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2010年6月21日月曜日

「はやぶさ」の成功を軍事面から眺めてみると

※CGはJAXA Webページから転載

人類初の快挙「はやぶさ」 軍事への応用は周辺諸国への脅威

日本の小惑星探査機「はやぶさ」が3億キロ離れた小惑星イトカワから無事帰
還した。「はやぶさ」の7年間・60億キロの航程は、人類の宇宙史において多
くの新記録を打ち立て、世界一を狙う日本の宇宙技術を示すこととなった。
チャイナネットが「はやぶさ」に対する専門家の見方を紹介した。

「はやぶさ」は技術的な故障で3年ほどコントロールがきかなくなってしまっ
たが、生き残ったエンジンを組み合わせることで起死回生し、人類の遠隔操作
技術において初の快挙を成し遂げた。

香港の軍事評論家である馬鼎盛氏は「もし日本がこれらの成果を軍事面に応用
すれば、中国やその周辺国家にとっては大きな脅威になる」と語った。

ただし、北京のある軍事専門家は「はやぶさなど大したことはない。カプセル
はたった6キログラム、使用したM5ロケットが推力も小さく、軍事用に応用し
たところでどうにもならない。また、日本の宇宙事業は商業的マーケットに乏
しく、中国の宇宙事業の勢いにはかなわない」と語った。

一方で英国の『JANES MISSILES AND ROCKETS』に
よれば、日本のM5ロケットは直径2.5メートルの世界最大級の三段式固体燃
料ロケットで、1.8トンの衛星を250キロメートル、傾斜角31度の楕円軌道に
打ち上げることができる。また、M5ロケットは(その気になれば)大陸間弾
道ミサイルにも使えるという。

日本は電子と半導体の強みを生かし、制御の正確さで他国をリードしている。
米国は日本と協力し、その先進技術を入手すると同時に、ロケット推力技術を
日本と共有している。また、「はやぶさ」は真の宇宙探索を行うために開発さ
れた。飛行中は、先進的なイオンエンジンの運用や、小惑星への自律的接近・
着陸、岩石採集、地球への帰還、回収等を含むさまざまな実験が行われた。

これらにより、日本はその宇宙開発史上において大きな一歩を踏み出したと言
える。「はやぶさ」が達成した任務は、今後、太陽系形成の謎解きや、小惑星
の地球への衝突を低減させるための研究において大いに役立つだろう。

ロシアの専門家、ボフリア(音訳)は『プラウダ』の中でこう警告する。日本
は超大国としての一連の属性を持つ。軍事費は世界第5位、自衛隊はヘリ空母
4艘、艦艇40艘及び先進的防空システムを備えている。軍事装備は大部分が国
内生産化され、技術的装備も常に更新されており、核兵器の生産に必要な技術
も保有している。日本軍は地域における最強武力の一つである。

日本政府は海軍陸戦隊の再編成として「待機部隊」を作り、敵の水際陣地占領
のための演習を繰り返し行っている。また1992年、国際緊急援助の派遣に関す
る法律の開始で、日本は国連の承認を得ずに国際軍事行動に参加することがで
きるようになった。敗戦国のリーダーである日本は「歴史的不公平」を言い訳
にして、度々ロシア、中国、韓国に対し領土要求を行ってきた。

領土問題といえば、日露間の北方領土問題の方が日中間の尖閣諸島(中国名:
釣魚島)問題より、その紛争が激しくなっている。ロシアは中国と韓国を仲間
に引き込み、連携して日本の領土要求を制止したいと考えている。そうなれば、
これら「反日株式会社」の中で最も大きい利益を得るのはロシアだが、そのた
めの投資比率が最も大きいのもロシアということになるだろう。

(Serchina 2010/06/19)
}}}

上記のサーチナの記事はテーマは良いのですが、勉強不足の面があ
ったり、事実誤認の面があったりと食い足りない処が多々あります
ので、少し「はやぶさ」の軍事的側面を補足をしてみたいと思います。

「はやぶさ」を軍事的に考えた場合、主として三つの側面から評価
する事が出来ます。

一つは、「はやぶさ」を打ち上げたビークルの問題です。宇宙ロケ
ットと弾道ミサイルは、性格の違いはあるものの、使用目的の違い
しかないと言ってしまう事ができます。「はやぶさ」を打ち上げた
M-V(ミュー5)型ロケットは全段固体燃料の三段式ロケットです
が、米国のICBMであるピースキーパーを大型化した様なサイズと性
能を持っています。

ただ、衛星発射ロケットとしてある意味当然なのですが、ICBMとし
て使う時の問題点は、発射準備に時間と人手を要する点です。
ICBMの場合は、いつでも発射できなければなりませんので、発射準
備に何日も何週間もかかっているようでは話になりません。
最新のICBMは、トレーラートラックに乗せられる程度に小型化され
且つ、発射準備も数分程度、人手も数名程度で発射できる様になっ
ています。

実は次期固体ロケットと言われているイプシロンロケットでは、打
ち上げコストの削減を目指しており、この発射準備期間の短縮と発
射要員数の削減がメインの開発目標の一つになっています。また、
当初、ロケットは北海道での発射を視野に入れて移動可能とする事
も検討されていました。その点からすれば、Mロケットよりも現在
開発中のイプシロンロケットの方がよりICBMに近い性格を持つ事に
なる様に思います。

二番目は、誘導技術という側面です。ICBMは精密に誘導できれば出
来るほど、攻撃力は同じでも弾頭重量を小型に出来、同じペイロー
ドであれば、多数の弾頭を搭載する事が出来ます。誘導技術の正確
さは、まさにこの精密誘導技術そのものと言えます。地球から二億
キロ離れた、長さ数百mの目標に正確に誘導できたのですから、
ICBMの場合にも、高度の誘導技術を発揮できる事は確実であると言
えます。

三番目は、再突入弾頭の技術です。「はやぶさ」は、7年のブラン
クの後に、地球に接近した処で、帰還カプセルを切り離し、それを
正確にオーストラリアの着陸目標に向け正確に再突入させました。
そして帰還カプセルは着陸目標から5百m以内の誤差で着陸しました。
半発必中界(CEP)500mは、ICBMであってもかなり良い数字です。

「はやぶさ」は惑星間航行速度である毎秒10km以上のスピードで再
突入したので、表面は非常な高温になったのですが、回収後に帰還
カプセルを確認した処では、熱的にも物理的にも全く損なわれてお
らず、昨日作成された様な状態であったと言います。つまり、熱的
な影響は耐熱シールドで完全に食い止める事ができたという事です。
これは、速度が秒速数kmのICBMより余程高い条件をクリアしたと言
えます。

つまり、今回の「はやぶさ」の成功は、日本がICBMの発射と精密な
誘導、熱的影響を受けない再突入体の製造とその突入実験に成功さ
せたのと同義であったと言う事になります。

日本は勿論、国是として核武装を行なう事はないでしょう。しかし、
日本は世界有数の原子力発電大国であり、原子炉関係機器の製造で
もトップクラスの実力を持っている事は、周知の事実です。

ロケット技術、誘導技術、再突入弾頭技術、核分裂性物質の処理加
工技術が合わされば、核武装に必要な要素技術は全て揃っている事
になります。

従来から日本は潜在的な核保有国と言われていましたが、それをよ
り赤裸々に見せつけたというのが、「はやぶさ」の成功を軍事的に
見た時の見方であり、それは、例えば、日本を政治外交的に追い込
む事は、核武装への誘惑を強める事になりかねないと認識させる事
で日本の持つ抑止力の強化に役立つ事になったと解釈すべきである
様に思うのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/









2010年2月8日月曜日

IRBM(中距離弾道弾)配備を推進するインド

※アグニ3の発射実験。「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」から転載

インド、弾道ミサイル発射実験成功 中距離「アグニ3」

PTI通信によると、インド国防省筋は7日、核弾頭搭載可能な中距離弾道ミ
サイル、アグニ3(射程3千キロ)の発射実験を同国東部オリッサ州沖の島で
実施し、成功したと明らかにした。アグニ3は中国の主要都市の一部を射程に
入れる。

インドのアグニ3発射実験は今回が4回目。2006年7月の最初の実験は失
敗したが、07年4月と08年5月の実験はいずれも成功している。(共同)
(産経iza 2010/02/07)


現在、インドが配備しているアグニ2は、MRBM(準中距離弾道弾)
の射程である1250マイルの射程距離しか持っていない事から、中国
の一部を射程に収めているとは言うものの、まず、パキスタン向け
と言って良いと思います。

これに対し、今回で4回目になるテストを成功させた、アグニ3は
名前こそ、アグニ2と似ていますが、実は、全く異なるミサイルです。
アグニ2が、細長い、如何にも、射程を延長する為に、ロシア製の
SCUDを二段重ねにした様に見えるのに対し、アグニ3は直径がより
大きく、将来ICBM(大陸間弾道弾)に発展する余裕を持たせたミサイ
ルとして開発されている様に思われます。

アグニ3の射程を、米国は2000マイル以上と見積もっていますが、
この射程は、アグニ2に比べ約倍近いとはいうものの、中国の全域
を納めるのに不十分であり、中国向けの弾道ミサイルとしては、中
途半端な印象は免れません。従って、配備当初は、現状の射程距離
であっても、配備後には、更に射程を延長するものと見込まれてい
ます。

インドの弾道弾配備が進むと、実は我が国にも影響が出てきます。
つまり、インドの脅威を受ける様になる中国ですが、対抗上、イン
ドを射程に納めるミサイルを配備する必要が出てきます。インドが
配備可能な弾道ミサイルとしては、アグニ2と同程度の射程を有す
るCSS-2,CSS-5を前進配置するか、貴重なICBMの一部をインド向け
に振り向けるしかありません。

恐らくは、当面は、配備数に余裕のあるMRBMの前進配置で対応し、
その内に、射程3000マイル程度のミサイルを配備するものと思われ
ますが、元々、射程の長いCSS-5の長射程型は、日本向けと見られ
ていました。この為、一時的とは言え、中国の日本向け核戦力の脅
威が、低下する可能性があるのです。

また、相互抑止の観点からすれば、中国にとって、アメリカやロシ
アは、核抑止ゲームのベテランであり、ある意味で中国が見習うべ
きゲームの師匠とも言え、相互抑止の信頼性が高かったのに対し、
中国がゲームに習熟した時、新規に参入するインドやイラン、北朝
鮮の様な、核ゲームの素人は、行動が予測できずリスクが高まる事
になります。中国にとっては、相互確証破壊(MAD)戦略による相互
抑止が効きにくくなる事になります。それへの対抗策としては、核
ミサイルに多めに配備すると同時にMDを配備する事になります。

中国は、今年1/11にMD実験を行っていますが、このMDの対象は、
インドという事なのかも知れません。中国はかって、日本のMD配
備を地域軍拡を促進すると非難してきましたが、インドの核戦力の
充実によって、日本にとっての北朝鮮の核ミサイルがMDを促した
のと同様の立場に立つことになったのは、如何にも皮肉な結果であ
る様に思われるのです。以前、日本のMDを非難した誰かさん達は
中国のMD配備を非難しないんでしょうか。


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2009年12月2日水曜日

実はイランの安全保障を危うくする核兵器開発


※イスラエルのアロー対弾道ミサイル防衛システム

「有言実行だ」 イラン大統領、ウラン濃縮拡大に意欲 

イランのアフマディネジャド大統領は1日、国営イラン放送を通じ、ウラン濃
縮施設10カ所の新設計画について「技術的に不可能だとする指摘があるが、
イランは有言実行だ」と述べ、核兵器開発につながる恐れのあるウラン濃縮活
動の拡大に強い意欲を示した。

欧米が検討する新たな経済制裁を回避するため、対決姿勢を抑えていた大統領
は、同国第2の濃縮施設の建設停止を求めた国際原子力機関(IAEA)定例
理事会の決議に反発。核問題は「終わった話だ」との従来の主張を再び展開し、
制裁は「何の効果もない」と繰り返して強硬姿勢の復活を印象付けた。

決議への報復として「われわれは新たな核施設を建設する際に報告する義務は
ない」として予告なしの建設もあり得ると示唆。IAEAとの「友好的な関係
は終わった」として今後の協力は最小限にするとした。(共同)

(産経新聞 2009/12/02)


イランが核兵器を開発できたその時、アフマディネジャド大統領は
何を感じるでしょうか?核兵器を開発できたイランの科学技術に対
する誇りでしょうか?あるいは、イスラエルの核兵器を抑止できる
様になったという安心感でしょうか?

