2010年6月11日金曜日

小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」ミニマムサイセス達成!

※図は、JAXA Webサイトから転載

宇宙ヨット 「イカロス」帆を広げる…金星に向かって飛行

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11日、燃料なしに太陽の光の圧力を受
けて飛行する宇宙ヨット「イカロス」が帆を広げることに成功したと発表した。
現在、地球から約800万キロ離れた宇宙を金星に向かって飛行している。

地球周辺以外で世界初めてとなる宇宙ヨットの航海が本格的に始まった。
イカロスは5月21日、金星探査機「あかつき」と一緒にH2Aロケットで打
ち上げられた。帆は14メートル四方で、髪の毛の太さの10分の1という極
薄の樹脂製。1円玉の5分の1の重さに当たる光の圧力を受けて進む。

帆は、打ち上げ時に直径1.6メートルの円筒状の本体に収められていた。今
月3日から地上からの無線の指示で展開作業が始まり、10日にすべて完了し
た。慎重に確認を繰り返し、計画より6日遅れとなったが、今のところトラブ
ルはないという。

広げた帆を本体から撮影した画像も公開された。今後、本体からカメラを切り
離し、帆全体を撮影する。開発に当たってきた森治JAXA助教は「いよいよ
航海が始まる。向きを変えたり、さまざまな観測や実験に挑みたい」と話す。

(毎日新聞 2010/06/11)


小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」のミニマムサクセスの
条件は、以下の二項目を達成する事です。
①大型ソーラーセイルの展開
②薄膜太陽電池による太陽光発電

JAXAは11日、イカロスがこの二つを達成した事を発表しました。
大型ソーラーセイルは、一次展開が8日に、二次展開は、9日に既
に達成されており、10日に二次展開の確認と太陽電池の発電が確認
されたという事です。

ただ、イカロス・ファンからすれば、9日に一次展開終了の画面が
公開された後、二次展開完了の発表がないまま、10日はイカロスの
状態は良好ですとしかブログにも記載されていませんでしたので、
一抹の不安を感じた方も多かったのではないかと思います。

既に、イカロスとは800万キロ離れ、交信にも30秒近くかかる訳で
各種の確認にも時間がかかるのは判りますが、ブログやTwitterを
使っているのですから、正式発表前に、「二次展開完了、結果確認
中。」と言った簡単なメッセージがあっても良かったのではないか
と思いました。

それにしても、今回のイカロスがソーラー・セイルの展開が成功し
た事は、探査機レベルのものでは世界初であり、まさに画期的な事
件であると言えます。恐らく、将来書かれる人類の宇宙開発史の中
でも、必ず記載される事項になるのではないでしょうか。
ソーラー・セイルのコンセプトは、今から百年も前から提案されて
いた古くからのアイデアですが、これまで、もっと小型のセイルを
実験的に展開した事はあっても、一個の探査機として大型薄膜を展
開した事はありませんでした。今回、イカロスが使用した薄膜も、
厚さは、髪の毛の十分の一しかありません。それを14m四方に展開し、
その形を維持しなければなりません。その困難さは想像に難くあり
ません。

先行する米国では、ソーラー・セイルに対してはNASAが積極的では
ない事から、個人の寄付で運営されている惑星協会(プラネタリー・
ソサイティ)が主体となって、ピギーパック衛星として開発されて
います。それが、今回「イカロス」が世界初を達成できた理由にな
っています。それでも、失敗したとは言え、過去二回、ソーラー・
セイル実験衛星を打ち上げたのは、さすがに米国の実力と言えます。
イカロスに続き、現在の予定では、今年末に、「Light Sail-1」が、
地球周回軌道に打ち上げられる見込みです。

イカロスは、遠心力でソーラー・セイルを展開を維持しますが、
Light Sail-1は、マストを持ち、それによりセイルの展開を維持し
ます。異なる形式のソーラー・セイルが存在し、各々がその性能を
競う事が、今後のソーラー・セイル探査機の発展に有用であるのは
言うを待ちません。ソーラー・セイルによる宇宙大航海時代の幕開
きを是非、期待したいと思います。


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「羅老号」二号機 打ち上げ失敗!

※図は朝鮮日報サイトより転載

燃料調節失敗?配管から燃料漏れ?海に落ちた「5000億ウォンの宇宙の夢」

ロシアが製造した1段目エンジンに異常?
「羅老」空中爆発 なぜ?


