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2010年8月18日水曜日

中国の軍事力 2010 全体要約



底なしの中国軍拡に米不安 対中配慮も忘れず 対中年次報告発表

米国防総省は今回の中国軍事報告書で、空母建造など増強を続ける中国の軍拡
への懸念を強く示す一方、オバマ米政権の対中配慮も同時ににじませた。
米国の懸念を裏付けるように、米海軍は原子力空母ジョージ・ワシントンを南
シナ海に派遣するなど、ベトナムとの関係を強化。パラセル(中国名・西沙)
諸島などの領有権をめぐり同国と対立する中国を牽制(けんせい)している。
領有権に関連して今回の報告書で特徴的なのは、軍事力というハードパワーを
背景に、「外交上の利益を得るための軍事力活用の選択肢が増えつつある」点
を挙げたことだ。これは東シナ海の大陸棚開発のほか、中国による尖閣諸島へ
の領有権主張や南シナ海での領有権争いで、優位な外交を展開する能力を向上
させていることを示唆している。
また、中国軍の活動範囲については、昨年言及した「西太平洋地域」をさらに
掘り下げ、「第2列島線を越えた海上作戦」や「台湾をはるかに越えたアジア
地域における軍事作戦の展開能力」を明記し、警鐘を鳴らした。

米国のシンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主
任研究員は16日、産経新聞に対し、「多弾頭の新たな陸上移動式ICBM
(大陸間弾道ミサイル)の開発に言及していることは注目に値する。5隻の攻
撃型原子力潜水艦(SSN)の建造にも触れているが、これは日本のシーレー
ン防衛にとって大きな脅威だ」と指摘した。

その一方で、昨年の報告書にはあった表現が削除されて表現が和らげられるな
ど、中国への配慮をにじませてもいる。
たとえば、台湾海峡について昨年の報告書は、「中国が開発中の短距離ミサイ
ルが台湾に軍事的圧力を加え、脅威となっている」と表現していた。
これに対し、今年の報告書からは「圧力、脅威」といった語句が消えた。穏や
かな言い回しを通じて中国への配慮を示すことを狙った“オバマ色”に腐心し
た結果とみられる。
報告書は今年3月に発表する予定だったが、延期され続けたため、議会共和党
が中国への配慮があるのではないかと批判していた。

(産経新聞 2010/08/18)


米国国防総省が例年発表している「中国の軍事力」が、8月16日に
発表になりました。全体の概要は、上の記事で書かれている通り
ですが、原文を見る事も必要なので、全体要約と各章毎の要約、
コラムの一部を抄訳してみる事にします。


中国の軍事力 2010

全体要約

過去30年に亘り、中国は経済的な成長と発展の面で大きく前進した。それに
より、より多くの中国人がより高い生活水準を達成できる様になり、また、中
国の国際的な存在感を増大させた。これらの経済面での業績は、科学技術面で
の発展と相まって、中国が軍事面での広範囲な変革に着手する事も可能とした。
中国の軍事力近代化のペースと範囲は過去10年間で増加しており、中国の軍
隊が、国際的な公共財として提供される事を可能とすると同時に、外交的な優
位や、紛争を自国に優位に解決する事に使用するという選択の可能性も拡大し
ている。

2010年以降、中国は、人民解放軍の役割と任務を自国に直接的に接続する
領域の外に展開するという新しい段階に入っている。これらの任務及び関連す
る能力によって、人民解放軍が国際的な平和維持活動や人道援助、災害救助や
海賊対策に貢献する事を可能としている。合衆国は、これらの貢献を認め、歓
迎している。しかし、それ以外の投資により、人民解放軍は、アクセス拒否戦
略や海域使用拒否戦略を追求する事も可能としている。また、現時点では、遠
隔地に兵力を展開し維持する能力は限られたものでしかないものの、人民解放
軍の遠距離兵力展開能力を改善する事を目的とした投資が行われている様に見
える。2010年の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)では、「中国は、
改良された中距離弾道弾と巡航ミサイルや、改良された兵器を搭載した新型攻
撃型潜水艦、新型の長射程対空ミサイルシステム、電子戦システム及びコンピ
ュータネットワーク攻撃能力、改良された戦闘機、衛星攻撃システムの開発と
展開を図っている」と記載されている。台湾海峡を跨ぐ経済発展と文化的紐帯
の強化は2009年も大きく前進した。これらの肯定的な傾向にも関わらず、
台湾に対抗する中国の軍事力建設は継続された。紛争となった場合に発生する
と考えられる合衆国の台湾に対する支援を阻止、遅延、拒否する事で、台湾独
立を阻止したり北京側の条件で紛争を解決させるよう台湾に影響を与える能力
を人民解放軍は開発している。台湾海峡を跨ぐ軍事力のバランスは、引き続き
大陸に有利に傾いてきている。

人民解放軍は、中国の軍事面や安全保障面での透明性に関して限定的な改善を
みせた。しかし、どの様に拡張された軍事力を使用していくのかを含め、多く
の不確実性が残っている。中国の軍事力と安全保障問題での限られた透明性は、
不確実性を強化し、誤解と誤算への可能性を増大させる。

オバマ大統領が述べた様に、「合衆国と中国の関係は意見の相違と困難が無い
訳ではない。しかし、我々が敵でなければならないという運命が定められてい
る訳でもない」。維持可能で、信頼できる合衆国と中国の軍事部門同士の関係
は、不信を減らし、相互理解と広範な協力を深める事をサポートする。中国が
再三に亘り、軍事部門同士の意見交換を中断した事は、この努力を妨げるもの
である。国防総省は、アジアや世界の共通の安全保障面での挑戦について、中
国が建設的役割を演ずるのを奨励する為に、この相互交流の機会を利用し続け
る。それと同時に、国防総省には、中国の軍事力を監視し、対決を阻止する特
別な責務がある。軍事的姿勢、兵力配置、可能性開発、同盟やパートナーシッ
プを強化する行動を通じて、国防総省は、アジア太平洋地域で、平和と安定を
維持するという合衆国の意思と能力を示していく。

(Department of Defence 2010/08/16)


Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


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2010年7月1日木曜日

冷戦終了は、諜報活動の終了は意味しない

※ロシアのスパイ容疑者。Reuter Webサイトより転載

外交問題に発展せず ロシアのスパイ訴追で米大統領報道官

ギブズ米大統領報道官は29日の定例記者会見で、連邦捜査局(FBI)がロ
シアのスパイとして11人を訴追した事件について「(米露2国間の)関係に
影響を及ぼすとは思わない」と述べ、外交問題に発展する可能性を否定した。

ギブズ氏は、オバマ政権発足後に両国関係は、新たな核軍縮条約「新START」
に調印するなど大きく改善したと指摘し、事件は「司法機関が適正に処理した」
と強調。オバマ大統領は事件の概要について事前に説明を受けていたという。

米国務省のゴードン次官補(欧州・ユーラシア担当)は「情報機関を使った古
い企ての名残があったからといって、誰も大きなショックは受けないだろう」
と指摘し、米露間で依然としてスパイ活動が続いていることを暗に認めた上で
「さらに信頼できる関係に向かっている」と強調した。

(産経新聞 2010/06/30)

露「スパイ団」摘発 核情報など収集か

米司法省は28日、ロシアのスパイとして米国内で核弾頭の開発計画情報など
を収集していたとして、男女の容疑者10人を逮捕し、1人の行方を追ってい
ると発表した。

11人は訴追されており、司法省はロシア対外情報局(SVR)のスパイだと
指摘。小型核弾頭の開発情報収集や、米中央情報局(CIA)への就職希望者
の背後関係調査などを行った疑いがあるとしている。

容疑が事実なら、冷戦終結から20年が経過した後も、映画さながらのスパイ
活動が続いていたことになる。米露関係に微妙な影を落としそうだ。

司法省によると、連邦捜査局(FBI)が2009年、ロシア側からメンバー
に送られた「米国の政策決定人脈に食い込み、情報を送れ」との暗号文を解読。
捜査の結果、27日にニューヨーク州やバージニア州で一斉に10人を逮捕した。
マネーロンダリング(資金洗浄)に関与した疑いももたれている。

訴追記録や米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、逮捕された10
人はカップル5組。10年以上前からニューヨーク郊外やボストン、シアトル
などに偽の身元で居住し、地域に溶け込んでいた。FBIは7年以上前から監
視してきたという。

(産経新聞 2010/06/30)


ロシアのメドベージェフ大統領がカナダで行われたサミットからの
帰国の途についたと同時に発表されたのが、今回の「スパイ団」の摘
発です。

ソ連崩壊による混乱で、ロシアの米国に対する諜報活動は二つの要
因で活動レベルが低下しました。その一つは、共産主義イデオロギ
ーに対する信頼の崩壊であり、二つ目は、諜報活動予算の不足です。

西側諸国の社会民主主義勢力や進歩的知識人の中には、マルクス・
レーニン主義を信奉する共産党シンパが、多数存在したのですが、
ソ連の崩壊により、ロシア自身が共産主義を放棄した事でロシアを
奉じる意味がなくなりました。これによりロシアの諜報活動の基盤
が大きく損なわれる事になりました。それに輪をかけたのが、ロシ
ア連邦発足後の政治的経済的混乱です。その中で、諜報組織そのも
のが改廃され大混乱を来たしました。当然ながら諜報活動に使われ
る予算は、大幅に不足したといわれています。イデオロギーに依拠
した諜報活動ができなければ、金銭が媒介した諜報活動が必要にな
りますが、予算不足ではそれも不可能になります。

今回摘発されたロシアのスパイ組織は、10年以上前から活動を行っ
ていたようですが、それは、くしくもプーチンの台頭と軌(き)を一
(いつ)にしています。ロシアの国内の混乱を収束させ、資源輸出に
よる経済発展を軌道に乗せたのはプーチンの手腕ですが、自身が情
報機関KGBの出身であり、政権にKGB出身者を多数登用した事
もあり、諜報機関の組織立て直しが行われ、予算もそれ以前と比べ
相当に潤沢になったと考えられます。その様な背景の中で、今回の
スパイ組織が米国に設置されたのではないかと思われます。

今回のロシアのスパイ訴追に関し米大統領報道官は、外交問題への
発展を否定しましたが、それもその筈です。過去7年間、FBIは
スパイ組織を監視していたと言いますが、それが監視だけで留まっ
ていたという理由はありません。常識的に考えれば、協力者として
接近したり、逆スパイを潜入させたりで、そのスパイ組織を通じ、
本物、偽者を問わず、米国がロシアに、知らせたい情報を流してい
たものと思われるのです。今回の摘発は、まさにそのスパイ組織の
利用価値がなくなったからこそ、行われたものであると考えられます。

今回の摘発でロシアの対外情報局(SVR)は、このスパイ組織か
ら上がってきていた全ての情報の真偽とその情報が流れた意図につ
いて、詳細な分析を行わなければならないなりました。恐らくは、
一時的にではあっても、スパイ団摘発によって対外情報局は半身不
随になる筈です。その意味では、この事件の一番の火の粉は、対外
情報局に降りかかったと言えそうです。恐らくは、それも米国は計
算した上で公表したと考えられます。

