2009年8月28日金曜日

「友愛」よりも「防衛」を選んだ元同盟国

※写真はS-400対空ミサイルシステム

極東に新対空システム配備 露、北朝鮮ミサイルに対応

インタファクス通信によると、ロシア軍のマカロフ参謀総長は26日、北朝鮮
のミサイル実験に対応し、ロシア極東地域に最新型の対空ミサイルシステム
「S400」を配備したと明らかにした。

北朝鮮のミサイル実験を現実の脅威とみなしていることの表れで、ロシアは引
き続き北朝鮮のミサイル発射に厳しい態度を取るとみられる。

参謀総長は、メドベージェフ大統領に同行して訪問したモンゴルのウランバー
トルで記者団に「北朝鮮のミサイル実験場や核施設はロシア国境から極めて近
い」と指摘。S400配備の目的は、北朝鮮のミサイル実験が失敗した場合に
破片などがロシア領に落下することを防ぐためだと説明した。具体的な配備場
所は明らかにしなかった。

S400は射程約400キロで、ロシア軍最新の対空ミサイルシステム。(共同)

(産経新聞 2009/8/26)


同盟国でも、最後の所は信じないというのが、ロシアの生き方とい
うのが世界で一般的なロシアに対する見解であると思いますが、そ
れが元同盟国で、世界から「ならず者国家」と目されている国で、
核ミサイルを開発しているかも知れない国であるならば、対抗措置
を取るのも当然と言えます。

既に以前から、弾道ミサイル防衛用に新型ミサイルを配備するとい
う意向をロシアは表明していましたが、今回明らかになったのは、
配備が始まったばかりの最新型対空ミサイルの極東配備を既に完了
しているというものです。

ロシアのミサイルは、システムの名称であって、弾体や発射機の型
式が異なっても、同じ名称で呼ばれる事がありますが、このS-400
についても同じで、弾体だけでも、3種類があるとされています。
射程距離400kmを誇るのは、40N6と呼ばれる弾体であるようです。
このミサイルは、長射程で、巡航ミサイルを攻撃する能力があり、
弾道ミサイルについても射程3500km、秒速4.8kmまでの中距離弾道
ミサイルであれば迎撃可能と言われています。
(出展、週刊オブイェクト http://obiekt.seesaa.net/article/119400823.html )

そういえば、2006年の北朝鮮のミサイル乱れ撃ちでは、実に7発の
弾道ミサイルがウラジオストック沖の日本海に撃ち込まれましたが、
事前にロシアの承認を得ていたのか定かではありませんでした。そ
の後のロシアの行動が明らかにミサイル迎撃に傾いた処を見ると、
少なく共、北朝鮮からの事前連絡が充分ではなかった可能性が考え
られる様に思われます。

もし、北朝鮮が米国向けに打ち上げたICBMが、万が一故障してロシ
アに落下したとしても、その落下速度はS-400の能力の範囲に収ま
る筈です。如何に元同盟国ではあっても、最悪の事態に対応出来る
様に予め準備しておくというロシアの姿勢は、危機管理の面では当
然と言えるのです。

一方、日本においては、他国との関係は「友愛」で当たると広言す
る政治家を党首とする政党が政権を握る勢いとなっています。
北朝鮮に対しても「対話」と「協調」で当たるそうです。また、こ
の政党は、政府予算から無駄を省く事で、実に13兆円もの資金を
捻出する事を予定していますが、以前は彼らの考える無駄な予算と
して防衛費を上げ、そこから五千億円を圧縮すると主張していた事
もありました。

折りしも、北朝鮮は、米国や韓国に対して宥和攻勢をかけています。
日米韓の結束を破る事を北朝鮮が意図しているのは明白と言えます。
しかし、何故か、日本に対してはアプローチがありません。これが
何故か言えば、自国に宥和的な新政権の発足を待っている事以外は
考えられません。日本に対しては、譲歩なしで制裁解除や経済援助
が獲得可能であると踏んでいる事になります。その上で、日本に対
しては、歴史問題等を楯にして上からの目線で対応すれば、南北の
民衆レベルからも支持喝采が得られると考えているのではないかと
思われるのです。

