2010年4月30日金曜日

「はやぶさ」6月13日帰還

※資料カプセルを分離する「はやぶさ」。画像はJAXA Webサイトから転載

はやぶさ:6月13日帰還 7年間45億キロの旅終え

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は21日、人類初の小惑星の岩石採取に挑
戦した探査機「はやぶさ」が6月13日に地球へ帰還すると発表した。予定通
りなら日本時間13日午後11時ごろ、岩石が入っている可能性のあるカプセ
ルが大気圏に突入し、オーストラリア南部のウーメラ砂漠に落下する。はやぶ
さ本体は、大気圏突入後に燃え尽きる。

はやぶさは21日現在、地球から約2100万キロの位置を航行中。オースト
ラリア政府の許可が得られ、今後、4度の軌道修正によって目標地点に近づけ
ていく。はやぶさに搭載されたカプセルは直径約40センチ。大気圏突入速度
は秒速12キロ、温度は1万~2万度の高温に達するため、カプセルを燃え尽
きさせないで地上に落下させることが最後の難関となる。

はやぶさは03年5月に打ち上げられ、地球と火星の間の小惑星「イトカワ」
の岩石採取に挑み、イトカワへの2度の着陸と離陸を成功させた。通信途絶な
ど致命的な故障に何度も見舞われたが、それらを乗り越えた。往復の航行距離
は約45億キロに達する。

(毎日新聞 2010/04/21)


日本の小惑星探査機「はやぶさ」が6月13日に帰還する事が決ま
りました。実際に、地球に帰還するのは、小惑星のカケラが入って
いるかもしれない帰還カプセルだけであり、探査機本体は、大気圏
で燃え尽きる見込みです。

小惑星探査機「はやぶさ」が、内之浦宇宙空間観測所からM-V型
ロケットで打ち上げられたのは、2003年5月9日の事です。
日本が、小惑星探査機を打ち上げるのは、初めての事でした。

日本がそれまでに打ち上げた深宇宙探査機は、彗星探査機の「さき
がけ」と「すいせい」、火星探査機の「のぞみ」だけで、「はやぶ
さ」も本物の探査機というより工学実験機という位置付けでした。
しかし、小惑星に軟着陸し、資料を採取してから地球に帰還すると
いうミッションは、世界的に見ても野心的と言えるものでした。

過去の事例がない事を、宇宙機構の技術者達は、想像力で補って万
が一の事態の発生に備えました。そして運用面でも、創意工夫で、
探査機の危機を救っていく事になります。

打ち上げ直後、4台あるイオンエンジンの内、1台がトラブルで停
止しましたが、残り3台を予定よりも長く噴射させる事で、まかな
いました。11月には、観測史上最大規模の太陽フレアに遭遇し搭
載メモリが異常になったり、太陽電池が出力低下したものの、幸い
ミッション遂行への影響は軽微に留まりました。

そして、その後もリアクションホイールの停止等、様々な機体のト
ラブルに見舞われましたが、05年11月に地球から約3億キロ・
メートル離れた小惑星「イトカワ」に着陸します。しかし、着陸直
後に重大なトラブル(燃料洩れ)が発生し、一時は、地球からの制御
が全く不可能となりました。

燃料洩れによって無秩序な回転を始めた「はやぶさ」でしたが、も
ともと時間が経てば、回転が自動的に安定し、一定方向を向くよう
に設計されていました。そのお陰で06年1月に制御信号の送受信
に成功します。

それから状況が少しづつ明らかになっていきました。太陽電池発生
電力が極端に低下し、一旦電源が完全に落ちていました。搭載のリ
チウムイオンバッテリも放電しきった状態でバッテリ11セルの内、
4セルは使用不能になっていました。この状態で通常通り充電すれ
ば爆発の危険がありました。また、化学エンジンは、燃料をほぼ全
量喪失しており、酸化剤も残量が全くない状態でした。

正に満身創痍といった状態でした。その中で唯一の希望は、イオン
エンジン運転用のキセノンガスが、圧力を保っており、地球への帰
還が何とか可能という事でした。その後、太陽電池も、完全ではあ
りませんが、復活します。これも、電池メーカーの技術者が、万一
の場合に備えた対策をとっていた事によるものでした。

しかし、地球への帰還の途について「はやぶさ」に、更にトラブル
が襲います。07年4月には、もう1台のエンジンの部品が劣化し
て、運用を中止します。そして、残る2台のエンジンを交互に運用
して地球への帰還を目指した「はやぶさ」でしたが、更に1台が、
09年11月に故障したのです。

