2009年2月6日金曜日

「はやぶさ」地球帰還まであと485日


※写真はJAXAサイトからの転載

<はやぶさ>エンジン再起動成功 軌道を地球に向け

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日、世界初の小惑星の岩石採取に挑戦
した探査機「はやぶさ」が、地球帰還に向けたメーンエンジンの再起動に成功
したと発表した。同日午前11時ごろ(日本時間)、4基あるエンジンのうち
1基を再起動し、同35分、正常に動いていることを確認した。はやぶさは軌
道を地球に向けて変え、順調にいけば来年6月、当初予定より3年遅れて地球
付近に帰ってくる予定だ。

はやぶさのメーンエンジンは、電気推進の「イオンエンジン」。燃費がよく長
距離の航行に耐えられる。これまでに設計寿命(1万4000時間)を大きく
超える3万1000時間稼動している。

はやぶさは03年5月に打ち上げられた。05年11月、地球と火星の間を回
る小惑星イトカワに着陸。表面の岩石採取を2度試みた。その「成果」を積ん
で、地球から約3億キロのかなたを航行している。

これまでに姿勢制御装置3台のうち2台が壊れ、姿勢制御用燃料がすべて漏れ
るなどのトラブルに見舞われた。イオンエンジンの燃料となるキセノンは地球
帰還に必要な量があるという。

地球付近まで戻ることができれば、高度数万キロで帰還用カプセルを切り離し、
オーストラリアの砂漠に落下させる。総航行距離は三十数億キロに及ぶという。

(毎日新聞 2009/02/06)

最初にお断りしておきますが、地球帰還までの日数はかなりいい加
減です。「やまと」にひっかけたジョークという事でご容赦下さい。

今まで事実上の冬眠状態であった「はやぶさ」ですが、小惑星「い
とかわ」と地球との位置関係が、帰還に際して燃料を一番節約でき
る関係になった為に、冬眠から目をさまし、地球帰還コースに進路
をとったという事です。(正確に言えば、既に「いとかわ」の軌道
からは離脱していましたので、第二期軌道変換とJAXAでは言ってい
ます。)

小惑星への着陸と離陸を世界で始めて成し遂げた「はやぶさ」です
が、その直後に姿勢制御用の燃料が全て洩れるという大トラブルに
見舞われ、地球帰還は不可能と思われましたが、イオンエンジン用
の燃料であるキセノンガスを直接噴射するという荒業で、緊急姿勢
回復を成し遂げ、地球との交信を回復しました。ただ、この間に、
電気が全て放電され衛星を制御しているコンピュータもリセット状
態になっていたりと満身創痍の状態である事は今も変わりません。

姿勢制御も姿勢制御系の噴射エンジンは使えず、三つの内、ただ一
つ残ったリアクションホイールを騙し騙し使っている状態で、これ
が、故障すれば、地球への帰還は全く不可能となります。その点で、
イオンエンジンの再始動成功は良いニュースではありますが、全く
予断を許さない状況はこれから地球帰還まで続いていきます。「は
やぶさ」の運用を行っているJAXAの「はやぶさ」運用チームは、今
まで同様、気の抜けない日々が続く事になります。

非常な困難の中にある「はやぶさ」ですが、既に、科学専門誌「サ
イエンス」が一冊丸々で、その成果を特集する程の成果を上げてい
ます。その点では、地球帰還とサンプルリターンは、「はやぶさ」
の成功を大成功にするものと言えます。

ISAS広報の任にある的川教授をして、「こんなにrobustでtoughな
のは見たことがない」と言わせた「はやぶさ」であり、「はやぶさ」
運用チームです。数々の困難を克服した実績には既に太鼓判が押さ
れていますが、今後共、頑張って頂き、「はやぶさ」の地球帰還と
サンプルリターンを是非成功させて欲しいものだと思います。