交渉において、相手が降りると判っている時ほど強い時はありません。
交渉が有利に展開できる事が判っているならば、あとはどれだけ利
益を拡大するかの問題になるだけです。「友愛」、「対話」、「協
調」、「平和」いずれも美しい言葉ですが、くれぐれも国益を蔑ろ
にしない事を祈念せずにはおれないのです。


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2009年8月26日水曜日

奴は斜め上を飛んだ~韓国初の人工衛星打上げに失敗


※写真、CGは朝鮮日報サイトより転載

人工衛星、覆い外れず失速=韓国

韓国教育科学技術省は26日、人工衛星搭載ロケットの打ち上げ失敗について、
大気圏内の飛行時の摩擦から衛星を防護するフェアリング(覆い)が正常に外
れなかったため失速したことが原因と推定されると発表した。
衛星はロケットから切り離されたが、二つある覆いのうち片方が正常に離脱せ
ず、十分なスピードを得ることができなかった。衛星は落下の過程で燃え尽き
たとみられる。 

(時事通信 2009/08/26)


韓国初の人工衛星搭載ロケット打ち上げ、目標軌道に乗らず失敗

韓国は25日、初の人工衛星搭載ロケットを打ち上げたが、計画していた軌道
上に衛星を乗せることができなかった。
安秉万(アン・ビョンマン)教育科学技術相は、衛星は打ち上げから8分後に
2番目のブースターを切り離した後、目標の軌道に入らなかったことを明らか
にした。
プロジェクト関係者は、失敗の原因は特定できないとしつつも、衛星の軌道を
修正する機能がブースターになかったと述べた。
北朝鮮は、韓国のロケット打ち上げに警戒感を示しており、今月に入りロケッ
ト打ち上げやそれに対する各国の反応を注視していると表明していた。
打ち上げは当初8月19日に予定されていたが、圧力計のソフトに異常が発生
したため延期されていた。
今回打ち上げられたロケット「羅老号」(KSLV―I)の開発には、ロシア
の協力を得た。ロシアはロケットの1段目を開発したほか、テストや技術面の
サポートを提供。
ロケットは全長33メートルで2段式。開発費用は5025億ウォン(4億ドル)。
韓国は2018年までに、自力でロケット開発し、2025年までの月探査機
打ち上げを目指している。人工衛星打ち上げのための商業サービス開始も検討
している。

(Reuters 2009/08/25)


七回の打上げ延期を繰り返した上、漸く、昨日打ち上げられ、当初
は、打上げ成功と伝えられた羅老号ですが、残念ながら衛星を軌道
に乗せる事なく、大気圏に再突入し、燃え尽きた様です。
昨日の遅い段階では、予定された軌道に投入できなかったと報道さ
れ、その理由としてフェアリングの片側が外れなかったという見解
が非公式に流れていましたが、それが公式に確認された形になりま
した。上の朝鮮日報作成のCGでは、その時に流れていた失敗原因が
三つあげられています。

さて、通常、ロケットが打ち上げられる際には、ロケットの姿勢や
高度、加速度、ブースターや一段目の切り離し、フェアリングの開
放等のイベントの結果、ロケットに搭載された監視カメラの映像等
をテレメトリー信号として地上に送っています。また、地上からも
目視とレーダーの両方を使って衛星の姿勢、高度、針路、速度等を
観測していますから、どの段階で、計画値と違ってきたかは明確に
識別できていた筈なのです。

フェアリングが外れなかったのが事実であれば、打上げ3分35秒後に
衛星保護カバー分離した段階から、予定された高度、速度とテレメ
トリーや地上からの観測数値の乖離が大きくなってきていた筈です。
予定では投棄される筈のフェアリングの重量が余計に乗っかってい
ますし、ロケットの重心も変わってきます。

