2009年9月4日金曜日

またも恫喝政策に転じた北朝鮮 しかし交渉の必要はない!

※写真はロイターサイトより転載

北朝鮮、ウラン濃縮の最終段階にある=KCNA

朝鮮中央通信社(KCNA)によると、北朝鮮は4日、ウラン濃縮の最終段階
にあることを明らかにした。KCNAによると、北朝鮮は国連安保理議長に書
簡を送り、「ウラン濃縮実験は成功裏に行われた。実験は最終段階にある」と
表明した。

米国は以前から、北朝鮮が核兵器向けのウラン濃縮実験を極秘に進めていると
みていた。ただ専門家は、本格的なウラン濃縮には至っていないとの見方を示
している。
北朝鮮が過去に2回行った核実験はプルトニウム型とみられている。
北朝鮮は、ウラン濃縮実験について、国際社会が北朝鮮への制裁を強化してい
ることへの対抗措置だと主張。 
「われわれは対話と制裁の双方の用意がある。一部の安保理常任理事国が対話
よりも制裁を優先させるのであれば、われわれも対話よりも核抑止力の強化を
優先させる」としている。

(ロイター 2009/9/4)


ミサイル実験、第二回目の核実験と瀬戸際政策を続けていた北朝鮮
が、クリントン訪朝以降、拘束していた米国の記者や、韓国の会社
員、漁船員を順次解放したり、各国に会談や訪朝を求めるなど緊張
緩和政策に転じていましたが、今回は比較的早めに、瀬戸際政策に
転換したようです。

もっとも緊張緩和政策と言っても、韓国からも戦術的な転換に過ぎ
ないと見透かされていましたし、オバマ政権からも期待していた、
二国間平和協定交渉に対する言質は得られず、麻生首相への訪朝要
請も速やかに拒否されるという状態であり、期待した様な効果は得
られなかったと言う事かも知れません。

北朝鮮の交渉術の基本は以下の様なものである事が既に判っており、
それは、全く変わっていないのです。

①強面で、要求の10倍をふっかける。
②交渉中に理不尽な事を実行し、それを元に戻す事について代償を
 要求する。
③約束は実行しない。状況の変化で簡単に合意を覆す。
④交渉不成立の場合は全ての責任を相手に押し付ける。
⑤交渉相手の個人的名声・名誉欲をくすぐって譲歩を得ようとする。
⑥交渉を始める事自体に代償を求める。
⑦合意内容を細分化して、その一つ一つに代償を得ようとする。


一言で言えば、交渉相手としては信頼できる相手ではありません。
彼らの理解できる言葉は力しかないのです。力づくでねじ伏せるし
かないと考えるべきなのです。

そして一番重要なのが、次の二項目です。
◎金体制の存続が全てに優先される。
◎その存続を保証するのは核兵器である。

ここまで理解してしまえば、今回のウラン濃縮についての彼らの意
図は明らかです。つまり、交渉に応じる場合であっても、本当にウ
ラン濃縮技術を彼らが開発したのであれば、それを放棄する事は絶
対にありません。北朝鮮は、確実に作動する核兵器が必要ですが、
現在の彼らの技術では、使用済み核燃料から純度の高いプルトニウ
ムを抽出する事ができないのに対し、ウラン濃縮は同じ濃縮プロセ
スを繰り返す事で確実に作動する兵器レベルのウランを抽出する事
ができるからです。この場合、いくら代償を積んだとしても実際に
廃棄される事はなく、交渉を行う価値はない事になります。

逆に、彼らが開発に失敗しているのであれば、開発を放棄する可能
性があるかも知れません。つまり、もっていないものを放棄する事
で代償を得ようとしている事になり、この場合も交渉の価値はない
事になります。

即ち、交渉は北朝鮮が代償を得る為のものでしかなく、核兵器が放
棄される事もまたありません。従って、国際社会は北朝鮮を相手に
する必要はなく、現在実行している経済制裁を着実に実行していく
しかないと言える様に思われるのです。


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2009年9月3日木曜日

22DDHは費用対効果の高い海上航空機整備工場


※元の図は、週刊オブィエクトのHPより転載
赤枠は格納庫の推定位置

昨日は、22DDHの性格が16DDHの全通甲板を持つヘリコプ
ター護衛艦から、他の護衛艦からエスコートされるヘリ空母として
の性格に大きく変化している事を武装の面から少し分析してみました。

