてか
ら、防衛相や総理に判断を求めている時間はありません。

米軍の早期警戒衛星情報受信から迎撃完了まで、全自動で行われな
ければ、とてもミサイル防衛などできる訳はないのです。
もしも、人的判断が介在するとすれば、邀撃ミサイルを発射するか
どうかの最終判定の部分程度かと思われます。それも時間をかける
訳には行かないので、手順的要件がなされた事を確認する程度で発
射をGOする形式チェックになると思われます。この辺の判断は、
航空機の領空侵犯時等や米国がミサイル防衛を行う際の手順がある
ので、それを参照して作成される筈です。

政府高官として問題であるのは、後段です。
「鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなもんだ。」とありますが、それ
が可能でないならば、MDなどありえない事になります。
実は、鉄砲の弾は、速度がせいぜいマッハ2程度ですが、MDの場
合はそれより2~3倍の速度の物体を撃ち落す事になります。その
点では、より難易度は高いのですが、実際にそれを行う事が、技術
的に可能となっているのです。米国は三十数回のテストを行い、そ
の内の、8割以上のテストで成功を収めています。その中には、無
警告発射された弾道ミサイル迎撃試験も含まれています。

以前のエントリーでも、取り上げましたが、日本が行った2回の実
射試験でも、1回目は、警告発射でしたが、二回目は無警告発射で
あり、結果的に迎撃に失敗したものの、手順的には、無警告発射に
対しても対応できてていた事が確認されています。SM-3ミサイ
ル本体が、正常に動作していれば、成功となった筈の試験でした。
実戦では、同時に同一目標に一発しか発射されない事もありません
ので、この種の失敗は避ける事が出来ます。

石破氏は、当時は、この政府高官に対して、『それは信じようよ』
と語ったそうですが、現時点であれば、「実験を何度もやって充分
成功しているよ。」と述べる筈です。
その点で、是非、この政府高官には、国民の政府に対する信頼を失
わせる様な発言をする前に、ミサイル防衛に関する知識をアップデ
ートして欲しいものだと思わずにはいられません。


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2009年3月23日月曜日

捏造だった「中国艦追跡」記事


※写真は中国のキロ級潜水艦。インドも同型艦を保有している。

「中国艦を追跡」記事は捏造 中国当局が掲載2紙を処分

中国海軍の駆逐艦が国籍不明の潜水艦に追跡されたとの報道は捏造(ねつぞう)
だったとして、中国当局は記事を掲載した中国紙2紙に対し罰金などの処分を
科した。中国新聞出版報が19日までに報じた。

処分されたのは四川省の「華西都市報」と山東省の「青島早報」。両紙は今年
1月、海賊対策のためアフリカ東部ソマリア沖に派遣されている中国海軍の駆
逐艦が潜水艦に追跡されたとの記事を掲載。記事はフリーライターが華西都市
報向けに執筆した虚偽のもので、青島早報は華西都市報から有料で記事の提供
を受けたという。

19日付の香港紙によると、記事は2月上旬、中国の各大手ニュースサイトに
も転載された。記事中で潜水艦がインド海軍所属だった可能性を示唆していた
ため、インド政府が報道を否定するなど反響が広がっていた。

(産経新聞 2009/3/19)


実は私もすっかりこの捏造記事にひっかり以下のエントリーを書い
ています。

「本来の仕事もちゃんとやってるインド海軍と中国海軍」(2009/2/5)

エントリーの内容は、中国艦隊を追跡したのがインド海軍であれば、
ソマリア沖の海賊対策ではあっても、格好の音紋採取の機会と捉え
た可能性がある事。また中国艦隊も潜水艦の追跡を探知したのであ
れば、日常業務として潜水艦探知を行った点で、両海軍共に、やる
べき仕事を果たしていると評価しています。

捏造という結果だけをみれば、インドの原潜でもない通常動力潜水
艦が15ノット程度とは言っても、中国艦隊を追跡するかどうかと
いう評価の点で問題だったのですが、以下の様に書く事で合理化し
てしまった点、誤りであったと感じる処です。

「静粛性に優れる通常潜水艦であっても、最高速度に近いスピード
を出せば、当然、盛大に騒音を撒き散らす事になる為です。今回は
艦隊速度が遅かった為に、シュノーケル航行でも追跡可能と判断し
たのではないかと思われます。そして、その機関音を中国海軍に捉
えられたと言う訳です。」

中国海軍、インド海軍共に、新興海軍であるとは言っても、両国共
に原潜の運用経験がある等、決して侮れる存在ではありません。
また、中国が自国で原潜建造している様に、インドもソ連の技術協
力で、原潜の自国建造を行っているという情報もあります。

今回の記事は、捏造という事になりましたが、インド洋を自国の管
制下に置こうとするインドの国防方針と、自国向けの海上交通路と
して死活的重要性があると認識している中国の意思が、衝突してい
る海域である事は事実であり、今度は、本当に、インド海軍の原潜
が中国艦隊を追跡する事も起こりえるのではないかと考える次第で
す。


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2009年3月19日木曜日

ボーイング新型戦闘機F-15SEを発表!



※写真はFlight Globalサイト及びボーイングサイトから転載

ボーイング社は昨日、既存のF-15Eを大幅に改修し、スティルス機
能を付与したF-15SEを発表しました。まるでWindows98SEの様なネ
ーミングですが、Second EditionのSEではなく、Silent EagleのSE
だそうです。

2009/3/18付けのFlight Globalの記事によれば、F-15SEは、F-22や
F-35の様な、スティルス・コーティング、機内武器収納庫、統合デ
ジタルアビオニクス、傾斜尾翼と言った第五世代機としての特徴を
持っています。


主翼前縁には、スティルスコーティングが施され、前方からのレー
ダー電波の反射を抑え、15度傾けられた垂直尾翼によって側方から
のレーダー電波への反射が抑制されます。
また、コンフォーマル燃料タンクの内部に埋め込まれたミサイルや
爆弾は、全方位からのレーダー電波への反射を削減し、戦闘行動時
もクリーンな翼を維持する事ができます。

ボーイング社によれば、この結果、前方から見た時には、F-15SEは、
第五世代機と同様のレーダー・クロス・セクションを達成できるよ
うになる見込みです。しかしながら、ボーイング社はこれらのスティ
ルス効果が攻撃侵攻任務で予想される相手側の地上設置レーダーに
は、あまり意味をもたず、防御目的で使用する場合には有効である
としています。また、F-22が備えている赤外線スティルス対策も
F-15SEには施されていません。

搭載されるAPG-63(V)3レーダーは前方からのレーダー波に備え、や
や傾けられて設置されますが、索敵範囲や空力抵抗には影響を与え
ません。またBAEシステム社の統合電子戦装置を搭載する事も、こ
の機体の主要な新機能の一つとなっています。

ボーイング社によれば、飛行試験を2010年の第一四半期に、また、
引渡しは三年後からと予定しています。気になるお値段は、訓練費
用やスペア部品を含め一機当たり1億ドルになる見込みです。

また、ボーイング社は、米空軍を売り込みの対象としておらず、既
にF-15を採用している五ヶ国を販売対象としています。
また、既存のF-15E及び派生機は、F-15SEへの改造が可能となって
いるそうです。

今回のボーイング社の発表は、タイフーンか、F-35かの択一になり
つつあった空自のF-X商戦に大きなインパクトを与えるものと言
って良いでしょう。と言うより、日本のF-X商戦を念頭に開発が
進められたプロジェクトである様に思います。

ただ、個人的な感想を言えば確かに、第五世代機としての要素が大
きく取り入れられているものの、所詮は、第四世代機の改造機でし
かありません。日本は現在、既存のF-15Jの大幅な改修作業を進め
ている処でもあり、改めてこの機体を取得するのであれば、F-35が
取得出来るのを待っても良いのではないかと考える次第です。

(Windows95のユーザーが、WidowsXPが欲しいのだけれど、なかなか
入手できないので、MSからWindows98SEの購入を勧められている状態。
だけど、この間OSR2にレベルアップしたばかりだし、というのがア
ナロジーとしては適切である様な気がします。)


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2009年3月18日水曜日

祝 DD181「ひゅうが」就役!