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2009年2月5日木曜日

本来の仕事もちゃんとやってるインド海軍と中国海軍



※写真は「海口」。http://icc.skku.ac.kr/~yeoupx/からの転載

ソマリア沖であわや軍事衝突=インド潜水艦?と中国艦隊

【香港4日時事】4日付の香港各紙によると、アフリカ・ソマリア沖で1月15日、
海賊対策のため派遣された中国海軍の艦隊が、ある国の潜水艦に追跡されてい
ることを察知して逆に潜水艦を包囲し、一時攻撃態勢に入るという事件があっ
た。中国紙・青島晨報の報道として伝えた。
同紙は潜水艦の国籍には言及していないが、インド海軍が保有するロシア製の
キロ級潜水艦だったことを示唆している。 

(時事通信 2009/02/04)

ソマリアの海賊対策で派遣されていても、平常の仕事はインド海軍、
中国海軍共にちゃんとやっている事を窺わせる事件です。

インドと中国は、国境紛争で戦火を交えた事もある関係であり、ま
たインドは、中国と対立していたソ連と親しい関係であった事もあ
り中国を仮想敵国の一つとして位置づけています。インドの核武装
もパキスタン向けというより中国向けの軍備であると言えます。

その様な関係ですから、今回の事件も、インド海軍にしても、中国
海軍にしても通常の緊張状態を維持していただけと言えるのかも知
れません。仮想敵国であるか否かに関わらず、他国軍艦の音紋を採
取する事は、海軍が平時から行うべき情報収集業務です。指紋で犯
罪者を識別する様に、海軍は、この音紋で艦種、艦名を識別します。
インド海軍は、その音紋採取を行っていたのではないかと思われます。

今回、中国海軍は、海賊対策にミサイル駆逐艦「海口」と「武漢」、
及び補給艦「微山湖」の三隻を派遣しています。「海口」は中華イ
ージスと呼ばれる052C型駆逐艦(ルヤンII型/旅洋II型)で、中国海
軍の虎の子であり、「武漢」も052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)
の新鋭艦です。しかも、低速の補給艦を随伴しているので艦隊速度
が遅かった事から、インド海軍としては、音紋採取の格好の機会と
判断したのではないかと想像します。

一方の、インド海軍の潜水艦ですが、報道通りであれば、ロシア製
のキロ級潜水艦です。キロ級は通常動力潜水艦であり、本来であれ
ば、チョークポイントでの待ち伏せを得意としています。通常動力
潜水艦は原子力潜水艦程、速力も航続力も出ない替わりに、静粛性
が高い事によるものです。キロ級潜水艦の最高速力は20ktですが、
通常の活動では、この様なスピードを出す事はありません。静粛性
に優れる通常潜水艦であっても、最高速度に近いスピードを出せば、
当然、盛大に騒音を撒き散らす事になる為です。今回は艦隊速度が
遅かった為に、シュノーケル航行でも追跡可能と判断したのではな
いかと思われます。そして、その機関音を中国海軍に捉えられたと
言う訳です。

通常型潜水艦が、無音状態に移行すると、水上艦からは探知するの
が殆ど不可能と言われ、演習時には、潜水艦がわざわざ音を出して
探知し易くしないと演習にならないという噂がある位ですから、今
回は、インド海軍の潜水艦は余程盛大に音を出していたのだろうと
思われますが、それにしても、それを逃さずにキャッチした中国海
軍も、ちゃんと緊張状態と維持して仕事をしていたと評価できると
思います。

海上自衛隊のソマリア派遣艦艇も、実戦であるという意識を持って
中印海軍同様の緊張感を持って任務に当たって欲しいと思います。


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2009年2月4日水曜日

イラン人工衛星打ち上げ成功 オバマ政権へのならず者国家のラブコール続く


※写真はReutersから転載

イラン初の国産人工衛星 核絡み強まる懸念

【カイロ=村上大介】イラン政府は3日、初の国産人工衛星の打ち上げに成功
したと発表した。アフマディネジャド大統領は国営テレビで「われわれは公式
に宇宙空間に足場を築いた」と演説し、打ち上げの様子を伝える映像が繰り返
し放送された。衛星打ち上げ技術は長距離弾道ミサイルにも応用が可能で、イ
ランの核開発問題とも関連して、国際社会の懸念をさらに強めることになりそ
うだ。