こういった外国による諜報活動は、日本にとっても無縁な話ではあ
りません。日本はスパイ防止法もないスパイ天国であるのは周知の
事実です。警察や自衛隊はもとより公安調査庁と言った公安組織の
内部情報すら、中国や北朝鮮には、筒抜けであると言われています。
その意味で、日本は、「情報に関する透明性を持った国」であると
言われます。これは当然の事ながらほめ言葉ではありません。情報
管理の出来ない無責任国家という評価なのです。元CIA長官であ
るゲーツ国防長官が何故あれ程、F-22ラプターの日本への輸出に反
対したのかも、そう考えれば容易に理解できます。

今回の事件は、いみじくも、冷戦後も活発に続く、各国の諜報活動
の実態の一端を赤裸々に見せてくれたニュースであり日本にとって
も対岸の火事ではないと思われるのです。


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2010年5月13日木曜日

北朝鮮をテロ支援国に再指定すべし

タイ押収の北朝鮮密輸武器、受け手は過激組織のハマスとヒズボラ

イスラエル外務省は11日、昨年12月にバンコクの空港で貨物機から押収さ
れた大量の北朝鮮の武器は、シリア経由で、レバノンのイスラム教シーア派組
織ヒズボラ、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスに届けられる予定だっ
たと声明で明らかにした。

これら武器の最終的な受け取り手について、政府レベルの公式見解が出るのは
初めて。イスラエルのリーベルマン外相が11日、東京で鳩山由紀夫首相と会
談した際に語った内容としている。タイ政府から国連安全保障理事会の北朝鮮
制裁委員会に提出された報告書では、貨物機の最終目的地はイランの空港とさ
れていたが、受け取り手については明らかになっていなかった。

タイ政府の報告書によると、押収されたのはロケットランチャーの砲身や砲弾、
対戦車ロケット砲RPG7など計約36トン。貨物機の出発地は平壌、最終目
的地はテヘランにある「メヘラバード空港」となっていた。

(産経新聞 2010/05/10)


ブッシュ大統領が「悪の枢軸」との対決を2002年に叫んだ時、それ
を馬鹿にする論調が米国の内外で盛んであった事を覚えています。
勿論、日本もその例外ではありませんでした。ブッシュ政権をシニ
カルに見る向きが殆どであり、イラク戦争とその後のイラク再建が
イスラム過激派の抵抗から思わしくない事もあって、現在でも同じ
認識が主流であると思います。

しかし、そういった悪の枢軸に対するシニカルな見方は正しかった
のでしょうか。事実は、核兵器製造技術やウラン濃縮技術、更には、
ミサイル等の武器製造技術や武器そのものの不正輸出のネットワー
クが悪の枢軸(北朝鮮とイラン)を中心に広がっている事を示してい
ます。

北朝鮮は、パキスタンのカーン博士からウラン濃縮技術や原子爆弾
の製造ノウハウを取得しましたが、習得した技術をイランに輸出し
たと考えられています。それに加えて北朝鮮は、ウラン濃縮施設を
地下に設置する技術や建設ノウハウの移転も行っている模様です。

これに加えて、イランは、各種のミサイル生産技術も北朝鮮やロシ
ア、中国から取得しています。

北朝鮮は、イラン以外にシリアに対しても、核燃料製造プラントを
輸出しましたが、この建設はイスラエルの知る所となり、空爆によ
りプラントは破壊されています。

今回は、36トンの武器がレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボ
ラ、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスに空輸されるのが阻
止された訳ですが、通常、こういった武器の輸出は海路で行われて
います。(その点で、今回空輸しようとしたのは、緊急に武器が必
要とされる事態が予定されていたのかも知れません。)公式の貿易
量は微々たる状態であるにも関わらず、北朝鮮船籍の輸送船が、何
度もソマリアの海賊に襲われたりしているのも、こういった禁制品
の輸出に従事しているからであると考えられます。

ブッシュ政権は、2008年に六ヶ国協議での外交的成果を急ぐあまり、
北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除してしまい、日本でも大きな
失望を与えましたが、それが誤りであった事は明らかです。
今回の韓国哨戒艦の沈没事件でも北朝鮮の関与がますます濃くなっ
て来ています。米国は改めて北朝鮮をテロ支援国に指定するべきで
あると考える次第です。


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2009年11月11日水曜日

Inflexible North Korea. オバマの訪日スケジュール変更に対応できなかった北朝鮮


※交戦した韓国と北朝鮮の警備艇。
上は韓国のチャムスリ型戦闘艇。下は北朝鮮は上海型哨戒艇(但し、中国の同型艦)。
「日本周辺国の軍事兵器」(http://www6.atwiki.jp/namacha/)から転載。

黄海で南北海軍が銃撃戦

朝鮮半島西方の黄海上で2009年11月10日午前11時半ごろ、北朝鮮の
警備艇が海上の軍事境界線である北方限界線(NLL)を越えて南下し、阻止
しようとした韓国海軍艦艇との間で銃撃戦となった。北朝鮮警備艇は破損し、
北朝鮮側に戻った。韓国側に死傷者はいなかった。
韓国合同参謀本部が発表した。南北艦艇間で銃撃戦が起きたのは2002年6
月以来。米国が核問題で北朝鮮との対話に乗りだそうとしているタイミングで
の北朝鮮による挑発とみられ、対話の行方にも影響を与える可能性がある。
韓国政府関係者によると、北朝鮮の警備艇がNLLを越えて韓国側に侵犯、韓
国海軍が警告射撃した。しかし、北朝鮮の警備艇が応射し、韓国側も応戦した
という。同関係者は「状況を注視している」と語った。
聯合ニュースによると、現場海域では当時、韓国の漁船9隻が航行していたが、
安全海域への移動措置を取った。
NLL近海では1999年と02年に北朝鮮と韓国の艦艇による銃撃戦が起き、
双方に多数の死者が出ている。

(時事通信 2009/11/11)


北朝鮮は、独裁国家ですから、指導者の一言で、緊張を激化させる
事も緩和する事も容易にできます。特に、軍に対しては指揮権を一
手に握っている訳ですから、どの軍を、どの程度動かすか、正に金
正日の手の中にあると言っても過言ではありません。

今回の海上での軍事衝突ですが、北朝鮮の警備艇がNLL(北方限
界線)を越えて南下したのを、韓国の警備艇に見咎められ警告射撃
を受けたのに対し、北側が応戦したのが原因になっています。北朝
鮮の警備艇は、南からの警告射撃に対し、自艇の位置を確認した上
で避退しても良かったのに、わざわざ応戦したのは、応戦許可を得
ていた(あるいは、応戦を指示されていた)からに他なりません。つ
まり、北朝鮮が、軍事的に警備艇同士が砲火を交わす程度にエスカ
レーションする事件を望んだから、今回の事件が発生した事になり
ます。

本来の予定であれば、11日にオバマ大統領は、日本に到着するスケ
ジュールになっていました。日本にエア・フォース・ワンが到着し
て最初に機内に運び込まれる新聞の一面に、南北艦艇銃撃戦のヘッ
ドラインが踊っている筈だったのです。しかしながら、オバマ大統
領の訪日スケジュールが一日ずれた事。また、北朝鮮内でそれへの
対応が取れず、当初予定のスケジュールで銃撃戦が発生した事で、
オバマ大統領は、緊迫した報告を、日本で聞く代わりに、CIAの情
報官から冷静な報告を得られた事になります。

この様に考えれば、今回の事件が、北朝鮮が期待する米朝二ヶ国協
議に積極的でないオバマ大統領への心理的圧迫を目的にした政治的
な意図の下に行われた事は明白である様に思われるのです。

それにしても、オバマ大統領の訪日スケジュールが一日伸びたので
あれば、それに応じて事件発生を一日延ばせば、意図通りの政治的
効果を得られた筈であり、それに対応できなかった北朝鮮の体制の
柔軟性の欠如を露呈した事件であるとも言えるのかも知れません。


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2009年10月14日水曜日

Can Obama Overcome the Nobel Prize. オバマ大統領のノーベル平和賞受賞は「位打ち」 

※写真はオバマ大統領のノーベル平和賞受賞を報じる朝日新聞。

ノーベル平和賞、重荷にも=国益守る判断でオバマ大統領-米紙

米ワシントン・ポスト紙(電子版)は10日までに、オバマ大統領のノーベル
平和賞受賞決定について、名声を得たものの、賞に縛られ、米国の国益を守る
判断を下す際に、重荷になるのではないかとの見方を伝えた。
同紙はノーベル平和賞には二つの種類があり、一つは功績を残した者に、もう
一つは平和実現の大志を抱く者に与えられると指摘。「オバマ大統領は後者だ」
としている。
その上で、「オバマ大統領は米国の国益を守らなければならないときに、受賞
が重荷になっていることに気付くかもしれない」との見解を示した。一例とし
て、イランの核問題が最終的に外交手段による解決に至らず、軍事力行使の判
断が求められる事態に陥った場合、平和賞受賞者がイランへの攻撃を認めるこ
とができるだろうかと結んでいる。

(時事通信 2009/10/10)


今ではあまり使われなくなった言葉に「位打ち」というのがありま
す。「位打ち」という言葉の意味は、「相手の能力に見合わないほ
どに出世させて自滅を誘うという方法」のことです。

オバマ大統領は自分をリンカーンに擬える事を好むと伝えられます。
また、高校時代の彼の性格は非常に自己中心的であった事が知られ
ています。

オバマ大統領が、高校時代から性格を一変させ人格者に変身したの
でしょうか?それとも、出世を計る為に表面的なスタイルを変更し
ただけなのでしょうか。

大統領就任前は、非常にラジカルな投票行動で知られた上院議員で
あったオバマ氏が大統領になったとたんに穏健中庸を説くのでは、
一体上院議員としての活動はなんだったのかと言わざるを得ません。

アメリカ大統領に許された国際的には明文化されていない権利の一
つに、世界意思を代表しての軍事力の行使というのがあります。
これは米国が軍事、政治、経済で抜きん出た実力を持つ世界一の国
家G1である事によるもので、他の国は余程の事が無い限り許され
ていません。

今回のオバマのノーベル平和賞受賞は、この軍事力を行使するオプ
ションを縛る目的で、なされたと言えなくもないのです。オバマが
政権にある8年の間に、イランの核武装や、北朝鮮の核武装の更な
る進展などが予想されます。その様に国際的な緊張が高まった時に、
行使すべき軍事力を行使しない事で、逆に、世界をより重大な危機
に陥れる事が考えられます。

例えば、イランのイスラエル核攻撃を阻止できずに、イラン・イラ
クの核戦争を招く事態であるとか、北朝鮮による韓国・日本に対す
る核攻撃を阻止できない様なケースです。

オバマ氏が本当の倫理感を持った人格者であれば、ノーベル平和賞
を受けたとしても必要な時には、必要な力を行使するでしょう。
では、オバマが将来の評価を気にするエセ人格者であればどうでし
ょうか?クリントンは、ケニアでの米国大使館襲撃事件に対し、ス
ーダンのアルカイダキャンプをおざなりな巡航ミサイル攻撃でお茶
をにごした事で、911を招いたと後で批判されました。オバマ氏
が民主党の前任大統領の轍を踏まない事を切に祈りたいと思います。