私はそうではないと思います。逆にイスラエルからの核の恐怖に怯
える毎日がアフマディネジャド大統領やイランの宗教指導者に訪れ
る様になるのではないかと思います。そして、イラクやシリアの核
開発に対して実力を行使したイスラエルが何故、イランの核開発に
対して手を出さないのかという疑問に対する答えにもなると思うの
です。

イランが強大な破壊力を持つ核兵器を手にした時、そして、それを
イスラエルに対して使用できる事になった途端、アフマディネジャ
ド大統領は、イスラエルが、それと同等の核兵器を200発以上持っ
ている事に思いを致さざるを得なくなります。

今まではイランは国際社会の暗黙の応援を感じていたかも知れませ
んが、国際社会がイスラエルに対して、非核兵器国に対する核攻撃
を控える様に圧力を掛けていたのも事実です。紛争相手国が核兵器
を保有していないにも係わらず、その国を核兵器で攻撃する事は道
義的にも人道的にも許される事ではなくなっています。

では、核兵器を保有したイランを、イスラエルが核攻撃する場合は
どうでしょうか?イランはイスラエルの生存を許容していない事を
再三に亘り広言しているのですから、イスラエルがイランからの攻
撃を合理的な根拠から予測し、それを甘受する事が、国家生存に係
わるとものと捉えた時、イスラエルの先制核攻撃を不可とする国際
法はありません。イランが今までの様に、イスラエルの生存を恫喝
すれば、すぐさまイスラエルからの報復核攻撃を予測せざるを得な
くなるのです。

では、イランがイスラエルの核報復を避けながら、イスラエルを核
攻撃する事ができるのでしょうか? 第四次中東戦争で、アラブ連
合軍がイスラエルに対する奇襲に成功した例もあるので、可能性が
ないとは言えませんが、現状では、極めて難しいといわざるを得ま
せん。イスラエルは現在判明しているだけで、F-16戦闘爆撃機と中
距離弾道ミサイル ジェリコー(MRBM,IRBM)という二通りの核兵器
運搬手段を保有しています。イスラエルの核報復を回避しようとす
れば、イスラエル空軍の全ての空軍基地と、核ミサイルを同時に潰
す必要があります。

イランも、イスラエルと同様に弾道ミサイルを開発していますが、
イスラエルのもの程の射程を得られていません。また、イスラエル
は独自開発のアロー対弾道ミサイル防衛システムを保有しているの
で、イランがミサイルによる核先制攻撃を行っても、10分程度の時
間的余裕があるので、弾道ミサイル防衛が可能で、イスラエルの第
二撃能力を破壊できるとは限りません。逆に、イスラエルは現時点
でイランに対する第一撃能力を備えており、その行使を抑制してい
るのは、イランが核を持っていないという要素が一番大きいのでは
ないかと思われるのです。

アフマディネジャド大統領は、核兵器を保有した後になって漸くそ
の事に気が付き、今や自らの上にダモクレスの剣があるのを知る事
になるのではないかと思われるのです。


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2009年7月27日月曜日

インドの戦略ミサイル原潜! 完成

※写真は、進水式で演説するシン首相。共同通信サイトより転載

インドに原潜 「浮沈」懸けた

インド海軍は26日、初の国産原子力潜水艦「アリハント」の進水式をマンモ
ハン・シン首相(76)立ち会いの下、南部アンドラプラデシュ州ビシャカパ
トナムの海軍基地で行った。国産原潜の保有は米露中英仏に次いで6カ国目。
潜水艦からの核ミサイル発射能力を確立し、核抑止力の強化を目指すが、中国
の核軍拡に拍車がかかる可能性も否定できず、日本を含む東アジアの安全保障
にも影響が出そうだ。

ロイター通信などによると、インドの国産原潜は全長 112メートルで、排
水量約5500トン。出力80メガワットの加圧水型原子炉が積まれ、核弾頭
搭載可能な射程約 700キロの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)計12
発を装備する。アリハントとは、「敵を撃破するもの」を意味する。

インドは現在、ロシア製を中心にディーゼル潜水艦を16隻保有しているが、
純国産はない。原潜の開発には1980年代から着手し、これまでにかかった
費用は総額29億ドル(約2749億円)とされ、原子炉などの試運転を経て
2011年以降に実戦配備する。インドはさらにロシアからアクラII級の原
潜を調達する方針で、アリハントを皮切りに今後10年で核ミサイル搭載可能
な原潜3隻を配備する見通しだ。より射程の長いSLBM搭載の原潜の開発も
進めているとされる。

シン首相は進水式で「国土防衛のために手段を尽くし、世界の最先端技術に遅
れないよう努めることはわれわれの義務である。原潜開発はインドの軍備にと
って歴史的にも画期的な出来事だ」と述べた。

インドの国産原潜保有は、空母建造や新型戦略原潜の配備を進める中国への対
抗を意図したものであることは明白だ。元海軍参謀長のアルン・プラカシュ退
役将校(64)は海軍力の増強を進める中国について、「核弾頭発射能力を持
つ原潜を8隻程度保有しており、潜在的な脅威だ」と述べている。

インドの軍拡は常に中国を意識したものであり、そのインドを常に隣国パキス
タンが追うというのが、地域の軍拡連鎖構造になっている。1962年の中印
国境紛争から2年後に中国は核実験に成功。以降インドは核開発に全力をあげ、
74年に核保有国となった。これでパキスタンも核開発に着手、98年にイス
ラム圏で初の核保有国になった。

今回、核弾頭搭載可能なSLBMを配備する原潜を得たことで、インドの核戦
力は格段に高まる。潜水艦の特性は、敵に見つかりにくい上に攻撃力が高いこ
とにある。たとえ地上の核基地が先制攻撃によって撃滅されても、海底にもぐ
った潜水艦は無傷で残りやすく、敵への報復能力を保つことができる。

このため、保有する核弾頭数が仮想敵より圧倒的に少なく、先制攻撃を受けや
すい状況にあっても、SLBM配備の潜水艦があれば、実効ある核抑止力を維
持できるわけだ。

さらに動力が原子力であれば、航続期間もケタが2つ違うぐらい飛躍的に伸び
る。理論上は、食料が尽きない限り、燃料の補給なしで半年でも1年でも海底
を全速力で跋扈(ばっこ)できる。

(産経新聞 2009/07/27)


インドが、ATV(Advanced Technology Vessel)として、原子力潜水
艦の開発を推進しているのは、良く知られれていましたが、最初に
戦略ミサイル原潜(SSBN)を完成させたのには、少し驚きました。
今の処は、限られられた情報しかないので、大した事は言えません
が、皮肉な事に、今回完成したインド初の戦略ミサイル原潜は、イ
ンドの仮想敵国である中国の第一世代ミサイル原潜である夏級とそ
っくりだと言えます。

表面上のスペックを比べてみます。

●インド アリハント級SSBN
水中排水量 5,500t
全長 112.0m
全幅 ??.?m
主機 原子力ターボ・エレクトリック? 1軸(80MW)
水中速力 20kt以上
最大潜行深度 300m
乗員 100名
弾道ミサイル SLBM(射程700km)/ 垂直発射筒12基

●中国 夏級SSBN
水中排水量 8,000t
全長 120.0m
全幅 10.0m
主機 原子力ターボ・エレクトリック 1軸(90MW)
水中速力 22kt
最大潜行深度 300m
乗員 84名
弾道ミサイル JL-1A(巨浪1/CSS-N-3 射程2150km)/ 垂直発射筒12基

大きさからみれば、SSBNとしては、小型の部類に入ります。
中国の夏級SSBNと比べても若干小型です。但し、搭載するSLBMは、
射程こそ劣りますが、搭載する数は、12基と夏級SSBN同様となって
います。

インドは、1980年代~90年代にソ連のチャーリー級巡航ミサイル原
潜を運用した経験があり、それに加えて原潜の設計・建造について
は深い経験を有するロシアから技術導入を行っていますので、小型
である事は、能力が低い事を意味していません。中国の第一世代原
潜がその騒音で有名であったのとは対照的に、インドの戦略ミサイ
ル原潜は、ロシア製と同程度の騒音レベルを達成している可能性が
あります。少なく共、それを目的とした設計がなされている筈です。

「アリハント」が搭載する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)Sagarika
は射程から見て、現時点では、パキスタンや中国の一部しか狙えま
せんので、第二撃戦力(敵の第一撃から生き残って報復打撃を行う
能力)としては限定的な能力しか持っていません。
しかし、Sagarika SLBMの射程を順次伸延させる事で、パキスタン
のみならず中国に対しても報復打撃力を持たせようとする筈です。

逆に、パキスタンや中国は、アリハント級SSBNを追尾し、有事には
撃沈する体制を整えようとする筈です。隣国であるパキスタンは別
として中国は、現在、スリランカ、ミャンマー、パキスタンに海軍
艦艇が利用できる港湾を設置しようとしていますが、これも、中国
自身のシーレーン防衛と同時に、インドの戦略原潜に備えたものと
言えるのかも知れません。

それに対してインドは、この艦のエスコート用に、国産攻撃型原潜
(恐らくアリハントと同じ設計で、SLBMを持たないコンパクトな艦)
を建造中であり、また、ロシアからはアクラII級攻撃型原潜をリー
スする事になっていますが、これらの直衛艦に加えて、今後は、効
果的な対潜水艦戦を遂行できる水上艦艇や海上航空兵力を順次整備
拡大していくものと思われます。
インド洋の波は今度ますます高くなっていきそうです。


'''環球閑話日々の徒然まとめサイト'''
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2009年7月6日月曜日

新型スカッド「特に日本に脅威」は本当か?

※画像は、北朝鮮のミサイルの射程範囲の大きさ 防衛白書から転載

【北ミサイル】3発は新型スカッドか 「特に日本に脅威」韓国紙

韓国紙、朝鮮日報は6日、政府筋の話として、北朝鮮が4日に南東部の旗対嶺
から連続発射した弾道ミサイル7発のうち3発は、射程を千キロに伸ばした新
型スカッドとみられると報じた。事実であれば日本の首都圏近くまで届く射程
で、同紙は「特に日本にとって脅威」と指摘している。
同紙によると、短距離のスカッドC(射程約500キロ)改良型と推定されて
いる。日本のほぼ全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約
1300キロ)2発とともに、旗対嶺から約420キロの日本海の同じ水域に
着弾。いずれもわざと短く飛ばしたとみられ、ノドンも精度が向上していると
いう。(共同)

(産経新聞 2009/7/06)

【北ミサイル】命中精度がアップ?

【ソウル=水沼啓子】北朝鮮が4日に発射した弾道ミサイル7発のうち約5発
が、発射台から約450キロ離れた日本海上の同じ地点に着弾していたことが
5日、明らかになった。韓国の聯合ニュースが韓国政府筋の話として伝えたも
ので、誤差が大きいとされていた北朝鮮のミサイルの命中精度が向上している
ことを示している。

同じ地点に着弾したのは、短距離弾道ミサイル「スカッド」(射程300~
500キロ)の改良型と中距離弾道ミサイル「ノドン」(同約1300キロ)
とみられる。発射された7発中3発は飛行速度が極めて速く、ノドンの射程を
短くして発射した可能性が指摘されている。
現在、スカッドは200~300基、日本のほぼ全土を射程に収めるノドンは
約200基が配備済みとみられる。オーストラリアのスミス外相は地元メディ
アに「最大の懸念は(北朝鮮が)射程や精度を向上させていることだ」と述べ、
ピンポイント攻撃には不向きとされてきたスカッドとノドンの性能が改善され
ているとの認識を示した。韓国軍も来年、発射の兆候を探知しにくいスカッド
による攻撃に備え、弾道ミサイル早期警報レーダーを導入する計画だ。
また、聯合ニュースは、4日に発射されたミサイル7発の価格を計3400万
~4600万ドル(約33億~45億円)と推定。北朝鮮が今年発射したミサ
イルの総額は3億4400万ドル(約334億円)を超えるとみられる。

(産経新聞 2009/7/05)


米国では、SCUD-ERという新しいミサイルのコードが付いています
が、北朝鮮が今回発射したミサイルは、射程500キロのスカッドの
射程距離延長型という情報があるようです。実際に飛行した距離は
450kmですから、それを確かめるすべはありません。命中精度が向
上したという話も、北朝鮮が、目標をどこに設定していたのか明ら
かではありませんので、それもどの程度確かなのか不明なのですが、
弾着観測をした韓国が言うのですから、まあ信じる事にしましょう。

では、この射程1000kmのSCUD-ERは、報道の通り、本当に「特に」
日本にとって脅威なのでしょうか?
一般論で言えば、命中精度が向上したり、射程距離が延長される事
は、脅威の増大要素と言えます。しかし、北朝鮮の場合は、今まで
の命中精度が酷すぎたという点が指摘できます。ノドンの場合は、
CEP(半発必中界)は2000m~4000mです。半発必中界というのは、発
射した半分が目標からCEPで示された半径の円内に落ちる(残りは更
に外れる)。という概念ですから、北朝鮮のミサイルの命中精度の
度合いが判ろうというものです。

ちなみにSCUDの方ですが、今までは概ね射程に比例して半発必中界
も広がっており、射程1000kmで計算すると、1400m~2000mになります。
ノドンに比べれば、大分良くなっていますが、それでも、現在の
SRBMとしては、それ程、良好とは言えません。
(ちなみに、米国が1969年に配備を開始したPershing Iミサイルは、
射程、740kmでCEPは150mと言われています。また、これを改良した
Pershing IIは、1984年に配備が開始され、射程1600km、CEPは、30m
という精度を持っていましたが、現在では両方共、既に廃棄されて
います。)

