2010年2月12日金曜日

潜水艦建艦競争が激化するアジア。惰眠を貪る日本?

※朝鮮日報Webサイトより転載

太平洋で激化する潜水艦競争
太平洋の海面下で各国による潜水艦競争が激しくなっている。


米国の保守系シンクタンク・ヘリテージ財団は今月2日に発行した報告書で、
米海軍が衰退する中で、中国と韓国による潜水艦戦力の増強が注目される、と
指摘した。2025年には太平洋で、米国の攻撃型潜水艦は30隻から27隻に減るの
に対し、中国は78隻、韓国は26隻を保有することになるからだ。

同財団のマッケンジー・イーグレン氏とジョン・ローデバック氏は、共同で
『Submarine Arms Race in the Pacific』と題した報告書を作成し、各国の戦
力変化について指摘した。その中で、米国とロシアは退潮、中国と韓国は浮上、
インドやオーストラリアなどが新たに登場すると要約した。太平洋で主導権を
握ろうとする沿岸各国が、相次いでディーゼル潜水艦や原子力潜水艦、巡航ミ
サイル潜水艦(SSGNs)、弾道ミサイル潜水艦(SSBNs)など攻撃型潜水艦を増
やしているとされる。

中でも中国の成長ぶりは著しい。英紙フィナンシャル・タイムズは、中国海軍
は兵力25万5000人、駆逐艦26隻、フリゲート艦49隻、揚陸艦58隻を保有し、規
模の面では既に世界的水準にあると評価した。特に、1995年からは潜水艦の建
造に集中し、2005年までの10年間に31隻を新たに建造した。現在は原子力潜水
艦6隻やディーゼル潜水艦50隻など、計60隻を保有している。

韓国の潜水艦数も大幅に増加した。1993年に209級(1300トン級)の「張保皐
(チャン・ボゴ)艦」を導入して以降、昨年末に配備された214級(1800トン級)
の「安重根(アン・ジュングン)艦」に至るまで、合計12隻を保有している。
また、2012年から2018年までには214級6隻、排水量3000トン級の新潜水艦9隻
などを独自開発し、保有隻数の面では中国に次いでアジア第2位となる。

注目はオーストラリアとインド。両国は、自国の海軍力強化が不可避だと主張
する。これは、アジア太平洋地域で米国の軍事的優位が失われ、中国の海軍力
が急成長しているからだ。オーストラリアは現在6隻ある潜水艦を12隻へ、イ
ンドは17隻を24隻へ拡大する計画だ。その一方で、既存の戦力の維持すら手に
余るロシアと、戦力増強の意思がない日本、旧式の潜水艦を保有する北朝鮮に
ついては、今後大きな影響力はないものと分析した。

米国は、『2010QDR』(4年ごとの国防計画見直し)で、「広い範囲の地域に海
軍力を配備し、軍事力の投射を継続する」と宣言した。そのためには、「潜水
艦基地をハワイやグアムなどに前進配備し、同盟諸国との作戦遂行能力を強化
するとともに、対潜水艦兵器の開発が必須となる」とヘリテージ財団は強調した。

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2010/02/06)


記事で言及されているThe Heritage Foundationの報告書は以下で
参照する事ができます。

Submarine Arms Race in the Pacific:
太平洋での潜水艦軍拡競争
The Chinese Challenge to U.S. Undersea Supremacy 
米国の水中での優位に挑戦する中国
http://www.heritage.org/Research/NationalSecurity/bg2367.cfm

まさに表題の通りなのですが、報告書の内容を要約すれば、増大す
る中国の潜水艦戦力に対し、減少していく一方の米海軍の潜水艦戦
力を嘆き、このままでは、米国はアジア太平洋地域で、米国が望む
作戦行動を展開する事が出来なくなるのでは警鐘を鳴らしています。
その中で、中国の戦力拡充に対し、ロシアと日本を除くアジア太平
洋諸国が、潜水艦戦力を拡充し対抗している事を指摘しています。
いわんや米国おやという訳です。