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2009年8月5日水曜日

クリントン訪朝は北朝鮮の対オバマ外交の第一手

※笑顔を見せていないが、本心は?写真はロイターサイトより転載

「弱腰」の汚名 返上なるか

ビル、今度は大丈夫か? 米国のビル・クリントン元大統領(62)が4日、
北朝鮮訪問のため空路、平壌入りした。中朝国境での取材中に拘束され、不法
入国したなどとして実刑判決を受けた米テレビ局の女性記者2人の解放を目指
し北朝鮮側と協議する。金正日(キムジヨンイル)総書記(67)とも会談し
た。米朝が核、ミサイル問題で本格協議を開始する契機になりそうだが、米国
が北朝鮮のペースにはまる危険性もはらんでいる。

ホワイトハウスは、クリントン氏の訪朝について「2人の記者を解放するため
の、完全に私的な訪問」と強調するが、米朝双方が核やミサイルをめぐる対立
状況を対話局面に転換する効果を期待していることは間違いない。とりわけ北
朝鮮にとっては、“大物特使”を利用して米朝による2国間協議に持ち込もう
とする思惑があるとみられる。

バラク・オバマ政権の北朝鮮外交は発足以来、北朝鮮が対話の呼び掛けに応じ
る気配がないまま5月に2回目の核実験に踏み切るなど、糸口が見つからない
状況が続いてきた。

そんな中、6月に2記者に労働教化刑12年が言い渡され、何らかの行動を取
らざるを得ない状況に追い込まれた。妻のヒラリー氏(61)が国務長官であ
る特殊事情もあり、「元大統領」の登場となった。

米大統領経験者の訪朝は、クリントン政権下の1994年6月に核問題をめぐ
る危機回避のために訪問し、金日成(キムイルソン)主席(1912~94年)
と会談したジミー・カーター氏(84)以来。クリントン氏は、このときのカ
ーター氏に自らを重ね合わせているようだ。

しかし、クリントン外交は北朝鮮にまんまとだまされている。1994年の核
危機で米国は寧辺(ヨンビヨン)の核施設をピンポイントで空爆することも検
討していた。しかしクリントン氏は融和外交を取り、政権末期には国交正常化
に意欲を見せ、国務長官のマデレーン・オルブライト氏(72)を送り込んだ
ほか、最終的には断念したものの2000年末には自らの訪朝も計画した。

カーター氏の訪朝を受けた米朝枠組み合意で、米国は北朝鮮に軽水炉と重油を
提供した。しかし北は2002年に核凍結を一方的に解除し、2006年に核
実験を強行。北の核保有を許したのはクリントン政権の弱腰外交の結果だとい
う指摘を受けている。

クリントン氏にとって9年越しに実現した訪朝だが、オバマ政権が言明してい
る「米朝対話は6カ国協議の枠内だけ」という原則を曲げるようなことがあれ
ば、国連安保理決議に基づく国際社会の制裁の動きに大きな影響を与えること
になる。

米国人女性記者拘束 北朝鮮当局は3月17日、中朝国境の豆満江付近を取材
していた米ケーブルテレビ局「カレントTV」に所属する中国系のローラ・リ
ン記者、韓国系のユナ・リー記者を拘束。中央裁判所は6月8日、「朝鮮民族
敵対罪」と「不法国境出入罪」で、懲役にあたる労働教化刑12年の判決を言
い渡した。2人は判決後も平壌市内にいるとみられている。

(産経新聞 2009/8/4)

北朝鮮で一日いただけで二人のジャーナリストは解放されましたが、
これは、クリントンが卓越した外交手腕を持っていたからではあり
ません。実は、数ヶ月に及ぶ国務省と北朝鮮の国連使節との間で交
渉の結果を収穫しに出かけただけであって、あの場で交渉を行って
いたのではなかったとAP通信は報じています。

北朝鮮にとっては、罪を認めているジャーナリストは、非常に都合
の良い人質であり、今回の交渉は、この外交上の資産を如何に高く
米国に売りつけるかという問題であったと言えます。敵の元元首を
呼びつけた上で、罪人に特赦を与え解放すると言う行為は、米国に
対し道徳的な高みに立つという面でも、金正日にとって快感であっ
たに違いありません。

一方、クリントンにとっては、ジミー・カーターやアル・ゴアと言
う民主党の先輩や同輩が受賞したノーベル平和賞に自身を近づける
近道と言えます。その様な意味から考えると、北朝鮮が、人質とな
ったジャーナリストの雇用者ではあっても、既にノーベル平和賞を
取ったアル・ゴアではなくクリントンを解放の相手に選んだのは、
クリントンのノーベル平和賞への願望やヒラリー・クリントン国務
長官への影響力を理解した上での選択であると言えます。

たった一日の滞在でしたが、徹底的な調査と計算の上でクリントン
は北朝鮮にもてなされた事はまず間違いありません。また、クリン
トンがその手の誘惑に弱い事は、大統領在任中の不適切な行為で明
らかになっています。(日本でも、北朝鮮に対し強面で鳴らした何
人もの政治家が、たった一回の訪朝で、見事に北朝鮮配慮派に転向
した事が思い起こされます。)

クリントンが帰国に際し、金正日からオバマ大統領に対する親書と
言葉が託されている事は間違いありませんし、クリントンがオバマ
に対し北朝鮮に対する好意的な助言をするのも確実と言えます。実
の処、金正日にとってそれこそが、政治的な身代金に他ならなかっ
たと言えます。

北朝鮮にとっては、現在の金正日体制に対する保障を米国から取り
付けるのが、一番の政治的目標です。但し、同時に対米核抑止体制
を構築する事も、米国から現実的な体制保障を取り付ける上での条
件になるとも考えている筈です。従って、核廃絶を唱えるオバマ政
権とは、政策的にも対立する訳ですが、その様な状況の中で、米国
や韓国、日本から自国に有利な援助を取り付けつつ、並行して核戦
力の充実も図るという外交的アクロバットを演じようとしていると
考えれます。そして、その第一手が今回のクリントン訪朝という事
なのです。その意味で、今回のクリントン訪朝を機に、米国と北朝
鮮の間で、急速な外交的展開が図られる可能性が高いと思われるの
です。


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2009年7月30日木曜日

戦略・経済対話で逆に深まる米中の溝

※写真はロイターより転載

米中、世界経済回復で協力=核問題でも連携確認-初の戦略・経済対話が閉幕

米中両国が経済や安全保障など幅広い分野の課題を討議する初の戦略・経済対
話が28日、2日間の日程を終了した。両国は会議後に共同報道文を発表し、未
曽有の危機に見舞われた世界経済や金融システムの回復で両国の協力が不可欠
だと強調。マクロ経済政策の課題のほか、金融規制や国際金融機関の改革に協
調して取り組む意欲を示した。一方、戦略分野では、イランや北朝鮮の核問題
での緊密な連携を確認、人権対話を継続する方針でも一致した。

経済分野で米側議長を務めたガイトナー財務長官は声明で「米国と中国の強力
な政策が金融システムを崩壊の瀬戸際から救うのに貢献した」との認識を示し
た上で、世界経済回復後にも「持続的かつ均衡した成長をもたらす政策を取る
ことで合意した」と指摘した。

協力の枠組みとして、マクロ経済では、米国は貯蓄率向上や財政赤字の削減な
どを課題として挙げた。中国は内需主導の成長や消費拡大への努力を約束。
また、貿易・投資では保護主義的方策の回避や難航する新多角的貿易交渉(ド
ーハ・ラウンド)の成功に対する意欲を示した。
さらに、国際通貨基金(IMF)などを含む国際金融体制の改革で中国の意見反
映や参画を確実にする目標を打ち出した。 

(時事通信 2009/7/30)


米中は、2005年から戦略対話を行ってきました。
最初に実施したのは、外務次官級の米中対話で、これは、Strategic
Dialogue(戦略対話)と呼ばれました。その次に出てきたのが、2006
年に始まった、経済関係次官によるStrategic Economic Dialogue
(戦略経済対話)です。それらを更に発展させたのが今回の外交及び
経済担当閣僚によるStrategic & Economic Dialogue(戦略と経済対
話)です。

マスコミは、中国による米国債保有高が、世界第一位になった事で、
米国が中国に対し膝を屈する様になったという印象を広めています
が、必ずしもそうではありません。中国が外貨準備を積み上げてい
ますが、これは人民元を意図的に安くしている通貨当局の介入の結
果です。米国から見れば、中国の不公正な通貨政策によって恒常的
に大幅な貿易赤字を垂れ流している事になります。中国が米国債を
購入しているのは、その反対給付という面があります。もし、中国
が米国債の購入停止をすれば、米国は即日、対中輸入制限を行うに
違いありません。米国の中国からの輸入の大部分はレアメタルなど
を除けば他国からの輸入により代替可能なものであるからです。そ
ういう意味では、核兵器による相互抑止と同様の均衡が経済面でも
成立していると言えます。米国が一方的に弱みを握られているとい
う解釈は誤りです。

そして、同時に中国から米国への安値輸出は、環境対策や知的所有
権で支払うべき費用を負担していない不公正貿易によって行われて
いるという側面があります。今回、合意はありませんでしたが、環
境対策面の改善を米国が中国に申し入れたのは、世界で第一位と第
二位のCO2排出国であると言う側面以外に、中国に対し環境対策で
国際基準を受け入れる様に米国が促したと言う側面があります。
国連や国際会議の場では、中国は、他のBRICs諸国や発展途上国の
バックアップが得られますが、二ヶ国協議では、その様な外部から
の支援は得られません。

マスコミは米中二ヶ国の世界支配体制という意味でG2と言う言葉
を多用していますが、実際には、今回の対話は、あくまで、米国に
よる、中国の世界的経済秩序への組み込み過程であると言えます


米国は現状維持勢力であるのに対して、中国は現状打破勢力です。
この現状打破勢力である中国の台頭に対し、まずは、現状維持勢力
の代表である米国が、既存の秩序と体制への協調を指導している場
がこの米中対話であると考えて良いと思われます。であるからこそ、
鳴り物入りで150人を超える大々的な訪問団が米国を訪れた割に成
果が殆どないのです。

中国にとってG2対話は面子を満足させるものではあっても、それ
以外では、必ずしもやって有利な対話とは言えず、逆に米国の政策
決定者に中国の異質さを知らしめる良い機会になるのではないかと
考えます。


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2009年6月22日月曜日

キッシンジャーを中国に派遣する米国の意図は?