簡単に言えば、北朝鮮のミサイルは、広域目標しか狙えないという
事になります。典型例では都市攻撃には使えるが、例えば、港湾施
設を狙ったり、自衛隊や在日米軍基地、飛行場や原発や製鉄所、工
場をピンポイントで狙ったりするのは不都合という事になります。
それは、ノドンであってもSCUDであっても変わりません。(Pershing
の150mや30mというCEPであれば、それが可能となります。)
命中精度が二倍に向上しても同じです。勿論、核弾頭を装備すれば
多少命中精度が悪くても弾頭威力で、カバーできますが、核弾頭を
使うのであれば、命中精度を向上させる意味がない事いなります。

笑い話の類になってしまいますが、今まではミサイルを迎撃するに
も、どこに飛んでくるのか判らなかったので、狙いをつけるのが困
難であったものが、今度は、ちゃんと目標めがけて飛んでくるので
ミサイル防衛が容易になったとすら言えるかも知れないのです。

それに、上記の記事では、北朝鮮はSCUD200~300基、ノドン200基を
配備済みと書かれていますが、SCUD-ERは、これから数が増えるか、
あるいは、今までのSCUDを改修して再配備する事になります。従っ
て、ある日突然、全てのSCUDが日本に届く様になる訳ではありませ
ん。また、ノドンやSCUD-ERが通常弾頭であるならば、日本に届く
ミサイルの数が200発が300発になっても、それによる損害の増加は
大騒ぎする程のものではありません。命中精度の低い通常弾頭ミサ
イルによる損害の程度は知れています。その一方で、核弾頭装備で
あれば、200発の核弾頭を日本向けに準備しているのであれば、既
にオーバーキル状態であり、それが300発になってもオーバーキル
が変わる訳でもないので、それもあまり意味がないと言える様に思
います。
(例えば、200発の核弾頭で9000万人が死んでいる処へ、100発の核
弾頭を追加して、死者の数を950万人にしても軍事的に見て、あま
り意味のある行為ではないと言う事です。)

従って、今回、北朝鮮のミサイルの精度、射程が向上した事は、北
朝鮮のミサイルセールスの宣伝文句に使うには結構でしょうが、日
本に対する脅威が増加したとパニックになる様な内容では全くない
と言える様に思います。
それよりも寧ろ、中朝国境から釜山や済州島を狙える短距離弾道ミ
サイルが出現したと言う意味の方が大きいと言えるのかも知れません。


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2009年7月3日金曜日

プレ核武装のすすめ 通常型弾道ミサイル配備を!

※写真は、ロシアのSS-26イスカンダールSRBMの路上移動ランチャ

中国が日本の核武装論を懸念 先月の外相会談で直接表明か

先月東京で開かれた日中外相会談で中国の楊ケツチ外相が、北朝鮮の核・ミサ
イル実験を背景にした日本国内の核武装論や敵地攻撃論の高まりを指摘し「関
心を持って注視している」との表現で、中曽根弘文外相に懸念を伝えていたこ
とが分かった。複数の米中関係筋が明らかにした。

中国は、米国との間ではさまざまな協議で日本の核武装論を取り上げていると
いう。しかし、日本政府筋は、中国が閣僚レベルで日本に直接懸念を示したの
は「初めてではないか」と指摘。北朝鮮の脅威に対抗し、日本が軍備増強に走
るとの中国側の懸念が、かつてなく強まっていることを象徴している。

会談で楊外相は、北朝鮮の核実験や核保有に強く反対する立場を表明し、「北
東アジアの平和と安定の維持」の重要性を強調。日本の核武装論と敵地攻撃論
の台頭に言及した。(共同)

(産経新聞 2009/7/02)


中国にとっての悪夢は、中国がアジアの覇権を握る上で邪魔になる
日本が核武装する事です。その意味で、北朝鮮が核武装した結果、
日本や韓国が核武装を行う核ドミノが発生したならば、一番不利益
を蒙るのが、中国であると言えます。
その一方、核武装をした北朝鮮は、中国の核の傘から離脱可能とな
る事で中国の影響力が低下するので、中国にとってはダブルパンチ
となる北朝鮮の核武装を中国も支持しないと、今まで私は考えてい
ました。また、中国外交当局も、ミサイル実験や核実験への国連の
非難決議に名を連ねている事もこの見方をサポートしていると考え
ていました。

しかしながら、核実験を行った後も、少なくとも報道で見る限り、
北朝鮮へ搬入される物資の量が低下したという様子はありません。
北朝鮮への食料等の輸送ルートは、その殆どが中国経由のものとな
っていますから、中国が本気で北朝鮮の核武装を止めさせようとし
た場合、この北朝鮮への物資輸送を絞る事が中国の意思を伝える最
も簡単で有効な策であると考えられます。しかし、実際には、それ
を行っていません。つまり、中国は、北朝鮮の核武装を暗に支持し
ている事になります。

中国は、北朝鮮が、米国による和平演変を避ける為に、核武装する
事を黙認すると共に、日韓の核武装を行わせない政治外交上の自信
があると言う事になります。北朝鮮に対しては、核武装後も、自国
の傘下におく事を承諾させつつ、国際社会に対しては、如何にも中
国も困惑しているとポーズを取っている訳で、正に中国の二枚舌外
交の面目躍如と言った感じでしょうか。日本国内の媚中派勢力を糾
合すれば、中国に不利益となる政策を実行させないという意思も感
じられますが、上記の報道の様に、公式ルートでも、懸念を表明し
ておく事で将来の布石にしておくという意味合いがあると思われま
す。

では、日本としては、どの様な対処を行えば良いのでしょうか?
私が提案するのは、プレ核武装です。競争相手には、相手が一番嫌
がる事を行うのが、外交上の鉄則ですが、日本が一方的に核武装を
行う事は、NPTをはじめとする各種条約に違反する事になり国際条
約社会の非難をまともに受ける事になります。その上、米国との関
係も悪化させてしまう事になるので、万人が仕方無いと認める状態
(例えば、核攻撃を受けた場合)で無い限り良策とは言えません。

それに替わる対策となるのが、プレ核武装です。通常弾頭型の移動
式弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルの配備を核武装に先行し
て実施するのです。

核武装を行う上での問題は、核実験を行った後の兵器体系の整備に、
時間と資金が必要となる事です。ある意味、日本の技術力と原子力
産業のレベルから考えれば、一度政治が決断すれば、核弾頭そのも
のを製造するにはそれ程時間はかかりません。それよりも、弾道ミ
サイルやSSBN(戦略ミサイル原潜)と言った兵器体系を展開する方が
余程、資金と時間がかかります。

それであれば、まずは通常弾頭を装備した、路上移動式の弾道ミサ
イルや、通常動力型潜水艦に通常弾頭の潜水艦発射弾道ミサイルを
装備したSSBを整備し、配備しておく
のです。また、有事に際して、
急速に核弾頭を製造する為の設備を作っておき、定期的に、ダミー
の核弾頭を製造する等、プラントを稼動させておくのです。こうす
る事で、日本を攻撃すれば、速やかに核報復が行われる事を確信さ
せる事で実際に核武装するのと大差のない結果を得られる事になる
と思われるのです。

しかも、このプレ核武装計画は、実際には核武装を行っていないの
ですから、国際的に非難の対象になる事はなく、その一方で、中国
をはじめとする特亜諸国に対しては、大きな外交圧力をかける事が
できる
様になると思われるのです。


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2009年7月2日木曜日

レベルが一段上がった日本の防空管制システム


ミサイル防衛の「頭脳」運用開始=探知情報を集約、迎撃判断-空自

防衛省航空幕僚監部は1日、弾道ミサイルの探知情報を一元的に処理し、適切
な迎撃方法を判断する航空自衛隊の自動警戒管制システム(JADGE)の運用を
開始したと発表した。従来の処理能力が大幅にアップし、弾道ミサイル防衛
(BMD)システムの「頭脳」として、北朝鮮などの脅威に迅速な対応が期待で
きるという。
BMDでは、空自の地上レーダーや海上自衛隊のイージス艦のレーダーなどが弾
道ミサイルの航跡を探知。日本の領土、領海に落下する場合は、イージス艦搭
載の迎撃ミサイル(SM3)や地上に展開する地対空誘導弾パトリオットミサイ
ル(PAC3)で迎え撃つ。
JADGEは、従来のシステムに弾道ミサイルへの対応機能を付加。各レーダーの
情報を集約し、対象物の識別や落下地点の計算、迎撃方法の選定を自動的に行
い、イージス艦のシステムなどに伝達する。 

(時事通信 2009/7/01)

コンピュータの歴史に詳しい人は、世界最初のオンラインシステム
としてSAGE(Semi Automatic Ground Environment)という名前を覚
えているかも知れません。今の様にコンピュータとコンピュータが
ネットワークで結ばれるのが当たり前になる前は、コンピュータは、
必ずしもネットワークを介して接続されている訳ではなく、オンラ
イン処理も特別な処理の方法でした。そういったコンピュータの使
い方に一線を画したシステムが防空システムであったのも、国家の
生存の為の荒業であったのかも知れません。

SAGEが半自動と名づけられているのは、レーダーサイトで探知した
情報を集約し、表示する所までは、コンピュータが行い、それを解
釈し、邀撃機に指示を出す部分が、管制官によって行われていたか
らです。その様子は、昔の映画などを見れば判ると思います。
キューブリックの「博士の異常な愛情」なんかが良いかも知れません。

SAGEは全世界レベルのものでしたが、米国は占領中に日本各地にも
レーダーサイトを設置し、戦域レベルの防空システムを導入しまし
た。これが今まで使われてきたBAGDEシステムの前身です。

BADGEシステム(Base Air Defense Ground Environment)はその名の
通り、元々は基地防空管制システムでしたが、自衛隊の創設後は、
米軍から航空自衛隊に管理が移管され、その後システムは二回に亘
って更新されています。機能的には、日本の領空防衛に関する根幹
であり全国28ヶ所のレーダーサイト及び早期警戒機・早期警戒管
制機からの探知情報を総合し、領空侵犯に対して邀撃機による邀撃
管制指揮を行っています。今回のシステム更新は三回目のものであり、
名称もJADGEシステム(Japan Air Defense Ground Environment)と
変更されています。

JADGEシステムは、BADGEシステムの機能や性能を向上させ、航空機
のみならず、弾道ミサイル防衛(BMD)に対しても対応したのが特徴
となっています。また、従来から、全国四ヶ所の防空指令所で邀撃
指揮、管制を行ってきましたが、JADGEシステムは、それを一ヶ所
で統合して実施する事がシステム的に可能となった他、MDについて
は、府中で一元的に行う事になっています。

旧型のレーダーサイトの他、FPS3改やFPS5と言った新型レーダーを
サポートするのは勿論ですが、海自のイージス艦ともリンク16で、
その他の指揮システムとは航空総隊指揮システム等を通じて防衛省
中央指揮システム(CCS)のほか、陸海の指揮システムなどを通
じたデータ連携が行われます。
また、弾道ミサイル防衛をより効果的に実施するため米軍とのシス
テム連携として早期警戒情報や、Xバンドレーダーの情報も受信で
きる様になっている様です。

このシステムは今年の一月から運用が開始されていましたが、7/1
を以って、BADGEシステムとの並行稼動が終了し、本格稼動=実戦化
に入りました。当初は21年度中の実戦化と発表されていましたので、
7/1の実戦化は、最近の北朝鮮情勢の緊迫化を踏まえたものなのか、
幾分スケジュールが前倒しになった事が想像させます。

今回のJAGDEシステム稼動は、体に例えれば、ミサイル防衛に関す
る頭脳と中枢神経系統が大幅と強化された事になります。SM-3や
PAC3と言った表面に見えるハードだけでなく、この様なソフト面
でも能力が強化された事は、北朝鮮にミサイル発射に対する国民
の安心材料を増やす事になると思われます。


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2009年6月25日木曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」のpdf版完成

※写真はブラックジャック爆撃機に搭載されるAS-15巡航ミサイル

少し時間がかかりましたが、ようやくpdf版が完成しました。
文章を多少読み易くすると共に、原典の写真をできるだけ取り入れ
ました。ご覧頂ければ幸いです。

http://space.geocities.jp/ash1saki/NASIC2009J.pdf


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2009年6月18日木曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(余)

※写真は中国の移動式ミサイルの発射シークエンス

最初は三回で終了する予定でしたが、要約部分が字あまりになって
しまいましたが、「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」はこれで
全訳終了です。
今、pdfファイルにする準備を進めています。
原典にあってブログに載せられなかった写真や図なんかもpdfでは
全部ではありませんが復元したと思っています。
ミサイルを調べる時の基礎的な資料として使って頂ければ幸いです。

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SUMMARY(要約)
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弾道ミサイルはすでに広範囲にわたって使用されており、今後とも数的にも多
様性も増加し続けるだろう。弾道ミサイルで使用する目的で大量破壊兵器を入
手する事が可能になる事で、この脅威の重要性は著しく増加する。ロシアの戦
略ミサイル戦力が量的には縮小しているにもかかわらず、ロシアは、恐らく、
合衆国以外では最も大きな戦略弾道ミサイル戦力を保持し続けるだろう。新し
い弾道ミサイルシステム(SS-27 ICBMとSS-N-23 Sineva、及び
SS-NX-32/Bulava-30 SLBM)の開発には、高い優先順位が与えられている。
ロシアの当局は、新しい種類の極超音速飛行体が、戦略弾道ミサイルとして、
ミサイル防衛システムを突破するために開発されていると述べている。ロシアは、
また、新型のイスカンダール-E SRBMを輸出しようとしている。