それでは、22DDHは、ヘリ空母として、どの程度の整備能力が
あるのでしょうか。16DDHや22DDHと従来のDDHとの比
較として良く使われる例えに、自宅の駐車場と整備工場の違いが使
われます。つまり、自宅の駐車場でも、多少の車の整備はできます
が、エンジン交換を伴う様な整備を行えなえず、整備工場に持ち込
む必要があります。それと同様に、従来のDDやDDHの格納庫は、
自宅の駐車場に相当します。軽度の機体整備はできますが、大きな
整備は困難です。それに対し、16DDHや22DDHは整備工場
に当り、従来に比べ艦載ヘリの大規模な整備も可能になると言う訳
です。

16DDHや22DDHを取得する大きな目的の一つに、この点が
上げられています。

では、その能力を、どの様に推測すれば良いのでしょうか?整備能
力の評価は本来、設備と能力の積で表されると思われますが、現段
階では評価は難しいと思われますし、建造され運用に移ってからも
各艦毎の評価も公表される事はまずないでしょう。従って、単純に
外観から評価する他ありません。という訳で、整備工場のしての大
きさという単純な尺度で測ってみる事にしました。

16DDHの格納庫の大きさは概ねエレベータの間にある二甲板の
高さのある第一格納庫と第二格納庫及び、後部エレベータと艦尾の
間にある三甲板の高さがある第三格納庫の合計になります。第三格
納庫と艦尾の間にはVLS発射機があります。それを前提に格納庫の
大きさを推定すると概ね上図の赤枠の内の矢印になるかと思います。
この大きさは、80mX15m(1200平方米)と推定されます。

実際には、エレベータを上に上げた状態で固定すれば、格納庫と同
じ高さにエレベータの下床?を上げる事で、エレベータ部分を格納
庫として使用する事もできますが、整備しながら、エレベータも使
用する事を考えると、通常の整備に使用できる大きさは上記の程度
と言えます。

同様に、22DDHに当てはめると、格納庫の大きさは、157m
X21m(約3300平方米)
になります。全長が51m延長された
事と舷側エレベータ、それにVLSが無くなった事で、格納庫の大き
さが約3倍弱になっていると思われるのです。

全長の増加は約25%、船体の大きさは約4割増加したのに対し、
格納庫の大きさが3倍近く拡大
した事は、海上航空機整備工場とし
ての、22DDHの能力向上が極めて顕著である事を示しており、
船価が16DDHと略等しい事を考えれば費用対効果が非常に改善
された艦
であると言える様に思うのです。


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2009年9月2日水曜日

ヘリ搭載護衛艦からヘリ空母に近づいた22DDH

※海自 画像は2ちゃんねる 軍事板 「ひゅうが型DDH 94番艦」スレ #667より転載

最大の「空母型」護衛艦配備方針=ヘリ14機、洋上給油も-防衛省

防衛省は31日、海上自衛隊に最大規模のヘリコプター搭載護衛艦(基準排水
量19500トン)1隻を配備する方針を決め、2010年度予算の概算要求
に1166億円を盛り込んだ。艦首から艦尾まで甲板がつながる「空母型」で、
ヘリ5機の同時発着艦のほか、他艦への洋上給油が可能。
同じタイプの「ひゅうが」(13950トン)から機能は大幅にアップするが、
予算を見直すとしている民主党政権の下、無事「船出」できるかは不透明だ。
新たな護衛艦は全長248メートルで、哨戒ヘリ3機が同時発着できるひゅう
がより51メートル長い。甲板と格納庫でヘリ14機を搭載する。
輸送力も増強し、陸上自衛隊のトラック約50台、人員約4000人を運ぶこ
とができる。
護衛艦「しらね」(5200トン)の後継だが、洋上給油もでき、周辺海域で
の継続的な警戒監視、海外派遣や大規模災害時の物資、邦人輸送など、さまざ
まな場面で中枢艦の役割を果たすという。 
新型艦導入について、海上幕僚監部は中国海軍の近代化も背景にあるとし、
「(中国は)巡航ミサイルなど艦艇からの攻撃力を向上させており、ヘリによ
る監視の強化が必要」(幹部)と強調する。
一方、戦闘機などの発着艦について、同省は「その考えはない」としている。

(時事通信 2009/08/31)