人工衛星搭載ロケット「羅老」は離陸から137秒後に通信が途絶えるまです
べてが順調に見えた。10日午前から韓国とロシアの研究陣が総動員され、最
終点検が行われたが、異常はなかった。しかし「羅老」は結局、済州道(チェ
ジュド)南側の公海上に落ちた。羅老宇宙センターから470キロ離れたとこ
ろだ。韓ロ合同調査団はすぐに「羅老」残骸回収作業に着手することにした。

昨年8月の最初の打ち上げでは、韓国が初めて開発した「羅老」2段目を試験
する機会があったが、今回はそれさえも失敗に終わった。科学技術衛星も丸ご
と失った。最初の打ち上げではフェアリング(人工衛星保護カバー)の一つが
分離せず、衛星を軌道に乗せられなかった。最初の打ち上げよりも惨めな結果だ。
「羅老」開発には1・2回目の打ち上げを含めて計5025億ウォン(約400
億円)の費用がかかった。衛星は136億ウォン。

「羅老」の空中爆発原因はまだ確認されていない。しかしいくつかの可能性が
推定できる。通信が途絶えた137秒経過時点の状況は、1段目のロケットが
火を噴きながら上がっている時で、昨年の失敗の原因だったフェアリング分離
段階の78秒も前だ。1段目のロケットには液体酸素と燃料のケロシン(灯油)
を適切に噴き出す噴射口とその量を調節するバルブがあり、関連配管が複雑に
設置されている。発射の瞬間からすべて燃焼するまでエンジンノズルからは瞬
間的に大量の液体酸素とケロシンが噴射される。

140トンの「羅老」を宇宙空間まで送らなければならないうえ、秒速8キロ
の超高速に達する必要があるからだ。この燃料バルブが燃料噴射量調節に失敗
し、問題が生じた可能性がある。

もう一つはエンジン配管に問題が発生して燃料が漏れた可能性だ。漏れた燃料
に火がつき、エンジン内部が過熱され、爆発したということだ。「羅老」の飛
行経路が当初設計されたものより空気の密度が高い低高度をたどり、飛行体内
外部を損傷させた可能性があるというのが専門家らの分析だ。

1段目のロケットはロシアから輸入された。この1段目と国内で開発した2段
目を連結して「羅老」が作られた。まだ空中爆発の原因は把握されていないが、
こうした事故をもたらす兆候はあった。まず1段目のロケットは十分な試験が
行われていない。完全に開発が終わって本格的にロケット市場に投入されたの
ではない。ロシアのロケット製作会社クルニチェフは「アンガラ」という新し
いロケットを開発しているところだ。そのロケットエンジンは推進力が大きく、
「羅老」ではその力を弱めた。このため「羅老」打ち上げはロシア側からすれ
ば、事実上、開発中である「アンガラ」エンジンの飛行試験格ということになる。
「アンガラ」のエンジンはまだ燃焼試験と安定化作業をしている段階だ。

匿名を求めたロケット専門家は「ロケットを開発するには少なくとも3-4回
のエンジン燃焼試験と飛行試験を行うのが常識」と述べた。「羅老」はこうし
た手順の相当部分を省略したまま衛星を搭載した。開発中のロケットの飛行試
験には費用がかかる実際の衛星よりも、衛星の模型を搭載する。こうした過程
をたどらない場合、惨憺たる結果をもたらす場合が多い。

(中央日報 2010/06/11)


前回、2009年8月、最初の打ち上げに失敗し捲土重来を期した羅老
号でしたが、二号機も打ち上げ失敗という事になりました。
前回は衛星フェアリングの分離失敗によるものでしたが、今回は、
ロシア製の第一段の不具合によるものの様に見えます。

失敗原因については未だ調査中ですが、爆発が発生した際のビデオ
映像では、それまでは、一段目の噴射炎が見えていた処に、小爆発
が生じ、白煙が広がり、その後、発射炎は消え(?)進路が90度近く
右に傾き落下していった様子が写っています。

小爆発が発生したのは、発射後137秒後で、最大推力を発生し、
高度も、約90~100kmに達していたと思われます。大爆発を起こし
ていない処から見て、エンジンに燃料と酸化剤を送るターボポンプ
周りの配管が振動で外れ、そこから燃料か酸化剤が洩れて小爆発を
起こした上、燃焼を維持できずに、推力を失った様に見えます。

