2009年3月27日金曜日

中国の軍拡継続を警戒する米国防省報告書




アジア太平洋 中国脅威 唯一の戦略核増強国 米国防総省報告書

■ICBM20基新配備

【ワシントン=古森義久】米国防総省は25日、「中国の軍事力」に関する年
次報告書を発表し、中国が戦略核戦力や東アジア地域での軍事能力、さらには
台湾の攻略能力などをいずれも増強しているという現状を明らかにした。報告
書はさらに、中国の軍事の態勢や戦略が不透明であり、アジア太平洋地域での
大きな不安定要因となっていることを指摘した。

                   ◇

同報告書は毎年一度、発表され、議会に送られるが、総括として中国がなお「
高度の外国製兵器の取得、防衛関連科学技術への急速度の投資、軍隊の組織的、
戦略的な改革などによって地域制圧の軍事能力や核、宇宙、サイバー戦争の軍
事技術を発展させ、アジア地域の軍事バランスを変えて、アジア太平洋地域を
も越える影響を発揮している」と警告している。

具体的には、米国本土にも届く戦略核戦力で中国が2006年以来、CSS4、
DF31などの大陸間弾道ミサイル(ICBM)計約20基を新配備したほか、
射程のやや短いCSS3を約20基、1隻に弾道ミサイル(SLBM)を12
基搭載した「夏」級潜水艦を新配備するなど、世界でも唯一、戦略核ミサイル
の増強を進めていることを指摘。また、西太平洋地域で水上艦、潜水艦、航空
機を増強し、対艦攻撃ミサイルや魚雷の強化で地域制圧の能力を高め、潜在敵
の側の航空母艦までを抑止する能力をつけ始め、東シナ海での尖閣諸島をめぐ
る日本との領土紛争への対処能力をも高めたことなどを強調した。

報告書によると、中国は台湾への攻撃、攻略の能力を依然として高め、台湾海
峡沿いの福建省などでは台湾に届く短距離弾道ミサイルの増強を継続。2008
年9月の時点で合計1150基にも達して、いまなお毎年約100基のペース
で新配備を続けている。

報告書は台湾の政権が変わり、独立を直接には目指さない国民党が政権を握っ
て、中国との政治的な緊張が和らいだのに増強がなお続いている点に懸念を示
し、「中国が台湾の独立を阻止するために攻略の軍事能力をつけることは理解
できるが、現在の増強は台湾をはるかに越えた有事までをも想定しているよう
にみえる」と指摘した。

一方で、中国海軍が航空母艦を保有する意思を公的に表明し、旧ソ連から購入
した旧式空母を活用し自国製の建造を目指す方針を進めていることを伝えてい
る。パイロット50人が空母艦載機の操縦訓練を受け始めたことも記している。

また、報告書は中国の人民解放軍の兵器装備や戦略作戦などがほとんど秘密に
され、透明性に欠ける点を批判的に取り上げ、国際情勢を不安定にする主要因
だと断じている。中国政府が公式に発表する国防費は08年度分は約600億
ドルで前年より17・6%の増加だが、外国からの兵器購入や航空宇宙での戦
争準備などの経費はそこには含まれず、実際は1050億~1500億ドルに
も達すると米側はみている。

(産経新聞 2009/3/27)

産経新聞の古森氏は、中米関係については、定評のあるニュースソ
ースです。
今回の記事でも、米国国防省の年次報告書「中国の軍事力」を上手
く纏めています。興味がある方は、以下のURLで、全文を読む事が
出来ます。


最初は、この報告書のエグゼクティブ・サマリーを抄訳しようかと
思ったのですが、上記の記事の方が、数段上手に纏めてありました
ので、それ以上という事であれば、あとは、原文を細かく見て行く
方が誤解がなくて良いのではないかと思います。

「中国の軍事力」は2000年以降、毎年一回、米国防省から議会への
報告書の形で纏められら公表されています。過去、同様の報告書と
して「ソ連の軍事力」がソ連崩壊まで、公表されていましたが、ソ
連軍事力の最新動向が盛り込まれており、米国内外の外交、安保担
当者、研究者の非常に有用な資料になっていました。「中国の軍事
力」は、まさにその中国版と言える報告書であると思います。

今回の報告書については、個人的には、中国第二砲兵学校で研究さ
れ、米空母対策として開発中の対艦弾道弾(ASBM)の概念説明図など
は面白いと思います。ただ、空母は、時速80kmで移動可能ですから、
弾道弾を終末誘導するには、弾道弾と観測装置及び両者のフィード
バックが余程上手く連動しないと上手く行かない様にも思います。
中国のC4ISRが、その様なレベルに達しているとDODが考えているの
であれば、それはそれで興味深い事です。

なお、この報告書が出る直前には、中国のEEZ内の公海で米国の海
洋観測船が中国船に執拗な追跡を受ける事件が起こっており、他国
の第一列島線内側の領域使用を拒否する中国の意思が明確に出てい
るのが、この報告書の指摘を裏付ける形となっています。

また、以下の記事に見られるように、この報告書に対して中国は素
早く抗議を行っていますが、その様に素早く、抗議を行うのも、中
国が痛い所を突かれたという意味ですので、報告書の視点はかなり
正鵠を得ているのではないかと考える次第です。


事実わい曲、誤った脅威を宣伝と中国 米国防総省報告書で


中国外務省報道官は26日、米国防総省が25日発表した、中国の軍事
力に関する年次報告書に関連し、事実をわい曲しており、中国政府
は断固反対するとの立場を示した。

報告書は、中国による長距離弾道ミサイルや対艦ミサイルの開発が
目立ち、地域の軍事バランスを乱していると指摘。また、ミサイル
開発の加速は海外資源確保や他国との領有権論争で中国を有利な状
況に置くとも分析していた。

同報道官は、米政府は中国の軍事的脅威に対する誤った考えを宣伝
し続けているとも主張した。

(CNN.co.jp 2009/3/26)


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