【北制裁】米、キッシンジャー氏を中国に派遣か 韓国紙


韓国紙、朝鮮日報は22日、米国が中国に対し、国連安全保障理事会決議によ
る対北朝鮮制裁への積極的な参加を促すため、特使としてキッシンジャー元国
務長官の派遣を検討していると報じた。外交筋の話としている。
同筋によると、先週、韓国の李明博大統領が訪米した際に行われた協議で、米
側が高官を中国に派遣する方針だと説明、有力候補としてキッシンジャー氏の
名前が挙がったという。(共同)

(産経新聞 2009/06/22)


北「核で世襲」幻想捨てるべき…米新政権が譲るという誤算

もはや「覆せない(Irreversible)」合意がワシントンのキーワードだ。

米国は核交渉が再開する場合、非核化プロセスの最終段階である核廃絶から出
発しようとしている。北朝鮮のすべての核と核物質をテーブルの上にのせて、
廃棄と補償を協議しようとしている。

米国の暫定的な結論通り、北朝鮮が最後まで核を断念しない場合、米国は核の
不拡散をいかにして達成するのだろうか。答弁は衝撃的だ。オバマ政権の人々
は言葉を控えるものの、ブッシュ政権が初期に進めた北朝鮮の体制交代(Regime
Change)のほかに方法がない、という立場だという。

ぞっとする過去への回帰だ。より衝撃的なのは米国が「北朝鮮の体制交代」を
行動に移す場合、その直前に在韓米軍を、北朝鮮のミサイルの射程に入る韓国
から撤退させる方針だということだ。北核問題をめぐる事態が、米国の「北朝
鮮体制の交代に向けた措置」によって悪化すれば、米軍が撤退し、韓国の各都
市、産業施設、軍事基地が北朝鮮のミサイルのターゲットに入ることになるのだ。

北朝鮮が韓国を攻撃する場合、米国が核の傘と通常戦力で守ると確実に公約し
たものの、それが韓国の「被害ゼロ」を保証するわけではない。だから南北
(韓国・北朝鮮)が交わす進軍喇叭(らっぱ)のような強硬姿勢が非常に不安
に思える。

米国は北朝鮮に対話の扉を開けておいてはいるものの、制裁の局面で対話をも
の乞いする考えはない。北朝鮮に拘束中の米国人女性記者問題を核交渉に結び
つける考えもない。だから北朝鮮が希望するアル・ゴア元副大統領の平壌(ピ
ョンヤン)訪問にも冷淡だ。オバマ政権を「押せば押される」と誤算したのが
北朝鮮の失敗だ。

事態が非常に危うい。北朝鮮は現実を直視すべきだ。核兵器で強盛大国を実現
し、26歳の青年に世襲する権力の基盤を固めるという時代に反した幻想を捨
てねばならない。中国は「北朝鮮の崩壊より、核を持った北朝鮮の存続が有利
だ」という偏狭な国家利己主義を捨てるべきだ。対北制裁に積極的に加わり、
北朝鮮を交渉のテーブルに戻らせねばならない。

韓国と米国は中国を動かすことに外交力を集中すべきだ。韓米同盟と韓中関係
のバランスを取るべきだ。韓国は制裁の局面でも、対話を通じて南北関係を管
理していかねばならない。李明博(イ・ミョンバク)大統領は8月15日(独
立記念日)の演説で、北朝鮮が拒めない提案をしなければいけない。

(中央日報 2009/6/22)


上の記事が事実であるとすれば、今時、何の為に米国はキッシンジ
ャーを派遣するのか疑問とする処です。中国に安保理決議に協力さ
せるというのは、あまりにも漠然としすぎています。共和党政権の
元国務長官であり、米中接近と、ベトナム撤退を実現した中国の古
い友人で、バーゲニング外交の第一人者を送るには相応の理由があ
る筈です。

それに対する回答が二番目の中央日報の記事です。オバマ政権は、
北のレジームチェンジを決意しているというものです。

核廃絶を訴えたオバマに対して、北朝鮮は、オバマを甘く見すぎて
強く押しすぎたという内容です。北朝鮮との対話チャネルを開くの
にタイミング良く(?)発生した米国ジャーナリストの逮捕事件に対
しても、ゴア元副大統領が対朝交渉に乗り気な割には、オバマ政権
が奇妙に無関心な印象を与えているのも事実です。

記事にある、体制変更の実施前に、在韓米軍を撤退させるというの
は、もし本当であれば、米国が仕掛けるタイミングが誰の目にも明
らかになってしますので、眉唾かとも思います。

しかし、米国が、レジームチェンジだけを狙うのであれば、米軍を
動かす必要はありません。米国も、そして、実は韓国も、ボトムラ
インは、現状維持ができれば良いのであり、まともなインフラ整備
に幾らかかるか判らない最貧国の救済に手を出す気はサラサラない
のです。米軍によって北が解放されるよりは、北朝鮮の伝統的同盟
国であり、血の盟約を結んだ中国が自らレジームチェンジの手を下
す事で、引き続き、朝鮮半島の北半分を中国の勢力化に置いた方が、
中国にとって有利であるのは言うまでもありません。

特に、最近のミサイル発射実験と核実験に対する、中国の安保理決
議案参加で、北朝鮮は中国の事を米国追従勢力とまで非難している
と言うのでは、出来上がった核ミサイルの照準が北京に合わせられ
る事まで中国は、心配せざるを得ない事になりつつあります。

オバマにしてみれば、偉大な大統領として名を残す事にも繋がる核
廃絶の実現どころか、北朝鮮が核武装する事で、韓国や日本にも核
のドミノ的拡散が懸念される状態となり、少なく共、条約上の義務
に基づいて、韓国や日本に核を再配備せざるを得なくなるのでは、
北朝鮮によって人類の進歩が逆行を余儀なくされると感じて不思議
ではありません。

そうであれば、キッシンジャーのカバンの中には、北朝鮮のレジー
ムチェンジを中国が行うか、さもなければ、米国によるレジームチ
ェンジを黙認して欲しいというオバマからの親書が入っていてもお
かしくは無い様に思われるのです。


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2009年6月9日火曜日

米人記者逮捕事件の不思議

※写真は、Reutersサイトより転載

北朝鮮、米人記者に労働教化12年=オバマ大統領「深く憂慮」

朝鮮中央通信は8日、北朝鮮の中央裁判所(最高裁に相当)が、拘束中の米国
人女性記者2人に対し、12年の労働教化刑を言い渡したと伝えた。オバマ米政
権が北朝鮮の核実験を受け、テロ支援国再指定検討など制裁強化の動きを見せ
ている中、米国への挑発を強めた形だ。今後、米国は身柄解放に向け、北朝鮮
との交渉を働き掛ける方針だが、難航するとみられる。
同通信によると、裁判は4日から8日まで続けられ、2人に対して「朝鮮民族敵
対罪と不法出入国罪の有罪を確定」したという。
これを受けて、ホワイトハウスはオバマ大統領が「(判決を)深く憂慮してい
る」と明らかにした。その上で2人の解放実現に向け、全力を尽くす方針を強
調。米国務省も北朝鮮に対し、2人の即時解放を改めて呼び掛けた。
判決を受けたのは、米ケーブルテレビ局のローラ・リン、ユナ・リー両記者。
2人は3月17日、中朝国境地帯で脱北者問題を取材中に捕らえられ、その後、
「不法入国と敵対行為」などの罪で起訴。朝鮮中央通信は6月4日に「裁判を4
日午後3時から始める」と異例の事前報道を行っていた。
今後の日程は明らかとなっていないが、これで判決が確定する可能性が高い。
北朝鮮の刑法では、朝鮮民族敵対罪は5年以上の労働教化刑で、特に、事案が
重大な場合は10年以上としている。
(時事通信 2009/6/09)


今回の報道で、北朝鮮には、朝鮮民族敵対罪という犯罪と、不法出
入国罪という犯罪があるのが判りました。北朝鮮に対して外国人が
取材する事が何故、朝鮮民族敵対罪になるのか判りませんし、北朝
鮮に入国してもいないのに、不法出入国罪に問われるのか理解でき
ないのですが、それにも増して、我々外部の人間は、北朝鮮の刑法
や刑事訴訟法を読む事が出来ても、北朝鮮国内では、絶対機密にな
っており、住民は、その内容を知る事すらできないである点は余程
問題であると思われます。法律が公開されていなければ、事前でも
事後でも、為政者の思う通り法律を作る事が出来る訳で、誰であっ
ても明確な根拠なく犯罪者として逮捕する事が可能になります。こ
れだけをとっても、北朝鮮が法治国家ではなく、前近代的な専制国
家であると言えます。

更に、報道によれば、二人の記者は、国境の中国側で北朝鮮の官憲
に逮捕されたそうですから、中国領でも北朝鮮の国境に近い部分で
は、北朝鮮側が管轄しており、一定の逮捕権も持っているようです。
しかし、その様な事実は、同じく、公開されていないという点で中
国が北朝鮮と同様な問題点を持っている事を示しています。

法律的な面でも、この事件は興味深いのですが、政治的には、より
興味深い側面があります。元々事件が発生した時から言われた事で
すが、北朝鮮は、この二人の記者を人質として利用すると考えられ
ています。つまり、米国が北朝鮮に対する敵対行為を止めたら記者
を解放すると言う訳です。そして、記者解放の為の交渉に当たって
相手側の大物政治家を要求し、その政治家と、記者解放以外の北朝
鮮との関係全般について大枠で合意してしまうという手法を使う事
が懸念されています。クリントン政権時のカーター元大統領との交
渉や、富士山丸事件での金丸副総裁との直接交渉などが、この典型
例です。

今回の場合は、逮捕された記者の所属するカレントTV社の経営者
には、アル・ゴア元副大統領がおり、オバマ政権は北朝鮮との記者
解放交渉をゴア氏に任せるという話も出ているようです。既に過去
の例もあるので、例えゴア氏が交渉に出るとしても、カーター氏の
轍を踏む事はないと思われますが、今回有罪を宣告された記者が各
々、中国系と韓国系である事や、事件が発生したタイミングが北朝
鮮がミサイル発射や核実験を行う直前であった事を踏まえると、事
件そのものが北朝鮮が対米直接交渉を実現する為に準備した一種の
舞台装置ではないかという疑念も考えずにいられないのです。


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2009年6月5日金曜日

オバマ政権が隠す五つ目の対北原則

※画像は、http://www.cagle.com/news/NorthKorea09/2.aspより転載

オバマ政権が示す対北政策の「4大原則」

「この文章は非常に慎重に作成されたもので、米国政府のトップにある人たち
の承認を得たものです。読み上げます」

本紙と米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が共同で主催したフォーラムで、オ
バマ米政権が2日、対北朝鮮政策の原則を発表した。最近2回目の核実験を強行
するなど、数々の挑発行為を繰り広げている北朝鮮に対する政策の原則を明ら
かにしたものだ。最近シンガポールで行われたアジア安全保障会議でゲーツ国
防長官が発表した七つの文章からなる発言が、オバマ政権における今回の対北
朝鮮政策の基本になっているという。フォーラムに出席した米政府高官が明ら
かにした。

その内容によると、オバマ政権が定めた韓半島(朝鮮半島)政策の4大原則は、
(1)韓半島(朝鮮半島)の完全かつ検証可能な形での非核化という米国の目
標に変わりはない(2)北朝鮮を核保有国として絶対に認めない(3)核兵器や
核関連物質がほかの国や非国家団体の手に割った際には、米国と同盟国にとっ
て甚大な脅威となるため、このような行為にはそれに相応した結果が伴うよう
になる(4)米国は同盟国を守るために献身する、という内容だ。「同盟国の
防衛に献身すること」を明確にしたのは、最近韓国で起こっている核主権論に
対し、先手を打つという次元で出たものだという。この日フォーラムに出席し
た人物が語った。