なお、テレメトリーデータは爆発時点で途切れていますので、小爆
発ではあっても、ロケットのアビオニクスを破壊する程度の爆発規
模であった事が分かります。

羅老号の打ち上げについては、ロシアのクルニチェフ社が開発中の
アンガラロケットの一段目に使用するURM(Universal Rocket
Modules)の推力を若干低下させたデチューンモデルを使用しています。
このアンガラロケットは、まだロシア国内でも打ち上げの実績はな
く、エンジン試験が行われて以外は、羅老号一段目として打ち上げ
が唯一の飛行実験であると言えます。エンジンそのものはエネルギ
アやゼニット他で実績のあるRD-170の系列エンジンですし、ロシア
の次世代ロケットとしては本命と言える機体ですが、単体としての
実績は十分とは言い難いものです。

ただ、これは、不完全なエンジンを選択した韓国の選択の誤りとい
うより最新の技術を使う時に必然的に発生するリスクであるとも言
えます。但し、ロシアのロケットを使用する決定を行った際には、
韓国側は同エンジンの技術導入を期待し、最新技術を採用したので
すが、実際にはロシアはURMのロケット技術を行う意思はなく、
結局、ロシアのロケット開発を有償で支援しただけに終わったとい
う評価もありえます。(美人局の様に、韓国は技術移転の下心をロ
シアに利用されたと言えなくもありません。)

とはいえ韓国は、ロシアとの契約の中で、ロシア側の責任で打ち上
げが失敗した際には、追加で打ち上げる義務があるという条項を入
れている様です。ロシア側からすれば、追加打ち上げ費用も馬鹿に
なりませんが、韓国がロシアに支払った打ち上げ費用2億ドルは、
HーIIAであっても、二基打ち上げが十分可能な金額であり、URM
の信頼性向上の為にも、ここは、追加打ち上げを行っておくべきで
あろうと思われます。

新しいURMの製造と新しい科学衛星の製造には、数ヶ月を要しま
す。韓国は、今まで安易な方法でロケット開発技術の導入を企画し
てきました。しかし、実際には人工衛星打ち上げロケットの熟成に
近道はありません。あらゆる技術開発と同様、開発の失敗と、その
原因追求は開発ノウハウそのものと言えます。韓国は、ロシアの事
故原因追求に協力する事で、ロケット開発のノウハウ蓄積を図るべ
きであろうと思われるのです。


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2010年6月10日木曜日

日本版GPS衛星の名残 準天頂衛星打ち上げへ






※CGは、JAXA Webサイトから転載

準天頂衛星 1号機 8月2日に種子島から打ち上げへ

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9日、全地球測位システム(GPS)の
精度向上を目指す準天頂衛星1号機(愛称・みちびき)を8月2日午後10時
54分から同11時54分の間に、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2A
ロケット18号機で打ち上げると発表した。

準天頂衛星は、カーナビなどの位置情報を送信している米国のGPS衛星を補
い、国内での測位を高精度化するための技術実証が目的。米衛星に代わる「日
本版GPS」構築を目指し、官民共同で3基打ち上げる計画だったが、06年
に産業界が撤退、残る2基の開発のめどは立っていない。前原誠司・宇宙開発
担当相の私的諮問会議は10年4月「利用者の強い要望がない限り不要」との
提言をまとめている。

(毎日新聞 2010/06/09)


今やカーナビを始めいたる処で使われているGPS衛星ですが、元々
は、米国国防総省が始めたプロジェクトである事をご存知の方も多
いと思います。例えば、船や飛行機が外部からの情報に基づき自分
が地球上のどの位置にいるかを知る事ができれば、目標位置との比
較を出す事ができ、その差に基づいて飛行経路を修正でき、確実な
航法を期待できる様になります。

実際、初期のミサイルは、GPSの様な外部情報を得られなかったの
でINS(慣性航法システム)を装備し、自分で自己位置を推定して飛
ぶ方式を採用していました。(それ以外にも、デジタル地形マップ
との対比で自己の位置を推定する精密誘導航法などもあります。)