大筋では、論文の内容は首肯できるのですが、多少割り引く必要の
ある部分もあります。その一つは、中国の潜水艦戦力です。ヘリテ
ージ論文では2025年の攻撃型潜水艦の隻数を78隻としていますが、
globalsecurity.orgでは、5隻の戦略原潜と二隻の試験艦を含む
2020年の潜水艦戦力全体で78隻としています。また、この中には、
明級潜水艦12隻が含まれているものと思われますが、このクラスは、
1970年代後半から建造が開始されたもので、近代化改装も行われて
いますが、流石に2020年には、有効な戦力とは言えなくなっている
様に思います。この様な老朽艦や試験艦を差し引くと、2020年段階
では、宋級、元級、キロ級攻撃型潜水艦と商級攻撃型原潜の合計で
ある60隻を比較対象とするべきと考えます。

また、韓国の潜水艦戦力についても、2009年の12隻から2025年に
26隻と二倍以上に増加するとしていますが、この数は、チャン・ボ
ゴ(209)級9隻、ソン・ウォンイル(214)級9隻、KSS-III級8隻を
指している様ですが、KSS-III潜水艦の就役は、2020年からで、そ
の時には、チャン・ボゴ級の艦齢は、25年を超える事から、韓国海
軍はチャン・ボゴ級をKSS-IIIで更新するものと考えられます。
従って、韓国の潜水艦保有隻数は、2025年でも18隻と考えるのが正
しい様に思われます。

この様な、指摘はありますが、潜水艦戦力の近代化を中国が着実に
実行しているのは確かですし、その脅威の増大に対して、アジア太
平洋諸国が対抗しつつあるのも事実です。特に、今まで潜水艦を配
備していなかったベトナムがロシアから6隻のキロ級を導入したり、
マレーシアが、最新鋭のスコルピオ級を増勢しようとしている点、
過去長期に亘って6隻を維持してきた潜水艦隊の倍増を決定した豪
州、ロシア製と国産の原潜を整備し、日本を凌駕する24隻の攻撃型
潜水艦を整備しているインドが注目されます。また、隻数では変わ
らないものの、シンガポールやインドネシアも既存艦の更新や近代
化を実施したり、計画したりと、アジア・太平洋地域は潜水艦に関
しては、世界でも、最もホットな地域になっているのです。

その中で、一見、中国の戦力拡大を全く無視している様に見えるの
が、我が国です。ヘリテージの論文でも、日本は脅威の増大に反応
せず、歴史的な潜水艦枠である16隻を維持するものと予想してい
ます。しかし、実際には、潜水艦そのものは、そうりゅう型の着実
な増勢で能力が向上すると共に、5番艦以降では新型電池装備とな
る事で戦力は格段に強化されます。また、中国の場合は、広大な東
シナ海と南シナ海に面しており、ソ連の時の様なチョークポイント
での待ち伏せが見込めない事から、潜水艦の多少の増勢よりも、寧
ろ、P-2哨戒機の実戦化と配備により、中国潜水艦を検知し、追跡
する能力の向上や、P-2が最大8基装備できる対艦ミサイルによる
中国のシーレーンを威圧する効果の方が、より効率的であると海自
は考えているのかも知れません。


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2010年2月10日水曜日

強襲揚陸艦購入で西側技術の導入に向かうロシア

※ミストラル艦上に着艦したロシア海軍のKa-29強襲輸送ヘリコプター
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/40566572.htmlより転載

ヘリ空母機能持つ仏最新鋭艦、露に売却へ

フランス国防省高官は8日、ロシア政府が購入を打診していた仏海軍の最新鋭
強襲揚陸艦「ミストラル」級(排水量2万1300トン)について、ロシア向
けに1隻を売却する方針を表明、さらに3隻の建造を検討中であることを明ら
かにした。ヘリコプター空母としての機能を持つ攻撃型艦船を北大西洋条約機
構(NATO)加盟国がロシアに売るのは極めて異例。米国やバルト海沿岸の
NATO加盟国に加え、グルジアなどが安全保障上の懸念を表明している。

ロシアは2008年夏にグルジアに侵攻した際、兵員派遣に手間取った経緯が
あり、大量の要員や装備品をヘリで短時間に前線展開できるミストラル級への
関心を強めたとされる。購入は、ロシア軍の展開能力を高めることになるため、
ロシアの周辺国が仏政府に対して懸念を通告していた。