中国は先進的な技術の弾道ミサイルを生産しており、弾道ミサイル技術を他の
国に売り込んでいる。中国は、非常に大きな戦域ミサイル配備計画があり、台
湾の隣接地に弾道ミサイルの大きな戦力を展開している。中国は、この戦力の
到達範囲を拡大しており、将来の地域紛争に外国が関与するのを防ごうと試み
ている。中国は既に、ICBMの比較的小さな戦力で合衆国を目標にできているが、
今後、中国のICBM戦力は、相当程度、成長すると見込まれる。

北朝鮮はテポドン2 ICBM/人工衛星打上ロケットの開発を続けており、IRBMの
開発も行っている。北朝鮮は弾道ミサイルシステムを輸出しており、今後も恐
らくそれを続けると思われる。

LACMの拡散は、今後十年で更に拡大する。少なくとも九ヶ国が、LACMの生産に
関与している。大多数の新しいLACMは、非常に正確で、通常弾頭を装備してお
り、輸出も可能である。ミサイルが通常弾頭しか装備していなくても、多くの
LACMの高い正確性は、目標に重大な損傷を負わせる事ができる。合衆国の防衛
システムは、多方向から同時に目標を攻撃する低空飛行のステルス型巡航ミサ
イルによって、非常に圧迫を受けるに違いない。

弾道ミサイル及び巡航ミサイルは、比較的低い運用経費、防御システムを突破
する可能性、及び国力の象徴として価値から、多くの国で攻撃用兵器として選
択され続けるだろう。それ故に、将来の軍事計画と作戦において慎重に考慮さ
れなければならない脅威であると言える。


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2009年6月17日水曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(下)



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INTERCONTINENTAL BALLISTIC MISSILES(大陸間弾道ミサイル)
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ロシアはICBMに2000個の核弾頭を保持しており、これらのミサイルの殆どは警
戒待機態勢に置かれ、命令があれば数分以内に発射できる状態が維持されてい
る。ロシアのICBM戦力の規模は軍備制限協定や、ミサイルの老朽化、資源制約
のため、減少し続けるが、ロシアは、おそらくアメリカ合衆国外で最大のICBM
戦力を保持し続けると思われる。戦力を維持し、近代化する努力は、進行中で
ある。弾道ミサイル防衛システムに対抗できる設計のSS-27 Mod 1 ICBMは、現
在5つのミサイル連隊(ミサイル48基)で、サイロ配備されている。ロシアは、
2006年にSS-27 Mod 1の道路移動タイプの配備を開始した。MIRV化されたバー
ジョンのSS-27(SS-27 Mod-X-2(RS-24))は、現在、開発中で飛行試験段階
にある。それに加え、ロシアの当局者は、極超音速で飛行し、ミサイル防衛シ
ステムを突破する新しい種類の戦略ミサイルを開発していると主張している。
1994年12月に効力を発した戦略兵器削減交渉(START I)条約は、ロシアと合
衆国が、各々6000個(ICBM、SLBM、重爆撃機を含む)を超えない弾頭数しか保
有しない様に制限している。2002年の戦略攻撃力削減についてのモスクワ条約
では、2012年末までにロシアと合衆国が各々1,700~2,200の配備された弾頭し
か持たない様に制限している。

中国のICBM戦力は、戦略的な核抑止力の実現を意図している。中国は核武装し
た、液体燃料推進で射程に制限のあるCSS-3 ICBMと、合衆国に到達可能なCSS-4
ICBMの比較的小さな戦力を保有している。しかし、中国は、先進的な新型の移
動式で固体燃料推進のICBMの開発と配備を進めている。

道路移動式で、固体燃料推進の、CSS-10 Mod 1と長射程のCSS-10 Mod 2の両方
が、第二砲兵部隊内で数単位配備された。道路移動式ICBMの配備は、中国の戦
略ミサイル戦力の生存性を強化する。
CSS-10 Mod 1はヨーロッパとアジアの全域及びカナダと合衆国北西部の一部を
射程に収めている。より長い射程のCSS-10 Mod 2は合衆国大陸部の殆どを目標
とする事ができる。中国は一部のICBM用にMIRV弾頭を開発することができよう。
そして、合衆国を脅かすことができる中国のICBMの弾頭の数は、次の15年で
100を軽くオーバーする数に増加することになるだろう。

北朝鮮はテポドン2(TD-2)ICBM兼衛星打上ロケットを開発している。そして、
ICBMとして開発されるならば、それは合衆国に到着できる性能を持つ。TD-2の
二回の発射実験は失敗に終わったが、2009年4月の飛行は2006年7月の発射時と
比べ、より完全な性能を示した。

TD-2の開発で示された北朝鮮の継続的な進歩は、長射程弾道ミサイルと人工衛
星打上能力を保有する事への決意を明白に示している。テポドン2は、将来他
の国に輸出されるに違いない。

イランには野心的な弾道ミサイルと人工衛星打上ロケットの開発計画がある。
そして、十分な外国の援助があれば、イランは、2015年までに合衆国に到達す
る事が可能なICBMを開発しテストすることができると思われる。


■ 性能
ミサイル名 段数 弾頭数 推進剤 発射機 最大射程(マイル)* ランチャー数
ロシア
SS-18 Mod 4 2+PBV 10 液体 サイロ 5,500+ 104基
SS-18 Mod 5 2+PBV 10 液体 サイロ 6,000+ (Mods 4 & 5の合計)
SS-19 Mod 3 2+PBV 6 液体 サイロ 5,500+ 122基
SS-25 3+PBV 1 固体 道路移動 7,000 201基
SS-27 Mod 1 3+PBV 1 固体 サイロ又は道路移動 7,000 54基
SS-27 Mod-X-2 3+PBV 複数 固体 サイロ又は道路移動 7,000 配備未済

中国
CSS-3 2 1 液体 サイロ又は移動式 3,400+ 10基から15基
CSS-4 Mod 2 2 1 液体 サイロ 8,000+ 約20基
CSS-10 Mod 1 3 1 固体 道路移動 4,500+ 15基以下
CSS-10 Mod 2 3 1 固体 道路移動 7,000+ 15基以下

北朝鮮
Taepo Dong 2 2 1 液体 不明 3,400+ 配備未済
Note: 射程距離は全て概算
* この推計には、PBVによる射程距離延長が含まれていない。いくつかのPBVは、
射程距離を延長する能力を持つ。

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SUBMARINE-LAUNCHED BALLISTIC MISSILES
(潜水艦発射弾道ミサイル)

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ロシアは、大陸間ミサイルの射程を持つ原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)の
相当な戦力を維持している。ロシアは、冷戦時代の老朽化したシステムに代え
て、新しく、且つ改善されたSLBM兵器システムを開発している。Sinevaと名づ
けられた新ミサイルは、デルタIV級SSBNの既存のSS-N-23を置き換えることを
目的としている。NX-32/Bulava-30 SLBMは、主として新しいドルゴルキー級
SSBNへの配備を目的とした新しい固体燃料推進のSLBMである。ロシアのSLBMは、
浮上中や潜航中のSSBNから、色々な発射場所で、発射可能である。

中国は、現在、12基のCSS-NX-3/JL-1ミサイルを搭載する事を目的とする夏級
SSBNしか保有していない。それに加え、中国は12基のCSSNX-14/JL-2 SLBMを搭
載した新型の晋級SSBNを配備する予定である。このミサイルは、初めて、中国
沿岸のSSBMの行動区域から合衆国の大部分を目標とする事ができる。

インドは、2つの新しい海軍用のシステムを開発している。2010年以降に使用
可能となる見込みのSagarika SLBMと、Prithvi陸上基地発射弾道ミサイルの海
軍バージョンであるDhanush海上発射型弾道ミサイルである。
Dhanushは、インドの海軍水上艦艇からの海上発射飛行試験を実施中である。


■ 性能
ミサイル名 段数 弾頭数 推進剤 搭載潜水艦 最大射程(マイル)* 発射筒数
ロシア
SS-N-18 2+PBV 3 液体 デルタIII 3,500+ 96基
SS-N-20 3+PBV 10 固体 タイフーン 5,500+ 40基
SS-N-23/Sineva 3+PBV 4 液体 デルタIV 5,000+ 96基
SS-NX-32 3+PBV 6 固体 ドルゴルキー 5,000+ 16基 配備未済
(Bulava) (ボレイ)
タイフーン 20基 配備未済

中国
CSS-NX-3/JL-1 2 1 固体 夏 1,000+ 12基 配備未済
CSS-NX-14/JL-2 3 1 固体 晋 4,500+ 12基 配備未済

インド
Sagarika 不明 不明 不明 不明 180+ 不明 配備未済

Note: 射程距離は概算


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LAND-ATTACK CRUISE MISSILES(陸上攻撃巡航ミサイル)
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弾道ミサイルとは異なり、巡航ミサイルは通常、使用目的と最大射程の替わり
に発射モードによって分類される。最も幅広いカテゴリー分けは、陸上攻撃巡
航ミサイル(LACM)と対艦巡航ミサイル(ASCM)である。各々のタイプは、
航空機、艦艇、潜水艦または地上に置かれた発射機から発射する事ができる。
この文書ではLACMについて述べる。

LACMは、無人の武装した飛行体で、固定された、あるいは移動する陸上目標を
攻撃するよう設計されている。それは、予め定められた目標へ前もってプログ
ラムされた飛行経路を飛行するが、任務中の大部分の時間を水平飛行に費やす。
推進力は、通常小型ジェットエンジンによって提供される。
目標の2、3フィート以内にミサイルを命中させる事ができる非常に精密な誘
導装置を装備している事から、最も先進的なLACMは、通常弾頭で武装したとき
でも、非常に小さな目標に対しても効果的に使用する事ができる。LACMの誘導
は、通常3つの段階で行われる。発射時と、飛行中と終末の三段階である。発
射段階では、ミサイルは慣性航法装置(INS)だけを使って誘導される。飛行
段階では、ミサイルは以下のシステムの一つ以上によって更新されるINSで誘
導される。レーダーに基づく地形照合システム(TERCOM)、レーダーまたは光
学的場面照合システム、それと衛星航法システム(例えば合衆国の全地球位置
測定システム(GPS)またはロシアのGLONASSシステム。)
終末誘導段階はミサイルが目標域に入り、より正確な場面照合が使用されるか
目標探知器(通常光学的であるかレーダーに基づくセンサー)が使用される段
階から始まる。

LACMに対する防衛は、対空防御システムに圧迫を加える事になる。巡航ミサイ
ルは、敵のレーダー覆域の下方にとどまり、場合によっては、地形の陰に隠れ
る事ができる様に低高度を飛行できる。より新しいミサイルは、レーダーや赤
外線検出器からも見えない様にするステルス機能を取り入れている。最新の巡
航ミサイルは、最も効率的な方法で目標に接近し、攻撃するようにプログラム
されている。例えば、防空システムを最も弱い部分で圧倒する様に、複数のミ
サイルで同時に異なる方向から目標を攻撃することができる。さらに、LACMは
レーダーと防空施設を避けるように回り道のルートを飛行し目標を攻撃する機
能を持つ。それでも隠蔽が巡航ミサイルの主要な防御手段ではあるが、いくつ
かの開発中のシステムでは、チャフやデコイ(囮)と言った防御層を加えている。

米軍に対する巡航ミサイルの脅威は、次の10年間増加すると思われる。少なく
とも9つの国が次の10年の間にLACMの生産に関与する。そして、LACM製造業者
のいくつかはそれらのミサイルを輸出可能とするだろう。
米国のトマホーク巡航ミサイルの成功は、多くの国で巡航ミサイル獲得に対す
る関心を高めた。購入可能な多くの巡航ミサイルは、精密攻撃任務を果たす可
能性がある。これらのミサイルの多くには、類似した特徴がある。それらは、
モジュール設計(航法機能や弾頭を選択可能とする様に製造する)、ステルス
技術の適用、戦闘機サイズの航空機から発射できる能力、そして、高亜音速で、
低高度を、地形追随しながら飛行する能力などである。


■ 性能
ミサイル名 発射モード 弾頭タイプ 最大射程(マイル)* 配備開始

中国
YJ-63 空中発射 通常 不明 不明
DH-10 不明 通常又は核 不明 不明

フランス
APACHE-AP 空中発射 子弾頭 100+ 2002
SCALP-EG 空中または艦船 貫通体 300+ 2003
Naval SCALP 潜水艦/水上艦 貫通体 300+ 2010+