それに比べ、地球を公転する複数の衛星から電波を受信し、その受
信電波から地球上の位置を計算で確定できるGPSは、ミサイルのみ
ならず、飛行機、船、自動車、人といった自分の位置と航法を必要
とする全ての移動物体にとって、夢の航法ツールと言えます。

ただ、元々、米国が自国の軍隊用に開発した測位システムですから
戦時においては、GPS電波の精度の変更やGPS電波の発信停止と言っ
た運用上の制限が出る事が予想されます。米国との関係での疎密は
ありますが、自立的な軍事力を建設しているロシアは独自のグロノ
ス測位システムを保有しており、欧州は、ガリレオ計画を推進中で、
中国もこのガリレオ計画に相乗りする事を予定しています。

今回、打ち上げが決まった準天頂衛星は、日本独自の測位システム
の夢の跡とも言えるものです。

GPSシステムは、高度20000kmの軌道を公転する30個の衛星ネットワ
ークからなっています。この内、三個からの電波を受信できれば、
位置が決定できます。しかし、実際には、衛星に搭載している電波
時計の誤差等もあって4個の衛星電波を受信する事で、正確に自己
位置を計算しています。

しかし、衛星の軌道によっては見通し角度の影響で衛星の電波を受
信しづらい事もあり精度上の問題が出る事もあり、位置決定に時間
を要する事もあります。

当初は独自の測位システムとして構想された準天頂衛星システムで
すが、少ない個数の衛星で測位システムを構成できるという特徴が
あります。その上、GPSの補完であれば、僅か三個あれば十分実用
的な価値出てきます。

準天頂衛星はその名前の通り、日本から見て天頂付近にある時間が
長い軌道を使いますので、GPS衛星からの電波が受信しにくい場所、
例えば、ビルの谷間でも衛星からの電波を受信しやすいという特徴
があります。遠地点の高度は、41000kmと通常のGPS衛星に比べ、二
倍近く遠くなりますので、その分、衛星を大きくして衛星から発信
する電波を強くしてあります。

今回の衛星は、準天頂衛星の最初の一個ですが、それに続く二個の
衛星については、一個目の運用状況を見ながら決定する事になって
います。当初は、官民で第三セクターを作り利用者から利用料金を
取る様なスキームでしたが、米国のGPS衛星の提供サービスが改善
された事もあって、スキームそのものが見直し対象になっています。

ただし、GPS衛星更新計画が必ずしも上手くいっていない事が、
2009年5月にGAO(米国会計監査院)により明らかにされ、場合によっ
ては、数個の衛星が2010年以降、運用できなくなるかも知れないと
報じられました。実際には、更新計画は、その後、改善され、GPS
サービスが停止する様な事態が発生する事はなさそうです。しかし、
衛星サービスは、幾分かの不確実性を必ず含んでおり、サービス停
止を防ぐ為には、一定の冗長度が必ず必要となります。その点、比
較的少ない衛星で、一定のバックアップシステムを構成出来る準天
頂システムは、GPSを補完するという理由だけでも打ち上げる価値
があると思うのです。


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2010年6月9日水曜日

韓国哨戒艦撃沈事件 戦争を恐怖した世論に負けた李明博政権


対北政策にブレーキ? 韓国地方選、与党敗北


【ソウル=黒田勝弘】2日に行われた韓国の統一地方選挙は、事前の予想に反
し野党が大躍進し与党の実質的敗北となった。野党の勝利は李明博政権に対す
る世論の批判を意味しており、李政権にとっては韓国哨戒艦撃沈事件をめぐる
北朝鮮に対する強硬姿勢など、今後の対北政策でブレーキをかけざるをえない
情勢となった。

地方選とはいえ今回の選挙戦は韓国艦撃沈事件が大きな争点になった。与党ハ
ンナラ党は「北の脅威」を強調し安保重視を訴えた。これに対し野党民主党は
南北対決の危険性を強調し、政権・与党の対北政策を批判した。
結果は「戦争か平和か」を訴えた“平和志向”の民主党が、終盤段階で北朝鮮
に融和的な考えの若い世代の支持を集め、票を伸ばした。政権・与党にとって
は「北の脅威」の強調が裏目に出たかたちだ。