訪仏中のゲーツ国防長官は8日、フランスのモラン国防相と会談した際、「東
欧やバルト海などロシアと接する国々が懸念している」と伝達した。

ミストラル級の推定価格は1隻あたり最大5億ユーロ(約650億円)。仏政
府が売却に応じたのは武器輸出による外貨獲得に狙いに加え、NATO内にあ
っても仏独自の軍事戦略を維持しようとする仏政府の姿勢の表れと見られている。

(読売新聞 2010/02/09)


旧ソ連は、第二次大戦後、様々な種類の艦艇を設計、建造しました
が、最後まで物になら無かったのが、空母と強襲揚陸艦でした。
長くソ連海軍の司令官の職にあったセルゲイ・ゴルシコフはその著
書「海軍戦略」の中で、揚陸戦の重要性について繰り返し述べてい
ますが、実際には、ロシアが大規模な揚陸戦を行ったありませんで
した。その為、揚陸戦の実際について経験が乏しかった事から、建
造した揚陸艦艇も、アリゲータ級の様に米国が第二次大戦時に建造
した戦車揚陸艦(LST)の二番煎じの様な艦や、イワン・ロゴフ級の
様な、中途半端な揚陸艦になってしまいました。

旧ソ連時代には、兵器の開発と製造に人的、物的資源を優先して配
分し、全てを自国開発兵器で揃える事ができましたし、ソ連崩壊後
は数少ない競争力を持つ分野として比較優位を維持出来ていました
が、ロシアが、資本主義経済をもとにした民主主義体制になり、兵
器についても、国際競争の下に置かれる様になった事で、兵器製造
の点でも比較優位が維持できる分野は徐々に縮小してきました。

その中で、ロシアの水上艦艇建造能力は、長年の予算不足の影響も
あって、旧ソ連時代の艦艇設計・建造能力を維持できておらず、
インドと契約したキエフ級空母四番艦アドミラル・ゴルシコフ改め
バクーの売却に伴なう改造も、工期、費用共に大幅な超過を余儀な
くされている状況にあり、特に大型艦艇の建造能力には、疑問符が
つく状態になっているのです。

その様な視点から見れば、今回の「ミストラル」級強襲揚陸艦のフ
ランスからの購入は、ロシア海軍にとって、一番弱く、経験の乏し
い部分を補う上で、非常に合理的な選択であると言えます。その上、
艦艇設計や建造に関わる、西側の設計思想や技術、また最新艦艇に
は必須のC4ISR関連機器やシステムについて、西側技術を大幅に取
り込む事ができると考えられます。今回の契約でロシアがどこまで
電子技術導入を行うか不明ですが、場合によっては、従来のロシア
国産の電子機器・電子兵器に代わって、西側の兵器体系が、ロシア
艦艇に搭載される様になる可能性すらあると考えられるのです。

ヨーロッパ諸国は過去に、中国に、艦艇や技術を売り込んだ事もあ
り、中国の艦艇のCIC設備はイタリア製とフランス製機器のライセ
ンス生産品が混在していると言いますが、ロシアについても、同じ
道を辿るのかも知れません。


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2010年2月9日火曜日

ペイリン発言を軽視するな。日米関係は確実に悪化している!

※産経新聞Webサイトから転載

日米関係「最悪の状態」=オバマ外交を批判-ペイリン氏

2008年の米大統領選で共和党の副大統領候補だったペイリン前アラスカ州知事
は6日、南部テネシー州で開かれた保守派連合「ティーパーティー」の全国大
会で演説した。オバマ大統領の外交政策を批判し、日米関係について「日本は
アジアの重要な同盟国なのに、最悪の状態になっている」と述べた。

北朝鮮やイランに対する外交方針に関しても、「オバマ大統領はこの1年間、
敵対する体制に手を差し伸べているが、成果を上げていない」と指摘した。
また、経済対策について、「オバマ大統領とペロシ下院議長の政策は、国の負
債を拡大させ、国を危険にさらす」と批判した。さらに、マサチューセッツ州
連邦上院議員補欠選挙での共和党の勝利は、一層良いことが起きる兆候だと指
摘し、「米国は新たな革命の準備ができている。みなさんはその一翼を担って
いる」と呼び掛けた。

