※図は毎日新聞サイトから転載
北朝鮮 衛星発射で秋田沖など危険区域 IMOに事前通告
北朝鮮が国際海事機関(IMO、本部ロンドン)に対し、4月4日から8日の
間に打ち上げると事前通告した実験通信衛星は、日本海・太平洋の方向に発射
されることが12日、分かった。日韓両政府が明らかにした。通告は、「ロケ
ット」の1段目が日本海に、2段目が太平洋に落下する内容。日本海に向け発
射されれば、98年の長距離弾道ミサイル「テポドン1号」と同様に、日本列
島を飛び越える可能性が高い。
IMOから両政府に入った連絡によると、4月4~8日の期間中、北朝鮮は午
前11時から午後4時(日本時間)まで、秋田県西方沖の日本海や、日本列島
から東へ2000キロ以上離れた太平洋に船舶や航空機が接近しないよう危険
区域を設定した。
北朝鮮は98年と06年に長距離弾道ミサイル発射実験をしたが、国際機関に
事前通告したのは初めて。
北朝鮮は咸鏡北道花台郡舞水端里(ハムギョンプクドファデグンムスダンリ)
のミサイル発射基地で長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備を進め
ているとみられるが、同国は実験通信衛星「光明星2号」を積んだロケット
「銀河2号」だと主張している。
12日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮はIMOのほか国際民間航空機関
(ICAO、本部モントリオール)にも打ち上げに関する情報を通告した。
IMOは船舶の安全、ICAOは航空機の安全確保のため、締約国にミサイル
発射などの事前通告を義務化。北朝鮮は、国際社会の批判をかわすため、ルー
ルに沿った手続きをとった可能性が高い。
◇海保が航行警報
北朝鮮が人工衛星の打ち上げを国際海事機関(IMO)に通告した問題で、海
上保安庁は12日深夜、航行警報を出した。4月4~8日の午前11時~午後
4時にかけ、秋田沖約130キロの日本海上(南北20キロ、東西250キロ)
と銚子沖約2150キロの太平洋上(南北160キロ、東西800キロ)を危
険区域に設定。付近を航行する船舶に注意を呼びかけた。
政府も12日夜、打ち上げに関する情報収集のため、首相官邸に情報連絡室を
設置。外務省も連絡室を開設した。河村建夫官房長官は「北朝鮮のミサイル関
連の動向については、引き続き重大な関心を持って情報の収集に努める考えだ。
今後とも、状況に応じて、適切な対応を取る」とのコメントを発表した。
(毎日新聞 2009/3/13)
記事の中では、ミサイル実験に対する批判をかわす為に、衛星打上
げの事前通告をしたのではという観測をしていますが、私は、もう
一つの大きな要素があると思います。
前回、前々回の弾道ミサイル実験では、事前通告など行わなかった
のに、何故か、今回は、必要な宇宙条約にも急遽加盟し、IMOに
も事前通告を行っています。
前回の「光明星1号」の打ち上げ?の際は、北朝鮮は、こういった
配慮を行っておらず、国際的な批判を完全に無視しました。98年、
06年と今年で、国際的な批判に質的な変化があったのかと言えば、
あまり明白な違いはありません。勿論、韓国の政権が保守派の李明
博政権に変わった事や、米国のオバマ政権が誕生した事が上げられ
ますが、両政権共に、北朝鮮が弾道ミサイル実験を行う事そのもの
に反対しているのであり、衛星打上げを通告したからと言って、両
政権との関係が大きく改善するとは、思われません。
それでは、一番大きな違いはなんでしょうか? それは、米国と日
本で、MDが実戦配備され、弾道ミサイルの撃墜が可能となった事
及び、今回の弾道ミサイル実験(衛星打上げ)で必要とあれば、ミサ
イル弾頭(衛星)を撃墜するという態度を両国が明確にした事です。
それに加えて、今回、北朝鮮は「本当に」衛星を打ち上げようとし
ているとも考えられます。つまり、北朝鮮の当局者から見て、通常
の弾道ミサイル実験では必ずしも必要ではない配慮が、絶対に必要
となる条件があるのです。
それは、衛星に「光明星」という名前がついているという事です。
「光明星」は言うまでもなく金正日の美称である「白頭光明星(ペ
クトゥグァンミョンソン)」にちなんだ名前です。北朝鮮の当局に
とって、金正日は命に替えて守らねばならない対象です。もし、日
米が「光明星」衛星を打ち落としたとなればどうなるでしょうか。
日米によって「金正日」が叩き落されたなど、恥ずかしくて、北朝
鮮では日米を非難する報道すらできない事になります。
その為、日米がMDを使って衛星(弾頭)を撃ち落す事がないよう、
急遽、必死の思いで、国際的な手続きを整えたのではないでしょうか?
ナチスドイツは、第二次大戦開戦直後、「ドイッチュラント」と名前
のついていたポケット戦艦を急遽「リュッツォ」と改名しました。
その理由は、ドイツの名を冠した艦が沈んだ時の、国民に対する心
理的、宣伝的影響を考慮しての事でした。
独裁国家は、独裁者や国家のイメージを重視しますから、北朝鮮の
今回の行動も同じ様な考慮が働いた結果と解する事は、一定の合理
性があると考えるのです。
今回の件は、日米のミサイル撃墜に対する準備と強い態度が、北朝
鮮を国際ルールに従わせた訳であり、そう考えると、少しは溜飲が
下がる思いがします。
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