オバマ政権がゲーツ国防長官の発言を本紙とCSISのフォーラムで改めて示した
のは、北朝鮮に対して明確なメッセージを送るためのものだ、とワシントンの
外交筋が説明した。この外交筋は「米政府関係者が政府のトップについて言及
しながらこれらの原則を読み上げたのは、オバマ大統領の意向が反映されたも
のでもあるからだ。今後米国による北朝鮮への対応は、これらの内容を基本と
してここから外れることはないだろう」と述べた。

一方、最近北朝鮮が2回目の核実験を行って以降、韓国では2012年4月に予定さ
れている戦時作戦統制権の韓国への移管を延期すべきという声が、本格的に力
を得始めている。これについて米国防省のデレク・ミッチェル東アジア太平洋
担当首席副次官補は、「北朝鮮が核実験を行ったからといって、韓米両国が非
常に驚いてこれまでの合意内容を急いで変更するような姿は見せたくない。戦
時作戦統制権の移管時期を延期することなどについて再検討する計画はない」
と明言した。しかし盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権とブッシュ前政権の間でこ
の問題が話し合われていた当時、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)
アジア担当局長として実務に当たっていたビクター・チャ氏(ジョージタウン
大学教授)は、「戦時作戦統制権の移管は本来条件付きの合意だった。北朝鮮
の核実験で韓半島をとりまく安全保障環境が急激に変わりつつあるため、もう
一度考え直すこともできる、という話がワシントンでも出ている」と話した。

◆米国が発表した対北朝鮮政策の4大原則

(1)韓半島の完全な非核化は米国の不変の目標

(2)北朝鮮を核兵器保有国として絶対に認めない

(3)北朝鮮による核兵器・核関連物質の移転は容認しない

(4)米国は東アジアの同盟国防衛に最善を尽くす

ワシントン=特別取材班

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2009/06/04)


この記事では、オバマ政権の明示的な対北朝鮮政策を四原則として
示していますが、一番重要な五つ目の原則が、記述されていません。
私は、オバマ政権には武力による北朝鮮の体制変更を行わず、
対話と交渉で問題を解決する
という原則があると考えています。

昨日(6/4)、米国の一部国会議員によるテロ支援国再指定の要求に
対して、オバマ政権は「北朝鮮はテロ支援国の定義に当てはまらな
い」として再指定を拒否したと報じられましたが、これも第五原則
に沿った対応であると考えます。

では、何故、今対話を始めないのかですが、それは北朝鮮、米国共
に交渉材料をテーブルの上に並べている最中であるからと考えます。
また、オバマ政権にとっては、優先順位の高い問題がある事が挙げ
られます。

北朝鮮とすれば、米国による体制保証、「核保有国」としての認知
と大規模な経済援助の獲得が要求事項ですが、その要求を行う上で、
韓国との軍事的対立のエスカレーションや、日本や米国向けのミサ
イル発射といった交渉材料の呈示がまだ行えていません。

交渉を始める時には、カードが出来るだけ多い方が良い訳ですが、
現時点では長距離ミサイル実験は失敗の結果しか出ていない為、米
国は、北朝鮮のミサイルを脅威として捉えていません。従って、交
渉のカードとしても認知度が低いと言えます。北朝鮮としては、ミ
サイル開発を放棄する代償として(実際に開発を放棄するかどうか
は別として)、可能な限り高い値段をつけたい筈であり、その為に
は実験を成功させる必要があります。それには、まだ、多少の時間
を要するという訳です。

これは、韓国との軍事面でのエスカレーションについても同様です。
韓国との緊張状態が高ければ高い程、緊張緩和を米国との交渉材料
に使えます。「休戦条約に拘束されない」という発言は「新しい休
戦状態を作るには代償が必要」と言い換える事が出来ます。

米国にとっても状況は同じです。国連安全保障理事会で、北朝鮮に
対するできるだけ厳しい制裁実施を加盟国に要請する決議に合意を
取り付ける必要があります。それに対して、北朝鮮は中ロを通じて
制裁をできるだけ緩和し、決議の交渉材料としての有効性を損ねる
為の働きかけを行っていると言えます。

それに加え米国にとっては、現在戦っている中東における対テロ戦
争を如何に終息させるかの方がより優先度の高い案件であると言え
ます。昨日行われたオバマ大統領のカイロ演説も似たような対イス
ラム対応原則の表明でしたが、大統領本人がカイロまで出かけて行
って行った演説と、ワシントンのフォーラムでの政府関係者の発表
とでは影響度も反響もまるで違います。実際には、核拡散という観
点から見た重要度で両者の違いはそれ程大きくないという評価もあ
りえるのですが、オバマ政権にとっての優先順位付けには大きな差
異があると言えます。

では、オバマ政権がこの第五原則を明示しない理由はなんでしょう
か。それは、明示したとたんに、オバマ政権は、人権外交を放棄し
たと言われかねないからだと思います。更に、この第五原則を認め
る事自体が、北朝鮮との交渉カードになるとも言えます。
しかしながら、この第五原則が存在する事は、私の様な国際問題に
対する素人の目から見ても明らかなのですから、北朝鮮からも交渉
の前提与件になっていると考えるべきです。

大方の日本国民には残念な事ですが、オバマ政権の期間中に、米国
代表と北朝鮮代表がにこやかに握手する場面を見せられる様に思わ
れます。


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2009年2月4日水曜日

イラン人工衛星打ち上げ成功 オバマ政権へのならず者国家のラブコール続く


※写真はReutersから転載

イラン初の国産人工衛星 核絡み強まる懸念

【カイロ=村上大介】イラン政府は3日、初の国産人工衛星の打ち上げに成功
したと発表した。アフマディネジャド大統領は国営テレビで「われわれは公式
に宇宙空間に足場を築いた」と演説し、打ち上げの様子を伝える映像が繰り返
し放送された。衛星打ち上げ技術は長距離弾道ミサイルにも応用が可能で、イ
ランの核開発問題とも関連して、国際社会の懸念をさらに強めることになりそ
うだ。

イラン国営通信など地元の報道によると、「オミド(希望)」と名付けられた
衛星は2日夜、国産ロケット「サフィール2」により衛星軌道に打ち上げられ
た。1日に地球を15回周回して通信実験などのデータを収集し、1~3カ月
後に地球に戻るという。ファルス通信は、イラン航空宇宙局長官が今年3月
20日までに再び人工衛星打ち上げを行うと語った、と伝えた。

イラン側は核開発について、平和利用が目的だと繰り返し強調している。しか
し、イランが核弾頭と長距離弾道ミサイルの両方を保有すれば、イスラエルや
湾岸アラブ産油国だけでなく、いずれは欧州の一部も射程にとらえると懸念す
る声は強い。

オバマ米政権は、ウラン濃縮の即時停止など国連安全保障理事会決議の完全履
行を条件に直接対話の選択肢も除外しないとしているが、アフマディネジャド
大統領は「米国がまず、過去にイランに対して犯した『罪』を謝罪しなくては
ならない」と強気の発言を繰り返しており、歩み寄りが実現する気配はない。

打ち上げは、今月10日に祝われるイラン革命30周年に合わせて「イランの
技術力」を内外に誇示する目的もあったとみられている。イランは昨年2月に
衛星軌道調査用のロケットを打ち上げ、8月には国産ロケットで模擬衛星を軌
道に乗せたと発表した。米国の観測では、8月の打ち上げは「失敗」とされて
いた。

(産経新聞 2009/02/03)

イラン衛星打ち上げに懸念 米政府

【ワシントン=有元隆志】米政府は3日、イランが初の国産人工衛星を打ち上
げたことについて、弾道ミサイル開発にも応用が可能であるとして、懸念を表
明した。

モレル国防総省報道官は3日の記者会見で、「イランの脅威は増している」と
述べ、弾道ミサイルの長射程化に警戒感を示した。

クリントン国務長官は3日のミリバンド英外相との会談後、記者団に対し、米
政府として対話の用意はあるとしたものの、イラン側も挑発的な行為をすべき
でないと指摘した。

米政府当局者はロイター通信に対し、衛星発射はイランにとっては「重要な前
進」としたものの、「最先端の技術は使われていない」として、地域の安全保
障のバランスに変化を及ぼすまでには至っていないとの認識を示した。

「オミド(希望)」と名付けられた衛星は2日夜、イランの国産ロケット「サ
フィール2」により衛星軌道に打ち上げられた。

(産経新聞 2009/02/03)

北朝鮮が前日に、ミサイル実験かと報じられたすぐ後になりますが
今後は、同じならず者国家のイランが初の衛星打上げに成功しまし
た。

米国での報道を読むと、衛星そのものについては、スプートニクか
らそう発展したものではないとの事ですが、自力で衛星を打ち上げ
た国としては9番目になるようです。

上の記事でも米国が既にこの衛星打上げについては懸念を表明して
いる様に、衛星打上ロケットと大陸間弾道弾は同じ技術が使われま
す。実際、今回衛星を打ち上げた「サフィール」ロケットは、北朝
鮮から技術導入したノドンミサイルを改造したものと言われていま
す。イランが独自にウラン濃縮を行っている点から言っても、核弾
頭付きのICBMを開発しているという懸念が持たれるのは当然の事で
す。

有力な産油国であるイランが、その必要性に乏しいにも関わらず、
ロケット開発や原子力発電、核燃料開発に異常な努力を傾けている
事を、イランの国是であるイスラム原理主義革命、イスラエルの国
家としての生存を許さないとする指導者の度々の声明、イスラム原
理主義勢力であるハマスへの援助等を考えると、米国が、ヨーロッ
パにイランの大陸間弾道弾に対抗するMD関連施設を建設するのも
むべなるかなと感じる次第です。

サフィールロケットですが、直径は1.25メートル、長さ24メートル
で、直径がやや細い事を除けば、概ね初期のミューロケットと同程
度の大きさです。二段式、又は三段式で、液体燃料とも固体燃料と
も、言われていますが、公開されている写真を見ると、一段目は固
体燃料で、衛星打上に必要な機体制御を行う二段目には液体燃料を
使っていると考えるのが適当である様に考えます。実際、上の写真
でも、二段目上部に、燃料注入用のチューブが導入されているのが
判ります。

今回の衛星打ち上げについて、イランは「われわれは公式に宇宙空
間に足場を築いた」と評価していますが、米国から見れば、同じ
「ならずもの」国家である北朝鮮のミサイル発射実験と同期を取っ
た動きと見る筈です。つまり「ならずもの」国家の側から、オバマ
政権をその公約通りに直接交渉に引きずり出す戦略に出た様に見え
る様に思われるのです。オバマ政権にしてみれば、直接交渉を行う
場合でも交渉のイニシアティブを確保する上でも、交渉に引きずり
出されたという印象を国際社会に与えるのは避けたい筈です。