※写真は、毎日新聞サイトより転載

海上自衛隊 「空母型」ヘリ搭載護衛艦、横須賀配備へ

海上自衛隊の新型ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」の引き渡し式が18日、
横浜市磯子区のアイ・エイチ・アイマリンユナイテッド横浜工場で開かれた。
海外派遣も想定し、多目的任務をこなす初めての護衛艦で、船首から船尾まで
長く伸びた長い甲板を持つ「空母型」の形状が特徴。護衛艦では最大で、初め
て女性自衛官17人が乗り組み、母港・横須賀港に配備される。

ひゅうがは全長約197メートル、基準排水量1万3950トン。ヘリ3機が
同時に発着でき、周囲360度からのミサイル攻撃などに対応可能な国産の対
空武器「FCS-3」も初めて装備した。自衛隊全体の統合運用や大規模災害
時に対応可能なスペースや、女性専用の区画も設置。将来は女性のヘリ搭乗員
の乗艦も計画している。

引き渡し式では、武田良太・防衛政務官がメーカーから引き渡し書を受け取っ
た後、山田勝規艦長に自衛艦旗を授与した。【本多健】

(毎日新聞 2009/3/18)


自衛艦は、大体、年度の終わりである3月に就役するケースが多い
のですが、実質的に新しい艦種である「ひゅうが」が5年線表で、
きっちりと就役する処が、如何にも日本的な、ハード、ソフト両面
での品質の高さを象徴している様に思います。

古いエントリーで、「ひゅうが」の進水を取り上げましたが、外見
上は、進水時と比べ、CIWSが実装されているかどうか、甲板の塗装
が正規のものかどうか程度の違いしか判りません。
しかしながら、実態は、全く異なります。

家の建築で例えれば、進水時点では、棟上が終わっているが、内装
が殆ど行われていない状態で、外装だけを整えた状態です。悪い言
い方をすれば、ハリボテの様なものです。これが就役段階では、完
全に完成し、住人が入居した状態と言えます。

しかしながら、自衛艦の場合は、これで戦力化が完了した訳ではあ
りません。これから1~数年をかけて、初代「ひゅうが」乗員によ
って、訓練等を踏まえ、戦力化の為の各種の手順の整備が行われて
初めて実戦で100%の能力を発揮できる艦になります。

これらの手順は標準版が整備されているものの、各艦で、装備して
いる装備や機器が異なるので、厳密には各艦毎に異なっています。
その上、「ひゅうが」の場合は、新艦種の一番艦ですから、その艦
種として初めての手順も多いので、その作成には、通常よりも手間
も時間もかかる事になります。それだけに、初代乗組員は期待も責
任も大きい事になります。

新聞などでは、艦が就役するとあたかも直ぐに使えるかの様な表現
が使われる事も多いのですが、実際には、就役してから時間をかけ
て、本当に手作りで、実戦で使える艦になっていきます。
その意味では、戦後日本の空母運用は、本日、正に呱々の声を上げ
たと言える様に思います。


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2009年3月17日火曜日

太洋の海神P-8ポセイドン東へ


※CGは、Boeingのサイトから転載

米政府がインド政府への哨戒機売却を許可 米国の対印兵器取引で過去最大規模

ロイター通信によると、米政府は16日までに、ボーイング社製P8I哨戒機
8機のインド政府への売却を認可する方針を固め、米議会に通告した。メンテ
ナンスなども含めた取引総額は約21億ドル(約2000億円)に上り、米国
からインドへの兵器輸出としては過去最大規模になるという。

国務省が議会に通告した内容によると、2013年にも1号機が配備され、
2015年までに8機全部がインド側に届く。P8Iは民生用のボーイング
737を改造し、長距離用途に適しているとされる。インド海軍は同機の初の
海外ユーザーとなる見通しだ。(共同)

(産経新聞 2009/3/17)


開発が難航しているP-8ですが、初めての海外売却が決定しました。
米国海軍への配備も行われていない最新の機体であるにも係わらず、
議会が輸出承認を行ったのは、インド洋のシーレーンを管制するイ
ンドとの関係を強化しようとする米国の政策が、オバマ政権になっ
ても変化していない事を示しています。

今回、売却されるのは、P-8Iとなっており、米海軍向けのP-8Aとは
型式番号が変更になっていますので、インド向けに搭載機器のスペ
ックダウンが入っている可能性があります。プロジェクト総額は21
億ドルですが、この内、6.4億ドルは、保守、サポート費用ですか
ら、機体価格は8機で14億ドル。一機当たり200億円にも達してお
らず、100億円を超えていたP-3Cと比べても意外に安いとも思われ
ます。
ちなみに、やや小型の機体ですが、日本で開発中のP-1は一機120億
円程度になりそうと言われています。

少し、心配なのは、米海軍向けのP-8Aの開発が難航している事です。
こういう契約を結ぶ位ですから、ボーイングは、2013年1号機、
2015年に残り7機というスケジュールに自信があるのでしょうが、
元々、インドに売り込んでいた時と比べ、P-8Aの開発遅延がますま
す酷くなっていますから、日本向けの空中給油機KC-767やボーイン
グ787と同じ様な、引渡し遅延が懸念される処です。


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2009年3月16日月曜日

ソマリア海賊対策 日本は黒子に徹して、商船保護の実をあげよ


※写真は、47newsサイトからの転載
艦番号106が「さみだれ」113ガ「さざなみ」主砲のサイズが異なる点に注意

周瑜と諸葛亮? 海自派遣めぐり中国反応

海上自衛隊の護衛艦2隻が14日、日本関係の船舶を海賊から守るためにソマ
リア海域に向かったことを受け、中国のネットに「軍国主義の復活を警戒せよ」
といった反応が殺到した。一方、「この派遣は中国への対抗意識から行われた」
と分析する国際政治学者も多く、「中日両国の海軍が世界の海で競合する時代
の幕開けを意味する」といった見方もある。

15日付の中国各紙は、護衛艦が出港したことを伝えたほか、日本国内の学者
や野党などの反対意見を多く取り上げ、「日本の国内外で自衛隊の海外派遣の
制限緩和につながると心配する声が少なくない」などと伝えた。

中国メディアはこれまで自衛隊の海外派遣に神経をとがらせてきた。しかし昨
年12月、中国海軍がソマリアに向かった際に、新聞とテレビは「責任ある大
国として当然の行為」「世界平和に対する義務」などとその必要性を宣伝した
ため、今回、同じ行動をとる日本に対し、公式メディアは批判的コメントをし
づらいようで、日本を批判したり、警戒を表明したりする論評は少ない。北京
紙、北京晨報は「日本の憲法は海外に軍事力を派遣することを禁じているが、
1990年以後それが徐々に緩和された」と淡々と伝えた。

北京大学国際関係学院の梁雲翔(りょううんしょう)助教授は「日本は国際協
力という錦の旗の下、大国としての地位を守ろうとしている。自衛隊の海上で
の軍事力は決して弱くなく、今回のソマリアへの派遣は中国と競争する意味が
含まれている」との見方を示した。軍事問題専門家の戴旭(だいきょく)氏は
広州日報で、三国志の中で周瑜(しゅうゆ)が諸葛孔明(しょかつこうめい)
(名は亮(りょう))に対抗心を燃やしていたことを指す言葉「瑜亮情結」を
使って日本の気持ちを分析している。

一方、中国の各軍事系ネットには、ソマリアで展開する中国の軍艦と今回派遣
された海自の護衛艦の写真がはられ、「戦ったら、どちらが強いか」について
熱い議論が戦わされている。

(産経新聞 2009/3/15)


随分と時間がかかりましたが、海上自衛隊のソマリア派遣部隊が漸
く14日に、出発しました。13日には韓国の派遣部隊「青海部隊」
も出発しましたので、三週間後には、ソマリア沖で、日中韓の東北
アジア三国の派遣部隊が勢ぞろいする事になります。

上記の記事によると、中国では早速、日中の派遣部隊の戦闘力を比
較したり日本の派遣意図を忖度する議論が喧しい様ですが、何れも
本質を外しています。

今回の派遣の本質は、当然の事ながら、ソマリアの海賊から商船を
保護する事しかありません。海自の派遣部隊は、中国や韓国等他国
の部隊と共同行動により商船保護の実を挙げるべきであると思われ
ます。

残念ながら、現時点では日本は、正当防衛でなければ、武器を使用
できず、海賊が逃走中の場合にも、武器使用に制約があります。勿
論、こんな馬鹿げた制約は、中国、韓国を始め他国の部隊にはあり
ません。

その一方で、今回派遣された日本の二隻の護衛艦は、高性能の対潜
ヘリコプターを各々二機搭載するなど、他国と比べても、非常に強
力な哨戒、索敵能力を保有しています。

これらを考え合わせると、日本は、哨戒、索敵行動という言わば、
黒子に徹して、海賊を追い詰めた上で、華々しい実力行使は、日本
の様な制約のない他国の部隊に任せる事が合理的と考えられるので
す。

例え、日本の部隊の活動が目立たないものであっても、行動に法的
制約がある以上、それを甘受し、与えられた条件の下で商船保護の
実をあげるべきであろうと考える次第です。


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2009年3月13日金曜日

MDに撃ち落された北朝鮮


※図は毎日新聞サイトから転載

北朝鮮 衛星発射で秋田沖など危険区域 IMOに事前通告

北朝鮮が国際海事機関(IMO、本部ロンドン)に対し、4月4日から8日の
間に打ち上げると事前通告した実験通信衛星は、日本海・太平洋の方向に発射
されることが12日、分かった。日韓両政府が明らかにした。通告は、「ロケ
ット」の1段目が日本海に、2段目が太平洋に落下する内容。日本海に向け発
射されれば、98年の長距離弾道ミサイル「テポドン1号」と同様に、日本列
島を飛び越える可能性が高い。

IMOから両政府に入った連絡によると、4月4~8日の期間中、北朝鮮は午
前11時から午後4時(日本時間)まで、秋田県西方沖の日本海や、日本列島
から東へ2000キロ以上離れた太平洋に船舶や航空機が接近しないよう危険
区域を設定した。

北朝鮮は98年と06年に長距離弾道ミサイル発射実験をしたが、国際機関に
事前通告したのは初めて。

北朝鮮は咸鏡北道花台郡舞水端里(ハムギョンプクドファデグンムスダンリ)
のミサイル発射基地で長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備を進め
ているとみられるが、同国は実験通信衛星「光明星2号」を積んだロケット
「銀河2号」だと主張している。