(時事通信 2010/02/08)


大石英司氏の様な民主党を支持する有力なブルガーの中には、普天
間問題を始めとする日米の外交上の不協和音について、あの程度は
米軍が駐留する他国では当たり前の様に起こっており全く問題にな
らないと述べ、殊更に、その影響を過小評価しようとする方がいます。

鳩山民主党政権の外交上の失点と捉えられるのを避けたいという意
向の現れとも思われますが、やはり、鳩山民主党政権発足後、日米
関係は確実に悪化している事は、明確に認識する必要があります。

ペイリン氏の事を、外交を知らない半素人の政治家と揶揄する向き
がありますが、逆に言えば、その様な半素人の目にも日米関係の悪
化がはっきり見える様になっている訳で、日米関係の悪化はそれ程
深刻であると言えます。

二国間関係は、首脳レベル、政府レベル、政党レベル、政治家レベ
ル、企業レベル、国民レベルと重層的な関係になっていますので、
首脳レベルや政党レベルが悪化していても、それ以外のレイヤで強
固な信頼関係があれば、なお、関係悪化を表面化させずにすみます。
日米関係の現状は、首脳レベルや、政党レベルで悪化しているのを、
政府の上級官僚のレベルで悪化を食い止めようとしている段階であ
る様に思います。

しかしながら、例えば、トヨタ問題の様に、日米関係が良好であれ
ば、単なるリコール問題ですんだものが、米国の経済不安の捌け口
としてスケープゴーツ(生贄羊)にする様な動きを米国政府、とりわ
け政治家である運輸長官がとっているのは、日本をその様に扱って
良いと米国政府や政権党が考えている事を示しています。

この様な事態は、小泉-ブッシュ時代には考えられなかった事です。
勿論、共和党時代でも、経済摩擦や貿易摩擦は存在していましたが、
その影響を両国関係全体に波及するのを避けようとする方向に日米
両国政府によるベクトルが働いていました。しかしながら、現在は
そのベクトルが両国で弱まっています。

昨年のCOP15以降、固くなに欧米との協調を拒否しながら近隣窮乏
化政策を続ける中国に対して、欧米各国で中国異質論が表面化して
いるのが、2010年の国際政治の顕著な変化です。オバマ政権も、そ
れまでの協調一辺倒の対中政策から、中国と対抗する事も避けない
方向に外交政策を転換しつつあります。その様な世界的な認識転換
が行われている中で、政権党の書記長(幹事長の英訳はThe chief
secretaryは書記長、総書記になります)が、国会議員百数十名を引
き連れ中国の国家主席に謁見させるのは、日本の外交政策が、大き
く中国に傾斜しつつある事を示すものと米国政府が認識した事に間
違いありません。

この状況は、連戦連勝のナチドイツに擦り寄り、三国同盟を結んで
英米に敵対する事になった第二次大戦直前の状態を、擦り寄る相手
をドイツの代わりに中国にするだけで繰り返している様な気がして
ならないのです。そして、米国が日英同盟破棄に外交努力を傾けた
のと同様に今度は、中国が日米同盟破棄に外交努力を傾けていると
言う訳です。

鳩山首相の外交ブレーンである日本総研の寺島実郎氏が普天間問題
で調整を図ろうと訪問したワシントンで米政府高官から総スカンを
喰らったのは、日米中二等辺三角形外交の提唱者であり、日米同盟
を破棄を画策する中国の手先と目されたからに他なりません。

鳩山首相が意図してかどうかは分かりませんが、結果として、オバ
マ大統領の信頼をトラストミー事件で失った他、訪日中のオバマ大
統領を置き去りにしてシンガポールに出発する等、表面上の言葉は
どうであれ、オバマ大統領に鳩山首相の信頼性について強烈な印象
を与えたと考えるのが普通です。