衛星を分離した高度が予定よりも30キロ以上高かった事も良い事
ではありません。人工衛星になる為には、水平方向の速度として、
毎秒7.9キロの第一宇宙速度を満足する必要がありますが、予定
以上に上昇するに必要とした加速度は、この水平速度成分を犠牲に
する事で得られているからです。この加速度の違いも当然ながら、
テレメトリーデータに現れていた筈なのです。

日本を例を挙げるのであれば、2003年5月に情報収集衛星を軌道に
載せる為に打ち上げられたH-IIA 6号機が、2本のSRB-A(固体ロ
ケットブースタ)のうち、1本が分離できず、そのままでは、高度
および速度が不足することからロケットを指令破壊しましたが、こ
れと略同様の事が羅老号にも起こっていたと言えるのです。

こういったテレメトリーの数字の計画値との乖離や変化をどの様に
認識するかという点で、初の人工衛星打上げという経験の無さが、
衛星打上の失敗という結論を迅速に出す事が出来ず、本来であれば、
指令破壊を行うべきであった状況であるにも係わらず、それが出来
なかった事につながっているのかもしれません。
羅老号の一部がオーストラリアのダーウィン近郊に落下したという
未確認情報がありますが、これが事実であれば、指令破壊を行うべ
き状況であった事の証明とも言えるでしょう。

今回の打上げは、人工衛星打上げ能力獲得を急ぐ韓国が、従来から
の国内技術開発の方針を転換し、ロシアから一段目ロケットを購入
し、二段目もロシアが設計した固体燃料ロケットの韓国内で製造し
たものです。衛星フェアリングやその分離機構も恐らくロシア設計、
韓国内製造で、ロケット全体の取り纏めもロシアから大きな支援を
得ていたものと思われます。

韓国がロケット技術をロシアから導入する事については、特に文句
はありませんが、まかり間違えば、打上げに失敗したロケットが日
本領土に落下する可能性があるのですから、せめてロケットに異常
が発生した場合の安全性確保については、日本からも強く韓国に申
し入れを行うべきであり、それにきちんと対応するのがロケット打
上げ国の責務であると思われるのです。


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2009年8月25日火曜日

ミッション・インポッシブル

※写真は、航行する「アークティック・シー」RIANOVOSTIから転載

積み荷に極秘物資? 露確保の失踪貨物船

【モスクワ=遠藤良介】欧州海域で7月下旬に消息を絶ち、このほどアフリカ
北西部カボベルデ近海でロシア海軍に確保された一隻の貨物船が「謎」を呼ん
でいる。ロシアのセルジュコフ国防相は「海賊に遭った」としているが、ロシ
アが特殊作戦に乗り出してまで船の発見を急いだ理由は何なのか。同船がイラ
ン向け兵器などの“極秘物資”を積んでいたとの憶測が出ている。

問題の船は、マルタ船籍の露木材貨物船「アークティック・シー(北極海)」
(3988トン)。7月23日に木材を積んでフィンランドを出航し、アルジ
ェリアに向かった。しかし、24日にスウェーデン沖から「武装集団に襲われ
た」と報告してきた後、交信が途絶えた。

ロシアのメドベージェフ大統領は今月12日、「北極海」の発見、確保に全力
を挙げるよう軍に厳命を下した。露海軍が多数の艦船などを派遣して捜索した
結果、17日(現地時間16日)に貨物船を発見。ロシア人乗組員15人の無
事を確認するとともにロシア人、エストニア人、ラトビア人の容疑者8人を拘
束した。露高官はこの作戦に伴い、報道操作が行われたことも確認している。

ただ、この貨物船が積載していた木材は180万ドル(約1億7千万円)相当
にすぎないとされる。「海賊」が狙うにも、ロシアが国を挙げて奪還に動くに
も、不自然さが残る。そもそも、欧州海域は警備が厳しく、長らく海賊被害は
報告されていない。