イラン国営通信など地元の報道によると、「オミド(希望)」と名付けられた
衛星は2日夜、国産ロケット「サフィール2」により衛星軌道に打ち上げられ
た。1日に地球を15回周回して通信実験などのデータを収集し、1~3カ月
後に地球に戻るという。ファルス通信は、イラン航空宇宙局長官が今年3月
20日までに再び人工衛星打ち上げを行うと語った、と伝えた。

イラン側は核開発について、平和利用が目的だと繰り返し強調している。しか
し、イランが核弾頭と長距離弾道ミサイルの両方を保有すれば、イスラエルや
湾岸アラブ産油国だけでなく、いずれは欧州の一部も射程にとらえると懸念す
る声は強い。

オバマ米政権は、ウラン濃縮の即時停止など国連安全保障理事会決議の完全履
行を条件に直接対話の選択肢も除外しないとしているが、アフマディネジャド
大統領は「米国がまず、過去にイランに対して犯した『罪』を謝罪しなくては
ならない」と強気の発言を繰り返しており、歩み寄りが実現する気配はない。

打ち上げは、今月10日に祝われるイラン革命30周年に合わせて「イランの
技術力」を内外に誇示する目的もあったとみられている。イランは昨年2月に
衛星軌道調査用のロケットを打ち上げ、8月には国産ロケットで模擬衛星を軌
道に乗せたと発表した。米国の観測では、8月の打ち上げは「失敗」とされて
いた。

(産経新聞 2009/02/03)

イラン衛星打ち上げに懸念 米政府

【ワシントン=有元隆志】米政府は3日、イランが初の国産人工衛星を打ち上
げたことについて、弾道ミサイル開発にも応用が可能であるとして、懸念を表
明した。

モレル国防総省報道官は3日の記者会見で、「イランの脅威は増している」と
述べ、弾道ミサイルの長射程化に警戒感を示した。

クリントン国務長官は3日のミリバンド英外相との会談後、記者団に対し、米
政府として対話の用意はあるとしたものの、イラン側も挑発的な行為をすべき
でないと指摘した。

米政府当局者はロイター通信に対し、衛星発射はイランにとっては「重要な前
進」としたものの、「最先端の技術は使われていない」として、地域の安全保
障のバランスに変化を及ぼすまでには至っていないとの認識を示した。

「オミド(希望)」と名付けられた衛星は2日夜、イランの国産ロケット「サ
フィール2」により衛星軌道に打ち上げられた。

(産経新聞 2009/02/03)

北朝鮮が前日に、ミサイル実験かと報じられたすぐ後になりますが
今後は、同じならず者国家のイランが初の衛星打上げに成功しまし
た。

米国での報道を読むと、衛星そのものについては、スプートニクか
らそう発展したものではないとの事ですが、自力で衛星を打ち上げ
た国としては9番目になるようです。

上の記事でも米国が既にこの衛星打上げについては懸念を表明して
いる様に、衛星打上ロケットと大陸間弾道弾は同じ技術が使われま
す。実際、今回衛星を打ち上げた「サフィール」ロケットは、北朝
鮮から技術導入したノドンミサイルを改造したものと言われていま
す。イランが独自にウラン濃縮を行っている点から言っても、核弾
頭付きのICBMを開発しているという懸念が持たれるのは当然の事で
す。

有力な産油国であるイランが、その必要性に乏しいにも関わらず、
ロケット開発や原子力発電、核燃料開発に異常な努力を傾けている
事を、イランの国是であるイスラム原理主義革命、イスラエルの国
家としての生存を許さないとする指導者の度々の声明、イスラム原
理主義勢力であるハマスへの援助等を考えると、米国が、ヨーロッ
パにイランの大陸間弾道弾に対抗するMD関連施設を建設するのも
むべなるかなと感じる次第です。