地球への飛行を続けるには、どうしても2台のエンジンが必要です。
エンジン復活に向け、宇宙機構の技術者達は、故障した3台のうち、
早い段階で運転を中止したエンジン2台に着目しました。正常に動
く部品同士を電子回路でつなぐ「離れ業」で、互いの故障を補う形
でエンジン1台分の推進力を出すことに成功したのです。これも、
電子回路に、万一に備え、「エンジン間をつないでおいた」から出
来た「離れ業」でした。

復活したエンジンは、順調に作動しました。4月末現在で、最終的
な地球をかすめる軌道を取る為に、階段を一歩一歩下りていく様な
慎重な軌道修正を行っています。それも予定された5回の内、1回
が終了しています。

宇宙機構の川口淳一郎プロジェクトマネージャは「動いている方が
奇跡的だ。予断を許さないが、万一に備えた回路が功を奏し、電力
補給できるという幸運にも恵まれた」と話しています。「はやぶさ」
が最終的に地球に帰還できるかどうかは、まだ、予断を許しません。
しかし、もし、「はやぶさ」が地球に帰還できたとしたら、多分、
「はやぶさ」の設計、製造、運用に携わった技術者達が、期待され
たよりも一歩深く考えて努力した成果だろうと思うのです。そうい
う技術者達に敬意を込めて「はやぶさ」の無事帰還を祈りたいと思
います。

4/29現在の「はやぶさ」から地球までの距離、残り18百万キロ。


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中国製戦闘機 発展途上国の国威発揚を安上がりに実現?

※写真は、読売新聞Webサイトから転載。

中国、戦闘機ビジネス本格化…米機より「割安」

中国が、新型国産戦闘機など多様な航空兵器を中東やアフリカ、アジアなどに
売り込む兵器ビジネスを本格化させている。

国防省は4月中旬、天津に中国駐在の47か国武官団と一部外国報道陣を招い
て新鋭戦闘機「J(殲)10」を公開し、将来的な大規模輸出も念頭に性能を
PRした。

北京と天津を結ぶ高速道路の沿線の農村地帯に駐屯する空軍航空兵第24師団。
首都一円だけでなく、華北・東北地方の防空任務を担う。

約50人の武官らが見守る中、4機のJ10が編隊を組み、16分間にわたる
アクロバット飛行を繰り広げた。

この後武官団と会見した厳鋒師団長は、「私は軍人であって、商人ではない」
と語って輸出計画の詳細は明らかにしなかった。だが、1機当たりの価格が
1億9000万元(約26億円)であることを公表した上、「機動性、敏捷
(びんしょう)性に優れている」としっかり性能をPRする一幕もあった。

J10は、最大速度マッハ1・8で、米戦闘機F16にも匹敵する性能を持つ
とされる。それでF16の約3分の2以下の価格となれば、購入を希望する各
国には大きな魅力だ。

人民解放軍系紙「中国国防報」は3月下旬、「中国の戦闘機輸出が米国を不快
にさせている」との見出しで、「中国の戦闘機の国際的な影響力がますます大
きくなり、米国はその覇権的な地位が脅かされると考えている」などと報じた。
こうした報道は、新型兵器に対する自信を示すものだ。

同紙が海外メディアも引用して伝えたところによると、中国の訓練機K8が6
機ベネズエラ空軍に売却された。さらにK8よりも上級の訓練機L15と、中
国とパキスタンの共同開発による新型軽戦闘機「梟竜(きょうりゅう)」には5
~6か国が関心を示しており、売却交渉が進行している。

近い将来には、J10の輸出も実施されるという。パキスタンへの売却話も伝
えられている。中国国防報は、「中国の航空兵器はすでに、多用途戦闘機から
大型攻撃機、訓練機に至るまで、幅広い機種が輸出対象になっている」と指摘
している。

(読売新聞 2010/04/28)


同じ目的が達成できるのであれば、戦闘機の大きさは小さい方が有
利であると考えられます。これはステルス機の登場以降も、変わる
事がありません。RCS(レーダークロスセクション)は小さい方が探
知されにくいので有利になります。J-10の原型となったイスラエル
製のラビ戦闘機は、J-10よりも一回り小さな機体ですし、J-10の対
抗馬とされているF-16も、同様です。

