2010年2月25日木曜日

核密約を暴露しながら拡大抑止の有効性を求める民主党の愚

※トマホーク用VLSハッチを開いたロサンゼルス級原潜。
Wikipediaより転載

<米国>日本にトマホークの段階的廃棄伝える

米政府が核巡航ミサイル「トマホーク」を段階的に廃棄する方針を日本政府に
伝えていることが22日、分かった。日本政府関係者が明らかにした。麻生前
政権は抑止力低下の懸念から廃棄に慎重だったが、鳩山政権はオバマ米政権が
進める核軍縮を共に実現するとの姿勢から容認する立場だ。ただ政府内には廃
棄に伴う抑止力への影響を懸念する声もあり、米国が3月1日にも公表する核
戦略の新指針「核態勢見直し」(NPR)の内容が注目される。

トマホーク廃棄は「核のない世界」を提唱するオバマ米大統領の核軍縮政策に
沿ったもので、岡田克也外相が昨年12月、米国のクリントン国務長官に書簡
を送り、核トマホークを廃棄する場合には拡大抑止(核の傘)に及ぼす影響に
ついて説明するよう求めていた。廃棄の方針はこれに答える形で米側から非公
式に伝えられ、今月18日に外務、防衛両省幹部が参加してワシントンであっ
た米側との抑止力戦略に関する協議は、廃棄方針を前提に行われた。

トマホークは冷戦時代の80年代に配備された長距離巡航ミサイルで、潜水艦
やイージス艦などから発射でき、核弾頭の搭載が可能。ブッシュ政権が91年、
トマホークを含む戦術核を艦船、潜水艦に積載しないと宣言。その後は米本土
で有事に再配備可能な状態で保管されており、03年のイラク戦争で使用され
た。【野口武則】

【ことば】トマホーク 冷戦時代の80年代に配備された精密誘導の長距離巡
航ミサイル。潜水艦やイージス艦などから発射でき、核弾頭の搭載が可能。最
大射程は核弾頭搭載型が約2500キロ、通常弾頭型が約1700キロとされ
る。ブッシュ政権は91年、核トマホークを含む戦術核を艦船、潜水艦に積載
しないと宣言。その後は米本土で有事に再配備可能な状態で保管されてきた。

(毎日新聞 2010/02/22)


記事にもある通り、トマホークは、空中発射、水中発射、艦上発射
が可能で、しかも、核弾頭と通常弾頭を使い分けられる高い柔軟性
と生存性を持つ兵器です。その2500キロと言う射程距離は中距離弾
道弾(IRBM)のそれに相当します。米国のロサンゼルス級攻撃型原潜
は、トマホークを装備できる垂直発射装置12セルを保有しており、
攻撃型潜水艦といいながら、核搭載トマホークを装備した場合、戦
略ミサイル搭載原潜に準ずる高い第二撃能力を持っていました。

核搭載トマホークは戦術核兵器という位置付けでしたが、中国を対
象とした場合には、オハイオ級戦略ミサイル原潜に頼らずとも、こ
の核搭載トマホークを装備するロサンゼルス級原潜だけで、十分な
戦略的核抑止力を持っていたと言えます。

核搭載トマホークは、イージス艦などの水上艦艇にも搭載可能です
が、秘匿性や生存性を考えると潜水艦装備のものが主体となります。
通常の場合は、中国の核戦力は、米国の戦略核により抑止されます
が、中国との核交換を行った上で、ロシアの核に対し備える。ある
いは、ロシアと核交換を行った上で、中国の核に対し備える事を考
えた場合、国際緊張が高まった段階で、核兵器搭載の攻撃型原潜は、
日本を基地として、東シナ海や日本海、オホーツク海で戦略パトロ
ールを行う事になっていた筈です。

上記の想定状況が実現した場合、戦略パトロールに従事する核搭載
原潜は、まず確実に日本に寄港する事になりますが、これは、民主
党が暴露した密約の一つである核搭載艦艇の日本寄港に相当します。
今までの自民党の見解であれば、この様な運用は許容されますが、
民主党の見解に従えば、日本への核持ち込みとして拒否せざるを得
なくなります。

つまり、米国の核搭載トマホーク廃棄通告に対し、論理的には、自
民党は、廃棄に対し反対の立場が取れますが、民主党は、元々、日
本周辺の戦略パトロールを行う原潜に対し、日本への寄港を自動的
に拒否する事になる訳で、核搭載トマホークの廃棄に、反対できな
い事になります。

今回のトマホーク廃棄は「核のない世界」を提唱するオバマ米大統
領の核軍縮政策に沿ったものとは言え、実態としては、中国に対す
る米国の核抑止力が大きく後退する事になります。勿論、米国の核
戦力は引き続き中国を大きく凌駕していますので、拡大抑止体制そ
のものには、問題がないと言えますが、日本にとっては、温かい毛
布を取り払われた様なものであり、決して歓迎できるものではあり
ません。そして、その様な事態を許容せざるを得なくなった民主党
の安保政策は、決して、褒められるものではないと思うのです。


