2009年3月10日火曜日

ミサイルを撃ち落されても実は原因が判らない北朝鮮...


※中国の衛星追跡艦 遠望5号 「日本周辺の軍事兵器」サイトから転載

ミサイル迎撃なら日米韓に報復=南北の通信遮断-北朝鮮

北朝鮮の朝鮮中央通信によると、朝鮮人民軍総参謀部スポークスマンは9日、
北朝鮮が「人工衛星」と称して発射準備を進めている長距離弾道ミサイルを日
米韓が迎撃すれば、「(日米韓の)本拠地に対する正義の報復打撃戦を開始す
る」との声明を発表した。朝鮮通信(東京)が伝えた。
声明はさらに、9日に始まった米韓合同軍事演習を「北侵戦争演習」と非難。
韓国との間で唯一残っていた連絡網である軍当局間の通信回線を9日から20日
までの同演習期間中、遮断すると宣言した。
これまでも北朝鮮は米韓合同軍事演習に反発してきており、5日には北朝鮮周
辺の日本海上空を通過する韓国の民間航空機の「安全を保証できなくなった」
との声明を出し、緊張を高めている。9日の声明はミサイル迎撃について「わ
れわれの平和的な衛星に対する迎撃はすなわち戦争を意味する」と主張した。

(時事通信 2009/3/9)


寝言は寝て言え第3弾です。
発射準備を進めている長距離弾道ミサイルを日米韓が迎撃すれば、
「本拠地に対する正義の報復打撃戦を開始する」との声明を発表し、
いつもながら威勢の良い北朝鮮です。

しかし、本気で、これを理由に戦争を開始しようとした場合、実は
非常に原始的な問題点を北朝鮮は抱えています。それは、衛星を打
ち落とされても、それを認識する方法がないと言う事です。
つまり、衛星にしても、ミサイルの弾頭であっても、日米に迎撃さ
れて破壊されたのか、それとも、衛星なり、弾頭なりが故障したの
かを北朝鮮は、知るすべがないと言う点です。

通常、人工衛星であっても、ミサイル発射実験であっても、ペイロ
ードは、地上に自分の姿勢や加速度等をテレメトリー情報として、
送信しています。(実戦配備された弾道ミサイルについては、この様
なデータリンクはありませんが、実験目的では装備しています。) 
そして、このデータを解析する事で、衛星なりミサイル弾頭なりが、
正しく飛行しているかどうかを知る事が出来ます。

テレメトリーデータは、日本の衛星の場合はSバンド帯域で衛星か
ら送信されています。この帯域の電波は極超短波であり、直進性が
高いので、見通し外での受信が難しいのが特徴です。H-IIAの打ち
上げでも、小笠原地上局とクリスマス島地上局の間でテレメトリー
が受信できないギャプがあります。

弾道ミサイル実験などでは、この様なギャップが発生しない様に、
地上局を補う意味から、上掲の様なミサイル/衛星追跡艦で、テレ
メトリーを受信すると共に、レーダーにより衛星/弾頭を追跡出来
る様にしています。これは米国、ロシア、フランス、中国いずれも
同じで、同種の艦を保有しています。

これに対して、北朝鮮の場合は、この様なミサイル/衛星追跡艦を
保有しておらず、テレメトリーが止まっても、その原因を特定する
事ができないのです。また、北朝鮮は、日本の様に、小笠原諸島や
マーシャル諸島に地上局を持っている訳もなく、今回は中国もミサ
イル実験に反対しているので、ミサイル/衛星追跡艦を借りる事も
出来ません。

1998年のミサイル実験では、北朝鮮は、人工衛星「光明星1号」を打
ち上げたと発表し、大恥をかきましたが、その理由は、この辺にも
あります。

打ち上げてもいない人工衛星を打ち上げたと主張するのは、まだし
もカワイイ誤りと言えますが、人工衛星のテレメトリーが故障した
せいで戦争を仕掛けられたというのは、堪ったものではありません。
本当に戦争を仕掛けるのであれば、ミサイル実験をする前に、自力
で日米が迎撃を行ったかどうか観測手段程度は整備して欲しいもの
だと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





0 件のコメント: