2010年7月16日金曜日

インドGSLVロケットの打ち上げ失敗原因はターボポンプ

※写真は、GSLV F01。ISRO Webサイトから転載

4月22日のエントリーでインドのGSLVロケットの打ち上げ失敗
について取り上げましたが、最近、Spaceflight Nowにその原因分
析についてのニュースが掲載されましたので抄訳の上、ご紹介します。

インド、ロケット打ち上げ失敗の原因を第三段のポンプと特定

今年4月にインド最強のロケットの打ち上げが失敗した原因について、インド
宇宙研究機関(ISRO)は、自国製の第三段エンジンのターボポンプの故障による
ものである事を7月9日に公表した。

GSLVロケットは、4月15日に、インド東海岸から打ち上げられたが、この
70.6百万ドル(64億円)のテスト打ち上げは、発射後5分で中断を余儀なくされた。

ISROは発表の中で、初飛行となったGSLVの国産の第三段エンジンは、
液体水素用ターボポンプの故障により、必要な推力を発生させる事ができなか
ったと述べている。

ISROは、問題の原因が2つの潜在的原因によるものである事を突き止めた
としている。

原因シナリオによれば、特定のシール場所の複数の箇所で、過度の圧力上昇と
高熱による疲労の為、ローターの固定具とタービンケースが断裂したものと思
われる。

第三段の点火シークエンスは離陸の294秒後に予定されていたが、ロケットか
らの加速データによればメインエンジンと2台の姿勢制御スラスターは2.2秒
間計画通りに作動している。

「しかしながら、メインエンジンの燃焼室への液体水素の供給が行われなかっ
た為に、推力の増加は予定通り行われなかった。」

液体水素用ターボポンプは、正常に起動され、一度は34,800回転のほぼ最高回
転数に達したが、その一秒以内に回転数が下がり始め、その後、完全に停止した。

そして、第三段の故障により、ロケットは制御不能のスピンに陥り、インド洋
上空の大気圏に突入した。

この打ち上げの主な目的が、新しい第三段のテストであったが、GSLVは、
通信/航法実験衛星を搭載していた。

また、ロケットの新しい航法システムと複合材料製のペイロードカバーは、
4月の打ち上げで正常に動作した事が確認されている。

インドは、2001年から2007年に打ち上げられた五機のGSLVの打ち上げに使
われたロシア製の第三段エンジンに換わる低温エンジン(液酸液水エンジン)を
開発している。

ロシア製の第三段エンジンは、2001年から2007年の打ち上げで、二回、小さな
異常を生じており、この結果、ペイロードが投入された軌道が、予定と若干異
なるものとなった。

2006年の打ち上げでは液体燃料エンジンのブースターが原因となって、発射直
後に劇的な爆発が発生している、

しかし、その他の三回の打ち上げは、完全に成功している。

ロシアは1990年代にインドに7基のエンジンを売却しており、その内、二基の
エンジンは、今もISROに保管されている。

ISROによれば、次の二回のGSLVの打ち上げでは、古いロシア製の第三
段が使用されるが、一年以内に国産第三段低温エンジンを使った打ち上げが計
画されている。

(Spaceflight Now 2010/07/09)



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2010年7月15日木曜日

イプシロンロケット開発フェーズへ

※CGは、JAXAサイトからの転載

はやぶさ2:開発検討 総事業費270億円

小惑星探査機「はやぶさ」の後継機「はやぶさ2」について、文部科学省は14
日、開発計画の検討に入った。計画では14年7月~15年に打ち上げ、H2A
ロケットによる打ち上げを含む総事業費は270億円。今後、文科省宇宙開発委
員会の部会で資金計画や科学的意義を審議、8月の来年度概算要求までに結論を
出す意向だ。

はやぶさ2は、はやぶさが到着した小惑星「イトカワ」より形成年代が古く、
有機物や含水鉱物に富むとされる小惑星「1999JU3」を目指す。小惑星
に物を衝突させて人工クレーターを作り地下物質を採取する。19年ごろ地球
に戻り採取物質を収めたカプセルを地上に投下する。