北朝鮮については、六ヶ国協議がありますので、その場を使う事で
オバマ政権は対面を保ちつつ直接対話を行う事が可能です。イラン
については、その核開発について米国は、ドイツ、フランス、イギ
リス、ロシア、中国と協議を今週にもフランクフルトで行う事にな
っていました。この協議の中で、イランについても、北朝鮮と同様、
多国間協議の枠組みを発足させる事が議論されるのではないかと観
測する次第です。


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2009年2月3日火曜日

北朝鮮ミサイル発射準備中。テポドンなら米国向けだが



※USA TODAYより転載

北朝鮮がテポドン発射準備 米偵察衛星確認 改良型の可能性

北朝鮮が、核弾頭を搭載可能な長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準
備を進めていることが2日、分かった。複数の政府筋が明らかにした。米国な
どの偵察衛星が発射準備とみられる動きを確認しており、1~2カ月中に発射
準備が完了する可能性が大きい。北朝鮮は日本や韓国の対北強硬姿勢に強く反
発しており、対抗措置としてミサイル発射準備を進めているとみられるが、万
一発射すれば、国際世論の反発は必至で、6カ国協議の行方にも大きな影響を
与えそうだ。

複数の政府筋によると、米などの偵察衛星が、北朝鮮北東部の平安北道東倉里
で新たに建設中のミサイル発射施設に複数のトラックが頻繁に出入りしている
のを確認。ミサイルを格納する大型コンテナも運び込まれていることが分かっ
た。コンテナなどの大きさからミサイルは、テポドン2号と同等以上のサイズ
とみられる。

すでに北朝鮮は昨年秋までに発射施設でエンジンの燃焼実験を行っていること
が確認されている。北朝鮮のミサイルは液体燃料を使用しているため、発射台
への設置や燃料注入にはかなりの時間を要するため、発射は早くても1~2カ
月先になる可能性が大きい。

テポドン2号は北朝鮮が独自開発した弾道ミサイルで、1段目に新型ブースタ
ーを登載し、2段目には旧ソ連が開発した短距離弾道ミサイル「スカッドC」
を改良したノドンを使用しているとされる。射程は約6000キロで、米国の
アラスカやハワイ周辺まで到達するとみられている。

今回のミサイルはテポドン2号の改良型である可能性もある。改良型ならば射
程は1万キロに達するとみられ、米本土も射程圏に入るとされる。

北朝鮮は、韓国・李明博政権の対北強硬姿勢に反発を強めており、先月30日
に朝鮮中央通信は祖国平和統一委員会の声明として「北南間のすべての政治・
軍事的合意を無効化する」と伝えた。麻生政権も「核、ミサイル、拉致問題が
包括的な解決が国交正常化の条件」との立場を崩さず、対北経済制裁を続けて
いる。

北朝鮮は平成5年5月29日、日本海に向けてノドンを発射。18年7月5日
にはテポドン2号やノドンなど7発のミサイル発射実験を実施した。テポドン
2号は空中分解し、実験は失敗したが、国連安保理は7月15日、全会一致で
非難決議を採択し、ミサイル発射再凍結を求めた。2月3日2時54分配信 

(産経新聞 2009/02/03)

韓国向けの限定的な軍事的エスカレーションはあると思っていまし
たが、テポドン2号の発射準備とは、少し意外でした。先日来の南
北合意の一方的破棄とそれに続く恫喝声明は、韓国向けである事が
明らかであっただけに、同時に二正面恫喝を行うとまでは、思って
いませんでした。テポドン2号は射程の長い、初歩的な大陸間弾道
弾です。韓国向けや、日本向けであれば、スカッドやノドンで充分
の筈です。北朝鮮にしても、価格の高い、テポドンの発射実験を行
う事は経済的には避けたい筈です。しかし、そのコストを出してで
も、米国向けにラブコールを行いたいという事なのだろうと思われ
ます。

オバマ政権は選挙期間中は、条件をつける事なく、敵対国との対話
を行うと公約していましたが、政権獲得後は、北朝鮮への態度が当
初考えられていたものよりも硬いという事が判りました。この段階
で、テポドン発射という瀬戸際外交に移行したのは、米国との本質
的な関係改善の為には、タイミングが良いとはいえない様に思いま
すが、一気にミサイル発射や核実験を行う事で軍事的な対決姿勢と
核保有国である事の誇示を行い、その後に柔軟な外交攻勢で行う事
で、戦争を避けたいオバマ政権から宥和策と援助を取り込むという
狙いがあると考えられます。

相撲で言えば、格下が横綱との対戦で、立会い直後に猫騙しをやる
様なものでしょうか。四つに組むと全く相手になりませんが、横綱
の体勢が整う前に奇襲攻撃をかければ、横綱に土をつける事も可能
と言えなくないという訳です。

ここでのポイントは、北朝鮮が本気である事をオバマ政権に信じさ
せる事です。ブラフであると思われてしまうと効果はありませんか
ら、テポドン2号は、米国本土沿岸への着弾に成功させる必要があ
りますし、それに引き続き核実験を行う事で北朝鮮の断固たる対決
姿勢を誇示する事が必要になります。

オバマ政権にとっては、緊急度は異なるもののケネディ政権で起こ
ったキューバミサイル危機に近い状況が政権発足直後に発生する事
になります。六ヶ国協議に参加している北朝鮮を除く5ケ国は、恫
喝に屈して、意味もなく援助をするのも望んでいませんが、北朝鮮
の暴発も望んでいません。勿論、オバマ政権は一面で、それが、北
朝鮮のブラフであるとは判っていても、政権発足直後では、それを
無視をする事もまた出来ないと思われます。その点では、六ヶ国協
議を主導する米国新政権の外交姿勢を知る上で格好試金石を提供し
てくれていると言えるかも知れません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト


2009年1月22日木曜日

候補者から為政者へ変身したオバマ氏

※Reutersサイトから転載

封じた「CHANGE」 現実見据えた再生へ決意

米国の第44代大統領に就任したバラク・オバマ氏(47)は20日(日本時
間21日未明)の就任演説で、選挙戦で聴衆を高揚させた「変革(チェンジ)」
などの派手なキャッチフレーズを避け、国民の結束によって「米国の再生に取
り掛かる」と、重々しく呼びかけた。“肩透かし”に等しい地味な演説は、景
気後退など厳しい環境下で船出した政権の周辺から、虚飾や過剰な期待を排し
ておく政治判断によるようだ。

就任宣誓に続く20分足らずの演説で、選挙期間中にオバマ氏の代名詞ともな
った「変革」「希望」の使用頻度は、無関係の文脈まで含めても、それぞれ2
度だけにとどまった。

代わってオバマ氏が描いた米国の現状は、出口の見えないテロ組織との戦いや、
「一部の者の強欲と無責任」と厳しい決断の先送りが招いた「経済の激しい弱
体化」など、政権交代後もにわかに解決は難しい「本物の試練」だった。

オバマ政権の移行チーム関係者は、就任式典が近づいた先週末のあたりから、
演説が「責任と透明性」(ラム・エマニュエル新大統領首席補佐官、49歳)
を強調する地味で固い内容となることをメディアに根回ししてきた。オバマ氏
が敬愛するエイブラハム・リンカーン(1809~1865年)やジョン・F・
ケネディ(1917~1963年)ら、歴代大統領の名演説を「敢えて意識し
ない」とも伝えられた。

■「責任分担」明確に示す
就任演説は、大半の部分をオバマ氏自身がまず執筆し、その後、大統領選をと
もに戦い抜いた主任スピーチライターのジョン・ファブロー氏(27)と推敲
を重ねたとされる。だとすれば、就任演説への“期待値”を予め引き下げる広
報対応は、オバマ氏自身が「演説の名手」という評価に傷をつけてでも、厳し
い情勢認識や負担の大きな政策の方針をはっきり示し、国民に責任分担を求め
る必要があると決意した結果と読める。

オバマ氏が訴えようとしたのは、「家も職も失い、ビジネスは閉ざされた」と
いう灰色の現状から、国民が結束して「新しい責任の時代」に突き進むことで、
状況の好転を図るためのいわば道筋だ。

だが、政策に関する言及を見渡すと、「公的資金を管理する者は賢い使い方を
すべきだ」「監視システムがなければ、市場はコントロールを失う」など、オ
バマ政権のめざす政策は、国民や業界の間に痛みや不満が伴うものも多い。

安全保障についても、国際協調路線への転換を打ち出すのと同時に、現実のテ
ロの脅威には米国の武力で対処するという現実路線が盛り込まれた。就任演説
はオバマ氏の独自色ばかりに染めることのできない政権指導者としての苦衷が
色濃くにじんだようだ。(ワシントン 山本秀也)

(産経新聞 2009/01/22)

表題の割には、軽めの話題です。一昨日の夜、オバマ氏の就任演説
をライブで聴かれた方は恐らく少なかったのではないでしょうか。
かくいう私も、昨日勤めを終わってから、yahooの演説テキストを
見ながらABC提供動画で初めてオバマ氏の演説を聞いた次第です。
新聞各社から翻訳は出ていますが、英語でオバマ氏の魅力的な低音
の演説を聞いていると意外に、対位法を使ったり韻を踏んだりと言
った演出が多い事に気がついたりしました。

ただ、就任演説で一番気になったのは、オバマ氏が実に淡々と19分
のスピーチを終えた事です。National Mallに集まった200万人が期
待したフレーズ「Yes We Can !」という言葉が無いのは勿論の事、
フレーズの区切りでも、聴衆の歓声が沸きあがっている途中で、
その腰を折るような感じで、次のフレーズを始めてしまうと言った
具合です。

National Mallへの入場を許された人達は、大統領選挙で、オバマ
当選に貢献した民主党員が殆どです。寒風の中、大統領就任式を何
時間も待ち続けたのは、オバマ新大統領の演説を聞きながら、
「Yes We Can!」を連呼する事で、勝利に酔う事であったに違いあり
ません。オバマ氏も、それは良く承知していたに違いないのです。
そして、その期待に応える事は、全く容易な事であった筈です。
スピーチライターに、そう頼むだけで良かったのですし、民主党大
会での大統領候補受諾演説など、そういうスピーチは、今までも何
度も行っています。また、そういう機会に熱狂的な聴衆の反応を引
き出して来ているのがオバマ氏です。今回の演説でも、聴衆の熱狂
を引き出し、国民の一体感を形成するというオプションもあった筈
です。

今回、その様な草の根民主党員の期待を振り切って実に淡々とした
就任演説を行った事は、まさにオバマ氏が意図してその様なものに
したと明確に指摘できます。オバマ氏は大統領就任式にあがったの
でも、スピーチライターが悪かったのでもなく、寧ろ、候補者時代
の周囲の期待を切り捨てる様な演出をあえて行う事で、明白に為政
者としての役割に転換する事を意図したのではないかと思えるのです。

就任演説の内容そのものの中にも、それを思わせるフレーズがあり
ます。最初に、現実の暗さを指摘し、演説の後半で国民の努力でそ
れを変えて行こう、努力を継続したと後世の人から言われる様にし
ようと促しています。まさに、就任時に華やかな雰囲気で出発する
のではなく、寧ろ低く暗く出発する事で、目的達成への努力を促し
政権を通じた盛り上がりに繋げようという意図があったのかも知れ
ません。

その点で、為政者としてのオバマ氏は、上院議員一期のみという、
その政治経験の乏しさにも係わらず、意外にしたたかな人物である
事を予想させたと言えるのかも知れません。


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2009年1月21日水曜日

オバマ政権 期待度は高いが、支持急落の可能性も高い?