サフィールロケットですが、直径は1.25メートル、長さ24メートル
で、直径がやや細い事を除けば、概ね初期のミューロケットと同程
度の大きさです。二段式、又は三段式で、液体燃料とも固体燃料と
も、言われていますが、公開されている写真を見ると、一段目は固
体燃料で、衛星打上に必要な機体制御を行う二段目には液体燃料を
使っていると考えるのが適当である様に考えます。実際、上の写真
でも、二段目上部に、燃料注入用のチューブが導入されているのが
判ります。

今回の衛星打ち上げについて、イランは「われわれは公式に宇宙空
間に足場を築いた」と評価していますが、米国から見れば、同じ
「ならずもの」国家である北朝鮮のミサイル発射実験と同期を取っ
た動きと見る筈です。つまり「ならずもの」国家の側から、オバマ
政権をその公約通りに直接交渉に引きずり出す戦略に出た様に見え
る様に思われるのです。オバマ政権にしてみれば、直接交渉を行う
場合でも交渉のイニシアティブを確保する上でも、交渉に引きずり
出されたという印象を国際社会に与えるのは避けたい筈です。

北朝鮮については、六ヶ国協議がありますので、その場を使う事で
オバマ政権は対面を保ちつつ直接対話を行う事が可能です。イラン
については、その核開発について米国は、ドイツ、フランス、イギ
リス、ロシア、中国と協議を今週にもフランクフルトで行う事にな
っていました。この協議の中で、イランについても、北朝鮮と同様、
多国間協議の枠組みを発足させる事が議論されるのではないかと観
測する次第です。


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2009年2月3日火曜日

北朝鮮ミサイル発射準備中。テポドンなら米国向けだが



※USA TODAYより転載

北朝鮮がテポドン発射準備 米偵察衛星確認 改良型の可能性

北朝鮮が、核弾頭を搭載可能な長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準
備を進めていることが2日、分かった。複数の政府筋が明らかにした。米国な
どの偵察衛星が発射準備とみられる動きを確認しており、1~2カ月中に発射
準備が完了する可能性が大きい。北朝鮮は日本や韓国の対北強硬姿勢に強く反
発しており、対抗措置としてミサイル発射準備を進めているとみられるが、万
一発射すれば、国際世論の反発は必至で、6カ国協議の行方にも大きな影響を
与えそうだ。

複数の政府筋によると、米などの偵察衛星が、北朝鮮北東部の平安北道東倉里
で新たに建設中のミサイル発射施設に複数のトラックが頻繁に出入りしている
のを確認。ミサイルを格納する大型コンテナも運び込まれていることが分かっ
た。コンテナなどの大きさからミサイルは、テポドン2号と同等以上のサイズ
とみられる。

すでに北朝鮮は昨年秋までに発射施設でエンジンの燃焼実験を行っていること
が確認されている。北朝鮮のミサイルは液体燃料を使用しているため、発射台
への設置や燃料注入にはかなりの時間を要するため、発射は早くても1~2カ
月先になる可能性が大きい。

テポドン2号は北朝鮮が独自開発した弾道ミサイルで、1段目に新型ブースタ
ーを登載し、2段目には旧ソ連が開発した短距離弾道ミサイル「スカッドC」
を改良したノドンを使用しているとされる。射程は約6000キロで、米国の
アラスカやハワイ周辺まで到達するとみられている。

今回のミサイルはテポドン2号の改良型である可能性もある。改良型ならば射
程は1万キロに達するとみられ、米本土も射程圏に入るとされる。

北朝鮮は、韓国・李明博政権の対北強硬姿勢に反発を強めており、先月30日
に朝鮮中央通信は祖国平和統一委員会の声明として「北南間のすべての政治・
軍事的合意を無効化する」と伝えた。麻生政権も「核、ミサイル、拉致問題が
包括的な解決が国交正常化の条件」との立場を崩さず、対北経済制裁を続けて
いる。

北朝鮮は平成5年5月29日、日本海に向けてノドンを発射。18年7月5日
にはテポドン2号やノドンなど7発のミサイル発射実験を実施した。テポドン
2号は空中分解し、実験は失敗したが、国連安保理は7月15日、全会一致で
非難決議を採択し、ミサイル発射再凍結を求めた。2月3日2時54分配信 

