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2010年1月14日木曜日

イラン核科学者爆死事件 真犯人はだれだ!

イラン核科学者爆死 裏に米との情報戦?

テヘラン大学の核科学者、マスード・アリモハマディ教授が爆殺された事件で、
英メディアは、アリモハマディ教授が昨年6月の大統領選後、学生の抗議行動
を支援していたため、改革派への見せしめとして暗殺された疑いが強いと伝えた。
イランでは2006年以降、核開発にかかわった核科学者や軍幹部の不審死や
失跡が相次いでおり、米国とイランの情報戦に巻き込まれたとの憶測も飛び交
っている。

現地からの報道によると、アリモハマディ教授は12日朝、自宅を車で出よう
とした際、駐車中のバイクに仕掛けられた遠隔操作式の爆弾が爆発。車は炎上
し教授は焼死した。通行人数人も巻き添えで負傷した。

教授の専門は核開発と密接に関連する核分裂ではなく、理論量子物理学や素粒
子物理学で、イランの核開発当局は「教授は核開発に関与していなかった」と
発表した。しかし、イラン外務省は声明で、イランの核開発を遅らせるため米
国とイスラエルが背後で関与したと非難。これに対し、米国務省は「ばかばか
しい」と一蹴(いっしゅう)した。

13日付の英紙フィナンシャル・タイムズは「核開発計画にかかわっていたと
するいかなる可能性よりも改革派の支援者だった事実の方が教授の死を説明で
きるだろう」と指摘した。(ロンドン 木村正人)

(産経新聞 2010/01/14)


イランの核科学者が、リモコン装置を使ったバイクで爆殺された事
で、イランと欧米の非難合戦が始まっています。
最初は、イラン外務省で、爆殺されたアリ・モハマディ教授がイラ
ンの核開発計画とは無関係としながらも、米国とイスラエルと関連
のある亡命者グループが暗殺を図ったと非難しました。13日には、
イランの国会議長であるアリ・ラルジャニも米国が背後にいると非
難しました。

これに対し、米国の国務省高官が、「ばかげている」として否定し、
更にCIAも当局者が「CIAがこの事件に関与しているとする主張は、
全くの誤り」と述べています。

その一方で、暗殺されたアリ・モハマディ教授がイランの改革派勢
力を支持していた事が判ってきました。上の記事にもあるイラン保
守派が改革派支持者に「見せしめ」をしたという説がロイターやAP
で報道される様になっています。

実際、アリ・モハマディ教授の未亡人が暗殺を「テロリズムの醜い
顔」とする声明文をハタミ前大統領のWebサイトに投書しているの
も教授の改革派との関連を示したものと言えます。今の処、ハタミ
前大統領は、暗殺を「テロリズムの犠牲者」とのみ述べているだけ
で、誰に対する非難も行っていませんが、名指ししない事で保守派
の圧力を回避しようとしているのかも知れません。また、今回の事
件が、本当に「見せしめ」であるとするならば、イラン国内で保守
派が改革派の動きに対し、危機感を持っている現れと言えるのかも
知れません。

イランは、昨年10月のジュネーブ合意で、国内で濃縮した低濃縮ウ
ランを海外に移送し、その替りに、原子炉用の核燃料に加工したも
のを受け取る事を西側と合意したものの、国内保守派の突き上げで、
それを反故にした事で、欧米諸国との緊張が高まっていました。

今回の暗殺事件に対する、イラン外務省の反応が素早いものであっ
た事も含め、昨年末の欧米との核交渉の決裂を受け、国内の改革派
に対し圧力をかけると同時に、米国とイスラエルの暗殺事件への関
与を非難する事で、国際的な制裁圧力をかわす事を狙ったとすれば、
今回の事件で一番の利益を得るのは、イラン政府と保守派と言う事
になります。殺人事件の真犯人として一番利益を受ける者を疑えと
言う推理小説のセオリーが、このミステリーの真相を示しているの
かも知れません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/






2008年11月28日金曜日

「テロ」は歴史を変えるか?