また、文科省は、06年に廃止された国産ロケットM5に代わる新型固体燃料
ロケットも開発する方針を示した。「イプシロン」と命名され、13年度に打
ち上げ予定。高さ24メートル、重さ91トンとM5より小型・軽量で、打ち
上げ準備期間もM5の42日から世界最短の7日間に短縮する。打ち上げ費も
M5の半減の38億円に抑え、小型科学衛星や将来の月探査機に使う。開発費
205億円。

(毎日新聞 2010/07/15)


はやぶさ2についても、折を見て取り上げたいと思いますが、それ
よりもイプシロンロケットの開発移行が宇宙開発委員会で決定され
る見込みです。それを受けて来年度予算で開発予算がつけば、本当
の開発着手となります。

現在、日本が打ち上げているロケットは、大型のH-2AとH-2B
しかなく、M-Vを退役させた為、小型の衛星を安価に打ち上げた
いというニーズに対応できませんでした。例えば、H-2Aを用い
た、先の「あかつき」の打ち上げでは、約500kgの衛星本体と同規
模の相乗り衛星を金星への軌道に投入しています。相乗りをする側
にとっては、打ち上げ費用の節約ですが、メインペイロードにとっ
ては、無駄な打ち上げ能力の為に、コスト高になっている事を意味
します。

そこで、H-2Aに比べ数分の一の打ち上げ能力を持つロケットを
H-2AのSRB-AとM-Vの二段目、三段目を組み合わせる事
で安価に開発すると同時に、M-Vで実現できていなかった高い運
用性と即応力を実現したロケットを開発しようという事になったも
のです。

イプシロンロケットは、M-Vに続き、戦後、日本が全く独自に開
発した固体燃料推進ロケットの系譜を受け継ぐロケットであり、こ
れまで開発された技術を受け継ぐ事も目的の一つとなっています。

先代の固体燃料ロケットであるM-Vが、ペイロードの拡大を主た
る目標として開発されたのに対し、今回のイプシロンロケットでは、
ペイロードこそ三分の二になりますが、コスト、即応力、運用性で、
世界最高水準を目指す事になります。

具体的には、打ち上げコストは、38億円に抑えられ、打ち上げ準備
に要する期間も7日に短縮されます。また、打ち上げ直前まで衛星
へのアクセスと調整が可能とされています。更に、従来の打ち上げ
では多数の打ち上げ要員が必要でしたが、これも、大幅に簡素化さ
れ、ロケット組み込みの自己診断機能と相まって、ノートパソコン
程度の簡素なシステムでも打ち上げ管制が可能となる見込みです。

この簡易管制システムの機能を利用して、移動射点にも対応する事
で、従来限定されてきた打ち上げ期間の制約を外し、機動的な打ち
上げを可能とする事も開発目標とされています。

ユニークなのは、固体燃料ロケットの宿命である軌道投入精度の粗
さを改善する為、オプションで、第四段目(?)に液体燃料推進系を
持つ事です。これによって、高い軌道投入精度を必要とするペイロ
ードを打ち上げる事も可能になります。

打ち上げ場所は、まだ決定されていませんが、従来、ISASのロケッ
トが打ち上げられていた内之浦宇宙空間観測所が有力とされています。

なお、イプシロンロケットは、一段目にSRB-Aを採用した為に
法制上陸上輸送が不可能であり、内之浦での打ち上げは困難とされ
ていましたが、この問題は既に解決したと言われています。(どの
様に解決されたかは不明です。)

イプシロンロケットの開発が順調に進めば、初打ち上げは、平成25
(2013)年度に行われる事とされています。

一見、バラ色のイプシロン計画ですが、弱点が無い訳ではありません。
一番目に付くのは、38億円という打ち上げ費用です。当初は打ち
上げ費用は約30億円という触れ込みでしたが、コストを積み上げ
ると25%近い上昇となってしまった様です。M-Vと比較すれば、
半分になったと言うものの、このコストでは、国際的な打ち上げ市
場での競争力はありません。競争相手となるFalcon-1はペイロード
こそイプシロンの約半分ですが、コストは約6億円と単位ペイロー
ド当たりの単価で三分の一の数字を実現しています。