12日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮はIMOのほか国際民間航空機関
(ICAO、本部モントリオール)にも打ち上げに関する情報を通告した。
IMOは船舶の安全、ICAOは航空機の安全確保のため、締約国にミサイル
発射などの事前通告を義務化。北朝鮮は、国際社会の批判をかわすため、ルー
ルに沿った手続きをとった可能性が高い。

◇海保が航行警報

北朝鮮が人工衛星の打ち上げを国際海事機関(IMO)に通告した問題で、海
上保安庁は12日深夜、航行警報を出した。4月4~8日の午前11時~午後
4時にかけ、秋田沖約130キロの日本海上(南北20キロ、東西250キロ)
と銚子沖約2150キロの太平洋上(南北160キロ、東西800キロ)を危
険区域に設定。付近を航行する船舶に注意を呼びかけた。

政府も12日夜、打ち上げに関する情報収集のため、首相官邸に情報連絡室を
設置。外務省も連絡室を開設した。河村建夫官房長官は「北朝鮮のミサイル関
連の動向については、引き続き重大な関心を持って情報の収集に努める考えだ。
今後とも、状況に応じて、適切な対応を取る」とのコメントを発表した。

(毎日新聞 2009/3/13)

記事の中では、ミサイル実験に対する批判をかわす為に、衛星打上
げの事前通告をしたのではという観測をしていますが、私は、もう
一つの大きな要素があると思います。

前回、前々回の弾道ミサイル実験では、事前通告など行わなかった
のに、何故か、今回は、必要な宇宙条約にも急遽加盟し、IMOに
も事前通告を行っています。

前回の「光明星1号」の打ち上げ?の際は、北朝鮮は、こういった
配慮を行っておらず、国際的な批判を完全に無視しました。98年、
06年と今年で、国際的な批判に質的な変化があったのかと言えば、
あまり明白な違いはありません。勿論、韓国の政権が保守派の李明
博政権に変わった事や、米国のオバマ政権が誕生した事が上げられ
ますが、両政権共に、北朝鮮が弾道ミサイル実験を行う事そのもの
に反対しているのであり、衛星打上げを通告したからと言って、両
政権との関係が大きく改善するとは、思われません。

それでは、一番大きな違いはなんでしょうか? それは、米国と日
本で、MDが実戦配備され、弾道ミサイルの撃墜が可能となった事
及び、今回の弾道ミサイル実験(衛星打上げ)で必要とあれば、ミサ
イル弾頭(衛星)を撃墜するという態度を両国が明確にした事です。

それに加えて、今回、北朝鮮は「本当に」衛星を打ち上げようとし
ているとも考えられます。つまり、北朝鮮の当局者から見て、通常
の弾道ミサイル実験では必ずしも必要ではない配慮が、絶対に必要
となる条件があるのです。

それは、衛星に「光明星」という名前がついているという事です。
「光明星」は言うまでもなく金正日の美称である「白頭光明星(ペ
クトゥグァンミョンソン)」にちなんだ名前です。北朝鮮の当局に
とって、金正日は命に替えて守らねばならない対象です。もし、日
米が「光明星」衛星を打ち落としたとなればどうなるでしょうか。
日米によって「金正日」が叩き落されたなど、恥ずかしくて、北朝
鮮では日米を非難する報道すらできない事になります。

その為、日米がMDを使って衛星(弾頭)を撃ち落す事がないよう、
急遽、必死の思いで、国際的な手続きを整えたのではないでしょうか?

ナチスドイツは、第二次大戦開戦直後、「ドイッチュラント」と名前
のついていたポケット戦艦を急遽「リュッツォ」と改名しました。
その理由は、ドイツの名を冠した艦が沈んだ時の、国民に対する心
理的、宣伝的影響を考慮しての事でした。

独裁国家は、独裁者や国家のイメージを重視しますから、北朝鮮の
今回の行動も同じ様な考慮が働いた結果と解する事は、一定の合理
性があると考えるのです。

今回の件は、日米のミサイル撃墜に対する準備と強い態度が、北朝
鮮を国際ルールに従わせた
訳であり、そう考えると、少しは溜飲が
下がる思いがします。


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2009年3月12日木曜日

不法移民に対しては厳正に対処すべし


※写真は東京新聞サイトより転載

お涙頂戴の情緒論を排す

フィリピン家族―森法相はここで英断を

一家は埼玉県蕨市で暮らしている。36歳の夫は、内装解体会社で後輩に仕事
を教える立場になった。38歳の妻は専業主婦。13歳の娘は、音楽の部活動
に打ち込む中学1年生だ。どこにでもいそうな3人家族。フィリピン人のカル
デロン一家である。
一家は17日に強制送還されるかもしれない。両親が90年代前半に、それぞ
れ偽造旅券を使って入国したからだ。妻は06年に不法在留で逮捕され、執行
猶予付きの有罪となった。昨年9月には一家の国外退去処分が確定した。
退去処分になっても、家族の事情や人道的配慮から法相が滞在を認める制度が
ある。この在留特別許可を一家は求めたが、認められなかった。

法務省の姿勢はこうだ。極めて悪質な不正入国だ。十数年滞在した事実はある
が、ほかの不法滞在者への影響を考えると厳格な処分で臨むべきだ。裁判所も
退去処分を認めている。法律論はその通りだ。だが、だからといって子どもの
幸福をないがしろにしていいわけはない。

彼女は日本で生まれ育ち、日本語しか分からない。「母国は日本。家族とも友
だちとも離れたくない」という。思春期のごく普通の女の子だ。

同じようなケースで、子どもが中学生以上だった場合には在留が認められたこ
とがある。「処分が出た時に長女は小学生。中学生になったのは訴訟で争った
からで、すぐに帰国した人との公平を欠く」という法務省の説明に、説得力は
あるだろうか。

法務省も、近所の親類に預けることを前提に長女だけに在留許可を出し、両親
が会いに来るときは再入国を認めるとの案も示した。そこまで配慮できるのな
ら、森法相はいっそ一家全員に在留特別許可は出せないものか。
彼女の望みをかなえることが、日本社会に不利益を及ぼすとは思えない。

長女の学校の友人や地域住民らからは、一家の残留を求める嘆願書が約2万人
分も集まっているという。蕨市議会は「長女の成長と学習を保障する見地から
一家の在留特別許可を求める」との意見書を採択した。
一家はすでに地域社会を構成する隣人として認められ、職場や地域に十分貢献
している。一人娘は将来、日本を支える一人になってくれるはずだ。

日本に不法に残留する外国人は約11万人とされる。日本社会に溶け込み、い
まさら帰国しても生計が立たない人々は多いだろう。在留特別許可も年1万件
前後認められている。

日本社会ではすでに外国人が大きな担い手になっている。今回のようなケース
はこれからも起きるだろう。いまの入管行政でそれに対応できるのか。社会の
一員として認めるべき外国人は速やかに救済する。そんな審査システムをつく
ることが検討されていい。

(朝日新聞 2009/3/12)

この処、カルデロン一家への在留特別許可に対する左翼系メディア
の押し込みがだんだんと喧しくなってきました。主婦層の同情を得
易いテレビ写りの良い女子中学生が対象になっている点も、大騒ぎ
の原因と言えますが、冷静に考えると、これは非常に変な話であり、
これで在留が認められるならば、今後この事例を前例とし、日本は
不法移民天国になってしまいます。

今ですら、韓国からの不法移民が大手を振って日本に入国し、一定
の時間が経る事で、在留特別許可を簡単に得ている現実があります。
そして、この不況の下、日本人には生活保護がなかなか許可されな
いにも係わらず、在日朝鮮・韓国人は、その三分の二が生活保護を
簡単に受給できているという実態があります。(勿論、税金は払っ
ていません。)

今回のカルデロン一家の場合、両親は、偽造旅券による不法入国で
あり、朝日新聞の言う通りに、家族全員に在留特別許可を与えた場
合、日本語しかできない子供がいれば、不法入国者は自動的に在留
許可が与えられる事になってしまい、実態としてはほぼ無制限に不
法移民に在留許可が与えられる事になってしまいます。

それでは、不法移民は、それ程の保護に値する清い存在なのでしょ
うか?

カルデロン一家の場合、元々の国籍はフィリピンです。従って、彼
らは、まずは、自国に対し貢献する義務がある筈です。勿論、経済
状態の違いがありますから仕事が得られないという事情はあるでし
ょうが、フィリピンに残って自国の繁栄に向けて努力している人々
からすれば、先進国に不法入国して高い生活水準を謳歌している自
国民は、祖国に寄与しない利己主義者、裏切りもの以外の何者でも
ありません。

不法移民の在留国側でも、不法移民の雇用者こそ、低賃金の労働者
を雇用できるメリットはあっても、本来、自国民に対して提供され
た筈の職場を奪っている事で、失業者を生み出し、さらにその失業
者に対する、社会給付によって社会に二重の負担をさせた上、更に
碌に税金を払う事もなく、社会保障制度のみを享受している訳で、
不法移民は三重四重にも在留国社会に負担をかけていると言えます。

従って、日本国と国民を守る為には、朝日新聞のご高説に対し、反
対を唱えざるを得ないのです。


朝日新聞社説の提起した諸点について小欄の意見は以下の通りです。

◎極めて悪質な不正入国に対し、ほかの不法滞在者への影響を考える
と厳格な処分で臨むべきか?