※写真はムンバイ・テロで炎上するホテル。時事通信から転載

インドで同時テロ、死者80人…邦人1人死亡、1人負傷

【ニューデリー支局】ロイター通信などによると、インド西部ムンバイで26
日夜、ホテルや駅など少なくとも8か所で、ほぼ同時刻に爆発や武装集団によ
る無差別発砲があり、約80人が死亡、250人以上が負傷した。

日本政府筋によると、1人が死亡、1人が負傷したという。地元警察は、組織
的な同時テロの可能性が高いとみている。

AFP通信によると、「デカン・ムジャヒディン」を名乗る組織が、複数のメ
ディアにEメールで犯行声明を出したという。同組織の実態は不明。

AP通信によると、武装集団の一部は27日未明現在も、高級ホテル2か所で、
外国人ら約15人を人質に取って立てこもっており、警察と銃撃戦が続いている。

地元当局は、武装集団のうち4人を殺害、9人を逮捕したと発表したという。

(読売新聞 2008/11/27)

残念な事件が、また起こってしまいました。どういう意図でテロを
行ったのか判りませんが、犯行声明を出した組織の名前から見ると
イスラム過激派を想像させるものです。
パキスタンやインド国内のイスラム過激派は、度々、インドでテロ
活動を行っており、2001年12月にはインド国会襲撃事件を起
こしています。

インドとパキスタン、スリランカは、第二次大戦前は英領インド帝
国を形成していましたが、第二次大戦後の独立時に、ヒンデゥー教
徒、イスラム教徒、仏教徒各々が国家を形成しました。

インドとパキスタンは、特にカシミール地方の帰属(住民はイスラム
教徒だったが、藩王がヒンデゥー教徒であった為、インドに帰属し
た)を巡って、三度に亘って、戦争を行い、特に第三次印パ戦争の結
果、当時、東パキスタンと呼ばれていた地域が「バングラディシュ」
として独立した事から、関係は更に悪化しました。これが、インド
が核武装を行った際に、パキスタンも核武装する原因となっています。

幸いにして、第三次印パ戦争以後は、直接の戦火は交えておらず、
両国共に、核武装を行った事から限定的ながら核抑止が働き、戦争
は起き難くなっていると考えられます。

その一方で、特に、失ったものが大きいパキスタン/イスラム教徒
側の欲求不満が沈潜し、それがテロとなって噴出する結果を招いて
いると言えそうです。

さて、表題の「テロは歴史を変えるか?」という命題ですが、歴史
家、評論家の中には、テロは世界史の大きな流れを変えられないと
いう方もいる様ですが、実際には、テロは明らかに歴史を変えてい
る様に思われます。比較的最近に限っても、アルカイダが911テ
ロを起こさなければ、ブッシュがアフガニスタンやイラクを攻撃し
ていたとは思われませんし、もしイラク戦争がなければ、オバマ氏
が大統領に選出される事もなかったでしょう。

勿論、911事件そのものが、「文明の衝突」という大きな歴史の
流れの表出と捉えれば、遅かれ早かれ、西欧文明とイスラム文明の
衝突が起こっていたと巨視的に見るむきもあるでしょうが、よくよ
く見れば、西欧文明とイスラム文明が、全面衝突している訳ではな
いと考えます。寧ろ、米国一国支配に対するアンチテーゼとしてテ
ロが発生したと言う見方に私は共感を覚えます。(勿論、それも大
きな歴史の流れの表出とも言えますが...。)

テロはある意味で感情の表出でしかありません。大きな政治的社会
的構造を合法的には、思った方向に、希望する速度では動かす事が
できないというある人間やグループの焦燥がテロを生みます。

ただ、テロに影響力がないかと言えば、そんな事はありません。
911事件に見る様にテロを計画した人間が想像した以上の影響を
与える事もありえるのです。また、イスラエルに対するパレスティ
ナのインティファーダの様な継続的なテロ行為は相手側の非理性的
な行為を誘発する事もあり得ます。その点で、テロは対立する両者
の感情をより刺激する事で、対立を更に先鋭化させると言えるかも
知れません。発火点が下がれば、通常であれば、外交努力で沈静化
できた問題も、武力に訴える事になる可能性は高まります。今回の
ムンバイ・テロがそういった悲惨な結果を招来しない事を切に祈り
ます。