Falconは、商業打ち上げサービスとして、極めて安価な打ち上げ費
用を実現する為に、ロケット本体以外にも打ち上げ施設、発射管制
を含め、ぎりぎりまでトータルコストを絞り込んだ全体設計が行わ
れています。これが民間企業の持つ商売の厳しさだと言えばそれま
でですが、イプシロンも元々は同様のコンセプトを持っていた筈で
す。それにしては、コスト削りこみが不足しているのではと懸念せ
ざるを得ないのです。


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2010年7月14日水曜日

岡田発言 「共通の歴史教科書」を主張したければ外相辞任を!

※写真は、産経新聞Webサイトより転載

「理想は共通の歴史教科書」 岡田外相が韓国紙に

14日付の韓国紙、東亜日報と中央日報は、岡田克也外相との書面インタビュ
ーの内容を掲載し、岡田外相が「将来のことだが、日韓共通の歴史教科書をつ
くることが理想的だ」とあらためて述べたと報じた。

両紙によると、岡田外相は、今年が植民地支配が始まった日韓併合100年に
当たることに関連し「韓国の人々にとって国を奪われ、民族の誇りを深く傷つ
けられた(出来事)」とした。2月に訪韓した際の日韓外相会談後の共同記者
会見でも、同様の見解を示していた。

また「日韓両国は政治、経済、文化だけでなく、安全保障や防衛分野でも協力
を考えるべき段階だ」と指摘。日韓経済連携協定(EPA)締結交渉の再開の
必要性も強調したという。(共同)

(iza 2010/07/14)


良く引用される例ですが、米国では、ジョージ・ワシントンは英雄
であっても、英国では、植民地の叛乱分子でしかありません。それ
と同様に、韓国人には英雄であっても、初代首相であり実は日韓併
合にも反対していた明治の元勲、伊藤博文を暗殺した安重根を英雄
と見る事ができる日本人は少ないと思います。

岡田外相の「理想」とする日韓共通の歴史教科書がもし、出来ると
すれば、韓国の歴史観に基づくものしか、かの国が認めないのは、
今まで数年に亘って行われ、日本側の歴史学者が「不毛」としか評
価しなかった日韓歴史共同研究からも明らかであろうと思います。
そして、その場合、日本人は、安重根を英雄と見る事を強制される
事になります。

岡田外相がどういうつもりで、「理想は共通の歴史教科書」と述べ
たのかは知りませんが、もし、韓国人の歴史観について無知故にそ
う述べたのであれば、心情左翼の不勉強でしかありません。しかし、
韓国の歴史観を良く知った上で、そう言ったのだとすれば、反日主
義者、売国奴の謗(そし)りは、免れないでしょう。

先に岡田外相は、国会での質問に対し、竹島の現状を韓国によって
「不法占拠」状態にあると発言する事を断固拒否した事があります。

その様に、岡田外相が一般国民の常識からはよほど偏向した思想信
条を持っている事を考えれば、今回の発言は韓国の侮日反日歴史観
を良く理解した上での発言であり、日本の国益を守る事をその職務
とする外務大臣の職責には誠に不適当な人物である事を明らかにし
たと言わざるを得ないのです。

岡田外相がこれ以上、自己の主義主張を日本の外務大臣として外国
に対し披瀝すれば、日本国にとって害しかなさないのは明らかです。
岡田外相は即刻、外務大臣の職から辞任すべきであると強く主張し
たいと思います。

※日韓歴史共同研究と岡田外相の竹島認識については、以下の記事
を参照して下さい。

【日韓歴史研究】「共同研究は不毛」 共通認識形成にはほど遠く(2010/3/23)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100323/plc1003231938012-n1.htm