朝日 法律論はその通りだ。だからといって子どもの幸福をないが
   しろにしていいわけはない。

小欄 子供がかわいそうだと言って、法律をないがしろにして良い
   訳がない。子供の幸福と不法入国は本来無関係。子供の幸福
   を望むならば、そもそも不法入国を行うべきではない。また、
   いつでも帰国可能とする準備を行うのが親の責務。子供が日
   本語しかできないのは両親の責任。その程度の責任感しかな
   い人間に在留特別許可を得る資格があるのか疑問。

◎同じようなケースで、子どもが中学生以上だった場合には在留が
認められたことがある。「処分が出た時に長女は小学生。中学生にな
ったのは訴訟で争ったからで、すぐに帰国した人との公平を欠く」
という法務省の説明に、説得力はあるか?

朝日 明記していないが、説得力はない。

小欄 子供の適応性を考えれば、中学生を境に線を引き事には妥当
   性がある。また、処分時を基準にしないと、訴訟を行う事で、
   処分事態を有耶無耶にできる事になり、一層の不公正を助長
   する事になる。

◎森法相はいっそ一家全員に在留特別許可は出せないものか?
 在留特別許可も年1万件前後認められている。

朝日 一家全員に在留特別許可をだすべき。日本社会に不利益を及
   ぼすとは思えない。

小欄 既に一家は、不法入国を行い、その後も不法滞在を続けた事
   で日本国に大きな負担を強いている。それを許容すべきでは
   ない。また、在留特別許可を受けた者の生活保護受給率は、
   非常に高く、日本国と国民にとって大きな負担となっている。

◎日本社会ではすでに外国人が大きな担い手になっているか?

朝日 大きな担い手となっている。

小欄 人口比で言えば負担になりこそすれ、日本国の担い手になっ
   ているとは言いがたい。不法移民でなければ出来ない事があ
   る訳でもない。まずは日本国民の救済を優先すべし。



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2009年3月11日水曜日

北朝鮮はどうやって核実験なしに核兵器の小型化に成功したのか?


※写真はスカッド・ミサイル

北朝鮮が核兵器小型化に成功か 米情報機関が指摘

米国防情報局(DIA)のメープルズ局長は10日、上院軍事委員会に提出し
た書面で、北朝鮮が「核弾頭と弾道ミサイルを成功裏に一体化させられるかも
しれない」として、弾道ミサイルに搭載可能な核弾頭の小型化技術獲得に成功
した可能性があるとの見方を示した。

DIAは北朝鮮が弾道ミサイルへの搭載を進めるため、小型核弾頭の研究を進
めているとみてきた。

昨年8月に脳卒中を起こしたとみられている金正日総書記の容体に関しては、
ほぼ回復しているようにみえると分析した。そのうえで、金総書記が急死した
場合、短期的には大混乱はおきずに「権力委譲は平穏に進む」との見通しを表
明した。ただ、北朝鮮は1人の権力者によって支配されてきたため、「長期的
には実力者間の権力争いで問題が大きくなっていく」と予測した。

また、ブレア国家情報長官は10日の上院軍事委員会公聴会で証言し、北朝鮮
が「人工衛星」と称して長距離弾道ミサイルを発射するとの見通しを示した。
長官は「(衛星打ち上げと)大陸間弾道ミサイルに使われる技術は区別がつか
ない」と述べ、北朝鮮が衛星打ち上げと主張しても、実際には長距離弾道ミサ
イル・テポドン2号の打ち上げとの見方を示した。

そのうえで、3段式のミサイルの場合、成功すればハワイやアラスカだけでな
くう米本土まで到達が可能になると指摘した。

一方、ブレア長官はイランの核開発に関しては、イランが高濃縮ウランの製造
を開始すれば、最短で2010年から2015年の間には核兵器生産に必要な
量の製造が可能との見方を示した。

(産経新聞 2009/3/11)

米国の情報機関の長が議会で報告した内容に疑義を挟むのは、蟷螂
の斧と言うべきなのかも知れませんが、常識から見てどうしても疑
問が残ります。

北朝鮮は、過去、不完全な核実験を一度しか行っていません。
核実験は無目的に行うのではありません。実用的な弾頭の完成だけ
とっても、核分裂物質の成形加工、中性子反射材と核分裂物質との
配置、配分、安全装置の設定、解除方法等々、最終的に核実験をし
なければ、確認できない項目は数多くあります。実際に、核の破壊
力を誇示したり、爆発それ自体の影響を調査すると言ったもの目的
以外に、過去各国で行われた数百回の核実験にはそれなりも理工学
的目的が設定されていた筈です。

北朝鮮だけが、一回の不完全な核実験だけで、弾頭小型化を完成さ
せたというのは、実験なしに実用弾頭を完成できたと言う事であり、
技術的に見て、あまりにもナンセンスとしか言いようが無い訳です。

では、北朝鮮が技術開発したのではない可能性はどうなのでしょう
か?まず、他の核保有国から弾頭の設計図そのものが流出した事が
考えられます。しかし、これらは、何れの国でも、国家最高機密で
す。当然充分な保安措置が取られている筈です。また、核弾頭設計
図を北朝鮮が入手できたとしても、ニセの設計図を掴まされた可能
性がある訳ですから、実際にそれが稼動するかどうか確認する為の
核実験が必要になります。

報道では、小型化技術獲得に成功とありますが、北朝鮮が弾頭その
ものを入手していた場合はどうでしょうか?
北朝鮮の弾道ミサイルの元になったのは旧ソ連のスカッド・ミサイ
ルですが、スカッドには、核弾頭を搭載可能なものがあります。
(スカッド-A、-B、-D) ですから、それらに搭載する実戦用
核弾頭を北朝鮮旧ソ連の崩壊の混乱期にロシアから入手していれば、
問題はミサイル側だけなので、「核弾頭と弾道ミサイルを成功裏に
一体化させられるかもしれない」と言えるのかも知れません。

つまり、DIA局長の言葉が正しいとすれば、それは北朝鮮が製造
したものではなく、旧ソ連またはロシアが製造し、北朝鮮が秘密裏
に獲得した弾頭であり、DIAはその情報をロシアから入出したの
ではないかと思われるのです。


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2009年3月10日火曜日

ミサイルを撃ち落されても実は原因が判らない北朝鮮...


※中国の衛星追跡艦 遠望5号 「日本周辺の軍事兵器」サイトから転載

ミサイル迎撃なら日米韓に報復=南北の通信遮断-北朝鮮

北朝鮮の朝鮮中央通信によると、朝鮮人民軍総参謀部スポークスマンは9日、
北朝鮮が「人工衛星」と称して発射準備を進めている長距離弾道ミサイルを日
米韓が迎撃すれば、「(日米韓の)本拠地に対する正義の報復打撃戦を開始す
る」との声明を発表した。朝鮮通信(東京)が伝えた。
声明はさらに、9日に始まった米韓合同軍事演習を「北侵戦争演習」と非難。
韓国との間で唯一残っていた連絡網である軍当局間の通信回線を9日から20日
までの同演習期間中、遮断すると宣言した。
これまでも北朝鮮は米韓合同軍事演習に反発してきており、5日には北朝鮮周
辺の日本海上空を通過する韓国の民間航空機の「安全を保証できなくなった」
との声明を出し、緊張を高めている。9日の声明はミサイル迎撃について「わ
れわれの平和的な衛星に対する迎撃はすなわち戦争を意味する」と主張した。

(時事通信 2009/3/9)


寝言は寝て言え第3弾です。
発射準備を進めている長距離弾道ミサイルを日米韓が迎撃すれば、
「本拠地に対する正義の報復打撃戦を開始する」との声明を発表し、
いつもながら威勢の良い北朝鮮です。

しかし、本気で、これを理由に戦争を開始しようとした場合、実は
非常に原始的な問題点を北朝鮮は抱えています。それは、衛星を打
ち落とされても、それを認識する方法がないと言う事です。
つまり、衛星にしても、ミサイルの弾頭であっても、日米に迎撃さ
れて破壊されたのか、それとも、衛星なり、弾頭なりが故障したの
かを北朝鮮は、知るすべがないと言う点です。

通常、人工衛星であっても、ミサイル発射実験であっても、ペイロ
ードは、地上に自分の姿勢や加速度等をテレメトリー情報として、
送信しています。(実戦配備された弾道ミサイルについては、この様
なデータリンクはありませんが、実験目的では装備しています。) 
そして、このデータを解析する事で、衛星なりミサイル弾頭なりが、
正しく飛行しているかどうかを知る事が出来ます。

テレメトリーデータは、日本の衛星の場合はSバンド帯域で衛星か
ら送信されています。この帯域の電波は極超短波であり、直進性が
高いので、見通し外での受信が難しいのが特徴です。H-IIAの打ち
上げでも、小笠原地上局とクリスマス島地上局の間でテレメトリー
が受信できないギャプがあります。