選挙結果は、焦点のソウルなど主な知事・市長16人のうち、ハンナラ党が6
人、民主党7人、自由先進党1人、無所属2人で野党が大勢を占めた。与党は
首都圏でソウル市長と京畿道知事が再選を果たし辛うじて面目を保った。
今回の選挙は「北風」と「盧風」の対決といわれた。保守与党のハンナラ党は
哨戒艦事件という「北風」を利用したのに対し、革新野党の民主党は盧武鉉前
政権の主要メンバーが再起を目指して多数出馬。今も盧武鉉ファンが多い若い
世代に期待をかけた。

結果的には宋永吉・仁川市長、金斗官・慶尚南道知事、李光宰・江原道知事、
安煕正・忠清南道知事をはじめ学生運動出身者など盧武鉉系の若手が相次いで
当選。ソウル市長選でも女性の韓明淑・元首相がハンナラ党の呉世勲市長をわ
ずかな差まで追いつめた。

親北・左派系の「盧風」が、保守派が期待した「北風」を押し返したかたちだ。
これは若い世代を中心に多くの国民がもはや、「北の脅威」にはそれほど動か
されないという韓国の政治状況をあらためて示したものだ。

選挙結果を受け、5年任期の3年目の李政権はハンナラ党とともに体勢立て直
しを迫られている。今後、2012年の次期大統領選を目指した動きも出始め
る。与野党とも“次期政権戦略”を構想することになるが、親北・革新系の政
権奪還に向けた勢力復活に拍車がかかるのか、それとも防戦の反北・保守系が
巻き返しに成功するのか、韓国政局は新たな流動期に入った。

(産経新聞 2010/06/03)


事実上、今回の韓国哨戒艦沈没事件は終了しました。韓国の世論は
北朝鮮との対決姿勢は臨まない事が明確になりました。今後、李明
博政権は、直接的な報復行為は控え、国連での北朝鮮非難決議を出
す事だけに努力を傾注する事になります。但し、ロシアと中国が北
朝鮮を名指しした非難決議を避ける動きを示している処から、また、
韓国自体が対決を望んでいない事からも、安保理議長声明レベルの
対応になる確率がますます高くなってきたと言えるでしょう。

今回の統一地方選で判った事は、進歩派十年支配で、若い世代を中
心に容共派が増加した事と、今現在の豊かさを戦争によって奪われ
たくないと考える層が増加した事です。これが今回、保守派有利の
情勢の中で、戦争の危険を訴えた民主党が勝利した理由になってい
ます。

これは、拉致疑惑を北朝鮮が認めた事で世論が急速に硬化した日本
とは全く逆である事に注目したいと思います。日本では拉致事件に
よって左翼の嘘が暴かれてしまいましたが、韓国では逆に、哨戒艦
を撃沈したのが北朝鮮であるという事実は、多くに国民にとって北
との戦争を招く「不都合な真実」となり、保守が排除される原因に
なってしまったという訳です。これは国難に当たって、最悪の選択
をする朝鮮民族の悪風かもしれません。

従来型の解釈(大韓航空機爆破事件当時の議論)であれば、韓国人は、
首都ソウルを北の長距離砲の射程内に収められているが故に戦争に
対する危険に過敏に反応しているという解釈する処ですが、私は、
そうではなく、朝鮮戦争終了後の50年の平和と繁栄、取り分け、
民主化運動で成立した金泳三政権以降の、左派思想が影響した教育
の浸透により、韓国民の北朝鮮に対する精神的な去勢が行われた結
果であると考えます。その代わりに与えられたのは、自国中心の歪
曲史観と反日思想であり、韓国人の左翼進歩派政権が仮想敵国を積
極的に北朝鮮から日本に転換した事もそれを支える事になったと考
えます。

北朝鮮からすれば、多少の経済制裁さえ我慢すれば対韓政策でいく
らでも強硬な政策を取っても、韓国からの軍事的、政治的な報復は
ないと期待できる事になります。また、韓国内の親北朝鮮勢力によ
る政治的デマゴーグが極めて有効に機能する事が確認できた事にな
ります。軍艦を撃沈され46名が死んだところで、例え、証拠があ
っても、韓国国民は、その責任を北朝鮮に対して問う事がない。あ
るいは、北朝鮮に対して責任を問おうとする政治家を排除する事が
可能な訳ですから、北朝鮮は対韓工作をフリーハンドを得た様なも
のと言えます。これらを若き将軍金ジョンウンの卓越した指導力の
結果として神格化する事も可能なのかも知れません。これで、韓国
国民はひと時の魂の平安を得たのかも知れませんが、北朝鮮人民の
苦難の行軍は、まだまだ終わり無く継続する事になります。


