※資料カプセルを分離する「はやぶさ」。画像はJAXA Webサイトから転載
はやぶさ:6月13日帰還 7年間45億キロの旅終え
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は21日、人類初の小惑星の岩石採取に挑
戦した探査機「はやぶさ」が6月13日に地球へ帰還すると発表した。予定通
りなら日本時間13日午後11時ごろ、岩石が入っている可能性のあるカプセ
ルが大気圏に突入し、オーストラリア南部のウーメラ砂漠に落下する。はやぶ
さ本体は、大気圏突入後に燃え尽きる。
はやぶさは21日現在、地球から約2100万キロの位置を航行中。オースト
ラリア政府の許可が得られ、今後、4度の軌道修正によって目標地点に近づけ
ていく。はやぶさに搭載されたカプセルは直径約40センチ。大気圏突入速度
は秒速12キロ、温度は1万~2万度の高温に達するため、カプセルを燃え尽
きさせないで地上に落下させることが最後の難関となる。
はやぶさは03年5月に打ち上げられ、地球と火星の間の小惑星「イトカワ」
の岩石採取に挑み、イトカワへの2度の着陸と離陸を成功させた。通信途絶な
ど致命的な故障に何度も見舞われたが、それらを乗り越えた。往復の航行距離
は約45億キロに達する。
(毎日新聞 2010/04/21)
日本の小惑星探査機「はやぶさ」が6月13日に帰還する事が決ま
りました。実際に、地球に帰還するのは、小惑星のカケラが入って
いるかもしれない帰還カプセルだけであり、探査機本体は、大気圏
で燃え尽きる見込みです。
小惑星探査機「はやぶさ」が、内之浦宇宙空間観測所からM-V型
ロケットで打ち上げられたのは、2003年5月9日の事です。
日本が、小惑星探査機を打ち上げるのは、初めての事でした。
日本がそれまでに打ち上げた深宇宙探査機は、彗星探査機の「さき
がけ」と「すいせい」、火星探査機の「のぞみ」だけで、「はやぶ
さ」も本物の探査機というより工学実験機という位置付けでした。
しかし、小惑星に軟着陸し、資料を採取してから地球に帰還すると
いうミッションは、世界的に見ても野心的と言えるものでした。
過去の事例がない事を、宇宙機構の技術者達は、想像力で補って万
が一の事態の発生に備えました。そして運用面でも、創意工夫で、
探査機の危機を救っていく事になります。
打ち上げ直後、4台あるイオンエンジンの内、1台がトラブルで停
止しましたが、残り3台を予定よりも長く噴射させる事で、まかな
いました。11月には、観測史上最大規模の太陽フレアに遭遇し搭
載メモリが異常になったり、太陽電池が出力低下したものの、幸い
ミッション遂行への影響は軽微に留まりました。
そして、その後もリアクションホイールの停止等、様々な機体のト
ラブルに見舞われましたが、05年11月に地球から約3億キロ・
メートル離れた小惑星「イトカワ」に着陸します。しかし、着陸直
後に重大なトラブル(燃料洩れ)が発生し、一時は、地球からの制御
が全く不可能となりました。
燃料洩れによって無秩序な回転を始めた「はやぶさ」でしたが、も
ともと時間が経てば、回転が自動的に安定し、一定方向を向くよう
に設計されていました。そのお陰で06年1月に制御信号の送受信
に成功します。
それから状況が少しづつ明らかになっていきました。太陽電池発生
電力が極端に低下し、一旦電源が完全に落ちていました。搭載のリ
チウムイオンバッテリも放電しきった状態でバッテリ11セルの内、
4セルは使用不能になっていました。この状態で通常通り充電すれ
ば爆発の危険がありました。また、化学エンジンは、燃料をほぼ全
量喪失しており、酸化剤も残量が全くない状態でした。
正に満身創痍といった状態でした。その中で唯一の希望は、イオン
エンジン運転用のキセノンガスが、圧力を保っており、地球への帰
還が何とか可能という事でした。その後、太陽電池も、完全ではあ
りませんが、復活します。これも、電池メーカーの技術者が、万一
の場合に備えた対策をとっていた事によるものでした。
しかし、地球への帰還の途について「はやぶさ」に、更にトラブル
が襲います。07年4月には、もう1台のエンジンの部品が劣化し
て、運用を中止します。そして、残る2台のエンジンを交互に運用
して地球への帰還を目指した「はやぶさ」でしたが、更に1台が、
09年11月に故障したのです。
地球への飛行を続けるには、どうしても2台のエンジンが必要です。
エンジン復活に向け、宇宙機構の技術者達は、故障した3台のうち、
早い段階で運転を中止したエンジン2台に着目しました。正常に動
く部品同士を電子回路でつなぐ「離れ業」で、互いの故障を補う形
でエンジン1台分の推進力を出すことに成功したのです。これも、
電子回路に、万一に備え、「エンジン間をつないでおいた」から出
来た「離れ業」でした。
復活したエンジンは、順調に作動しました。4月末現在で、最終的
な地球をかすめる軌道を取る為に、階段を一歩一歩下りていく様な
慎重な軌道修正を行っています。それも予定された5回の内、1回
が終了しています。
宇宙機構の川口淳一郎プロジェクトマネージャは「動いている方が
奇跡的だ。予断を許さないが、万一に備えた回路が功を奏し、電力
補給できるという幸運にも恵まれた」と話しています。「はやぶさ」
が最終的に地球に帰還できるかどうかは、まだ、予断を許しません。
しかし、もし、「はやぶさ」が地球に帰還できたとしたら、多分、
「はやぶさ」の設計、製造、運用に携わった技術者達が、期待され
たよりも一歩深く考えて努力した成果だろうと思うのです。そうい
う技術者達に敬意を込めて「はやぶさ」の無事帰還を祈りたいと思
います。
4/29現在の「はやぶさ」から地球までの距離、残り18百万キロ。
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