弾道ミサイル実験などでは、この様なギャップが発生しない様に、
地上局を補う意味から、上掲の様なミサイル/衛星追跡艦で、テレ
メトリーを受信すると共に、レーダーにより衛星/弾頭を追跡出来
る様にしています。これは米国、ロシア、フランス、中国いずれも
同じで、同種の艦を保有しています。

これに対して、北朝鮮の場合は、この様なミサイル/衛星追跡艦を
保有しておらず、テレメトリーが止まっても、その原因を特定する
事ができないのです。また、北朝鮮は、日本の様に、小笠原諸島や
マーシャル諸島に地上局を持っている訳もなく、今回は中国もミサ
イル実験に反対しているので、ミサイル/衛星追跡艦を借りる事も
出来ません。

1998年のミサイル実験では、北朝鮮は、人工衛星「光明星1号」を打
ち上げたと発表し、大恥をかきましたが、その理由は、この辺にも
あります。

打ち上げてもいない人工衛星を打ち上げたと主張するのは、まだし
もカワイイ誤りと言えますが、人工衛星のテレメトリーが故障した
せいで戦争を仕掛けられたというのは、堪ったものではありません。
本当に戦争を仕掛けるのであれば、ミサイル実験をする前に、自力
で日米が迎撃を行ったかどうか観測手段程度は整備して欲しいもの
だと思います。


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2009年3月9日月曜日

漸くミサイル・ギャップに気がついた韓国


※画像は中央日報サイトから転載

韓国のミサイル戦力、北朝鮮の10%水準

「06年7月5日午前3時以降、7発の北朝鮮ミサイルが旗対嶺(キッテリョ
ン)基地から移動発射台を通じて30分間隔で発射された。 当時、盧武鉉
(ノ・ムヒョン)政権の青瓦台(チョンワデ、大統領府)は1発目の20分後、
米国からの通報でこの事実を知った」(外交安保研究院の尹徳敏・安保統一研究部長)  

この言葉は現在の韓国ミサイル戦力の問題を圧縮している。 ▽北朝鮮がミサ
イルを発射できないほどの抑制力を確保していない▽ミサイル発射情報を独自
で確保できない▽したがって戦争が起きても北朝鮮ミサイルを先制攻撃したり
防御することができない--という点だ。

このため最近の北朝鮮ミサイル発射の動きと関連し、軍の一部では政府の「ミ
サイル戦略」に対して批判の声が強まっている。

匿名を求めた軍関係者は「軍が南北ミサイル火力評価をしたところ、『韓国は
北朝鮮の10%水準』という結果が出たと聞いている」と述べた。この関係者
は「ミサイルの部分で韓国は事実上、北朝鮮に対応無策」とし「軍も問題点を
把握しているが無気力だ」と語った。尹部長も「北朝鮮のミサイルの前で韓国
の在来式戦力は無意味になった」と述べた。巡航ミサイル開発、パトリオット
ミサイル導入など韓国の先端戦力確保努力にもかかわらず、現実はなぜこうな
っているのか。

北朝鮮には射程距離の順にフロッグ・スカッド・ノドン・テポドンのミサイル
がある。フロッグは短距離用で、テポドンは射程距離が2500キロ以上の長
距離であるため米国・日本用だ。韓国にとって実質的な脅威であるスカッドと
ノドンは2個師団で編成されている。1個師団は射程距離340-550キロ
のスカッドB(北朝鮮名・火星5号)とスカッドC(火星6号)600基で武
装している。別の師団には射程距離1300キロのノドン1号200余基があ
る。ここに国防白書が最近紹介した新型中距離弾道ミサイル(IRBM)が含
まれる可能性がある。政府当局者は「射程距離2500-4000キロの
IRBMは沖縄とグアムの米軍基地を狙うが、この基地は有事の際、韓半島増
援と関連があり、結局は対南用となる」と述べた。

韓国は06年10月創設の誘導弾司令部が保有する弾道弾ミサイル玄武(ヒョ
ンム)2、3と天竜(チョンリョン)などを改良した巡航ミサイルで対応する。
「K-2」と呼ばれる玄武2は開発15年目の1987年に実戦配備された韓
国初の地対地ミサイルだ。公開されていないが500基が生産されたという観
測がある。問題は180キロという射程距離だ。北朝鮮の放射砲を覚悟し、休
戦ライン付近に配備されているが、平壌(ピョンヤン)には届かず、北朝鮮全
域への打撃は到底望めない。それでK-3ミサイルが登場した。

98年に北朝鮮の人工衛星が打ち上げられた後、韓国はミサイル関連技術輸出
規制(MTC)に加入し、射程距離を延長した。これに基づき開発されたミサ
イルが‘K-3’と呼ばれる射程距離300キロの玄武3だ。100基が実戦
配備されたと伝えられている。これより長い射程距離の弾道ミサイルはない。
休戦ラインから300キロ以上の地域を打撃できる韓国の弾道ミサイルはない
ということだ。

このため問題が発生する。 短い射程距離だけではない。 北朝鮮はミサイル基
地を山岳の北側斜面に集中配備し、南からの弾道ミサイル攻撃から免れる点も
問題だ。両江道(リャンガンド)ヨンジョ洞のミサイル基地は中国側の傾斜面
にある。こうした事情を総合して射程距離1000キロのクルーズミサイル天
竜と玄武3の変形ミサイルなど巡航ミサイルが登場した。しかしいつ実戦配備
されるかは明らかでない。軍関係者は「量産の話は聞いたことがない」と語った。

玄武では地下ミサイル基地破壊が難しく、スカッド発射台が移動するため把握
が難しいという問題を解決するレベルで先端貫通型ミサイル「エイタクムス」
(ATACMS)も100基ほど導入された。しかしエイタクムスの射程距離
は300キロにすぎない。

要するに攻撃部門では、射程距離300キロの玄武3弾道ミサイル100基と
エイタクムス100基が、射程距離340キロ以上のスカッド・ノドン800
基に対抗するということだ。南のミサイルは平壌の北側に並ぶミサイル基地ま
で届かないが、北朝鮮は済州道(チェジュド)まで攻撃できる状況だ。スカッ
ドの正確度が落ちるとはいえ、外交部当局者、軍関係者ともに「スカッドは核
弾頭や生化学弾頭を搭載できるという点で怖い」と指摘する。

国防研究院懸案研究委員会のキム・テウ委員長は「これまで攻撃ミサイルには
投資が少なく、防御に比重が置かれたために生じた事態」とし「防御と抑制的
攻撃力の均衡を保ち、北朝鮮とのミサイルギャップを縮小する必要がある」と
述べた。抑制のためのミサイル戦力確保が第1段階であり、防御が第2段階と
いうことだ。

別の軍関係者は「この際、玄武3ミサイルとクルーズミサイルを大量生産し、
米国との射程距離再交渉を通して北朝鮮ミサイルへの対応を進めなければなら
ない」と提示した。

第17代国会国防委幹事を務めた黄震夏(ファン・ジンハ)議員(ハンナラ党)
も「北朝鮮ミサイルの脅威が強まっているため、玄武3などミサイルをさらに
開発しなければならない必要性が当然生じる」とし「北側に‘悪事を働けば何
倍もの罰を受ける’という点を知らせる必要性がある」と述べた。

国防研究院安保戦略センターのチャ・ドゥヒョン博士も「北朝鮮に‘攻撃すれ
ば亡びる’という認識を与えられるよう‘恐怖の均衡’を保つことが重要だ」
とし「弾道ミサイルを追加開発し、巡航ミサイルの弾頭重量を増やし、火力を
強化する問題を検討しなければならない」と話した。

(中央日報 2009/03/06)



進歩派10年支配の間、韓国の国防費は伸び続けました。ただ、日本
を仮想敵国と考えている様な、ミサイル駆逐艦や、強襲揚陸艦、潜
水艦の整備には熱心でしたが、北朝鮮に対抗する師団防空用のミサ
イル整備や、対砲レーダーの整備、戦力倍増要素となる師団、連隊
単位の情報システム構築や早期警戒機の導入には何故か及び腰であ
り、戦力整備の焦点が分散している様な印象を受ける事が多かった
のです。記事にもある様に、現在、北朝鮮が唯一、韓国に優越する
のが、弾道ミサイル戦力です。韓国はこれに対し、短距離ミサイル
である対空ミサイル、ナイキ・ハーキュリーズ改造の玄武2,3と
ATMCMSで対抗しているだけなのです。

弾道ミサイルに関しては、米国から韓国に対し、長く、射程距離に
関する制限が付けられていたと言います。恐らく、韓国から北朝鮮
を挑発する様な事態を避ける意図があったのかと思われますが、こ
の分野への韓国の参入は、意図的に遅らされた様にも思えます。
今でこそMDが実用化していますが、長い間、弾道ミサイルへの対
抗策は弾道ミサイルしかありませんでした。

ヨーロッパで、ソ連が移動式中距離弾道弾SS-20を配備したのに対
し、米軍は、パーシングS/MRBMの配備で対抗しました。この対比で
考えれば、北朝鮮のスカッド、ノドンに対しては、韓国は、パーシ
ングで対抗すべきであったのに対し、これへの対処を行われていま
せん。更に、北朝鮮の弾道ミサイルが、着弾までの時間が短い奇襲
兵器である為、その早期警戒態勢整備が重要になりますが、韓国は
これに対しても、充分な対応を取ったとは言い難いのです。