        22DDH    16DDH
基準排水量  19500t   13950t
全長       248m     198m
全幅        38m      33m
速力        30kt      30kt
CIWS         2基       2基
SeaRAM        2基        無
VLS           無 16セル(Mk41)
FCS-3改         無        有
アスロック装置     無       1式
3連装短魚雷発射管   無       2基
搭載ヘリ
哨戒ヘリコプター   7機       3機
輸送・救難ヘリコプター2機

ヘリ搭載能力    14機      11機
同時発着能力     5機       4機
同時運用可能ヘリ数  9機       4機

輸送力
 3.5tトラック約50台
洋上給油能力
価格(概算要求時)1166億円   1164億円
                (ひゅうが1057億円)
                (いせ   975億円)

新聞報道に書かれていたスペックを16DDHと並べてみましたが、
ここからだけでも、新しい22DDHの性格が判る様に思われます。
つまり、16DDHが主砲こそないものの、その武装が、従来のヘ
リコプター搭載護衛艦の延長線上にあったのに対し、22DDHで
は、よりヘリ空母としての運用と特性に合致した仕様に変化してい
ると言えます。

例えば、16DDHではヘリがあっても無くても単独で潜水艦を探
知、攻撃できる武装になっていますが、22DDHでは、アスロッ
クも短魚雷もないので、ヘリなくしては単独で潜水艦を攻撃する事
ができません。また、完成予想図から見る限りソナーシステム(OQQ
-21)も16DDHに比べ簡素化が図られているようです。更に、
16DDHではFCS3改とESSMにより限定的な艦隊防空も可
能でしたが、22DDHでは、個艦防御用の装備のみとなっています。

その代わりに、22DDHが得たのは、16DDHに比べ40%も
大きな船体と、二倍以上(4機→9機)となるヘリコプター同時運
用能力と整備能力、そして、船体の大きさの割に安価な建造コスト
です。

16DDHの運用構想では、DDHは対潜グループの中核艦として、
DDG1隻、DD2隻からエスコートされる事になります。艦隊防
空指揮機能はDDGが担いますが、対潜指揮機能は、データリンク
で結ばれる事で、22DDHが持つ充実した司令部機能が担う事に
なります。

22DDHでは、16DDHと比べ、船体の全長が52m長くなっ
た他、舷側エレベータの採用やVLSを搭載しない事で、16DDH
と比べ、エレベータ部分を除いた艦内ヘリ格納庫は、16DDHと
比べて二倍以上
になる筈で、そこに収容可能なヘリ数は、表面上の
収容数の増加よりは、更に大きくなる事は間違いありません。また、
これが整備能力の一段の向上に繋がると考えられます。加えて、こ
の大きくなったヘリ格納庫の活用方法として車両輸送を想定してい
るのだと思われます。

価格面では、船体規模が40%大きくなったにも係わらず、船価は
略同じです。船価の安さはDDと比べると一段とはっきりします。
19DD(750億円)と比べ、船体の大きさが4倍であるにも係わ
らず、取得費用は、五割増に過ぎないのです。

言い換えれば、22DDHはDDのエスコートによる運用を前提と
する事で、16DDHの過剰な機能を削ぎ落とし、より航空機運用
に最適化した艦
になったと言えるのです。


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2009年8月31日月曜日

民主党は国民の期待の高さにいつまで応えられるのか?

※写真は毎日新聞サイトより転載

<衆院選>民主党が単独で308議席獲得 自民は歴史的惨敗

第45回衆院選は30日、投開票され、480議席のうち民主党が小選挙区と
比例代表を合わせて単独で過半数(241議席)を大きく上回り308議席を
獲得した。1996年の旧民主党結党以来、13年で悲願の政権交代を果たし
た。93年衆院選で自民党が過半数を割り込み非自民8党派による細川連立政
権が発足したが、2大政党間の政権交代は戦後初めてで、戦後政治の大きな転
換点となる。首相指名選挙をする特別国会は9月14日の週にも開会、民主党
の鳩山由紀夫代表が首相に指名され、同党を中心とした連立政権が発足する。
【高塚保】

与党は自民、公明両党で公示前の計331議席から計191議席を減らし、自
民党は1955年の結党以来、初めて第1党の座を失う大惨敗を喫した。麻生
太郎首相は30日夜、NHKの報道番組で「責任を負わなければならない」と
述べ、自民党総裁の辞任を表明した。

自民党総裁の任期は9月末で、特別国会後に総裁選を実施し新総裁を選出する。
来年夏の参院選に向け党勢の立て直しを迫られるが、新執行部にとって苦難の
船出となる。

民主党は小泉改革で広がった格差への対策として、マニフェスト(政権公約)
に子ども手当の支給、高校教育の無償化、農家への戸別所得補償、高速道路原
則無料化などくらしを重視する政策を盛り込み、実現を訴えてきた。