中国とて、この事は判っている筈です。それが大きい機体になった
のは、搭載するエンジンが違った為と言って良いと思われます。
F-16は、F-15と同じF100エンジンやF-14用のF110を搭載しています。
それと同じで、J-10は、Su-27と同じAL31を搭載しています。
このエンジンの違いが機体の大きさに影響しているのです。

F-16とJ-10を比較すると、表面上の要目はJ-10の方がより大きく、
より重いのですが、最大離陸重量では、F-16の方が上回っており、
燃料や武器をより多く搭載できるのが分かります。その理由はエン
ジンがよりコンパクトで推力が高い事に帰結するのです。

J-10は元々、ソ連の戦闘機に対抗する為に、西側の技術を導入して
開発するというのが、コンセプトでした。それが、天安門事件によ
る欧米諸国の対中制裁もあって、挫折を余儀なくされ、その後、イ
スラエルから、米国の圧力で開発を断念させられたラビ戦闘機の技
術を導入できた事と、体制変革に伴なう経済的困難の中で何でも売
りたかったロシアからエンジンとアビオニクスを導入できた事で、
何とか完成に漕ぎ着ける事が出来たプロジェクトです。

それでも、J-10規模の戦闘機を中国が自力で開発する事ができた事
は、充分に評価に値する事です。しかし、ロシアから導入されたア
ビオニクス製品や電子兵装は、最新のものとは限りません。ロシア
はソ連時代から、最新モデルの輸出制限やモンキーモデルの輸出を
行ってきた実績があります。

また、J-10で使用されているAL31エンジンはロシアから輸入してお
り、それを使用した機体を第三国への転売する場合はロシアの承認
が必要になっている模様です。従って、J-10の場合も、AL31搭載機
を輸出する場合はロシアの承認を得る必要があります。この為、中
国はAL31のコピーとも言われる国産のWS-10Aの開発を進めています
が、ただでさえ、寿命の短いと言われるロシア製エンジンのデッド
コピーであるWS-10AがAL31以上の性能を発揮するとは考えにくいの
です。

これはアビオニクスや電子機器全般の性能や信頼性についても同様
です。中国製の戦闘機が戦闘を行ったのは、ベトナム戦争以降はあ
りません。ロシアは、中東諸国に供与していたソ連製の機体が、中
東戦争、湾岸戦争、イラク戦争を戦っており、その経験を生かした
開発を行う事ができました。米国は、当事国として戦っています。
それと比較すれば、中国製戦闘機がどこまで使い物になるか疑問と
せざるをえないのです。

米国は、ベトナム戦争の戦訓から、ミサイル万能論を退け格闘戦が
出来る機体として、F-16を開発しましたが、昨今では、ミサイルの
命中精度の向上と共に、ステルス機の登場により、戦闘機戦闘のパ
ラダイムが変化し、AWACSと戦闘機、あるいは戦闘機同士の共同戦
闘が重視される様になっています。この様な中で、J-10がどこまで
実用になるか残念ながら判然としません。

記事にあるように、F-16と比較して価格が本当に3分の2であるなら
ば、私であれば、迷わずF-16を選択すると思います。見てくれが強
そうで何しろ数を揃えたいというニーズがある場合やあるいは、購
入に要する費用は全て中国持ちというのでもなければ、国際兵器市
場で中国製兵器を選ぶ国は発展途上国といえどそう多くない様に思
えてならないのです。


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2010年4月27日火曜日

極秘軍用シャトルを評価してみる

※アトラスのフェアリング内に収容されるX-37B
The Christian Sceince Monitor Webサイトから転載

アトラスVロケット、米空軍のX-37Bを打ち上げ

米空軍とユナイテッド・ローンチ・アライアンス社(ULA)はアメリカ東部夏
時間4月22日19時52分(日本時間4月23日8時52分)、米空軍のX-37B軌道試験機
(OTV:Orbital Test Vehicle)を載せたアトラスロケット(アトラスV)を、ケ
ープ・カナベラル空軍基地から打ち上げた。

打ち上げられたロケットは順調に飛行し、打ち上げから約17分後、ロケットと
X-37Bが所定な軌道に入り、打ち上げは成功した。

「OTVの試験で重要な役割を果たしたことに誇りに思います。今日の打ち上げ
成功は空軍とULAの密接なチームワークを強調したものです」

今回の打ち上げ成功について、ULA社のマーク・ウィルキンス副社長はこのよ
うに述べた。

X-37Bは宇宙空間から無人で帰還できる宇宙船。長さ約9メートル、翼幅約4.5
メートル、重さ約5000キロで、スペースシャトル(オービター)と比較すると、
大きさは4分の1程度しかない。