それに対して、対北朝鮮用の軍備としては、殆ど意味を持たない海
上兵力整備に1兆円(一隻、400億円の駆逐艦3隻、500億円の駆逐艦
6隻、1500億円のイージス艦3隻、800億円の強襲揚陸艦1隻)近い
資金を投入したのです。正面兵力整備の1兆円は非常に大きな金額
です。まさに国家の命運を決める資金であったと言えます。そして、
左翼政権は、意図的に日本との竹島問題での対立を煽り立て、日本
を仮想敵国視する事で、この無意味な投資を正当化したのだと言え
ます。それは、韓国の「主敵」北朝鮮から、国民の目を逸らす策略
であったとすら言えます。

その間、北朝鮮は、弾道ミサイルと核開発に「だけ」焦点を当てた
軍事力整備と自国民を犠牲にした外国援助の獲得の戦いを実施して
いたのです。それは、まさに金正日体制サバイバルの為の戦いであ
ったと言えます。

軍事力の整備には時間がかかります。一度失った時間は元には戻り
ません。今、韓国は北朝鮮の弾道ミサイルの脅威の前に無力な姿を
晒らしていると言えます。その意味で、本当の脅威から目をそらし
続けた、韓国の左翼政権による対北軍事力整備の失われた10年の
本当の影響はこれから明らかになると言える様に思います。



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2009年3月6日金曜日

宛 北朝鮮国防委員長 「テポドン ハヤク ウテ」



※画像は以下のサイトより転載
http://honey-room.air-nifty.com/blog/cat3866335/index.html

ミサイル発射なら北資産を凍結 日本政府

政府は5日、北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型とみられ
る「人工衛星」を発射した場合、現行の制裁措置に加え、在日本朝鮮人総連合
会(朝鮮総連)など北朝鮮関係団体の資産凍結や輸出制限措置を発動する方針
を固めた。北朝鮮による核開発やミサイル関連部品の入手を防ぎ、資金源を断
つのがねらいで、国連安全保障理事会にも制裁強化を提起する。また、第3国
経由の不正輸出や海外送金に関しては、外為法などの罰則強化も検討する。

外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長と北朝鮮担当のボスワース米特別代表は5
日の会談で北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げと発表した場合でも、国連安全保
障理事会決議違反に当たることを確認。斎木氏は制裁策として、北朝鮮関係団
体の資産凍結など日本側の対応を説明したもようだ。

資産凍結では、米国がマネーロンダリング(資金洗浄)に関与した疑いでマカ
オの北朝鮮の関連口座を凍結したことがあり、「日本でも朝鮮総連関係などの
資産が凍結されれば効果は大きい」(政府関係者)とみられる。また、北朝鮮
への輸出を原則禁止とし、アジア諸国を経由した迂回(うかい)輸出の監視も
強化する。

国連加盟国は2006年11月の安保理決議1718号に基づき、北朝鮮の核
開発や大量破壊兵器、弾道ミサイル計画に関連する資産・口座を凍結できる。
政府は凍結対象を広げ、「武器関連」とする新たな安保理決議採択を求めるこ
とも検討している。

政府が北朝鮮の弾道ミサイル発射に合わせた制裁強化の方針を固めた背景には、
「北朝鮮の弾道ミサイルの脅威を一番受けるのは日本」(外務省筋)という安
全保障上の要請や、拉致問題が一向に進展しない現状がある。北朝鮮関連団体
の資産凍結や輸出制限はすでに厳しい制裁措置を科してきた日本にとって「数
少ないカード」(政府筋)だ。日本の毅然(きぜん)とした姿勢を国内外にア
ピールし、国際的な対北包囲網を再構築する狙いもある。

「北朝鮮は国連の安保理決議違反だけでなく、日本を無視し、拉致問題に関す
る約束も守っていない。仮にミサイルを撃てば『行動対行動』だ」

政府筋の一人は追加制裁の目的について、こう説明する。昨年8月の日朝公式
実務者協議で合意した拉致被害者の再調査は実行されない一方で、米国が北朝
鮮のテロ支援国家指定を解除してしまった現在、日本は独自の対応を迫られて
いるという事情もある。

オバマ新政権の対北朝鮮政策はまだ明確でないが、「米朝直接対話と6カ国協
議の両輪で進める」(米政府関係者)とみられる。日本としては国際的にも非
難される弾道ミサイル発射を機に制裁措置を強化することで、米国や韓国など
関係国の対北政策をリードしたい思惑もある。

政府内の一部には、今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射準備について、「北朝鮮
は、日本方面にミサイルを撃つというバカなことはしない」(外務省幹部)と
たかをくくり、圧力強化に消極的な意見もある。

しかし、北朝鮮が平成10年8月に発射した「テポドン」は三陸沖の太平洋に
着弾。18年7月に「テポドン2号」など計7発を発射したときには日本海に
着弾しており、弾道ミサイルの脅威を日本が強く受けていることは紛れもない
事実だ。

日本国内から、北朝鮮の核・ミサイル開発に転用可能な部品や装置などの不正
輸出が継続的に行われてきた実態もあり、追加制裁の必要性は以前から指摘さ
れてきた。制裁強化には拉致問題の進展を北朝鮮に迫る効果も期待できそうだ。

(産経新聞 2009/03/06)

新聞は小沢氏秘書逮捕で大騒ぎですが、実はこの処、外交問題で麻
生内閣の得点が続いています。

最初は、先月サハリンで行われた麻生首相とロシアのメドベージェ
フ大統領との会談で、麻生首相が「(北方領土問題を最終的に解決
する)平和条約交渉に具体的な進展がみられなければ、日露のアジ
ア太平洋地域でのパートナーシップ関係の構築はできない」と指摘
し、これに対し、大統領もうなずき「検討する」と答えたという事
が判りました。一部マスコミは、麻生首相がサハリンを訪問した点
を対ロ弱腰外交と非難しましたが、実際は、外交上のポイントを上
げていたと言えます。

二点目は、日本が攻撃された場合に米国が日本を防衛する義務など
を定めた日米安全保障条約が尖閣諸島に適用されるかどうかの米側
解釈の問題を巡り、米国務省が4日、適用されるとの公式見解を示
した点です。この問題は、オバマ政権が従来の米国の解釈を継承し
た事を示したものですが、中国重視の民主党政権でも、従来の解釈
を変えるつもりがない点で、日米同盟の強固さが確認でき、且つ、
中国が尖閣諸島問題で実力行使する事を封じたと言えます。

それに続くのが、この記事です。米国はあまり知られていませんが
テロ支援国指定解除後も、北朝鮮の在米資産凍結を引き続き実施し
ていますが、拉致被害国である日本は、在日朝鮮人問題がある事か
ら、北朝鮮資産凍結に踏み切れないでいました。もし、この記事が
正しければ、麻生政権は、対北朝鮮政策で従来より一歩踏み込んだ
対決姿勢を示した点で、意味があると思われます。もっとも、朝鮮
総連は、バブル崩壊の影響を受け、本部施設他を売却しており、実
質的に総連資産を凍結されても、影響は殆どないと思われますが、
それでも、その次の策として、北朝鮮籍の在日朝鮮人の資産凍結を
連想させる事で、北朝鮮に対する揺さぶりをかける事ができると思
われます。

その一方で、これに北朝鮮が過剰反応しても、あまり影響はありま
せん。過去何度も北朝鮮は、対日強硬声明を出していますので、仮
に北朝鮮が、核恫喝が行ったとしても、それが麻生政権批判に結び
つくことはありませんし、仮に自衛隊によるテポドン撃墜が成功す
れば、麻生政権への内政上の大きなポイントになるとさえ言えます。

更に、付随的な効果としては、民主党に対しても地雷を一つ埋めた
こんだことにもなります。つまり、在日韓国・朝鮮人の影響が強い
民主党が、政権獲得後、北朝鮮政策を緩和しようとした場合は、こ
の総連資産凍結の解除を優先せざるを得ませんが、拉致問題の進展
なくそれを行った場合、民主党は、国民の非難を覚悟せなばならな
いという事です。

この様に考えていくと、麻生政権としては、北朝鮮がミサイルを発
射する事で、二重三重に、政治外交的なポイントを重ねる事が可能
になると思われるのです。

宛 朝鮮民主主義人民共和国国防委員長
発 日本国内閣総理大臣
本文
「テポドン ハヤク ウテ」


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2009年3月5日木曜日

各国の戦略ミサイル潜水艦パトロールの実態


※画像は、Russian Submarine Patrols 1981-2008。
FAS Strategic Security Blogより転載

ロシアによる戦略ミサイル原潜パトロールが回復中

By Hans M. Kristensen

アメリカ海軍の情報機関からFAS(全米科学者同盟)が得た情報によれば、ロシ
アは、昨年、1998年以降で最多の核弾道ミサイル潜水艦を戦略パトロールに
送りだした。

その情報によれば、ロシアの戦略ミサイル潜水艦は2008年に10回のパトロール
を行ったが、2007年は3回、2006年には5回、2002年には、戦略パトロールま
ったく行われていなかった。

ロシア戦略ミサイル原潜パトロールの復活?