竹島「不法占拠」と言わない岡田外相(2010/4/04)
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100404/edc1004040115000-n1.htm



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2010年7月13日火曜日

韓国哨戒艦撃沈事件 国連安保理議長声明による幕引き

※引き揚げられた「天安」の船体。中央日報Webサイトから転載

哨戒艦撃沈事件 国連安保理 北非難の議長声明採択

韓国哨戒艦撃沈事件をめぐって協議を続けていた国連安全保障理事会は9日
(日本時間同日深夜)、北朝鮮を事実上非難する議長声明を全会一致で採択した。

韓国政府が当初求めていた新たな制裁決議からは数段弱い結論となったものの、
中国が一貫して北朝鮮への厳しい対応に難色を見せてきた中での非難声明採択
は、連携して交渉に当たった日米韓にとって一定の外交的勝利といえそうだ。

事件の実質協議を行っていた5常任理事国と日本、韓国が8日、声明案で合意
に達し、ただちに緊急会合が招集されて全15理事国に同案が配布されていた。
11項目からなる声明は、まず「哨戒艦沈没につながった攻撃を非難する」と
したものの、攻撃の主体は明示せず北朝鮮を名指しする表現は避けた。その一
方で、事件を北朝鮮の攻撃と結論づけた、韓国などの合同調査団の調査結果に
言及し、安保理として「深い懸念」を表明、間接的表現ながら北朝鮮を非難した。

また、事件に関して「無関係」とする北朝鮮の主張についても「留意する」と
の表現で触れ、最低限のバランスをとった。問題の平和的解決の重要性も強調、
北朝鮮を刺激するような強い対応に難色を示してきた中国への配慮を示した。

合意後、ライス米国連大使は「明確で適切な内容の声明案がまとまった」と評
価。日本の高須幸雄国連大使も「われわれの求めた要素が含まれ、韓国も納得
する内容だ」と述べた。

(産経新聞 2010/07/09)


私は5月20日のエントリーで次の様に書きました。

「最終的に北朝鮮を非難する安保理議長声明が気が抜けたタイミング
で行われる程度で、幕引きが行われるのではないかと思われます。」

韓国哨戒艦沈没 中国の非協力で韓国民の恨はどこへ行く
http://ysaki777.iza.ne.jp/blog/entry/1612569/

その予想通りと言うべきでしょうか、それから一ヶ月半を経過して
漸く出された安保理議長声明は何とも気の抜けたものになってしま
いました。

北朝鮮を名指しで非難する事もなく、北朝鮮の言い分にも耳を傾け
るなど休戦協定違反を指摘する事もない、安保理決議でもない単な
る議長声明でしかありません。

これに対する北朝鮮の反応は、「われわれは、議長声明が『朝鮮半
島の懸案問題について直接対話と交渉を再開し、平和的に解決する
ことを奨励する』とした点に留意する」とし「6カ国協議を通して
平和協定と非核化実現に一貫して努力していく」という他人事の様
な反応を朝鮮中央通信が伝えています。北朝鮮にとっては、勝利以
外の何者でもないでしょう。

一国の軍艦が、休戦ラインの自国側で、予告なく、一方的に攻撃さ
れ、46名の死者を出した割には、余りにも軽い扱いであり、亡く
なった方には非常に申し訳ない言い方ですが、「犬死」以外の何者
でも無い様に思えてなりません。これでは、大した報復もできずに
泣き寝入りとなる死者家族の恨だけが残る事になりそうです。上記
のエントリーでは、韓国民の恨だけが残ると書いたのですが、韓国
民は北朝鮮を非難する事すら恐れているように見えます。(その割
には、報復される事のない日本に対する攻撃には熱心です。)

この様な扱いになった理由は明らかです。P5(国連安保理常任理事
国)の一角を占める中国が同盟国たる北朝鮮を擁護したからに他な
りません。その上、当事国である韓国も、本音の処では、北朝鮮と
戦争状態に陥る事、ひいては、崩壊した北朝鮮を再建する義務を負
うのを避けたからであると言えます。韓国内の国論が北朝鮮を支持
する進歩派の影響もあって統一されていると言えなかった事も韓国
の立場を弱くしたと言えます。