(産経新聞 2009/02/03)

韓国向けの限定的な軍事的エスカレーションはあると思っていまし
たが、テポドン2号の発射準備とは、少し意外でした。先日来の南
北合意の一方的破棄とそれに続く恫喝声明は、韓国向けである事が
明らかであっただけに、同時に二正面恫喝を行うとまでは、思って
いませんでした。テポドン2号は射程の長い、初歩的な大陸間弾道
弾です。韓国向けや、日本向けであれば、スカッドやノドンで充分
の筈です。北朝鮮にしても、価格の高い、テポドンの発射実験を行
う事は経済的には避けたい筈です。しかし、そのコストを出してで
も、米国向けにラブコールを行いたいという事なのだろうと思われ
ます。

オバマ政権は選挙期間中は、条件をつける事なく、敵対国との対話
を行うと公約していましたが、政権獲得後は、北朝鮮への態度が当
初考えられていたものよりも硬いという事が判りました。この段階
で、テポドン発射という瀬戸際外交に移行したのは、米国との本質
的な関係改善の為には、タイミングが良いとはいえない様に思いま
すが、一気にミサイル発射や核実験を行う事で軍事的な対決姿勢と
核保有国である事の誇示を行い、その後に柔軟な外交攻勢で行う事
で、戦争を避けたいオバマ政権から宥和策と援助を取り込むという
狙いがあると考えられます。

相撲で言えば、格下が横綱との対戦で、立会い直後に猫騙しをやる
様なものでしょうか。四つに組むと全く相手になりませんが、横綱
の体勢が整う前に奇襲攻撃をかければ、横綱に土をつける事も可能
と言えなくないという訳です。

ここでのポイントは、北朝鮮が本気である事をオバマ政権に信じさ
せる事です。ブラフであると思われてしまうと効果はありませんか
ら、テポドン2号は、米国本土沿岸への着弾に成功させる必要があ
りますし、それに引き続き核実験を行う事で北朝鮮の断固たる対決
姿勢を誇示する事が必要になります。

オバマ政権にとっては、緊急度は異なるもののケネディ政権で起こ
ったキューバミサイル危機に近い状況が政権発足直後に発生する事
になります。六ヶ国協議に参加している北朝鮮を除く5ケ国は、恫
喝に屈して、意味もなく援助をするのも望んでいませんが、北朝鮮
の暴発も望んでいません。勿論、オバマ政権は一面で、それが、北
朝鮮のブラフであるとは判っていても、政権発足直後では、それを
無視をする事もまた出来ないと思われます。その点では、六ヶ国協
議を主導する米国新政権の外交姿勢を知る上で格好試金石を提供し
てくれていると言えるかも知れません。


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2009年2月2日月曜日

北朝鮮またも韓国を恫喝するもロイターは物乞いと報道?


※写真はRoutersサイトからの転載

労働新聞「警告無視すれば軍事衝突につながる」

【ソウル1日聯合ニュース】北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は1日、
祖国平和統一委員会が先月30日に出した声明について言及し、韓国政府は北朝
鮮側の警告を無視しているが、朝鮮半島の休戦状態を考慮すると、軍事的衝突
と戦争につながる可能性もあると主張した。朝鮮中央通信が報じた。
労働新聞は同日の論評で、平和統一委の声明は「南北関係にこれ以上収拾の方
法も正す希望もなくなったという厳重な状態に対処した当然の措置」だと主張
し、李明博(イ・ミョンバク)政権は南北関係を険悪な状態にした責任があり、
代価をしっかり支払わなければならないと強調した。また、「われわれの尊厳
を棄損し無分別な反共和国対決の道に進み続けようとすれば、南北関係の全面
遮断を含む重大な決断を下すしかなくなるという警告を出したのは1、2度では
ない」とし、にもかかわらず韓国政府は「常套的な脅迫」などと警告を無視し、
むしろ反共和国対決と北侵戦争挑発の動きを見せることで返答してきたと非難
した。