過去10年の間、ロシアに残された11隻の戦略ミサイル原潜(SSBN)は連続的な戦
略パトロールを維持していなかったが、その代わりに訓練目的で時折パトロー
ルを行っていた。セルゲイ・イワノフ国防相が、2006年9月11日に語った処では、
その時点で、5隻のSSBNがパトロール中であった。しかし、その数がその年に
実施されたパトロールの回数に一致した事から、それは連続的に実施されたと
言うよりも、むしろ一斉パトロールだった事が明らかになった。

それとは対照的に、アメリカ合衆国、フランス、英国は、連続的なパトロール
を少なくとも1隻のSSBNで行っている。アメリカ合衆国の場合、その14隻の
SSBNの内、3分の2はどんな時間にでも海上にあり。内4隻は警戒待機状態に
ある。

2008年の10回というロシアのパトロール回数は、ロシアが連続的なSSBNによる
パトロールを再開したかどうかという問題を提起している。ロシアによる戦略
SSBNパトロールの期間も間隔もわかっていない。もし、彼らが36日以上海上に
あって、重複がなければ、ロシアには連続的な海上の核抑止力があると言える。
しかし、2006年にように固まって行われるならば、海上核抑止の体制はまだ散
発的なものと言える。

Ryazanの航海

アメリカ海軍の情報機関から得られた情報では特定されていないが、ロシアの
パトロールのうちの1つは、恐らく、バレンツ海のコラ半島にある北方艦隊か
らカムチャッカ半島にある太平洋艦隊へのデルタIII級潜水艦Ryazanの30日間
の海氷下航海である。

Ryazanは、2008年8月1日に、弾道ミサイル、恐らくはSS-N-18(珍しくミサイル
タイプは公表されなかった)の、バレンツ海からのテスト発射に成功した。
このテストでは、弾頭は北ロシアを横断し、カムチャッカ半島のクラ試験場に
着弾した。

8月の終わりに、Ryazanは北方艦隊を出発し、氷に覆われたロシア北岸の海氷
の下を航行し、ベーリング海峡を通って南下し、ウラジオストックの弾道ミサ
イル潜水艦基地に9月30日に到着した。

軍備管理上の意味

オバマ政権は戦略核戦力の削減を提案しており、クレムリンはそれに好意的に
応えるようである。ちょうどその時、ロシアのSSBNが冷戦時代の習慣に復帰し
連続的な海上核抑止パトロールを実行するというのであれば、それは、とても
皮肉な事と思われる。

長射程核ミサイルを大規模な第一撃を耐えぬくために海洋の深みに隠す、連続
的なSSBNパトロールは、冷戦の最後の象徴の1つである。米国のSSBNは1980年
代のそれに相当するパトロール率を維持しており、フランスと英国も、両者が
先月衝突した事で明らかになった様に、常時1または、2隻を海上にしておこ
うとし続けている。そして、中国とインドもSSBN艦隊を建造しようとしている。

多くの人々は、SSBNは、純粋に報復的な武器であり、受動的に海に隠れている
と考えている。しかし、アメリカとロシアの核兵力がさらに削減され、そして、
中国とインドがSSBNクラブに加われば、前方配備された水中の核兵器は核軍縮
に最も挑戦的な問題の一つになるに違いない。

(FAS Strategic Security Blog 2009/2/17)


1月に英国とフランスの戦略ミサイル原潜(SSBN)が衝突事故を起こ
した事で、はしなくも、核大国が依然としてSSBNによる核抑止を実
施している事が明らかになりました。

このFASのブログのエントリーによれば、米国は冷戦時代と全く変
わりない戦略核抑止体制を引き続き実施しており、英国やフランス
も最低限の海上核抑止体制を維持しています。更に、中国やインド
という新興国もSSBNクラブに加入してくる事も予想しています。
(公然の秘密と言うべきでしょうが...。)

オバマ政権が戦略兵器の更なる削減を行おうとしている時にロシア
によるSSBNパトロールが復活する事は、確かに皮肉ではありますが
より皮肉な事は、各超大国が核軍縮を行えば行う程、中国やインド
と言った新興核保有国との核戦力格差が縮小していく事です。

中国やインドは、戦略兵器削減交渉の埒外ですから兵力拡大は自由
に行えます。現状では、米国は14隻、ロシアは11隻、中国は4
隻程度のSSBNを保有おり、その差は絶対的なものと言えます。しか
し、戦略兵器削減交渉で米ロがSSBNを半数に削減すると、米ロ各々
7隻、6隻の保有状況となり、中国の4隻と隻数では余り変わらな
くなってしまいます。

現時点では、弾頭数やMaRV化の度合い、射程等で、技術的には、大
きな格差があるものの、中国には追う側のメリットがあります。中
国が軍事費の拡大を続けていく限り、その差は急速に縮小していく
筈です。

つまり、米ロが戦略兵器削減交渉で大規模な核軍種を行えば行う程、
中国の核戦力が相対的に強化され、米ロ両国は、ますます、中国を
戦略的に無視できなくなる事になります。勿論、これは、インドに
ついても同様ですので、核戦力においても近い将来、世界は多極化
に向かい、つれて不安定さを増すと考えられるのです。


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2009年3月4日水曜日

エアバスA350の生産準備を加速


※画像はA350のサブアセンブリー担当会社の生産準備状況

エアバスA350とパートナー各社は生産準備を加速中

エアバスとそのヨーロッパと米国中に跨るプログラムパートナーは、A350 XWB
生産の開始に向け、工場の新設や既存基盤の拡張等の準備を加速している。
A350のために修正された生産フローでは、最終的なアセンブリを合理化するよ
うになっており、現在の生産プログラムより完成度の高い状態でトゥールーズ
にベルーガ(A350機材輸送専用機)で到着するようサブアセンブリーに要求して
いる。

A350の生産の大半は、エアバスのヨーロッパ各地の工場とフランスとドイツに
ある独立部門であるAeroliaとPremium Aerotechによって請け負われている。

トゥールーズではA330/A340用組立施設群の隣接地にA350製造施設の旗艦的存
在になる最終組立てラインの建設が、この1月から始まった。そして、フラン
ス、ドイツ、スペイン、英国、米国でも、この双発機の為の新しい工場の建設
が進行している。

「より効率性が高く、最適化された重複部分を持つ改善されたプロセスにより、
最終的な組立てラインとその前工程のリードタイムの30%の削減達成を目標と
している」と、A350生産計画管理担当責任者であるフィリップ・ローネー
が語っている。

彼は、A350のための一般的な方針は、サブアセンブリーが現状の他のエアバス
プログラムより「機材に関する統合度のより高いレベル」で、最終組立てライ
ンに届けられるということであると言う。

「中央高地(セントラル・プラトー)配置というのは、すべての製造と、エンジ
ニアリング能力が、サプライヤーのものも含め、1つの場所にある事を意味し
ており、これによって、より短いリードタイムで、プロセスを改善し、より効
率的なプロセスが提供可能となる。」と、ローネーは言う。

胴体前部製造プロセスは、サプライヤーの共同配置がどのように働くかという
一例である。米国にあるパートナー企業Spirit AeroSystems社はノースカロラ
イナ州キンストンの新しい工場で複合材料製胴体シェルを製作して、それをサ
ンナゼールのエアバス施設に隣接した自社の新しい専用の工場に出荷する。
そして、そこで、胴体シェルは完成され、エアバスに組み立て用として届けら
れる。「Spirit社は、2009年第2四半期にはサンナゼール工場の配置を確定さ
せる」と、ローネーは語っている。

(flightglobal 2009/2/13)


一時は、開発に圧倒的な差のあったBoeing787とAirbusA350ですが、
ボーイング社が、原型機の生産にもたつく間に、エアバス社は、ボ
ーイングの失敗を横目で見ながら、着々とA350の生産準備を進めて
いるようです。

両社の新しい生産工程は非常に良く似ています。両者共に世界中に
散在する下請け会社を活用する方針で、自社は最終アセンブリーし
か担当せず、最終組み立て行程では、トヨタのJust in Time方式に
準じた部品供給により最短時間で機体を組み立てていくというもの
です。

ボーイング社が、サブアセンブリーが終わった大きな部材を自社の
エバレットに集めるだけであるのに対し、エアバス社は、記事にも
ある通り、サブアセンブリー担当会社も、エアバス最終組み立て工
場の隣接地に工場を持ち、ここで完成品に仕上げてから、エアバス
に引き渡す方法です。

ボーイングの場合、エバレットに引き渡してから、サブアセンブイ
ーでの不具合が見つかった場合は、その場で修正しなければならな
いのに対し、エアバスの場合は、不良のある部材は、担当会社に返
却すれば良いのと、不具合の説明がその場で担当会社の担当技術者
にFace to Faceで行えるという強みがあります。

生産が軌道に乗った後では、あまり変わりないと言えますが、生産
の立ち上がりの時期には明らかにエアバスの方が、改善が素早く行
え、不良の修正は担当会社に任せられる点、利点が多いと考えられ
ます。

この辺りの生産方法は、インドの10万ルピーカーであるタタ社の
nanoでも、部材供給メーカーを自社工場隣接地に配置する方法を取
っており、エアバス方法との類似が見て取れる点、興味深く思われ
ます。



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2009年3月3日火曜日

「拉致はカネで」論理的には正しい。しかし.....