アラブ首長国連邦
BLACK 空中発射 貫通体 250+ 2006
SHAHEEN*

ドイツ、スウェーデン、スペイン
KEPD-350 空中発射 貫通体 220+ 2004

インド、ロシア
Brahmos-A 空中発射 通常 150+ 2010+

イスラエル
Popeye Turbo 空中発射 通常 200+ 2002

パキスタン
RA'AD 空中発射 通常又は核 200 不明
Babur 陸上 通常又は核 200 不明

ロシア
AS-4 空中発射 通常又は核 185+ 運用中
AS-15 空中発射 核 1,500+ 運用中
SS-N-21 潜水艦 核 1,500+ 運用中
Kh-555 空中発射 通常 不明 不明
New GLCM 陸上 通常 300以下 不明
3M-14E 水上艦/潜水艦/陸上 通常 185+ 不明

南アフリカ
MUPSOW 空中/陸上 通常 125+ 2002
Torgos 空中/地上 通常 185+ 2006+

台湾
Wan Chien 空中発射 通常 150+ 2006
HF-2E 陸上 通常 不明 不明

英国
Storm Shadow 空中発射 貫通体 300+ 2003
Note: 全ての射程距離は概算。射程距離はミサイル本体のみ。発射形態によっ
ては、システムとしての射程距離は大きく伸延する。
*BLACK SHAHEENはSCALP-EGの輸出タイプ


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2009年6月15日月曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(中)



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BALLISTIC MISSILES(弾道ミサイル)
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作戦可能な弾道ミサイルは、サイロや潜水艦や陸上を移動する発射台に配備さ
れている。移動式のミサイルは、隠すことができ、それにより生存性を大幅に
高める事ができるので、多くの国で好まれている。
多くの短距離弾道ミサイルでは、弾頭が爆発するまで、ミサイルの形状は発射
時のままである。長距離弾道ミサイルでは、弾頭は分離された再突入体に含ま
れる。いくつかの長距離弾道ミサイルは、MIRV(複数個別誘導再突入体)を装備
しており、ミサイル一基につき10個程度の再突入体(RV)が備えられている。再
突入体は、地球の大気圏に、ICBMの場合、一秒間に4~5マイルという非常な
高速で再突入する。
弾道ミサイルでは、固体燃料または液体燃料がロケットの推進システムとして
用いられる。近代的なミサイルシステムは、補給面での要請と運用の単純化の
為に、固体燃料が使用される傾向にある。しかしながら、いくつかの第三世界
諸国では、液体燃料技術を入手するのがより容易である事から、新しい液体燃
料ミサイルの開発が続けられている。

多段式ミサイルは、各々独立した推進システムが各段階にあるので、長距離作
戦に対して適している。
ICBMは通常、二ないし三段式で、目標に対し搭載物を推進する為に、強力な液
体燃料エンジンや固体燃料モーターを装備しており、ポスト・ブースト・ビー
クルには、もっと小さな推進システムが装備されている。ポスト・ブースト・
ビークルは単弾頭ミサイルの場合には再突入体の命中精度を改善し、MIRVを搭
載しているミサイルの場合には、再突入体が別々の目標に命中する様に、各々
異なった軌道を取る為に発射されるのに用いられる。いくつかのMIRVミサイル
は、一つのミサイルで1000マイル以上離れた目標を攻撃する事ができる。

高度の慣性誘導システムを備えた弾道ミサイルは、6000マイルを飛行した後で
目標の200~300フィート以内に再突入体を運搬する能力がある。多くのミサイ
ルで、衛星航法誘導の活用によって正確性が飛躍的に改善された。また、ミサ
イルには、非常に高い正確性を達成する為の終末センサーを持つ機動再突入体
(MaRV)を使用する事ができる。

より近代的な誘導技術が拡散したので、各国は、ミサイル戦力の正確性と致死
性を改善する事ができる。しかしながら、大きな都市を直撃する程度の正確性
をもつミサイルであっても、大量破壊兵器を装備した場合には大量の犠牲者を
負担させる事ができる。

多くの弾道ミサイルは再突入体に弾道ミサイル防御システムをくぐり抜けさせ
る事を目的にした侵入補助機能を装備している。侵入補助機能とは、ミサイル
や再突入体を探知、追跡するセンサーを欺瞞したり、無効化する事を目的とし
た装置である。侵入補助機能は、弾道ミサイルを開発したり運用したりしてい
る国々で重要性を増している。

------------------------------
SRBM 短距離弾道ミサイル
射程 1,000 km以内 (621 mi)

MRBM 準中距離弾道ミサイル
射程 1,000-3,000 km (621-1,864 mi)

IRBM 中距離弾道ミサイル
射程 3,000-5,500 km (1,864-3,418 mi)

ICBM 大陸間弾道ミサイル
射程 5,500 km以上 (3,418 mi)

SLBM 潜水艦発射弾道ミサイル
射程に関わらず潜水艦から発射される弾道ミサイルは全て

------------------------------
SHORT-RANGE BALLISTIC MISSILES(短距離弾道ミサイル)
------------------------------

何ヶ国かは、現在でもSRBM(短距離弾道ミサイル)システムを生産するか開発す
るかしているが、他の多くの国では、ミサイル製造メーカーからミサイルやミ
サイル技術を購入している。新しいSRBMシステムが数ヶ国で開発されている。
中国は、台湾に近接する地域で近代的な固体燃料推進のSRBMの大きな戦力を展
開している。
ロシアのSCUD Bとも呼ばれているSS-1c Mod 1は、他のいかなる種類の誘導ミ
サイルよりも多くの国に輸出されており、広い用途で使用可能な適合性の高い
兵器であると認められている。
例えば、イラクのSCUDミサイルは1991年の湾岸戦争で使用されたが、射程距離
を二倍にする様に改造された。北朝鮮は独自のタイプのSCUD BやSCUD Bの射程
を延長させたSCUD Cを生産している。

SCUDは、もともと戦術戦場支援兵器として設計されたが、多くの国は、SCUDや
他のSRBMシステムを都市に対して使用される戦略兵器とみなしている。イラク
は、イラン・イラク戦争と1991年の湾岸戦争に戦略兵器として、射程距離延長
型のSCUDミサイルを使用した。他の国は、SCUDの正確性を大幅に向上させて、
価値の高い軍事目標や都市に対して利用するために改造した。最近の紛争では、
ミサイル防衛能力について関心が集まっており、ミサイル防衛能力の開発に対
する継続的な誘因を提供している。そして、それは、弾道ミサイル開発者には
ミサイル防衛対抗策を追求する動機を与える事になっている。一部のSRBM開発
者はすでにミサイル弾頭を機動させる様な対抗策を開発し始めており、対抗策
の開発継続が期待されている。

■性能
ミサイル名 推進剤  発射機 最大射程(マイル)
ロシア
SCUD B 液体 道路移動 185
(SS-1c Mod 1)
SS-1c Mod 2 液体 道路移動 150+
SS-21 Mod 2 固体 道路移動 43
SS-21 Mod 3 固体 道路移動 75
SS-26 固体 道路移動 185+
Iskander-E 固体 道路移動 170+

中国
CSS-6 Mod 1 固体 道路移動 370
CSS-6 Mod 2 固体 道路移動 550+
CSS-6 Mod 3 固体 道路移動 450+
CSS-7 Mod 1 固体 道路移動 185
CSS-7 Mod 2 固体 道路移動 370
CSS-8 第一段:固体 道路移動 93
第二段:液体
B611 固体 道路移動 93

北朝鮮
SCUD B 液体 道路移動 185
SCUD C 液体 道路移動 310
Toksa 固体 道路移動 75
ER SCUD 固体 道路移動 435-625

インド
Prithvi I 液体 道路移動 93
Prithvi II 液体 道路移動 155
Dhanush 液体 艦載 250
Agni I 固体 道路移動 435

パキスタン
Hatf-1 固体 道路移動 50
Shaheen I 固体 道路移動 280+
Ghaznavi 固体 道路移動 250

イラン
Fateh-110 固体 道路移動 120+
Shahab I 液体 道路移動 185
Shahab II 液体 道路移動 310
CSS-8 固体/液体 道路移動 93

シリア
SCUD D 液体 道路移動 435
Note: 全ての射程距離は概算

■ランチャー数と戦闘序列

国名
ミサイルシステム ランチャー数*

ベラルース
SS-21s/SCUDs 100基以下
カザフスタン
SS-21s/SCUDs 50基以下
シリア
SS-21s/SCUDS 100基以下
中国
CSS-6/CCS-7 200基以上
リビア
SCUDs 100基以下
トルクメニスタン
SCUDs 25基以下
エジプト
SCUDs/SS-1 25基以下
北朝鮮
Toksa/SCUDs 100基以下
ウクライナ
SS-21s/SCUDs 200基以下
インド
Prithvi-I/II 50基以下
Agni I 25基以下
パキスタン
Ghaznavi/Shaheen-1 50基以下
ベトナム
SCUD-Bs 25基以下
イラン
CSS-8/Fateh-110/SCUDs 100基以下
ロシア
SCUDs/SS-21/SS-26) 200基以下
イエメン
SRBMs(SCUD/SS-21s) 25基以下

*ミサイル保有数はランチャー数よりもはるかに多い。
これは、ミサイル発射後ランチャーが再利用される
事による。

------------------------------
MEDIUM-RANGE & INTERMEDIATE-RANGE BALLISTIC MISSILES
(準中距離弾道ミサイルと中距離弾道ミサイル)

------------------------------

新しいMRBM(準中距離弾道ミサイル)やIRBM(中距離弾道ミサイル)システムは、
中国、北朝鮮、イラン、インドとパキスタンで開発されている。これら戦略的
なシステムであり、そして、ほとんどは非通常弾頭を装備している。イラン以
外のこれらの国は、全て、核実験を行っている。ロシアも合衆国も1988年に効
力を発生した中距離核戦力(INF)条約によって禁止されているのでMRBMもIRBM
も生産したり、保持していない。中国は、非常に活発にMRBMの開発を行ってい
る。中国の長期的、且つ広範囲の戦力変革では、戦力展開能力を向上させてお
り、中国の弾道ミサイルは、台湾が関係するどの様な将来の対立においても、
外国の軍隊の紛争地域へのアクセスを拒否する中国の努力で鍵となる役割を担
っている。中国は、地域の核抑止力のために、現在、核装備のCSS-2、CSS-5
Mod 1、CSS-5 Mod 2を配備ている。中国は、より長射程で精密な攻撃を行うた
めの、新しい通常弾頭のMRBMも調達している。これらのシステムは、補給拠点
や地域的な飛行場や港湾を含む軍事基地を脅かすか、または攻撃する事を目的
としている様に思われる。特筆すべきは、中国はCSS-5の派生型を基にした
対艦弾道ミサイル(ASBM)を開発している事である。

北朝鮮には野心的な弾道ミサイル開発計画があり、ミサイル技術をイランとパ
キスタンを含む他の国に輸出している。北朝鮮は、核兵器を保有している事を
みずから認めている。北朝鮮のテポドン1は1998年8月に衛星を軌道に乗せる
試みに使われた。小さな第三段が衛星を軌道に乗せる事に失敗したが、二段式
のブースターは明らかにうまく作動した。テポドン1は、長射程ミサイル開発
のために必要な技術を北朝鮮が持っている事を示している。北朝鮮は、開発中
のIRBMを持っている。このシステムは、他の国に輸出されるに違いない。

イランには広範囲なミサイル開発計画があって、ロシア、中国と北朝鮮の機関
からの援助を受けている。イランのShahab 3 MRBMは、北朝鮮のノドンミサイル
を基にしている。イランは、その射程と有効性を拡張するために、Shahab 3を
改良した。イランは、2004年にShahab 3の改良版をテストしたと主張している。
それに続くイランの当局の声明では、改良されたShahab 3の最大射程は1,250
マイルであり、イランにはShahab 3ミサイルを大量生産する能力があることを
示唆している。2008年には、イランは2,000km射程の二段式固体推進MRBMの発
射テストを二回実施している。2008年後半と2009年前半には、多段式宇宙打上
ロケットSafirを発射したが、それは長射程弾道ミサイル技術のたたき台とし
ても用いる事ができるものだった。そして2009年のテストでは、衛星を軌道に
乗せる事に成功した。Safirは弾道ミサイルとして使われるならば、恐らくIRBM
としての射程を達成することができるだろう。

インドは、その弾道ミサイルを開発し、改善し続けている。インド当局は、固
体燃料推進のアグニII MRBMが配備準備ができたと述べている。新しい固体燃
料推進のアグニIII IRBMは、2006年以降三回、飛行テストを実施されている。
インドのミサイル開発者は、射程3,000~3,700マイルのICBMを製造する能力が
あると述べている。

パキスタンは、ミサイルの実射試験を含む実地訓練を通じて、陸軍戦略軍コマ
ンドと個々の戦略ミサイルグループの即応性と能力の改善を続けている。
パキスタンは2004年以降六回その固体燃料推進のシャヒーン2 MRBMをテスト
しており、このミサイルシステムは、恐らく、すぐに配備されると思われる。

■性能
ミサイル名 段数 推進剤 発射機 最大射程(マイル) ランチャー数*

中国
CSS-2 1 液体 移動可能 1,900 5基~10基
(限定的な移動性)
CSS-5 Mod 1 2 固体 道路移動 1,100+ 50基以下
CSS-5 Mod 2 2 固体 道路移動 1,100+ 50基以下
CSS-5 通常型 2 固体 移動式 1,100 30基以下
CSS-5 ASBM 2 固体 移動式  900+ 配備未完了