さらに「休戦状態にあるわが国で、対決はすなわち緊張激化であり、それは防
ぐことも避けることもできない軍事的衝突、戦争につながり得るものだ」と述
べている。警告を無視し反共和国対決策動にこだわり続ければ、終国の破滅に
つながることもあると肝に銘じなければならないと主張した。
(YONHAP NEWS 2009/02/01)

北朝鮮と韓国、戦争発生の危機にある=朝鮮中央通信社

[ソウル 1日 ロイター] 北朝鮮は1日、韓国との関係悪化により、朝鮮
半島は戦争発生の危機にあると警告した。北朝鮮は30日、韓国が敵対的な政
策を推し進めているとして、和解に向けた両国間の全ての協定を破棄すると表
明している。

今回の北朝鮮による行動について、アナリストの間では同国に対し強硬姿勢を
取る韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領への政策変更を促す狙いがあるほ
か、オバマ新米大統領の関心を引くための戦略ではないかと見る向きもある。

北朝鮮の朝鮮中央通信社(KCNA)は論説で「(韓国による対北朝鮮への)
敵対政策は、軍事衝突、ひいては両国間での戦争を引き起こすものである」と
主張した。

両国は、1950─53年の朝鮮戦争休戦後も平和協定を締結しておらず、国
境付近には100万人超規模の軍備を配置するなど依然事実上の戦争状態にあ
る。また韓国には約2万8000人の米軍兵が駐留している。

李明博大統領は2008年の就任後間もなく、過去10年間続いた対北朝鮮へ
の無償援助を打ち切っており、北朝鮮は最近、同大統領率いる保守政権への攻
撃を強めている。

ただ、李明博政権は北朝鮮による挑発をほぼ取り上げていない。

(Reuters 2009/02/02)

勿論、ロイターには北朝鮮は物乞いとは書いてありませんが、上の
記事の最後の所に、わざわざ、「李明博政権は、~過去10年間続
いた対北朝鮮への無償援助を打ち切っており~、北朝鮮による挑発
をほぼ取り上げていない。」と書いてあって、裏を読めば、北朝鮮
は、援助を打ち切った李明博政権に対して援助の再開を求めて駄々
をこねていると読める様になっています。

こうなると、前回のエントリーにも書いた様に、北朝鮮は限定され
たエスカレーションを実施せざるを得なくなりつつあると言えます。
李明博政権にしてみれば、野党民主党に国会では足を引っ張られて
おり、また、経済大統領と呼ばれたかったのに、現実は、李政権に
なってから、経済は低迷の一途を辿っていることから、国論統一、
人気回復の為には、北との緊張が多少高まる事は寧ろ歓迎であろう
と思われるのです。

韓国からの無償援助が止まってしまうと、北への援助は国際機関か
らのものと中国からのものしかなくなってしまいます。ロシアは元
々北朝鮮に援助する気はありません。日本に対しては、六ヶ国協議
中の悪口雑言で、相手にして貰えなくなっています。米国のオバマ
政権も、発足後間もない上、ブッシュ政権が北に譲歩しすぎた点を
失敗と解釈しており、北朝鮮と対話を再開する体制が整っていません。

これら点から言っても、また、今年は、事の他春窮が厳しくなりそ
うという観測もあり、北朝鮮は韓国に足元を見られていると言って
も過言ではありません。それだけに各国の注目を引こうと刺激度の
高い言葉を連発していると言えます。

朝鮮戦争が始まる直前に北朝鮮は、韓国に平和攻勢をかけた事があ
ります。勿論、開戦に備えて韓国の油断を誘い、韓国の国論を分断
する事が目的であった訳ですが、この時と同様に、北朝鮮が、軟化
したり、平和攻勢をかけてきた時こそが寧ろ危険の兆候と解釈すべ
きであり、逆に、強がりを言っている時は、国内的な弱みがある訳
で、全く怖くないと言える様に思います。


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