※宣誓するオバマ新大統領。時事通信サイトより転載

オバマ新大統領が就任演説、国民に米国再生への協力促す

米民主党のバラク・オバマ前上院議員(47)は20日正午(日本時間21日午前2時)
過ぎ、ワシントンの連邦議会議事堂で宣誓後、就任演説し、米国の現状につい
て危機のまっただ中にあるがこれを克服し、将来も繁栄した強い国家であり続
けるとの決意を表明した。

新大統領はこの中で、米国は戦時下にあり、経済は弱体化し、短期間で解決出
来る問題ではないと国民の理解を求めた。その上でこれらの問題は必ず解決出
来るとして米国民に奮起を促し、米国再生へ共に取り組むよう呼び掛けた。

経済問題では、景気刺激のための大胆かつ迅速な行動が必要と強調。政府の活
動については、機能するかどうかが重要な問題であるとの認識を示した。

また、対テロ戦争の主戦場と位置付けるアフガニスタンの平和構築に全力を注
ぐと主張。多宗教を尊重し、相互利益や敬意に基づきイスラム社会との新たな
関係構築への希望を述べた。友人やかつての敵と協力しながら「核の脅威」の
ない国際社会を目指すとの考えも強調した。

イラク問題では、駐留米軍の撤退は責任ある形で進めるとも言明。地球温暖化
の進行を押しとどめる決意も述べた。

米国が直面する試練や打ち出す対応策は新しいものかも知れないとしながらも、
成功を生み出す勤勉、正直、勇気、忍耐、好奇心、忠誠や愛国心などの美徳は
昔ながらのものとし、真実でもあると強調。米国の歴史を通して進歩を生む源
の力にもなったとして、現在の試練に立ち向かうにはこの力が今こそ必要であ
ると国民に呼び掛けた。

(CNN.co.jp 2009/01/21)

オバマ氏の支持率は8割、就任時ではカーター氏以降最高

【ワシントン=本間圭一】オバマ次期米大統領の支持率が約8割に上ることが、
18日発表の各種世論調査の結果で分かった。就任時の支持率では、カーター
元大統領以降、最高となった。

18日付ワシントン・ポスト紙によると、カーター氏以降の大統領に関し、1
期目就任時の好感度を尋ねた調査で、オバマ氏は首位の79%。ブッシュ大統
領が62%、最下位はレーガン元大統領の58%。ニューヨーク・タイムズ紙
が18日発表した調査では、カーター氏以降の大統領の1期目就任時に「今後
4年間を楽観視する」と答えた人は、オバマ氏が首位で79%、ブッシュ大統
領が64%で最下位だった。
(読売新聞 2009/01/19)

世論調査では、オバマ氏は非常に高い支持率を得ていますが、この
支持率の高さは、期待度の高さとも言い換えられますので諸刃の剣
として働きます。つまり、オバマ政権の政策について、高率の支持
が得られる半面、期待を充足しない状況が続くと支持率が急低下す
る可能性が高いという訳です。政権発足時の支持率が非常に高かっ
たカーター政権は、イラン人質救出の失敗や人権外交で、支持率が
急低下した事が想起されます。

特にオバマ氏は、当初は、民主党でも、最もリベラルな上院議員と
いう評価を得ていました。ここでいう「最もリベラル」という言葉
は、必ずしも良い意味ではありません。最も左派的な議員という評
価である訳で、日本で言えば、社民党や共産党に相当する投票行動
を議会でとっていたと言う事です。

大統領選挙を勝ち上がっている時には、こういう過去の投票行動は
問題にされませんし、逆に、イラク侵攻に反対した点が評価された
事もありました。また、オバマ氏自身が、そのラディカルな指向を
大統領選挙中には封印したいた事、マスコミもあえてそういう傾向
を取り上げなかった事もありますが、オバマ氏が大統領としてそう
いうカラーを出してきた時には、多くの中間層やオバマ・リパブリ
カンがそっぽを向く可能性はかなり高いのではないかと考えます。

どの評論家も指摘していますが、国民に不評な政策は、政権発足後
100日以内のハニームーン期間に、済ませて置くに越した事はあ
りません。つまり、中高所得層に対する増税です。これには、選挙
期間中にも提起されていましたので、共和党支持層にも一定の支持
があります。しかし、経済が危機的状況の中で、増税をするのは、
大恐慌中に財政均衡を図って失敗したフーバー大統領の二の舞にな
りかねません。また、オバマ政権の経済チームもそういった事はす
る筈もありません。という事は、最初の100日以降に増税を行わざ
るを得ず、それが政権に対する不安要因になる事が考えられます。

更に、イラクやアフガニスタンからの撤退についても、国民の多く
が望んでいる政策ですが、責任を持った撤退を行おうとしても、イ
ラクのマリキ政権もアフガニスタンのカルザイ政権も政権基盤は磐
石とはとても言えない状況であり、下手をすればオバマの在任期間
中にイスラム原理派による政権転覆も起こる可能性も捨て切れませ
ん。そうなった場合にはオバマ政権への批判は高まらざるを得ませ
ん。

また、オバマ政権では、財政赤字対策や新政策財源として、ブッシ
ュ時代に膨張した、内国安全保障予算を削減する事が課題になると
思われます。また、ブッシュ時代に「ならずもの国家」に指定され
ていたイラン、シリア、北朝鮮とも宥和的にアプローチすると思わ
れますが、それを実施した後で、米国内でテロが発生した場合には、
オバマ政権は、窮地に立つ可能性すら考えられるのです。

これらを勘案すれば、オバマ政権は、その期待度の高さと比べ、政
策の自由度はそう高い訳ではなく、特に、オバマ氏がそのラディカ
ル指向を表に出した場合は、政策が裏目に出る可能性が寧ろ高いの
ではないかと懸念する次第です。

唯一、救いのあるのは、オバマ氏が自らをエイブラハム・リンカー
ンになぞらえている事です。リンカーンは自省する事の多かった人
物としても知られています。オバマ氏が、リンカーンのひそみに倣
って、自省を繰り返した上で、後世の批判に耐える政策展開を行う
事を切に希望したいと思います。



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2009年1月20日火曜日

パンダ・ハガーがいても、日本は対米協調による国益確保を目指すのみ


※代表的パンダ・ハガー Wikipediaより転載

<オバマ新政権>多すぎる親中派「パンダ・ハガー」に日本がヤキモキ―米紙

2009年1月16日、米ブルームバーグニュースは「オバマ政権に多すぎる『パン
ダ・ハガー』が、日本の日米関係に対する危惧を増長させている」と題した記
事で、米次期政権の中国重視に不安を募らせる日本の姿を紹介した。19日付で
環球時報が伝えた。 

「パンダ・ハガー」(=パンダにハグする人の意)とは親中派の蔑称。記事は、
「首相がころころ変わる日本」の麻生太郎首相が、オバマ次期大統領に対する
当選祝いの電話で「米国との関係強化を外交政策の最重要項目」と強調するな
ど、米国の日本離れを食い止めることに心を砕く日本の姿を紹介した。また、
日本の新聞社が次期国務長官に任命されたヒラリー・クリントン氏を筆頭に
「オバマ政権には『パンダ・ハガー』が多い」と危機感をもって報じたことも
伝えた。 

記事はまた、「日本の必死なアピール」として法律を改正してまでソマリア沖
の海賊対策に艦隊を送ろうとしていると指摘。小泉元首相による靖国神社参拝
で冷え切った中国や韓国との関係改善を図ろうと、安部元首相が最初の訪問国
に中国、次に韓国を選んだことも取り上げた。 

だが、かつて国家安全保障会議アジア担当上級部長と大統領特別補佐官を務め
たケネス・リバソール氏は、「オバマ次期大統領の対日政策は気候温暖化や北
朝鮮の核問題など『実務』が中心になる」と指摘。記事は、河野太郎・外務委
員長も「日米の親密な関係が薄れてきているのは事実」と認めた上で米国の中
国重視姿勢に「多くの議員が懸念を示している」と語ったと伝えた。

(Record China 2009/01/19)

バブルの時の日本がそうだったように、中国は今、自国のポジショ
ンに過大な自信を抱いているようです。
こういった米国通信社の配信記事を細かく伝える事によって、国民
にナショナリズム的高揚感を与えているとも言えます。勿論、政権
に対しては、支持増加要素になると言えるでしょう。
ところで、パンダ・ハガーがオバマ政権内に増えると、それが日本
にとっては、即悪なのでしょうか。私は必ずしもそうではないと考
えます。

米国にとって日本は経済面では競争相手であっても、安全保障面で
は、長年に亘る同盟国です。一方の中国は、安全保障面でライバル
であると同時に経済面でも、台頭してきたライバル国という事にな
ります。しかも、米国の議会制民主主義や人権規範とは、潜在的に
相容れない一党独裁体制、人権抑圧体制を引き続き堅持しています。

勿論、一党独裁体制、人権抑圧体制の国が米国と協調できない訳で
はありません。シンガポールの様に、中国とは実質的には異ならな
い国とも米国は協調していますし、米国は第二次大戦時には、ソ連
や中国と言った独裁国家を同盟国とし、それらより民主主義の度合
いの進んだ日本を敵とした事もある訳です。

しかしながら、米国にとって中国と日本、どちらが将来の米国にと
って脅威であるかを現時点で問えば、それは中国である事に殆どの
米国の政治家が同意するだろうと思われます。

米国の政治家がかってのソ連に対するのと同様に潜在敵国である中
国を重視する事はあっても、現時点でのナチュラル・アライは、日
本ある事は明白であり、それは、パンダ・ハガーであっても同様の
認識であると思われるのです。但し、そういう認識は、長年に亘る
行為の蓄積の所以であって、自然に放置してそうなる訳でない事は
言うまでもありません。米国で反日宣伝を行おうとする者にとって
日米の過去は、宣伝材料に事欠くものでない事を充分に認識してお
く必要があります。

マスコミの論調とは大いに異なりますが、私は米国の政治的経済的
に唯一の超大国としての地位は、予見できる将来に置いても、変わ
る事はなく、日本にとって協調する甲斐のある民主主義法治国家で
あると考えます。勿論、米国の100%が善である訳ではありませんが
同様のスコープで中国やロシアがヘゲモニーを取ったケースを比較
しても、米国が悪である、その度合いは、中ロに比べましであると
言えると思います。

日本としては、中国が、現体制が維持されるよりも、和平演変の結
果、人権を重視する民主主義法治国家へ体制が変化してくれる事が
望ましい訳であり、米国がその様な戦略性を持って中国の変化を促
すのであれば、それに越した事はないと言えます。私は、その結果
として、日本が米国のアジアにおける第二の同盟国になっても、そ
れはそれで歓迎できる事であるいと思います。