サウジアラビア (中国製造**)
CSS-2** 1 液体 移動可能 1,750 50基以下
(限定的な移動性)

北朝鮮
No Dong 1 液体 道路移動 800 50基以下
IRBM 1 液体 移動式 2,000+ 50基以下

インド
Agni II 2 固体 線路移動 1,250+ 10基以下
Agni III 2 固体 線路移動 2,000+ 配備未完了

パキスタン
Ghauri 1 液体 道路移動 800 50基以下
Shaheen II 2 固体 道路移動 1,250+ 不明

イラン
Shahab 3 1 液体 道路移動 800 50基以下
(全派生型込)
Shahab 3派生型 1 液体 道路移動 1,200+
新型MRBM 2 固体 道路移動 1,200+ 配備未完了
IRBM/ICBM    不明 不明 不明 不明 不明

Note: 射程距離は全て概算
* ランチャー一基に数機のミサイルが利用可能と思われる。
** 輸出用のCSS-2は通常弾頭装備


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2009年6月12日金曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(上)


米国国立航空宇宙情報センター(NASIC)から「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの
脅威」の新版が発表されましたので、ご紹介します。
弾道ミサイル及び巡航ミサイルについての動向が非常に完結に、且つ、素人に
も判り易く説明してあると思います。英語も平易で写真や図も豊富ですので、
原本にもあたられる事をお勧めします。
http://www.fas.org/irp/threat/missile/naic/NASIC2009.pdf


国立航空宇宙情報センター(NASIC)
ライト・パターソン空軍基地
NASIC-1031-0985-09

BALLISTIC AND CRUISE MISSILE THREAT
  弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威

-----------------------------
TABLE OF CONTENTS(目次)
-----------------------------

Key Findings(主要な発見)
Threat History(脅威の歴史)
Warheads and Targets(弾道と目標)
Ballistic Missiles(弾道ミサイル)
Short-Range Ballistic Missiles(短距離弾道ミサイル)
Medium-Range andIntermediate-Range Ballistic Missiles(中距離及び準中距離弾道ミサイル)
Intercontinental Ballistic Missiles(大陸間弾道弾)
Submarine-Launched Ballistic Missiles(潜水艦発射弾道ミサイル)
Land-Attack Cruise Missiles(陸上攻撃巡航ミサイル)
Summary(要約)

-----------------------------
Key Findings(主要な発見)
-----------------------------
多くの国で、弾道ミサイルや巡航ミサイルシステムは費用対効果の高い兵器で
あり、国力のシンボルであるとみなされている。それに加えて、それらは合衆
国の空軍力に対して非対称な脅威を与えている。

多くの弾道ミサイルや巡航ミサイルシステムは大量破壊兵器を装備している。

北朝鮮は、ICBM(大陸間弾道弾)として開発された場合には、核弾頭を装備し米
国に到達可能なTD-2(テポドン2)の開発を継続している。また、中距離弾道弾
(IRBM)と、新しい固体燃料短距離弾道ミサイルも開発されている。

イランは、Shahab 3(シャハブ3)準中距離弾道ミサイル(MRBM)を改造し、射
程距離と有効性を拡張し、より射程距離の長いミサイル開発に向けた技術と能
力を高めている。2008年には、イランは二段式固体燃料MRBMの発射実験を行っ
た。2008年後半から2009年前半にかけ、イランは長距離弾道ミサイル技術のた
たき台として用いることができる多段式人工衛星打上ロケット(SLV)を発射
した。十分な外国からの援助が得られれば、イランは、2015年までには合衆国
に到達するICBMを開発し、テストすることができると思われる。

中国は、世界で最も活発で多様な弾道ミサイル開発計画を保有している。
中国は攻撃用ミサイルの開発とテストを行っており、新たなミサイル部隊を編
成し、特定のミサイルシステムの質的改善を図っており、また、弾道ミサイル
防衛網への対抗手段を開発している。
中国の弾道ミサイルは、ミサイルの数とタイプの両面で拡大している。
CSS-10 Mod 1(DF-31)とCSS-10 Mod 2(DF-31A)の両ICBMが追加されると共
に、台湾周辺で新しい戦域ミサイルの配備が続いている。
新しいJL-2潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も、開発中となっている。
将来のICBMは、恐らく、MIRV(複数個別誘導再突入体)を装備するものが含まれ、
合衆国に到達できる核弾頭の数は、15年以内に100個を上回るものに拡大する
に違いない。

インドとパキスタンは、新しい短距離と長距離の弾道ミサイルを開発し続けて
いる。パキスタンは2004年以降6回に亘って固体燃料のShaheen 2(シャヒーン2)
MRBMをテストした。そして、インドは2006年以降3回、新しい固体燃料推進の
Agni III(アグニ3)IRBMをテストした。インドによれば、固体燃料のAgni II
(アグニ2)MRBMの配備準備が完了している。

ロシアは、引き続き2000個を上回る核弾頭を合衆国に到達可能なミサイルに配
備している。ロシアの戦略ロケット軍は、軍備管理による制限と資源の不足に
より数的には縮小しているものの、新しいICBMとSLBMシステムの開発が進めら
れており、ロシアは合衆国外では、最大の戦略弾道ミサイル戦力を保有してい
る。

陸上攻撃巡航ミサイルは (LACMs)は、軍事作戦に大きな脅威を与えることがで
きる非常に効果的な兵器システムである。
少なく共、10年以内に海外の九ヶ国がLACMの生産に携わる事になると予想さ
れ、多くのミサイルが輸出可能になると見込まれている。

------------------------------
THREAT HISTORY(脅威の歴史)
-----------------------------
合衆国とその領域に関してと同様に、弾道ミサイル及び巡航ミサイルは、海外
における米国と同盟国の軍隊に対しても、重大な脅威となる。
有人の航空機での攻撃が非現実的であるか、あまりに高くつくような恐るべき
防空システムを保有する敵に対しても効果的に使用することができるので、ミ
サイルは多くの国にとって魅力的である。
それに加え、ミサイルは、抑止や強制の道具としても使うことができる。ミサ
イルは、有人の航空機に対して、保守や訓練、補給に関する要求でも有利さを
持つ。少数の使用であってもミサイルは、破壊的でありえる。何故なら、ミサ
イルは化学兵器、生物兵器、核兵器を弾頭に装備する事ができるからである。
弾道ミサイルと巡航ミサイルの脅威はミサイル技術の拡散により継続的に増加
している。20ヶ国以上が弾道ミサイルシステムを保有しており、ミサイルは、
合衆国の軍隊が関与する将来の紛争でも脅威となる。
弾道ミサイルは過去25年の間、イラン・イラク戦争、アフガニスタン内戦、
イエメン内戦、1991年と2003年のペルシア湾紛争、チチェンとグルジアでのロ
シアの軍事行動と言ったいくつかの紛争で使われている。
LACMは、拡散が広まっているとは言えないが、今後10年で、20ヶ国が保有す
る事になると思われる。

合衆国空軍は、他の軍とも共同で、弾道ミサイルと巡航ミサイルの脅威に対し
抑止や、必要に応じて、活発な抑制を通して対処する役割を持っている。
この脅威の抑制には、発射前や飛行中のミサイルシステムへの攻撃や、支援イ
ンフラへの攻撃が含まれる。この文書には、現存及び計画中の主要な海外の弾
道ミサイル及び巡航ミサイルの情報が含まれている。
--------------------------------------------------
誘導された巡航ミサイルと弾道ミサイルは、第二次大戦中にV-1号巡航ミサ
イル及びV-2号弾道ミサイルとしてドイツによって、英国及び北部ヨーロッ
パを目標とする攻撃に初めて用いられた。これらのミサイルは不正確だったが、
その使用により数万人もの連合国側の犠牲者が出た。
--------------------------------------------------

------------------------------
WARHEADS AND TARGETS(弾頭と目標)
-----------------------------


弾道ミサイル及び巡航ミサイルは、通常弾頭あるいは非通常弾頭を装備する事
ができる。通常弾頭は(例えばTNTの様な)化学爆薬で満たされており、爆薬と
結果として生じる金属ケースの破片の爆発を致死のメカニズムとしている。
非通常弾頭には、大量破壊兵器(核・生物・化学兵器)が含まれると共に、致死
性ではない弾頭、比較的新しい種類の兵器で人を殺傷するよりも武器を使用不
能とするよう設計されたものが同様に含まれている。
通常弾頭と、生物、化学兵器は、単一の弾頭、あるいは、子弾頭(広い地域に
散らばる様、高度をとって発射される複数の小さな小型爆弾)として成形され
ている。

通常弾頭は、特定の種類の目標のために最適化することができる。例えば、子
弾頭は飛行場の滑走路にクレーターを作ったり、装甲車両を破壊するのに用い
られる。貫通弾頭は、比較的少量の爆薬をぶ厚い金属ケースに覆った形で使わ
れるが、バンカーといった強化構造物を貫通する事ができ、内部を破壊する。

多くの長距離弾道ミサイルや、いくつかのタイプのLACMは、核弾頭を装備する。
これらの弾頭の殆どは、第二次大戦中に使用された原子爆弾と比べ、数十倍か
ら数百倍の爆発力を持っている。化学兵器と生物兵器は、多くの第三世界諸国
にとって魅力的であろう。何故なら、核兵器に比べ容易に製造する事ができる
為である。化学兵器と生物兵器戦争のプログラムを持つ多くの国は、弾道ミサ
イル及び巡航ミサイルを保有している。これらの兵器を都市部や軍事基地の集
中した地域に使用する場合は正確性はあまり重要ではない。
化学・生物兵器は、大量の犠牲者を作り出し、民間人をパニックと混乱に誘導
し、軍事作戦の遂行能力を深刻に低下させることができる。

------------------------------
BALLISTIC MISSILES(弾道ミサイル)
-----------------------------
作戦可能な弾道ミサイルは、サイロや潜水艦や陸上を移動する発射台に配備さ
れている。移動式のミサイルは、隠すことができ、それにより生存性を大幅に
高める事ができるので、多くの国で好まれている。
多くの短距離弾道ミサイルでは、弾頭が爆発するまで、ミサイルの形状はその
ままである。長距離弾道ミサイルでは、弾頭は分離された再突入体に含まれる。
いくつかの長距離弾道ミサイルは、MIRV(複数個別誘導再突入体)を装備してお
り、ミサイル一基につき10個程度の再突入体(RV)が備えられている。再突入体
は、地球の大気圏に、ICBMの場合、一秒間に4~5マイルという非常な高速で
再突入する。
弾道ミサイルは、固体燃料または液体燃料がロケットの推進システムとして用
いられる。近代的なミサイルシステムは、補給面での要請と運用の単純の為に、
固体燃料が使用される傾向にある。しかしながら、いくつかの第三世界諸国で
は、液体燃料技術を入手するのがより容易である事から、新しい液体燃料ミサ
イルの開発が続けられている。



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2009年4月16日木曜日

テポドン発射時にロシアが電子戦機を派遣したのは当然の話


※
写真上段は、IL-20 Coot-A Globalsecurity.orgより転載
写真下段は産経新聞サイトからの転載

露軍機がMD網偵察 北が発射時に情報収集機飛行

北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した際、ロシアの情報収集機が日米両国の
ミサイル防衛(MD)システムの運用を偵察していたことが15日、分かった。
北朝鮮からの発射時間帯の事前通報をもとに日本海で待機。日米のレーダー網
が実戦モードで照射した電波の周波数帯や、MD運用に伴う自衛隊各部隊の役
割分担に関する情報を集めたとみられる。日本海を舞台にした激しい情報戦の
一端が浮き彫りになった形だ。

偵察飛行を行っていたのは、ロシア空軍の電子情報収集機「IL20」。防衛
省によると、IL20はこれまでにも日本周辺への飛来が確認されている。先
月にも2度、日本海を偵察飛行しており、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(ス
クランブル)している。

北朝鮮のミサイル発射は今月5日午前11時半。IL20はその約30分前に
北海道沖から日本海を南下し、北朝鮮が設定したミサイルの1段目ブースター
(推進エンジン)の落下危険区域の上空を通過した。発射時には、さらに南下
したところで待機していた。

ミサイル発射を受け、探知・追尾のため、海上自衛隊のイージス艦3隻のSPY1、
地上に配備した空自の2基のFPS-5、4基のFPS-3改のレーダーが一
斉に照射。米軍も日本海と太平洋に2隻ずつ展開していたイージス艦、青森県
に配備しているXバンドレーダーを稼働させた。

IL20はMDでの各レーダーの電波の周波数帯、照射方法や探索パターン、
レーダー同士の任務分担などを確認したとみられる。周波数帯を把握されると、
妨害電波でレーダーが無力化される恐れがある。