エストニア軍元高官は露大衆紙モスコフスキー・コムソモーレツに対し、「ロ
シアのかくも奇妙な行動は、貨物船に巡航ミサイルが積まれていたことでしか
説明がつかない」と述べた。著名海事専門家のボイチェンコ氏も17日の記者
会見で海賊説に疑問を呈し、「商売上の抗争」や「(国家的な)特殊作戦」の
可能性があると指摘していた。

ロシア内外のメディアでは、貨物船がイランやシリア向けの兵器や核物質を積
んでいたとする説や、麻薬密輸に絡んでいたとする見方が報じられている。

(産経新聞 2009/8/22)


ペルシア湾を航行する北朝鮮の貨物船が臨検され、隠された船倉か
ら、イエメン向けの弾道ミサイルが発見された事がありましたが、
いかがわしさでは、北朝鮮の先輩であった旧ソ連時代からあまり変
わっていないロシアが、またまたいかがわしい武器輸出でやってい
る事が暴露されてしまいました。もし、本当に積荷が、ロシアの言
う通り木材であったのならば、大統領命令で海軍が必死になって捜
索活動を行う必要などありません。

記事にある通り、イラン向けの巡航ミサイルや弾道ミサイルあるい
は、(核燃料棒や)その補給品であったとすれば、必死になった捜索
活動を行った説明がつきます。

ロシアがイランを含む「ならず者国家」に対して融和的であるのは、
今に始まった事ではありません。イランは、軍事演習の中で、ロシ
アの超高速魚雷であるシクバルと同じ技術の産物と思しき武器のデ
モンストレーションを行っています。また巡航ミサイル技術の取得
や弾道ミサイル開発にも熱心な事は良く知られています。なお、巡
航ミサイルについては、長射程のKh-55に関する技術がウクライナ
から流出した事が判明しています。本家のロシアから新しい技術が
流出していても全くおかしくはないのです。

今回の事件で面白いのは、海賊が少ない欧州海域で、問題のある船
舶が狙い撃ちの形でハイジャックされた事です。こんな事が偶然に
発生するわけはありません。ロシアのイランに対する武器輸出をス
トップさせたいどこかの国がスポンサーになっていると考えるべき
であると思われます。正しくミッション・インポッシブルの様な某
国、某機関による特別ミッションの成果と言えるのではないでしょ
うか。

なお、捉えられた海賊8人は、全員がエストニア人の犯罪者という
報道もあります。


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2009年8月24日月曜日

18DDH「いせ」の建造状況(2009/8/23現在)





Ships Location

1
2 DD174 きりしま
3 DD143 しらね
4
5
6 DD182 いせ
7
8
9

18DDH「いせ」が進水したので、久しぶりにIHIマリンユナイテッドに撮影に行
ってきました。16DDH「ひゅうが」進水の時はマスコミや一般の関心も高かっ
たですが、今回は取り上げた新聞社もテレビ局も少なく空母型の護衛艦に対す
るアレルギーはかなり少なくなった様に思われます。

「いせ」と「ひゅうが」を比べても現時点では、外見上の相違点が判らない
ので、新規さがないのが、関心が薄れた理由かもしれません。艦番号の違いが
無ければ、撮影している私でも同じ艦の様にしか見えませんでした。

艤装岸壁には、「きりしま」と「しらね」が係船され、「きりしま」は定期点検中
「しらね」はCICの修復工事を行っていました。
「きりしま」は今年、MD対応の改造が施される予定ですが、定期点検後に実施
するのでしょうか?現時点では目だったら変化はないように思われます。


#1 DD182 いせ 左舷前方から

#2 DD181 いせ 艦首部を左舷から拡大撮影。後方のマストは しらね 

#3 DD174 きりしま 定期点検中の姿

#4 DD143 & DD182  新旧DDHの艦容と大きさの違いが良く判る


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