米空軍は今後数週間にわたって、地球周回軌道でX-37Bの試験を行った後、
X-37Bを大気圏再突入させ、無人でバンデンバーグ空軍基地もしくはエドワー
ズ空軍基地に着陸させる予定。

X-37計画は元々米航空宇宙局(NASA)が進めていた、スペースシャトルの軌道
から帰還させる使い捨て機体の計画だった。しかし、2002年にX-37A滑空試験
機とX-37B軌道試験機にそれぞれ別れ、さらに、2004年にNASAが計画を断念し
たことにより、管轄が米国防総省国防高等研究事業局(DARPA)に変わり、計
画も大幅に遅れていた。

(sorae.jp 2010/04/23)


極秘軍用シャトルであるX-37Bの軌道試験機が、ケープ・カナベラ
ル空軍基地から打ち上げられました。

X-37Bは、記事にもある通り、元々は、NASAが、ISSからの緊急脱出
用に開発していた無人シャトルです。本来は、現用のシャトルを置
き換える次世代シャトルとして開発に着手されたものですが、どん
どんプロジェクトの位置付けが変わり、ついには、軍用に転換され
てしまった経緯にあります。空軍は、X-37Bで200日以上、宇宙に滞
在できる様にする計画を持っています。

X-37Bが軍用としてどの程度利用価値があるかですが、現在までの
議論では、シャトルの様な往還機は、元々、当初見込まれた様な経
済性を持っていない点が問題視されています。

X-37Bにしても、これまで、X-37とX-40につぎ込まれた予算をなん
とか実用にこぎつける事で、合理化しようとするものでしかない様
に思われるのです。

シャトルは元々、使い捨てロケットでは、毎回捨てられる事になる
高価なエンジンやアビオニクスを持ち帰って再使用する事で、ロケ
ットの打ち上げコストを大幅に下げる事を目標にしていました。

しかしながら、実際に作ってみると、一度飛行したあと、再度打ち
上げる為には、新造に等しい程の整備費用がかかる事、また、軌道
上では、無用となる翼を持ち歩く事になる事による不経済性、再突
入で高温となる機体下部や主翼下部に着陸脚用の開閉部を作る事の
不合理性、緊急脱出ロケットを装備できない事による安全性の低下、
打ち上げ時にも、帰還用耐熱タイルを露出する事による安全性の低
下、打ち上げペイロードの大きな割合を往還部分重量が占める事に
よる経済性の低さ等々の欠点が問題になりました。

X-37Bは、これらの欠点に対し、無人化によって経済性の向上を図っ
ていますが、往還機として本質的な経済性の無さを克服出来ていな
い上、使い捨てロケットを使用する事で、最も高価なパーツである
エンジンの再使用を最初から放棄しているのです。

X-37Bが通常の無人宇宙機と比べて優位があるとすれば、それは、
即応性や汎用性が高い事と、宇宙からの持ち帰り能力が高い点があ
げられるかも知れません。

しかしながら、即応性や汎用性は、使い捨てロケットを多めに準備
する事や、衛星バスの高次の標準化で対応できてしまいます。
また、持ち帰り能力にしても、安価で規格化された、帰還カプセル
を準備すれば、X-37Bよりも安価に対応が出来てしまう様に思われ
るのです。

極秘軍用シャトルというと何か恐ろしげな印象で、中国などでは、
X-37Bの打ち上げで将来、宇宙が軍事化する懸念を一部のマスコミ
が表明していますが、中身を良く検討してみれば、既存の無人宇宙
機や衛星と大差がなく、むしろ、経済性では劣後するシロモノと言
わざるを得ず、国防高等研究事業局がX-37を本当に実用化するとは
とても考えられないのです。


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2010年4月26日月曜日

韓国哨戒艦沈没 魚雷が原因と判っても報復ができない韓国?