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2010年6月8日火曜日

「はやぶさ」の豪州上空着陸想定域への再突入が確実に

※図表は、JAXA Webサイトから転載

小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)のTCM-3、
地球外縁部からWPAへの誘導目標変更完了について


日本時間2010年6月5日13時44分にTCM-3が正常に実施されたことを確認しまし
た。この運用により、地球外縁部から豪州WPA内着陸想定地域への誘導目標変
更が完了しました。

探査機の状態は良好です。

※TCM:Trajectory Correction Maneuver(軌道補正マヌーバ)
※WPA:Woomera Prohibited Area(ウーメラ実験場(立入禁止区域))

(JAXA 2010/06/05)


いよいよ、6月13日の「はやぶさ」の帰還まで、あと一週間を切り
ました。

2005年11月。「はやぶさ」は小惑星イトカワに着陸し、そのサンプ
ルを収集しました。その後のトラブルで、帰還計画は大幅な変更を
余儀なくされましたが、「はやぶさ」は、数々の困難を克服し、地
球帰還への旅を続けてきました。「はやぶさ」の目的は、小惑星の
サンプルを地球に持ち帰る事で、太陽系天体と地球を無人探査機が
往復するのに必要な技術を実証する事にあります。これからが将に
「はやぶさ」の正念場なのです。

過去二ヶ月の間、「はやぶさ」は、TCM-0からTCM-3までの4回の軌
道補正マニューバーをイオンエンジンを使用して完璧にこなしてき
ました。

この4回の軌道補正で、最初は、大まかに地球軌道を捉えているだ
けだった「はやぶさ」は、地球を西から東に掠めるコースを取る様
に、その軌道を修正しています。TCM-3が終わった現在では、目標
は地球外縁からさらにウーメラ実験場上空へ突入する様にピンポイ
ントの正確さで誘導されています。しかし、400万キロの彼方か
らでは、広大なウーメラ実験場も点にしか見えません。突入四日前
に行われるTCM-4では、ウーメラの更に内部に精密誘導する為の軌
道修正が行われます。

不安の要素は、まだまだあります。酷使されているイオンエンジン
には、TCM-4をやり抜いて貰わないといけません。ただ一個残って
いるリアクションホイールにも、あと僅かですが、頑張って貰わな
いといけません。突入の三時間前に行われる帰還カプセルの分離は
正確なタイミングで行われないといけません。そして、それ以上に
帰還カプセルそのものが、惑星間航行速度から大気圏内で急速に減
速する事による高熱に耐え、さらにパラシュートを放出し開傘まで
機能して貰わないといけないのです。これらの作業に、やり直しは
ありません。ただ一回しかないタイミングで実施されなければなら
ないのです。

満身創痍の「はやぶさ」がミッションを500%達成する為には、残っ
たステージで全ての部品が正しく動かなくてはなりません。
「はやぶさ」の現状からすれば、それには今まで以上の奇跡が必要
なのかも知れません。ただ一度だけのチャンスに全てが上手く動か
ないといけない事が連続する一週間です。
一つ一つの作業とその結果に手に汗握りながら、「はやぶさ」の無
事の帰還を見守りたいと思います。

2010/06/09追記
TCM-4は無事完了し、あとは、再突入三時間前の帰還カプセル分離
を待つばかりとなりました。イオンエンジンは無事運用を終了しました。


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2010年6月7日月曜日

シャトル後継ロケット初打ち上げに成功!


※写真はSpaceX社のWebページから転載

米民間企業の商業ロケット、初の打ち上げ試験に成功

6月6日13時18分配信
米民間企業スペースX社は4日、米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から
商業ロケット「ファルコン9」の打ち上げ試験を実施し、搭載した宇宙船模型
を地球周回軌道に乗せることに成功したと発表した。

今回の成功で、国際宇宙ステーション(ISS)への飛行士や物資の輸送に、今
後商業ロケットが使用される可能性が出てきた。

同社はインターネット決済サービス「ペイパル」の創設者、イーロン・マスク
氏が設立。マスク氏によると今回の試験では、予定していた高度250キロの地
球周回軌道へほぼ完璧に、「ドラゴン」と呼ばれる宇宙船模型のカプセルを投
入できたという。カプセルは1年間、同軌道を周回したあと、大気圏で燃え尽
きる予定。