元々、北朝鮮との対立を避けたがっていた韓国の李政権は、統一
地方選に現れた事を大きくしたくないと言う世論を踏まえ、取敢え
ず面子が立てばそれで良いという方針をとっていた様に見えます。
また、韓国のパートナーである米国も、それ以上を望みませんでした。
米国はイランとの緊張が高まる中で、北朝鮮との緊張を高める事に
積極的ではありませんでした。(個人的には、そういう米国が動き難
い時期を選び、イランと北朝鮮は結託して米国を挑発している気が
します。)
テロ支援国再指定についても、北朝鮮はテロを支援しているのでは
なく、テロを実行した国であるからという屁理屈で回避しています。

北朝鮮は、テロ行為に加担した事を褒められこそしませんでしたが
名指しで非難もされませんでした。これはある意味で、北朝鮮が軍
事力を使った火遊びを続ける事を奨励している様なものです。
将来、北朝鮮が、核ミサイルを他国に打ち込む様な事態に至った時、
なぜ、それまでに火遊びを止めさせなかったのかと問われる事にな
る事は、確実であり、六ヶ国協議参加国と安保理は、その道徳性の
欠如と欺瞞性を人道の名の下に非難される事になると思われます。
とはいえ、所詮、外交は国益のぶつかる場所であり、もともと、道
徳性を問われる場所ではないのですが、それにしても、今回の結末
は、酷いものと言う印象を拭えません。

強いて、犠牲者の霊に捧げるとすれば、これによって韓国海軍の対
潜戦闘に関する軍備や装備が整備され、将来、北朝鮮が再び、潜水
艦で韓国海軍に挑戦して来た時、それを受け止められる準備を行う
上での礎(いしずえ)になったという点は上げられると思うのです。


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2010年7月12日月曜日

[参議院選挙] ねじれ国会成立!

※写真は、選挙結果に肩を落とす菅総理。産経新聞Webサイトから転載

【参院選】首相、大敗も内閣改造などは行わず 枝野幹事長も続投方針

第22回参院選は12日朝、改選121議席(選挙区73、比例代表48)の
当選者がすべて確定した。民主党は選挙区28、比例16の44議席で、改選
54から大きく後退した。非改選を含めた与党系議席は参院過半数122を
12議席も割り込んだ。

党執行部への責任論がくすぶるが、続投を表明した菅直人首相は内閣改造など
は行わず、現体制のままで難局を乗り切りたい考え。

落選した千葉景子法相や、選挙大敗の責任を取る立場の枝野幸男幹事長も、当
面は続投させる方針だ。

改選38の自民党は選挙区39、比例12の51議席を獲得し、改選第1党に
なった。みんなの党は改選0から10議席に躍進した。公明党は改選11から
2議席を減らし9議席。共産党は1議席減の3議席、社民党も1減の2議席だ
った。たちあがれ日本と新党改革はそれぞれ1議席を確保。国民新党は改選3
議席を失った。

民主党大敗を受けて、国会で「衆参ねじれ」が生じる。与党は本格的な国会論
戦が始まれば野党の厳しい攻勢にさらされる。菅政権は現体制を維持し、法案
ごとに野党の協力を得る「部分連合」を模索する構えだが、事態打開につなが
る見通しはたっていない。

総務省発表の投票率(確定)は選挙区、比例代表ともに57・92%。平成19
年の前回参院選に比べ、選挙区で0・72ポイント、比例代表で0・71ポイ
ント下回った。

(産経新聞 2010/07/12)