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2010年2月24日水曜日

今更無意味な日米間の密約探し

※岡田外相。福島新報Webサイトから転載。

半島有事密約など認定へ=核持ち込みは「解釈にずれ」-外務省有識者委

日米両政府間の「密約」に関し、検証作業を行っている外務省の有識者委員会
が、(1)1960年の日米安全保障条約改定時に交わした朝鮮半島有事の際の在日
米軍基地使用(2)72年の沖縄返還時に交わした有事の際の沖縄への核再配備-
について、秘密合意があったと認めることで調整に入ったことが24日、明らか
になった。

一方、焦点の米艦船などによる核兵器の持ち込みは、安保改定時には日米間で
解釈に食い違いがあり、密約の認識まではなかったと指摘する方向だ。有識者
委は3月に報告書を公表する。これを受け政府は、これまで存在を認めてこな
かった密約について、米政府とも意見調整した上で見解を見直す方針だ。

(時事通信 2010/02/24)]


民主党政権は、鬼の首でもとったつもりなのでしょうか。
密約を探し回る事の、政治的意味が、自民党の旧悪を暴露して溜飲
を下げるというレベルに留まっているのであれば、外交的には、全
く無意味な事をしていると言えるでしょう。

上記の記事で取り上げている三件の他に、もう一つ密約疑惑があり
ます。それは、米国が支払うことになっていた地権者に対する土地
原状回復費400万ドルを、実際には日本政府が肩代わりして米国に
支払う約束をしていたというものです。

存在が従来から噂されていた、これら四件の「密約」は、日米安保
体制を円滑に運用したり、沖縄返還を確実に実施する為のものであ
り、今となってみれば、何故にそれを密約という形にしたのか疑問
に思う程度のものでしかありません。今となって見れば、あの程度
の密約しかなかったのであれば、ソ連の影響を受けた当時の左翼勢
力の政治的圧力を回避しながら、日本の進路を正しく維持する上で、
自民党政権は公明正大であったとすら言えるでしょう。

もし、それを問題視するのであれば、民主党の小沢幹事長が、百名
以上の国会議員を引き連れていった朝貢外交で、中国に何を約束し
たのか是非明らかにして欲しいものですし、民主党が、民潭や朝鮮
総連と外国人参政権問題や人権擁護法改正問題で、どの様な密約を
交わして選挙協力を得たのか是非明るみに出して欲しいものです。
また、社民党や共産党については、外国から資金援助を得ていたと
いう噂について明らかにすべきでしょう。

今回の密約暴露に関する日米関係への影響についてですが、今回明
らかになった密約は米国では既に外交文書の公開で明らかになって
いたものも多く、暴露そのもののインパクトは、それ程大きなもの
ではありません。もし、民主党が、密約を暴露した上で、再度、各
々の密約を米国の認識にそった形で正式な合意にするのであれば、
それでも、秘密合意を正式な合意にする事で、日米関係を(わずか
なものとは言え)前進させる事になるかも知れません。しかしながら、
合意を拒絶するのであれば、当時と比べ諸合意のインパクトは弱く
なっているとは言え、民主党政権になって、戦後最悪のレベルにな
ってきている日米の絆を更に弱める効果しか無い事は間違いありま
せん。民主党は、自己満足の為に、普天間問題に引き続き、またま
た、国益を危険に晒したと言わざるを得ないのです。


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2010年2月22日月曜日

そもそも朝鮮学校を無償化の対象とするのに無理がある。

※2005年(主体94年)朝鮮大学卒業式

朝鮮学校「文科省がカリキュラムをチェック」 高校無償化で官房長官

平野博文官房長官は22日午前の記者会見で、4月から実施予定の高校無償化
の対象として、在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮学校を含めるかどうかについて、
「無償化にふさわしいカリキュラムかも含め、文部科学省がチェックしなけれ
ばならない。文科省の省令で決めると聞いている」と述べた。また、現段階で
鳩山由紀夫首相から具体的な指示はないことも明らかにした。

(産経新聞iza 2010/02/22)


そもそも所得制限なしに、高校無償化を行う事にしたのは、個々の
家庭ではなく社会全体で、子供を育てる趣旨であった筈です。その
際に民主党が軽視したのは、その教育を、立派な日本国民を養成す
る為の教育ではなく、社会が求める教育という一種の幻想とした事
です。社会、住民と言えば、国民ではない外国人も含まれるという
解釈ですから、日本の文部省のカリキュラムに基づかない、例えば、
朝鮮人学校であっても、無償化の対象としなければならないという
論理です。

その一方で、上記の記事にもある通り、金を出す以上、そのカリキ
ュラムが無償化の趣旨にそったものであるかどうか、チェックした
いという要請が出てくるのは、無償化の原資が税金である以上、こ
れまた当然と言えます。

しかしながら、この要請には、かなり無理なものがあります。
朝鮮学校は、あくまで、朝鮮民主主義人民共和国の在外公民を養成
するのが、設置の趣旨である以上、日本側のカリキュラムに沿った
ものではないだろう事が容易に推測できますし、逆に、朝鮮学校の
カリキュラムが文科省の期待するものであるという結論であれば、
文科省のチェックは実は、形式的なものに過ぎない事の証明になり
ます。

今回は、朝鮮学校が対象になっていますが、高校教育の無償化によ
って日本社会が期待している教育が、他国の公民(例えば、朝鮮民
主主義人民共和国の公民)を養成する教育でない以上、朝鮮学校や
International Schoolを始めとする各国向けの教育を行う学校を無
償化の対象とするのは、やはり大きな無理があると考える次第です。


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