MD任務の際、イージス艦はレーダーの機能をミサイル探知にシフトさせ、航
空機などを警戒する防空能力が手薄になる。航空機やほかの護衛艦のレーダー
で防空能力を補完するとされ、IL20は海・空自の部隊の連携などMDでの
「戦い方」を把握。海自のEP3、空自のYS11Eといった電子偵察機の情
報収集任務にも注目していた可能性が高い。

情報収集機が飛来した場合、訓練であればレーダーの照射を控える。だが、今
回は北朝鮮の発射に対処する実任務だったため、自衛隊はレーダー網をフル稼
働させざるを得なかった。空自戦闘機はスクランブルで警戒し、IL20は領
空侵犯はしていない。IL20は2、3時間にわたり、日本近海で偵察を続け、
隠岐の島(島根県)付近まで飛行した後、ロシアに戻っていった。

北朝鮮は発射当日、米中露3カ国に発射時間帯を事前に通報したとされ、ロシ
ア空軍は周到にIL20による偵察飛行の計画を立てたとみられている。

(産経新聞 2009/4/16)


ロシアのIL-20は、日本や米国が使用しているP-3Cと同じ様に、中
型のターボプロップ旅客機から軍用に転用された機体です。機体は、
P-3Cより多少大きいですが、略同程度の機体と考えて良いでしょう。

元々の旅客機型はIL-18 Cootと言い、対潜哨戒機はIL-38 May、
電子戦機はIL-20 Coot-Aといいます。
日本でもP-3Cを改造したEP-3Cという機体がありますが、同様の性
格の機体であると言えます。ターボプロップ機である為、速度は遅
めですが、長い滞空時間が得られる事が対潜哨戒機とニーズが一致
したものと言えます。

EP-3CがP-3Cに各種のレーダードームを追加した機体であるのと同
様、IL-20も胴体下部に一見、大型ミサイルにも見える長大なアレ
ーアンテナを装備しているのが特徴です。

今回の北朝鮮のミサイル実験は、日本や米国にとって、実戦同様の
素晴らしい訓練の機会を提供してくれましたが、記事にもある通り
ロシアにとっても、BMDを構成するSPY-1レーダー、Xバンドレ
ーダー、ガメラレーダー等が実戦モードで電波を発射した得がたい
機会であったのは間違いありません。勿論、今回だけの電子情報収
集で、対抗手段が講じられる訳ではありませし、レーダーの側も対
抗措置を取れるようになっていますが、今後、更に情報収集を行う
事で、北朝鮮や中国に対して、より完成度の高い電波妨害装置など
の売り込みを行う事は十分に考えられます。

現代戦では、実戦に至る前の段階で、平時から、今回の様な情報収
集戦が展開されており、今回、ロシアが電子情報収集(ESM)を行っ
た事で、今度は日米側が電子戦(ECM)能力をより高度なものに改善
する事が促がされ、それが更に、ロシアと北朝鮮による対電子戦
(ECCM)能力改善に繋がっていくという関係にあります。

その点、流石にロシアは抜かりなく手を打っていたと言えますが、
その一方で、もう一方の当事者である中国や北朝鮮がどの様な、
手を打っていたのか非常に興味深い処です。


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2009年4月6日月曜日

この10年、北朝鮮と日本は何をやったのか?


※画像は産経新聞サイトからの転載

「何も軌道に入らず」=北の打ち上げ失敗か-米防衛司令部

北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は5日、北朝鮮が人工衛星を軌道に乗せた
との主張について、「2段目以降は太平洋に落下し、何も軌道に乗らなかった」
と否定した。北朝鮮による打ち上げは失敗した可能性が高い。

NORADの分析によると、北朝鮮はテポドン2号を打ち上げ、一段目は日本海に、
弾頭の搭載物を含めた2段目以降は太平洋に落下した。
また、「テポドン2号は日本を飛び越えたが、日本への破片の落下はない」と
している。さらに「ハワイと米本土への脅威はなく、米軍は迎撃しなかった」
との見解も示した。「何の物体も軌道には入らなかった」としている。 

(時事通信 2009/4/5)


ここ一ヶ月のテポドン騒ぎも、結局、人工衛星を軌道に乗せる事に
失敗と言う事で、終わりになったようです。

少し遡ると、テポドンが最初に日本の上空を通過したのが、1998年
の8月の事です。この時は、テポドン1号の発射実験を行い、今回
と同じ人工衛星「光明星1号」を打ち上げたと主張していました。

二回目は、2006年7月で、他の6発のミサイルとともにテポドン2
号を発射しましたが、1段目が切り離れず、上空数キロで空中分解
したと言われています。

という事で、今回はテポドン発射3回目という事になります。
今回はテポドンにとっては、三度目の正直でしたが、三段目の切り
離しに失敗し、2、3段とペイロードは一緒になって太平洋に落下
したようです。

結果は一回目と同じでしたが、一回目がテポドン1号、二回目は、
テポドン2号、三回目はテポドン2号改良型となっています。

日本の衛星打上用のロケットは、同じ形式で最低でも数回の打ち上
げを行っています。人工衛星打ち上げロケットとしてみた場合、テ
ポドンはまるで手作りロケットであり、打ち上げ一回毎の間隔が開
き過ぎの上、一回毎にロケットの相違点が大きすぎるので、製品面
でも製造技術面でも落ち着く閑が無く、それが失敗に輪をかけてい
ると言って良いでしょう。加えて、北朝鮮は、公式には衛星打ち上
げに成功したと強弁しているので、失敗原因の追求も出来ない事に
なります。これで人工衛星が打ち上がったのなら、それ自体工学的
な奇跡と言えるでしょう。

良く言えば、北朝鮮は10年の歳月を費やして、確実な所で射程を
1000km~2000kmほど伸ばす事ができたと結論できます。

では、日本はテポドン1号上空通過以降何を実現したのでしょうか?
以下は、そのリストです、意外に実現したものが多い事に気がつく
と思います。私には、米国の核抑止以外にも、ここ10年で日本の安
全はかなり強化されたのではないかと考えています。

1.米国との早期警戒衛星(DSP)とのデータリンク
2.空中赤外線早期警戒機AIRBOSSの試験機配備。
3.情報収集衛星 光学衛星、レーダー衛星各二機、光学衛星実験
  機1機が軌道上に展開。
  収集データの分析組織も設立済で実地運用済。
4.新型レーダー(FPS-5)の実用機の配備1基(甑島)完了。その他
  三基も予算承認済。
5.既存レーダーの改良型(FPS-3改)の配備完了3基。今年度に配
  備4基。
6.イージス艦のBMD対応とSM-3装備 2隻完了。残る2隻
  の改造についても予算承認済。
7.イージス艦2隻の追加配備完了。
8.パトリオットPAC-3及びPAC-2GEM+(PAC-2改2型)一個高射群
  及び教導団へ配備完了。残る二個高射群へも展開予定。
9.日本に飛来する弾道ミサイルに対処する為の自衛隊法の改正完了。
10.弾道弾探知情報を全国自治体へ警告する連絡網「Em-Net
  (エムネット)」の整備完了。
11. SM-3による実射テスト2回。成功1回、失敗1回

なお、1998年8月以降、日本が打ち上げたロケットは21回で、
内失敗は3回でした。


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2009年3月31日火曜日

世界は北の核とどの様に共存するか?


作家の大石英司さんのブログを毎日拝見しているのですが、日曜日
のエントリーに非常に興味深い観測が載っていました。

本文は以下のエントリーを参照して頂きたいと思います。
http://eiji.txt-nifty.com/diary/2009/03/post-a543.html

簡単に要約します。
①米国は北朝鮮が悪戯(核開発や弾道弾開発)をする度にご褒美をあ
げている。
②北朝鮮は、核を自主的に放棄する事は絶対にない。但し、米国向
けの外交的ポーズとして放棄のふりをするかも知れない。
③オバマ政権は現状、北朝鮮問題に深入りする余裕はないが、ヒラ
リーが次期大統領戦を睨んで得点稼ぎに動く可能性はある。但し、
本質的な解決にはならない。
④北の問題の核心は、北の持つ核技術、ロケット技術が世界に<安
く>拡散する事。
⑤北の核技術の拡散で最終的な脅威を被るのはイスラエル。
⑥核とロケット技術の拡散を防ぐには、イスラエルに訴えるしかな
い。また、それをアメリカのユダヤ・ロビーに的を絞って運動する
べき。
⑦それによって、米国政府を宥和策から強攻策に転換させるしかない。


核拡散防止条約(NPT)体制は、核保有国の数が増えれば、増える
程、偶発的な核戦争の可能性が高まる事を認識し、既存の核保有国
だけに核保有の特権を与え、それ以外の国の核保有を査察を通じて
厳格に統制するというシステムでした。

現在、NPTで認められた五ヶ国以外に、核を保有していると言わ
れている国は、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の四ヶ国
ですが、北朝鮮を除く三国は元々、NPT条約に加盟していません。
これに対し、北朝鮮は、NPTを批准し、それによってアクセスを
許されたIAEAの技術資料を用いて核開発を行うという悪どい条
約破りをやっています。

しかしながら、現時点では、この悪質な条約破りに対する決定的な
罰則は与えられていません。換言すれば、NPTを破っても核武装
の既成事実を作る事ができれば、多少の経済制裁はあっても軍事制
裁はない事になります。
現在までに判明している限りでは、パキスタンのカーン博士を中心
とした闇の核技術シンジケートがあり、北朝鮮の他、イランやシリ
アもメンバーになっており、相互に技術交換が行われていました。
今回のテポドン発射に際しても昨年、人工衛星を打ち上げたイラン
の技術者が招かれていると言います。

さて、北朝鮮からの輸出品で、国際競争力を持つものは多くありま
せん。中国との間で交易は盛んですが、それも、北朝鮮にハードカ
レンシーがある限りという条件がついています。そういう中で、北
のもつミサイル技術と核技術は数少ない有力な輸出品目と言えます。

北朝鮮のミサイルがイエメンに輸出されている事が、判明していた
様に、従来のカーン博士の闇ルートに加え、北朝鮮からの核技術拡
散が、既に始まっていると考えるのが自然です。中東地域は勿論で
すが、世界の紛争地域では北朝鮮の核技術が受け入れられる素地が
あります。

残念ながら、世界の多くの地域では、日本における様な核兵器アレ
ルギーはありません。
例えば、チチェンやグルジアと言った地域であれば、核兵器が提供
されれば、それを梃子に独立を達成しようという勢力が出てきてお
かしくないのです。

極端な事を言えば、海賊行為で資金を蓄積したソマリアの海賊が、
脅迫のネタに核兵器を使ったり、アルカイダが核兵器を入手し米国
を攻撃する事さえ考えられます。

世界に紛争の種は尽きない訳ですから、北朝鮮の核が拡散した世界
は、より不安で不安定なものになる事は間違いないと言えます。

それでは、その様な世界は、日本にどの様な影響を与えるのでしょ
うか。実は、こういった核兵器の拡散が起こっても、日本に対する
影響は意外に軽微なのです。何故なら、隣接国の殆どが、既に核保
有国であり、日米安保条約によって核抑止が長く機能しているから
です。北朝鮮ですら自国の消滅を覚悟する事なしに、日本を攻撃す
る事は出来ません。

日本は原則として、現状の日米同盟を機軸とした全方位外交を継続
していれば、核武装すら必要としないのではないかと思われるので
す。日本にとっては領土問題すら実は死活的重要性は持っていない
のかも知れません。日本の繁栄は領土に依存してはいません。尖閣
諸島、竹島、北方領土に日本の繁栄は全く依存していない事は、万
人の認める処です。最悪の場合、琉球諸島を放棄しても、日本は平
和と繁栄を維持できるのではないかと考える次第です。そこまで譲
ってしまえば、日本が対象となる国際紛争は殆ど考えられなくなり
ます。(まあ、反日教育と言う別の火種は考えられますが、既に解
決済の数十年前の事実に基づいて国際紛争を起こすのは世界から顰
蹙を持って受け留められるだろうと期待したいですね。)

ここまで考えると北朝鮮の核を見逃す事で、不利益を蒙るのは、皮
肉な事に、国内に多様な民族問題を抱える、ロシアや中国であった
り、世界的なヘゲモニーを維持したい米国であるという事になるの
かも知れません。


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2009年3月5日木曜日

各国の戦略ミサイル潜水艦パトロールの実態


※画像は、Russian Submarine Patrols 1981-2008。
FAS Strategic Security Blogより転載

ロシアによる戦略ミサイル原潜パトロールが回復中

By Hans M. Kristensen

アメリカ海軍の情報機関からFAS(全米科学者同盟)が得た情報によれば、ロシ
アは、昨年、1998年以降で最多の核弾道ミサイル潜水艦を戦略パトロールに
送りだした。

その情報によれば、ロシアの戦略ミサイル潜水艦は2008年に10回のパトロール
を行ったが、2007年は3回、2006年には5回、2002年には、戦略パトロールま
ったく行われていなかった。

ロシア戦略ミサイル原潜パトロールの復活?