※写真は民主党関係サイトからの転載

「拉致はカネで」…危うさ露呈「小沢首相」、ささやかれる総・代分離論

2月上旬、都内で開かれた民主党議員と支持者による会合。党代表、小沢一郎
が発した言葉に会場は一瞬凍りついた。

「拉致問題は北朝鮮に何を言っても解決しない。カネをいっぱい持っていき、
『何人かください』って言うしかないだろ」

日本人の人権と日本の主権を蹂躙(じゅうりん)した北朝鮮の犯罪をカネで決
着させる-。あまりにもドライな小沢発言は、当然のごとく、箝口(かんこう)
令が敷かれた。

外交・安全保障をめぐる小沢の「危うさ」が露呈し始めている。

2月24日、記者団に「米海軍第7艦隊で米国の極東の存在は十分だ」と語り、
波紋を広げた。「対等の日米同盟」を土台に、日本の防衛力増強を志向すると
受け取れる発言の真意を、側近は「安保論議を活性化させようとして投じた一
石だ」と代弁する。だが、党内にも「先を見据えない、浅はかな言葉だ」(幹
部)との批判が出ている。

「民主党に国民は不安も抱いている」。1月18日、民主党大会で国民新党代
表、綿貫民輔はこう指摘した。民主党が政権に王手をかけたいま、小沢が唐突
に繰り出す持論は、野党の足並みも乱している。
-以下略

(産経新聞 2009/3/02)

「拉致問題は北朝鮮に何を言っても解決しない。カネをいっぱい持
っていき、『何人かください』って言うしかないだろ」

拉致問題の解決方法は、基本的には二つしかありません。
一つは、日本が主体的に解決する方法であり、小沢氏が述べたカネ
で解決する方法です。
もう一つは、日本が主体的に解決するのではなく、経済制裁を続け
ながら、北朝鮮の体制崩壊を待つ方法です。

ソ連が衛星国を支配していた東欧圏とモンゴルは、ソ連の崩壊に前
後して体制崩壊が実現しましたが、残念ながら東アジアの共産圏は、
中心となる中国が、社会主義市場経済の採用という事実上の体制変
更を行っていながらも、共産党独裁体制を変えていないので、北朝
鮮やベトナムに見る様に体制崩壊は起こしてしませんし、最終的に
は中国の介入が予想される事から今後も起こる可能性は非常に少な
いと考えるべきかも知れません。

勿論、一見堅固に見える中国の共産党独裁体制も、ソ連のそれと同
様意外にあっけなく倒れる可能性があります。そうなれば、北朝鮮
でもかなりの高い確率で体制崩壊のドミノ現象は発生するかも知れ
ません。

とはいえ、現時点でそれがいつになるか判りませんから、拉致問題
を日本が「主体的に」解決するには、小沢氏の言う通り、「カネで
解決」しか方法がない事になります。最終的な解決になるかどうか、
また、拉致被害者の全員が帰ってくるかどうか判りません。死去し
た被害者の事情も不明のまま、巨額の経済援助という身代金が支払
われ、事件の再発防止すら口約束しか期待できないかも知れません。
しかし、それが現実なのです。ある日突然、米軍が北朝鮮を空爆す
るなどという幻想は発生しない事を肝に銘ずるべきなのです。

現憲法下では、国際間の紛争解決に武力は行使する事はできないの
ですから、それでも、拉致被害者が帰ってくるのであれば、日本と
しては、無力さを噛み締めながらでもそれを甘受するしかないので
す。日本国で北朝鮮による拉致を防止できなかった日本の体制の弱
さ故に発生した拉致事件の被害者を主体的に「救出するのか」、そ
れとも、北朝鮮の体制崩壊まで「放置するのか」が問われていると
換言できるのかも知れません。

ある意味で、小沢氏は、正直な政治家と言えるでしょう。北朝鮮と
の妥協を拒否する世論に従って問題が先送りにするのが一番政治的
な危険が少ないからです。加害者におべっかを使ってでも、拉致被
害者を救出するという選択は、国民の総スカンを引き起こす可能性
が極めて高いと言えますし、政治生命を絶たれるかもしれない選択
であるとも言えます。その様な凡百の政治家にはできない選択を小
沢氏が拉致被害者の生還の為に、強いて行うのであれば、小沢氏は
歴史に残る政治家であると言えるのかも知れません。

しかしながら、政治資金で後援会に不動産を購入させていた様な今
までの小沢氏の行動を見ていると、小沢氏には、そういう利他的な
行動を期待しがたく思われてならないのです。その点で、今回の発
言も、信念に基づく発言というよりも、拉致被害者よりも、寧ろ、
北朝鮮との国交回復に伴う経済援助の利権に力点の置かれたドライ
な考えの表れと考えた方が良いのかも知れません。
小沢氏の考えは確かに論理的には正しくはあるんですが....。



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2009年3月2日月曜日

インド国産空母「ヴィクラント」起工!


※写真はNHKサイトからの転載

印 初の国産空母建造へ起工式

急速な経済成長を背景に軍備の近代化を進めるインドが、初めての国産空母の
建造に乗り出し、28日、起工式が行われました。初めて建造される空母は、
排水量4万トン余り、全長260メートルで、戦闘機など30機を搭載できます。

インド南部、コチの海軍基地に併設された造船所で28日に行われた空母の起
工式には、アントニー国防相やインド海軍の関係者が出席しました。インド独
自の技術で初めて建造される空母は、排水量4万トン余り、全長260メート
ルで、戦闘機など30機を搭載できます。完成は5年後を目指しており、ロシ
アから新たに購入する予定の空母とあわせ、インド洋の海上交通路、いわゆる
シーレーンの安全確保を担うことになっています。インドが国産空母の建造に
乗り出す背景には、経済発展を続けるうえで欠かせない中東・アフリカ諸国か
らの石油の輸送路を守るだけでなく、同じく軍備増強を続ける中国が、海賊対
策でソマリア沖のインド洋に艦船を送るなど、南アジア周辺地域での影響力を
強めていることがあります。このため、インドとしては、空母の建造をあえて
公開することで、軍備の近代化をアピールし、中国をけん制するねらいもある
ものとみられます。

(NHKニュース 2009/3/1)

この処、中国の空母建造計画ニュース等でマスコミの関心が高まっ
ている事を感じさせられる報道です。このインド初の国産空母です
が、名前も決まっていて、ヴィクラント (Vikrant) と命名される
ことになっています。

ヴィクラントという名前はインド空母としては、二代目となります。
先代は、英国海軍のマジェスティック級軽空母ハーキュリーズで第
三次印パ戦争で活躍しましたが、1997年に老朽化が進んだ事から除
籍されています。

現在、インドは、これも英国海軍でフォークランド紛争時に活躍し
た、セントー級軽空母ハーミーズを改装したヴィラート(Viraat)を
保有しています。当初は、2000年代初頭に除籍される予定でしたが
ロシア海軍の航空巡洋艦アドミラル・ゴルシコフを、ロシアで改装
中のヴィクラマディティアの完成が大幅に遅延している事から10年
程度の延命工事を行っています。

延命されたヴィラートと2011~13年に完成するヴィクラマディティ
ア、2013年に完成予定の国産空母のヴィクラントとインドは、空母
三隻体制を構築する計画です。なお、艦命が長くないヴィラートに
代えてヴィクラントの同型艦が建造されるとの報道もあります。

ヴィクラントは、当初はフランスの CSN社が建造コンサルを行って
いましたが、途中でイタリアのフィンカンティエーレ社に交代しま
した。その為か、全体の印象はイタリアのヘリ空母である、イタリ
ア海軍の「ジョゼッペ・ガリバルディ」に似た印象を受けます。
ヴィクラマディティアと同様、ヴィクラントもSTOBAR方式
(Short Take-Off But Arrested Recovery) でロシア製のMig-29Kを
搭載する予定です。

このMig-29Kですが、ロシア海軍は、Su-33を艦載機に使用していま
すので、インド海軍のみが使用する機体となります。米軍には、艦
載機は陸上機として成功できるが、陸上機は艦載機として成功でき
ないという教訓があります。Su-33が艦載機として成功しているか
どうかは定かではありませんが、Mig-29Kが成功できるかどうかに、
インド空母の成功がかかっていると言っていいのかも知れません。
(尤も、Mig-29Kが成功しなかった場合は、最近の米印関係が良好な
事から、F-35が将来、空母艦載機に改めて選定される可能性も考え
られます。)

ヴィクラントは、珍しいX字型の飛行甲板レイアウトを採用してい
ますが、これはスキージャンプ式でもMig-29Kの発艦時には相当の
滑走距離が必要となる事によるものです。この為、ヴィクラントで
は、米海軍の空母の様な、アングルドデッキを生かした、離発艦同
時実施は、不可能となっています。

これ以外にも、ヴィクラントの建造に関しては、造船所設備問題等
各種のハードルがあります。その為、起工式も当初の2008年から約
半年の遅延になっています。ロシアで建造中のヴィクラマディティ
アにも同様の各種問題が発生しているのですが、その様な障害にも
係わらず断固として空母取得を推進しているインドの姿勢を我々は
重視するべきではないかと考える次第です。


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