今回のペイリン前アラスカ州知事の発言は、日米関係の悪化をオバ
マ政権の失政として批判するものですが、冷静に見れば、日米政府
間合意を破棄しようとしている点で、日米関係悪化の原因と責任が
日本側により大きい事は明確です。それだけにペイリン発言は、寧
ろ、今後、方向を変えて米国の政治家、米国民の非難の矛先を中国
と同時に日本に向ける切っ掛けになる可能性すらあるのではと懸念
されるのです。


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2010年2月8日月曜日

IRBM(中距離弾道弾)配備を推進するインド

※アグニ3の発射実験。「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」から転載

インド、弾道ミサイル発射実験成功 中距離「アグニ3」

PTI通信によると、インド国防省筋は7日、核弾頭搭載可能な中距離弾道ミ
サイル、アグニ3(射程3千キロ)の発射実験を同国東部オリッサ州沖の島で
実施し、成功したと明らかにした。アグニ3は中国の主要都市の一部を射程に
入れる。

インドのアグニ3発射実験は今回が4回目。2006年7月の最初の実験は失
敗したが、07年4月と08年5月の実験はいずれも成功している。(共同)
(産経iza 2010/02/07)


現在、インドが配備しているアグニ2は、MRBM(準中距離弾道弾)
の射程である1250マイルの射程距離しか持っていない事から、中国
の一部を射程に収めているとは言うものの、まず、パキスタン向け
と言って良いと思います。

これに対し、今回で4回目になるテストを成功させた、アグニ3は
名前こそ、アグニ2と似ていますが、実は、全く異なるミサイルです。
アグニ2が、細長い、如何にも、射程を延長する為に、ロシア製の
SCUDを二段重ねにした様に見えるのに対し、アグニ3は直径がより
大きく、将来ICBM(大陸間弾道弾)に発展する余裕を持たせたミサイ
ルとして開発されている様に思われます。

アグニ3の射程を、米国は2000マイル以上と見積もっていますが、
この射程は、アグニ2に比べ約倍近いとはいうものの、中国の全域
を納めるのに不十分であり、中国向けの弾道ミサイルとしては、中
途半端な印象は免れません。従って、配備当初は、現状の射程距離
であっても、配備後には、更に射程を延長するものと見込まれてい
ます。

インドの弾道弾配備が進むと、実は我が国にも影響が出てきます。
つまり、インドの脅威を受ける様になる中国ですが、対抗上、イン
ドを射程に納めるミサイルを配備する必要が出てきます。インドが
配備可能な弾道ミサイルとしては、アグニ2と同程度の射程を有す
るCSS-2,CSS-5を前進配置するか、貴重なICBMの一部をインド向け
に振り向けるしかありません。

恐らくは、当面は、配備数に余裕のあるMRBMの前進配置で対応し、
その内に、射程3000マイル程度のミサイルを配備するものと思われ
ますが、元々、射程の長いCSS-5の長射程型は、日本向けと見られ
ていました。この為、一時的とは言え、中国の日本向け核戦力の脅
威が、低下する可能性があるのです。

また、相互抑止の観点からすれば、中国にとって、アメリカやロシ
アは、核抑止ゲームのベテランであり、ある意味で中国が見習うべ
きゲームの師匠とも言え、相互抑止の信頼性が高かったのに対し、
中国がゲームに習熟した時、新規に参入するインドやイラン、北朝
鮮の様な、核ゲームの素人は、行動が予測できずリスクが高まる事
になります。中国にとっては、相互確証破壊(MAD)戦略による相互
抑止が効きにくくなる事になります。それへの対抗策としては、核
ミサイルに多めに配備すると同時にMDを配備する事になります。

中国は、今年1/11にMD実験を行っていますが、このMDの対象は、
インドという事なのかも知れません。中国はかって、日本のMD配
備を地域軍拡を促進すると非難してきましたが、インドの核戦力の
充実によって、日本にとっての北朝鮮の核ミサイルがMDを促した
のと同様の立場に立つことになったのは、如何にも皮肉な結果であ
る様に思われるのです。以前、日本のMDを非難した誰かさん達は
中国のMD配備を非難しないんでしょうか。


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