哨戒艦沈没:魚雷破片の発見がカギ

金泰栄(キム・テヨン)国防部長官は25日、沈没原因について、「重魚雷によ
るバブルジェット効果(水中爆発による衝撃波効果)が最も(原因に)近いの
ではないかと思う」と述べ、北朝鮮の重魚雷が「捜査線上」に浮上した。
北朝鮮以外の国による魚雷攻撃は想像できないためだ。また、「天安」の破損
状況からみて、弾頭重量が軽い軽魚雷ではなく、重魚雷が使われた可能性が高
いとみられている。韓国軍によれば、北朝鮮が保有している重魚雷は、魚-3G
型、53-59型、53-56型、ET80-A型の4種類あるという。

消息筋は、北朝鮮の魚雷攻撃が原因との結論が出た場合は、中国製の魚-3G型
魚雷が使われた可能性があると指摘した。同型魚雷は1980年代に中国で開発さ
れたもので、船のスクリュー音、航跡を追跡して攻撃する「受動(パッシブ)
音響魚雷」に分類される。北朝鮮がこの魚雷を使用したとすれば、艦船から出
る磁場を感知して爆発する「近接信管」が搭載されていた可能性が高い。ガス
タービン室下部の船体は最も磁場が強く、その付近で船外爆発が起きたとみら
れるからだ。一部では新型の中国製の対艦魚雷の魚-6型が使用された可能性
も指摘されている。

しかし、音響魚雷を目標に正確に命中させるためには、魚雷を発射した潜水艦
による一定の誘導が必要となるため、北朝鮮のサンオ級潜水艦などの性能から
みて、可能性が低いとの指摘も少なくない。そうなると、発射後に直進する
「直走魚雷」の可能性が高まる。一定の水深で爆発するように設定した直走魚
雷に磁気感応センサーを搭載して発射したとの見方だ。53-59型、53-56型魚
雷は、旧ソ連で開発され、中国や北朝鮮に輸出されたもので、直走魚雷に該当
する。

調査団による次の課題は、状況からみてほぼ確実視される魚雷の物証、つまり
破片を発見することだ。これまで軍は沈没現場から約330点の破片を採集し、
確認作業を進めているが、「天安」の破片がほとんどで、魚雷や機雷の破片は
まだ発見されていないという。

軍当局は24日、「天安」の船体引き揚げ作業が終了したことを受け、25日から
は破片採集を最優先に掲げ、海軍准将の指揮下で作戦を展開している。海軍は
沈没現場の海底を器具で掘り起こすけた網漁船を投入し、破片の採集を進める
ことにした。けた網漁船は長さ40センチの鉤(かぎ)50個を5センチ間隔で取
り付けたけた網を利用し、海底に埋まっている破片を掘り起こす。泥であれば
30センチ、砂であれば10-20センチ下に埋まっている破片も採集できる。海軍
は底引き網漁船も捜索作業に投入する。

(朝鮮日報 2010/04/26)


哨戒艦の沈没原因は、国籍不明の潜水艦から発射された磁気起爆式
長魚雷という見方が強まっています。状況証拠から見て、北朝鮮の
攻撃によるものとほぼ断言できますが、さて韓国は、報復を行う事
ができるでしょうか。

結論を先に述べてしまえば、それは難しいと言わざるを得ません。
それは、沈没原因の証拠として魚雷の一部が、見つかった処で同じ
です。北朝鮮が、使用した魚雷は恐らくは中国製であり、可能性と
言う点では、中国が使用した可能性がゼロではありません。

韓国は、単独で、報復を行う事なく、国連の場に持ち出して多国間
で、北朝鮮を非難するとしていますが、北朝鮮は、自らの関与を否
認している状況では、韓国は、北朝鮮の関与を示す確実な証拠を提
示する必要があります。

国連で安全保障問題を議論する場は、安全保障理事会です。周知の
通り常任理事国五ヶ国が同意しなければ、北朝鮮を非難する議長声
明すら出せません。

中国からすれば、自国産の魚雷の使用をすんなり認めなければなら
ない理由がありません。また、同盟国への制裁に合意する事で、自
国への負担の増加を甘受する理由もありません。中国は、まず確実
に更なる証拠固めの必要を主張し、結論の先送りを狙う筈です。

韓国が本当に報復する必要を感じたのであれば、事件発生後間髪を
入れずに、報復攻撃を行うべきであったし、報復攻撃を行っても、
それをどの国も非難しなかった筈です。韓国国防部は、まず確実に
北朝鮮の攻撃である事を大統領に伝えている事が判っています。韓
国は、理論上、北朝鮮と戦争状態にあり、過去数十年の間、韓国以
外から攻撃を受けた事がなく、両国海軍は過去何度も砲火を交わし
ているからです。

原因が自明であっても、報復を即座に行わないのは、李明博政権に
その気がなかったからに他なりません。その理由は、既に何度か述
べている様に、韓国には、G20のホスト国と言う、事を大きくし
たくない理由があるからです。

亡くなった40名余の水兵には、可哀想ですが、李政権が仇を取っ
てくれる可能性は、限りなくゼロと言わざるをえないのです。


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