自民党をはじめとする保守政党支持の皆さん、おめでとうございま
す。そして、民主党支持の皆さん、残念でした。

選挙前に民主党の不振を伝える新聞報道をそのまま信じるのも愚か
と思っていましたが、実態は、新聞報道以上の結果となりました。

但し、自民党が復調したというよりも、民主党が政権党として未熟
さに敗因があったと言えるのではないかと思います。
選挙区選挙での一人区で、自民が圧勝したのが、自民党が改選第一
党になった第一の理由ですが、これは、民主党及び菅政権のマスコ
ミ操縦が稚拙であったとしか言い様がありません。

それは、予算委員会での野党との質疑を行わず国会を閉会した事を
はじめ、マスコミのぶら下がり取材も拒否してボロを出さない様に
勤めた事が逆効果になってしまった点にも現れています。

民主党は、非常にタイミングの良い政権交代で、V字型の支持率回
復を成し遂げましたが、しなくとも良い消費税を巡る発言でИ(イー)
字型に支持を落としてしまいました。逆に自民党は政権党であった
際にはマスコミの集中砲火を浴びていたものが、一転、殆ど報道さ
れる事のない状態となってしまいましたが、これが逆に失点の無さ
に結びつきました。

実際比例区の得票で比べて見ると、自民党も、民主党の失敗を笑っ
ていられる結果ではありません。寧ろ、自民党の長期低落傾向は継
続しているとでも言うべき結果であり、選挙区での優勢は、参議院
選挙の区割りと議席配分の不平等さに起因しているとさえ言えるの
です。

開票99% 比例得票数
          得票数      得票率  前回からの減少(割合)
民主党     18,258,978    31.5%   △5,042,970 (21.6%減)
自民党     13,955,350    24.1%   △2,607,095 (15.7%減)
みんなの党    7,863,504    13.6%
公明党       7,572,040    13.1%    △193,781 (2.5%減)
共産党       3,535,346     6.1%    △880,296 (19.9%減)
社民党       2,215,683     3.8%    △427,496 (16.2%減)
たちあがれ日本 1,221,748     2.1%
新党改革     1,159,878     2.0%
国民新党      991,887    1.7%    △273,795 (21.6%減)

ちなみに、前回の比例区得票数は以下の通りです。
これで見ると、前回、民主党に向けて吹いた風は、今回はみんなの党
に集中して吹いた事が良く判ります。

前回 2007年参議院選挙 比例得票数
          得票数 得票率
民主党 23,301,948 39.4%
自民党 16,562,445 28.0%
公明党 7,765,821 13.1%
共産党 4,415,642 7.4%
社民党 2,643,179 4.4%
新党日本 1,773,333 3.0%
国民新党 1,265,682 2.1%

いずれにせよ、今回の選挙で、ねじれ国会が実現しました。民主党
は、衆議院で、三分の二を持っていないので、参議院の法案否決に
対して、再可決によって法案を成立させる事ができません。

従って、衆議院の優位が憲法上確保されている予算案を除き、与野
党が対立する法案を成立させる事が出来ません。しかも、今後、衆
議院の解散を行わなければ、三年間は国政選挙がありません。三年
間、法案が通す事が出来なければ、如何に民主党が、野党の責任を
主張しても、次回の衆議院選挙で勝利が出来る訳もありません。

必然的に連立与党を組み替えるしかなく、その標的は、今回の選挙
で手堅く勢力を維持した公明党や躍進したみんなの党が対象となる
ものと思われます。その中でも、民主党との政策的な親和性と自民
との連立で政権党である事の旨味を知っている公明党が連立政権に
参加する可能性が高いのかも知れません。

取敢えず、夫婦別姓と外国人地方参政権付与及び人権擁護法案の3
法案については、懸念されていた民主党の強行採決で法案成立とい
う可能性は少なくなりましたが、連立与党の組み換えの如何によっ
ては、法案が成立する可能性が再浮上することも考えられます。

民主主義は期間を区切った独裁制度と嘯くプロ市民出身の首相が引
き続き政権を握っている点を勘案すれば、今後共、民主党が衆参両
院で、多数を失うまで、粘り強く監視を続けるべきであろうと考え
る次第です。


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