オバマ政権は先に発表した宇宙政策で、ISSへの輸送を民間企業に委託するこ
とにより、NASAが予算枠内で火星軌道到達などの大規模な宇宙探査に一層の力
を注ぐことを可能にするとの計画を明らかにしていた。今回の打ち上げ実験は
その一環とされる。民間企業の商業ロケットがコスト面や効率面で有利かどう
かを確認する意味もあり、注目を集めていた。

米航空宇宙局(NASA)はまもなくスペースシャトル後継機開発を打ち切る見通
しで、今後はISSへの輸送を民間企業に委託する意向を示している。

マスク氏によると、一連の打ち上げ試験がすべて成功すれば、同社は来年にも
物資輸送用の宇宙船の運行を開始したい意向だ。またNASAから契約が得られた
場合、3年以内に同社の商業ロケットでISSへの人員輸送を開始することが可能
だという。

(CNN.co.jp 2010/06/06)


シャトルの打ち上げを見慣れた人から見れば、今回の打ち上げは如
何にも貧弱に見えますが、これが本当のシャトル後継ロケットです。
正確に言えば、今回打ち上げられたSpaceX社のFalcon9ロケットと
ドラゴン宇宙機の他に、オービタルサイエンス社のトーラスIIロケ
ットとシグナス宇宙機がシャトルが行っていたISSへの輸送業務を
担う事になっています。

オバマ大統領は、ブッシュ大統領時代に策定されたコンステレーシ
ョン計画と、それに基づいて開発されていたアレスIとアレスVロケ
ットの開発を停止させていますので、シャトルが退役した後、その
輸送業務を担うのは、COTS(商業軌道輸送)サービスのみという事に
なります。

さて、今回打ち上げられたFalcon9ロケットですが、二段式のロケ
ットで、初段にケロシン・液体酸素を燃料とするマーリン・エンジ
ンを9基束ね、二段に同じくケロシン・液体酸素を燃料とするマー
リン・バキュームエンジンを搭載しています。静止トランスファ軌
道への打ち上げ能力は約4500kgで、日本のH-IIAロケット(H2A202型)
に匹敵するサイズです。H-IIAロケットが高さ53m、直径4mであるの
に対し、Falcon9は、各々54mと3.6mで打ち上げ能力も含め良く似て
います。

但し、Falcon9は、商業打ち上げビジネス用に開発された事で、非
常に安価なロケットとして製造でき運用される様に設計されていま
す。比推力の高い、液酸液水エンジンを使わず、実績のあるケロシ
ン、液酸エンジンを9本束ねたクラスタ設計によりエンジンの大量
生産とそれによる質の安定が期待できます。また、打ち上げ要員を
最小化した運用設計を採用する事で、運用費用を抑える事が可能に
なっています。H-IIAもH-IIを廉価にした設計でしたが、Falcon9は
レベルの異なる合理的な設計がなされているのです。その結果、打
ち上げコストは、30億円強で、H-IIAに比べ三分の一と非常に安価
となっています。その上、最初から有人打ち上げ機への発展が考慮
されています。ちなみに、今回の打ち上げでも、有人カプセルのモ
ックアップを含むドラゴン宇宙機を搭載して打ち上げられているの
です。

NASAはCOTS契約に当たって、トン当たりの輸送コストが従来のシャ
トルでの輸送と比べ、ほぼ同程度となる価格設定をしています。
それだけ見れば、NASAは、民間商業打ち上げサービスのメリットを
享受していない様にも見えますが、そうではありません。民間商業
打ち上げサービスは、そのコストで、打ち上げロケット、打ち上げ
施設、宇宙機、ISS側のランデブードッキングインフラといった一
切を賄わなければなりません。その点を考えれば、それでも最初の
COTS契約を結んだSpaceX社やオービタル社のベンチャースピリット
が判る様に思えるのです。宇宙利用を進める為には、輸送手段が安
価である必要があります。宇宙への往還を安価に行える様になる事
で利用範囲は広がります。今回の打ち上げは、その貧弱な外観とは
裏腹に、宇宙への安価なアクセス手段の提供という実質を齎すもの
として将にエポックメーキングな出来事であると思われるのです。


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