日本として絶対に避けるべきは、日本が米国と利害調整に失敗し、
あるいは、中国や第三国の反日キャンペーンに敗れる形で米国を敵
に回す事であると思います。その意味で、クリントン政権における
ジャパン・バッシャーの発生は、反面教師として、再び、その様な
議論が出て来ない様、注視する必要があると言えます。
昭和天皇は、英米を敵に回した松岡洋右を最後まで許す事がなかっ
たと言いますが、我々が最も警戒すべきは、左右何れの側からであ
っても対米協調を破壊する意図を持ったアジア主義者であると考え
る次第です。その意味で、福沢諭吉の脱亜論は今日的価値を引き続
き持っていると考えます。

それにしても、日本で代表的なパンダ・ハガーである河野太郎が「
日米の親密な関係が薄れてきているのは事実」と発言しているのは
問題であると思います。


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2009年1月14日水曜日

オバマ・ヒラリー外交 ならずもの国家対策でお手並み拝見




※Daryl Cagle's Political Cartoonists Indexより転載

「スマートパワー」で指導力 ヒラリー国務長官 承認審議

【ワシントン=有元隆志】次期米国務長官に指名されたヒラリー・クリントン
上院議員の承認公聴会が13日午前(日本時間同日夜)、上院外交委員会で行
われた。クリントン氏は軍事力に加え外交を中心とした「スマートパワー」で、
国際社会において指導力を発揮したいとの決意を示した。クリントン氏は20
日にも上院本会議で承認され、オバマ次期政権の外交の「顔」として、イラク、
アフガニスタン問題や、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの交戦が続
くパレスチナ自治区ガザ地区情勢などの難題に臨む。

クリントン氏は書面で提出した冒頭証言で、「米国は差し迫った課題を単独で
解決できないが、世界は米国抜きでこれらの問題を解決できない」と指摘した。
そのうえで「われわれはスマートパワーともいうべきすべての手段を使わなけ
ればならないが、外交はその先頭に立つ」との決意を示した。

さらに、「外交政策は理念と現実の結合であって、硬直化したイデオロギーに
基づくものであってはならない」と述べ、ブッシュ政権の外交を批判した。

クリントン氏は民主党予備選で、敵対国との直接対話を主張したオバマ次期大
統領を「うぶで無責任」と批判するなど温度差があった。オバマ氏が敵対国の
指導者との対話に条件をつけるなど軌道修正したため、現在では2人の外交姿
勢に大きな違いはなくなった。クリントン氏はオバマ氏と足並みをそろえて外
交課題にあたる考えを強調した。

共和党のルーガー筆頭理事はクリントン氏の夫ビル・クリントン前大統領が設
立した財団が、慈善目的で外国政府から少なくとも4600万ドル(41億円)
を受け取っていた問題で、外交活動に影響を与えないためにも献金の透明性な
どを求めた。 

(産経新聞 2008/01/14)

記事にもある通り、オバマ氏は、敵対国との直接対話による解決を
図ったのに対し、クリントン氏は、それをナイーブと批判した経緯
があります。その一方で、クリントン氏の親中外交姿勢に対し、オ
バマ氏は意外な程、同盟国重視姿勢を明らかにしています。
クリントン氏は、外交について自信を持っている訳で、彼女がどの
程度自分の意見を抑えながら、オバマ氏の直接対話路線を推進でき
るか非常に興味深い問題であると言えます。

オバマ氏の直接対話路線に乗じる形で、北朝鮮はオバマ氏の大統領
就任式への参加を希望し、断られたという話も伝わってきています。
シリアにしても、イランにしても、オバマ政権が外交について先入
観がない(というか知識がない)発足直後を狙って外交攻勢をかけて
くる筈です。

ならずもの国家にとっては、自分の側の約束は履行する必要を感じ
ていませんから米国から少しでも譲歩を得られれば、それは外交上
の勝利という事になります。実は直接対話そのものが相手政権を認
知する事になるので外交的には譲歩を意味する事もあるのです。
ならずもの国家としては、そういう事情を知らなかったと思われる
オバマ氏の発言を梃子に何らかの果実を得られればもっけの幸いと
いう訳です。

オバマ氏の政権発足後の優先課題が経済対策である事は、万人が等
しく同意する所です。また、その次の課題がイラクからの撤退問題
である事は容易に想定のつく所です。唯一の超大国として同盟国関
係については経済協調で欧州が米国の足を引っ張る事さえなければ、
まず、問題はない筈です。その一方で、目下発火中であるというも
ののイスラエル-パレスチナ問題はもともと今日明日に解決のつく
問題でない事も明らかです。

そうであれば、外交上の課題は、ロシア、中国との関係とならず者
国家への核拡散問題という事になりますが、そこでクリントン氏は、
オバマの顔を潰さない様にしながら直接対話の公約を骨抜きにする
必要が出てきます。でなければ米国が外交上の不利益を蒙る事にな
りかねないからです。その点、イラクからの撤退問題も絡んで、な
らずもの国家対策には難しい対応を余儀なくされる様に思われるの
です。この問題をどの様に処理するかで、オバマ・ヒラリー外交の
実力の程が図れるのではないかと考えます。



2008年11月27日木曜日

オバマに挑戦する「ならずもの」国家群

イラン、新世代ミサイルを実験発射 

【11月12日 AFP】 
イランが12日、新世代型の地対地ミサイルの発射実験を実施したと、モスタフ
ァ・モハマド・ナッジャル国防軍需相が発表した。 
同日イランのファルス通信が伝えた。 

国営テレビでは中距離弾道ミサイル「シャハブ(Shahab)3」と同程度の大き
さのミサイルの映像が放映された。同相は「エンジン2基を搭載した複合固形燃
料式の2段式ミサイルで『Sajil』と命名された」と説明し、実験は成功したと
述べた。 

射程距離2000キロと公表されている先行開発の「シャハブ3」は欧州南部にも
到達可能だが、イスラエルを含む中東および圏内の米軍基地の最大の脅威と
なっている。 

* 2008年11月12日 19:50 発信地:テヘラン/イラン 


ロシアが新型ミサイル配備 欧州内の飛び地、米MD計画へ対抗

【モスクワ=佐藤貴生】ロシアのメドべージェフ大統領は5日、クレムリンで
今後の施政方針を示す一般教書演説を行い、米国が東欧で進めているミサイル
防衛(MD)計画への対抗措置として、西部カリーニングラード州に新型ミサ
イルを新たに配備する計画を表明した。また、グルジア紛争をめぐる米国の対
応を批判するなど、今後とも厳しい対米姿勢で臨む方針を明らかにした。

大統領は演説で、「北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大のほか、ロシア
を取り囲むように進む米国のMD計画がここ数年の対立の原因だ」と述べ、
「ロシア国民の安全を守るため」、欧州にあるロシアの飛び地、カリーニング
ラード州で予定していた3つのミサイル部隊の撤廃計画を撤回し、3部隊を継
続して駐留させると言明した。

さらに、新型の地対地ミサイルシステム「イスカンデール」を配備すると述べ
るとともに、ポーランドとチェコに配備される米MD施設に、電波妨害を同州
から実施すると語った。

ロシアは8月のグルジア紛争勃発(ぼっぱつ)後、南オセチア、アブハジアの
両地域のグルジアからの独立を承認したが、「われわれはこの地域から後退し
ない」と明言し、強気の姿勢を示した。

内政面では、憲法を改正し、大統領の任期を現行の4年から最大6年に延長す
べきだと主張した。改正時期は不明だが、現在でさえ強大な大統領権限を一層
強化する考えとみられる。

(産経新聞 2008/11/5)


北朝鮮、サンプル調査を拒否=核問題の先行き流動化も

【ソウル12日時事】朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省スポークスマンは12
日の談話で、核申告の検証問題に関連し、検証方法を(1)現場立ち入り(2)文書
の確認(3)技術者からの聞き取り?に限定すると強調、日韓などが求めるサンプ
ル調査を拒否する立場を明確にした。韓国の聯合ニュースが伝えた。
北朝鮮が核施設でのサンプル調査を拒否する姿勢を示したことで、今月にも開
催されるとみられていた6カ国協議首席代表会合を含め、核問題の先行きが流
動化する可能性も指摘されている。 
(時事通信 2008/11/12)

大統領選出者であるオバマ氏には不運な事に、次期大統領に選出さ
れて以降、「ならずもの」国家群から米国への挑戦が続いています。

最初に挑戦したのは、新冷戦の立役者であるロシアのメドベージェ
フ大統領です。米国の東欧へのMD配備に対抗するとして、ドイツ
とポーランドに挟まれたロシアの飛び地に、短距離地対地ミサイル
「イスカンデール」を配備すると表明しました。

続いて、昨日(11/12)、「ならずもの国家」に指定されていた北朝
鮮が、交渉で合意していたとされる核施設でのサンプル調査を拒否
する事を明らかにしました。同盟国である日本の反応をあえて無視
して強行した、あのテロ支援国指定解除はなんだったのかと思わせ
る動きです。

更に、同日、イランが新型中距離弾道弾の発射試験に成功した事を
発表しました。イランが発電用原子炉向けとして進めているウラン
濃縮プロジェクトが成功すれば、この中距離弾道弾に、核弾頭が搭
載される事はまず確実であり、米国にとっては、中東情勢を更に不
安定化するものとして、また、柔らかな下腹であるヨーロッパを射
程に収める新たな脅威として、さぞ、不快な事であろうと思います。

一見、オバマ氏は「不運」にも、当選そうそう、これら「ならずも
の」国家群の挑戦を受けている様に見えますが、実は、これらの動
きは、「まさしく」オバマ氏が大統領に選出されたからこそ発生し
たものなのです。

宥和的なオバマ氏が何故、「ならずもの」国家群の挑戦を受けなけ
ればならないのでしょうか。
それは、オバマ氏が選挙運動中に、「ならずもの」国家との無条件
の話し合いを表明していたからに他なりません。
話し合い、つまり、交渉を行う場合は、ギブ&テイクが前提となり
ます。つまり、交渉開始前に、既成事実を積み上げて置く事が、交
渉時に切れるカードを増やす事になり、交渉上の優位を齎します。

言い換えると、短距離弾道弾配備の中止や、サンプル調査の実施や、
新型中距離弾道弾の開発中止を行う替わりに米国から色々な譲歩を
引き出す事が出来る事になります。

オバマ氏は、無条件に話し合う事を「ならずもの」国家への善意と
して表明した訳ですが、「ならずもの」国家群は、リアリストとし
て行動した事で、オバマ氏に対し強烈なしっぺ返しを行ったと言え
ます。勿論、オバマ氏はこれを理由に話し合いに入らないというオ
プションもありますが、それでは、「変革」の公約に違反した事に
なり、オバマ大統領の存在意義を失わせてしまいます。自業自得と
も言えそうですが、オバマ氏は、大統領の座を得た替わりに、米国
の国益を損ねたと言えなくないように思われるのです。