(毎日新聞 2009/8/31)


民主党にとって、不幸な事は、日本経済が成長期にないという事で
す。民主党が政権を担うであろうここ4年間で見ても、税収が大幅
に増える見込みはありません。寧ろ、リーマンショック後の経済対
策の累積で一息ついていた経済が、民主党の経済財政運営の如何に
よっては失速する可能性すらあります。

何を言いたいかと言えば、民主党が受け継いだ、財布に入っている
お金の量は変わらないのですから、新しい政策を実現する為には、
必ず、どこかに皺寄せが来るという事です。霞ヶ関の埋蔵金なんて
いるのはありません。特別会計に万一の為に蓄えられている資金な
どは使ってしまえばなくなってしまう一過性のものに過ぎません。

民主党の公約である、子供手当てや、高校教育の無償化、農家への
個別所得補償、高速道路無料化は、毎年毎年支出が必要なものです。
一時的な資金で手当てする訳にはいきません。つまり、子供のいる
家庭や農家、あるいは高速道路の利用者に対して、子供のいない世
帯や子育ての終わった世帯、農業以外の勤労者、高速道路をあまり
利用しない国民から、税金を吸い上げ、それを分配する事になります。
その額、実に13兆円に及びますが、これは、消費税を6%上げる
のに等しい増税に相当します。今の処、基礎控除や配偶者控除の廃
止と言う一般人には意味が判りにくい項目を財源にあげていますが、
それだけ取れば、大多数の人にとって増税になる事が明白になって
きます。何故なら、基礎控除や配偶者控除の廃止による増税は、子
育て世代に対しても等しくのしかかってくるからです。これでは、
子供手当支給の喜びも半減してしまいます。

政権を運営していくにつれて民主党は、大きな政府を目指す政権で
ある事がより明確になっていきます。既に社会保険庁の解体を中止
する事を明言していますが、高速道路運営会社も、高速道路無料化
の中で、国営化が検討されていく筈です。更に、郵政民営化につい
ても再度の国営化が行われる可能性があります。また、日教組は、
少人数教室の実現を従来にも増して強力に運動する筈です。そして、
これら政府部門の拡大は、最終的には全て国民の負担によって賄わ
れる事になります。民主党は政府部門の無駄を省くと言っています
し、政府部門に無駄は大いにあるでしょうが、それとは別に政府部
門は肥え太る事になります。

初めての政権交代で政権をとった民主党には、多くの国民から期待
が寄せられています。それは、自民党には出来ないフレッシュな政
治を期待してのものです。しかしながら財布の中にお金はありませ
ん。金の事ばかり言うなという意見もあるでしょうが、現在の政府
の機能は、国民の所得を税の徴収と資金の給付を通じて再分配する
が最も大きな役割であり、それを最少コストで合理的に行う事が政
府に期待されているのです。

そして、諸外国と比較した場合、日本の政府運営は、そこそこ合理
的に少ないコストで行われて来たと言えます。そして、それを更に
合理的に行う事を政府の無駄を省くという公約によって国民から期
待されているのに、実際に民主党がやらねばならない事は、政府部
門の拡大になるのですから、遅かれ早かれ、民主党に対する国民の
失望が表面化するのは確実であると言えます。

更に、民主党政権には、どちらかと言えば、左寄りの勢力から大き
な期待が寄せられています。永住外国人の地方参政権容認問題や、
人権擁護法問題、あるいは国旗国歌問題、靖国問題、中国や韓国と
の歴史認識問題など、処理によっては、国民の少なく共半数に失望
の念を抱かせるに充分な問題にも取り組まざるを得なくなっています。

経済運営、増税問題に加え、民主党政権は、これら多くの問題点を
内在する形で発足を余儀なくされるのであり、まさに至る処に爆弾
を抱えていると言って過言ではありません。

来年夏には、まず参議院選挙が予定されていますが、マスコミの側
面支援も続きますので、ここで民主党が敗退するとは考え難いので
すが、その次には、4年後の2013年に今度は衆参同時選挙が行われ
る可能性があります。それまでの間、国民の失望をどこまで、押さ
え込めるか、民主党に期待を繋ぎとめる事ができるのか、民主党の
真価が問われるのではないかと思われるのです。


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