過去10年の間、ロシアに残された11隻の戦略ミサイル原潜(SSBN)は連続的な戦
略パトロールを維持していなかったが、その代わりに訓練目的で時折パトロー
ルを行っていた。セルゲイ・イワノフ国防相が、2006年9月11日に語った処では、
その時点で、5隻のSSBNがパトロール中であった。しかし、その数がその年に
実施されたパトロールの回数に一致した事から、それは連続的に実施されたと
言うよりも、むしろ一斉パトロールだった事が明らかになった。

それとは対照的に、アメリカ合衆国、フランス、英国は、連続的なパトロール
を少なくとも1隻のSSBNで行っている。アメリカ合衆国の場合、その14隻の
SSBNの内、3分の2はどんな時間にでも海上にあり。内4隻は警戒待機状態に
ある。

2008年の10回というロシアのパトロール回数は、ロシアが連続的なSSBNによる
パトロールを再開したかどうかという問題を提起している。ロシアによる戦略
SSBNパトロールの期間も間隔もわかっていない。もし、彼らが36日以上海上に
あって、重複がなければ、ロシアには連続的な海上の核抑止力があると言える。
しかし、2006年にように固まって行われるならば、海上核抑止の体制はまだ散
発的なものと言える。

Ryazanの航海

アメリカ海軍の情報機関から得られた情報では特定されていないが、ロシアの
パトロールのうちの1つは、恐らく、バレンツ海のコラ半島にある北方艦隊か
らカムチャッカ半島にある太平洋艦隊へのデルタIII級潜水艦Ryazanの30日間
の海氷下航海である。

Ryazanは、2008年8月1日に、弾道ミサイル、恐らくはSS-N-18(珍しくミサイル
タイプは公表されなかった)の、バレンツ海からのテスト発射に成功した。
このテストでは、弾頭は北ロシアを横断し、カムチャッカ半島のクラ試験場に
着弾した。

8月の終わりに、Ryazanは北方艦隊を出発し、氷に覆われたロシア北岸の海氷
の下を航行し、ベーリング海峡を通って南下し、ウラジオストックの弾道ミサ
イル潜水艦基地に9月30日に到着した。

軍備管理上の意味

オバマ政権は戦略核戦力の削減を提案しており、クレムリンはそれに好意的に
応えるようである。ちょうどその時、ロシアのSSBNが冷戦時代の習慣に復帰し
連続的な海上核抑止パトロールを実行するというのであれば、それは、とても
皮肉な事と思われる。

長射程核ミサイルを大規模な第一撃を耐えぬくために海洋の深みに隠す、連続
的なSSBNパトロールは、冷戦の最後の象徴の1つである。米国のSSBNは1980年
代のそれに相当するパトロール率を維持しており、フランスと英国も、両者が
先月衝突した事で明らかになった様に、常時1または、2隻を海上にしておこ
うとし続けている。そして、中国とインドもSSBN艦隊を建造しようとしている。

多くの人々は、SSBNは、純粋に報復的な武器であり、受動的に海に隠れている
と考えている。しかし、アメリカとロシアの核兵力がさらに削減され、そして、
中国とインドがSSBNクラブに加われば、前方配備された水中の核兵器は核軍縮
に最も挑戦的な問題の一つになるに違いない。

(FAS Strategic Security Blog 2009/2/17)


1月に英国とフランスの戦略ミサイル原潜(SSBN)が衝突事故を起こ
した事で、はしなくも、核大国が依然としてSSBNによる核抑止を実
施している事が明らかになりました。

このFASのブログのエントリーによれば、米国は冷戦時代と全く変
わりない戦略核抑止体制を引き続き実施しており、英国やフランス
も最低限の海上核抑止体制を維持しています。更に、中国やインド
という新興国もSSBNクラブに加入してくる事も予想しています。
(公然の秘密と言うべきでしょうが...。)

オバマ政権が戦略兵器の更なる削減を行おうとしている時にロシア
によるSSBNパトロールが復活する事は、確かに皮肉ではありますが
より皮肉な事は、各超大国が核軍縮を行えば行う程、中国やインド
と言った新興核保有国との核戦力格差が縮小していく事です。

中国やインドは、戦略兵器削減交渉の埒外ですから兵力拡大は自由
に行えます。現状では、米国は14隻、ロシアは11隻、中国は4
隻程度のSSBNを保有おり、その差は絶対的なものと言えます。しか
し、戦略兵器削減交渉で米ロがSSBNを半数に削減すると、米ロ各々
7隻、6隻の保有状況となり、中国の4隻と隻数では余り変わらな
くなってしまいます。

現時点では、弾頭数やMaRV化の度合い、射程等で、技術的には、大
きな格差があるものの、中国には追う側のメリットがあります。中
国が軍事費の拡大を続けていく限り、その差は急速に縮小していく
筈です。

つまり、米ロが戦略兵器削減交渉で大規模な核軍種を行えば行う程、
中国の核戦力が相対的に強化され、米ロ両国は、ますます、中国を
戦略的に無視できなくなる事になります。勿論、これは、インドに
ついても同様ですので、核戦力においても近い将来、世界は多極化
に向かい、つれて不安定さを増すと考えられるのです。


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2009年2月27日金曜日

テポドン発射は、得がたいMD演習の機会 大いに利用すべし


※画像は防衛庁サイトから転載

テポドン迎撃を検討 防衛省、MDシステム初実戦

北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型を日本に向けて発射す
れば、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する検討を防衛省が始めたことが
26日、分かった。迎撃するのはイージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイ
ル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)で、導入から初の運用
となる。ただ、迎撃は重大な政治決断を伴うため、首相官邸などと慎重に調整
を進める。

政府は平成15年、米国が開発したMDシステムの導入を決定した。MDによ
る対処は2段構えで、まず海上自衛隊のイージス艦がSM3で大気圏外で弾道
ミサイルを撃ち落とし、失敗した場合は航空自衛隊が地上で運用するPAC3
で迎撃する。

海自はSM3を搭載したイージス艦として19年度に「こんごう」、20年度
に「ちょうかい」を配備。空自も19年3月に入間基地(埼玉県)へPAC3
を配備したのを皮切りに、昨年3月までに首都圏の4カ所に配備を終え、26
日には岐阜基地にも配備した。

こんごうは19年12月に米ハワイ沖で発射試験に成功したが、ちょうかいは
昨年11月、より難易度の高い試験に失敗。空自は昨年9月、米ニューメキシ
コ州でPAC3の初の発射試験を行い、模擬ミサイルの迎撃に成功している。

北朝鮮が18年7月にテポドン2号を含む弾道ミサイル7発を発射した際、自
衛隊は迎撃システムを備えていなかった。こんごうとちょうかいの2隻も日本
海と太平洋側に展開したものの、弾道ミサイルの探知・追尾だけが任務だった。

テポドン2号改良型の迎撃に踏み切る場合、MDシステム導入で自衛隊法に新
たに規定した「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を初適用することになる。
破壊措置には、(1)燃料注入など発射の兆候がある場合、防衛相が首相の承
認を得て自衛隊の部隊に迎撃を命令(2)明確な兆候はないものの、ミサイル
実験などへの警戒が必要な際、防衛相はイージス艦などを展開させておき、あ
らかじめ作成された「緊急対処要領」に沿って迎撃する-の2つの運用方式が
ある。

北朝鮮は24日、実験通信衛星「光明星2号」の打ち上げ準備を行っていると
の談話を発表。人工衛星発射を“隠れみの”にテポドン2号改良型を発射して
くる可能性が高いため、迎撃に向けた政治決断とともに、どちらの運用方式で
迎撃を命じるかも今後の政府内の調整の焦点となる。

(産経新聞 2009/2/27)

昨年、「ちょうかい」がハワイ カウアイ島沖でMD訓練するのに約
60億円の訓練費用がかかりました。このJFTM-2というコードネー
ムのついたそのテストでは、実戦に近い条件を想定し、「ちょうか
い」に対して、いつ発射するかを事前に知らせる事なく標的ミサイ
ルを発射し、それを「ちょうかい」のイージズシステムで探知し、
SM-3ミサイルを発射、誘導し、標的ミサイルに直撃させるとい
うシナリオになっていました。
「ちょうかい」は、米軍の早期警戒衛星からの情報を元に、標的ミ
サイルの探知、誘導を正確に行いましたが、最終フェーズでSM-3
に搭載された標的を識別し誘導するセンサーが標的を見失い、結果
的に標的撃破に失敗しました。しかし2007年に行われた「こんごう」
の演習(JFTM-1)がミサイル発射時に発射通知されたものであった事
と比べると実戦に即した演習となっていたのは事実です。

今回の北朝鮮のテポドン発射と、上記のJTFM-2演習を比べると、当
然ではありますがシナリオが一致する事に気がつきます。
今回のテポドン対応でイージス艦がどこに配置されるかにもよりま
すが、打ち落とすべきミサイルがミッドコースフェーズ(巡航中)なのか
ターミナルフェーズ(降下中)なのかの違いこそあるものの、米軍早
期警戒衛星情報→イージス艦によるミサイル探知→ミサイル追跡→
ミサイル照準→SM-3発射→SM-3誘導→撃破という基本的な
対応手順は全く変わらないのです。いつ発射されるかわからないと
いう状況まで同じです。あとは、実際にSM-3を発射するか、し
ないかだけの違いでしかないのです。テポドンを打ち落とすという
決定がでれば(実戦でもないのに手の内を全て晒すのは私は愚策と
思いますが)、全く同じになってしまいます。

寧ろ、ハワイへわざわざ艦艇を派遣する必要もなく、実戦時に必要
とされる海上自衛隊の艦艇をはじめとするリソース全てが利用でき
ますから、更に実践的な総合的演習が可能とすら言えます。しかも、
ミサイルもダミーではなく、本物のテポドンが使われ、訓練費用も
請求されないのですから、これ以上お誂えの演習は考えられない程
です。

勿論、北朝鮮が本物の弾頭をつければ実戦になってしまいますが、
今回については、人工衛星を打ち上げると北朝鮮自らが宣言してお
り、米軍も既に動き出していますので、北朝鮮が戦術的な奇襲を行
う事はまず考えられません。従って、自衛隊は、テポドン発射を全
てが整ったお誂えのむきのMD演習の機会と捉えて問題ない事にな
ります。

今回のテポドン演習を演習と捉えれば、色々とやって欲しい事があ
ります。自衛隊、米軍だけでなくミサイル発射時の政府首脳や各関
係省庁への連絡体制等も含め、今まで整備してきた実戦に即した手
順等の確認を是非やって欲しいと思います。この点は正に実戦なの
ですから当然と言えます。

この得がたい無償の訓練機会を是非実戦に生かし、北朝鮮の費用で
対北朝鮮ミサイル防衛を実のあるものにするという痛快な機会を、
是非ものにして欲しいと考えます。



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2008年11月28日金曜日

ミサイル迎撃試験 失敗は成功の元




※Image credit: Raytheon社

海上自衛隊、ミサイル迎撃試験失敗 弾頭に不具合か

防衛省は20日、日本を狙う弾道ミサイルに対処するミサイル防衛(MD)計
画で、海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」が搭載した海上配備型迎撃ミサ
イル(SM3)の発射試験を米ハワイ・カウアイ島沖で実施し、標的の迎撃に
失敗したと発表した。

現地時間19日午後4時21分(日本時間20日午前11時21分)に米軍施
設から標的となる模擬ミサイルを発射。SM3はイージス艦による探知、追尾
を経て3分後に正常に発射されたが、迎撃数秒前に標的を見失った。防衛省は
イージス艦側に問題はなかったとみており、弾頭に何らかの不具合があった可
能性が高い。

SM3の発射試験は昨年12月にイージス艦「こんごう」で成功。今回の訓練
は前回と違い、標的の発射時間を事前にイージス艦に知らせず難易度の高い形
で行った。

(産経新聞 2008/11/20)

勿論、60億円もの税金を使った迎撃試験ですから、成功して欲し
いのは、山々ですが、必ずしも、全てが無題になった訳ではありま
せん。

今回のテストは、実戦に近い条件を想定し、「ちょうかい」に対し
て、いつ発射するかを事前に知らせる事なく標的ミサイルを発射し、
それを「ちょうかい」のイージズシステムで探知し、SM-3ミサ
イルを発射、誘導し、標的ミサイルに直撃させるというシナリオに
なっています。

報道を見る限り、実際の試験では、この内、標的ミサイルの探知、
誘導までは正確に行われており、最終フェーズで標的を識別し誘導
するSM-3に搭載されたセンサーが、標的を見失ったとの事であ
り今回発射したミサイル個体に固有の問題である事が類推されます。

今回は、標的ミサイルにSM-3を一基だけ発射していますが、実
戦においては、ミサイル迎撃を行う場合に一発だけを発射するとい
う事はありません。二~三基のSM-3を同時発射する事になります。
つまり、同時発射したミサイルが二基以上で、その内一基が正常に
動作していれば、迎撃は成功していた事になります。

この点からすれば、発射したSM-3の品質に問題はあったが、そ
れ以外のMDシステム全体は正常に作動したと言えるのです。

今回使われたSM-3は、米国で開発されたBlockIAと呼ば
れるものですが、現在、より高速、大射程のBlockIIAが開
発されており、これには日本の技術も入っています。今回の失敗を
元に、より高度の信頼性を持つミサイルが開発される事を期待した
いと思います。