2009年7月31日金曜日

世界から土下座外交を期待されている民主党

※図は、Wikipediaからの転載
世界198ヶ国の色分けは次の通り。
青 :あらゆる犯罪に対する死刑を廃止(91ヶ国)
緑 :戦時の逃走、反逆罪などの犯罪は死刑あり。それ以外は死刑
   を廃止(11ヶ国)
橙 :法律上は死刑制度を維持。ただし、死刑を過去10年以上実施
   していない死刑執行モラトリアム国。もしくは、死刑を執行
   しないという公約をしている国。(33ヶ国)
赤 :過去10年の間に死刑の執行を行ったことのある国(62ヶ国)

日本の死刑執行に遺憾表明 EU

欧州連合(EU)議長国スウェーデン政府は30日、日本で28日に3人の死
刑が執行されたことに対し「強い遺憾の意を表明する」との声明を発表した。
声明は「残酷かつ非人道的な刑罰である死刑は、どのような状況でも許容でき
ない」と日本政府を批判した上で「(8月の)総選挙後に発足する日本の新政
権と、この問題で協議を持ちたい」と述べた。(共同)

(産経新聞 2009/7/31)


友愛の為なら、日本の主権を「移譲」して良いという野党党首がいる
事が世界的にも有名になったようです。自分達の意見と異なる意見
を許容できないEUがキリスト教に基づく隣人愛を本当に求めてい
るのどうかは判りませんが、自己主張だけは強烈です。
そして、28日に行われた死刑に対し「強い遺憾の意」を表明した
上で、「(8月の)総選挙後に発足する日本の新政権と、この問題
で協議を持ちたい」との表明を行っているのです。
つまり、新政権を担当すると目される民主党は、余程対外的に弱腰
であると見下されていると言う事になります。

そもそも死刑廃止は欧州においては進んでいるものの、それが必ず
しも全世界のスタンダードとなっている訳ではありません。死刑廃
止国102ヶ国に対し、死刑制度を維持している国は96ヶ国にのぼり
ます。日本に対して「遺憾」を表明するのであれば、全ての死刑実
施国に対して、死刑実施の都度、常に、遺憾の意を表明し、その結
果は、EUが甘受すべきなのです。私が知らないだけで、欧州が世
界の全ての死刑に対して、こういった行動を行っているのであれば、
それはそれで首尾一貫していると評価できますが、しかし、日本に
ついても今年の別の時期に行われた死刑に対して同様の遺憾の表明
は私の知る限り行われていません。であれば、たまたま報道された
日本の死刑に対して、反応しているだけであり、そうであれば明白
な内政干渉であるだけにEUは無思慮の謗りを受けても仕方がない
と言えます。

それにしても、EUから、こんな期待を寄せられるとは、本当に民
主党は、国益を放棄する事を世界から期待されている様に思います。
はっきり言いますが、民主党を情緒的に支持したり、マスゴミの政
権交代期待のヨイショに載せられて民主党に投票するのは、正に情
報弱者の行動としか言い様が無いように思われてなりません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/






2009年7月30日木曜日

戦略・経済対話で逆に深まる米中の溝

※写真はロイターより転載

米中、世界経済回復で協力=核問題でも連携確認-初の戦略・経済対話が閉幕

米中両国が経済や安全保障など幅広い分野の課題を討議する初の戦略・経済対
話が28日、2日間の日程を終了した。両国は会議後に共同報道文を発表し、未
曽有の危機に見舞われた世界経済や金融システムの回復で両国の協力が不可欠
だと強調。マクロ経済政策の課題のほか、金融規制や国際金融機関の改革に協
調して取り組む意欲を示した。一方、戦略分野では、イランや北朝鮮の核問題
での緊密な連携を確認、人権対話を継続する方針でも一致した。

経済分野で米側議長を務めたガイトナー財務長官は声明で「米国と中国の強力
な政策が金融システムを崩壊の瀬戸際から救うのに貢献した」との認識を示し
た上で、世界経済回復後にも「持続的かつ均衡した成長をもたらす政策を取る
ことで合意した」と指摘した。

協力の枠組みとして、マクロ経済では、米国は貯蓄率向上や財政赤字の削減な
どを課題として挙げた。中国は内需主導の成長や消費拡大への努力を約束。
また、貿易・投資では保護主義的方策の回避や難航する新多角的貿易交渉(ド
ーハ・ラウンド)の成功に対する意欲を示した。
さらに、国際通貨基金(IMF)などを含む国際金融体制の改革で中国の意見反
映や参画を確実にする目標を打ち出した。 

(時事通信 2009/7/30)


米中は、2005年から戦略対話を行ってきました。
最初に実施したのは、外務次官級の米中対話で、これは、Strategic
Dialogue(戦略対話)と呼ばれました。その次に出てきたのが、2006
年に始まった、経済関係次官によるStrategic Economic Dialogue
(戦略経済対話)です。それらを更に発展させたのが今回の外交及び
経済担当閣僚によるStrategic & Economic Dialogue(戦略と経済対
話)です。

マスコミは、中国による米国債保有高が、世界第一位になった事で、
米国が中国に対し膝を屈する様になったという印象を広めています
が、必ずしもそうではありません。中国が外貨準備を積み上げてい
ますが、これは人民元を意図的に安くしている通貨当局の介入の結
果です。米国から見れば、中国の不公正な通貨政策によって恒常的
に大幅な貿易赤字を垂れ流している事になります。中国が米国債を
購入しているのは、その反対給付という面があります。もし、中国
が米国債の購入停止をすれば、米国は即日、対中輸入制限を行うに
違いありません。米国の中国からの輸入の大部分はレアメタルなど
を除けば他国からの輸入により代替可能なものであるからです。そ
ういう意味では、核兵器による相互抑止と同様の均衡が経済面でも
成立していると言えます。米国が一方的に弱みを握られているとい
う解釈は誤りです。

そして、同時に中国から米国への安値輸出は、環境対策や知的所有
権で支払うべき費用を負担していない不公正貿易によって行われて
いるという側面があります。今回、合意はありませんでしたが、環
境対策面の改善を米国が中国に申し入れたのは、世界で第一位と第
二位のCO2排出国であると言う側面以外に、中国に対し環境対策で
国際基準を受け入れる様に米国が促したと言う側面があります。
国連や国際会議の場では、中国は、他のBRICs諸国や発展途上国の
バックアップが得られますが、二ヶ国協議では、その様な外部から
の支援は得られません。

マスコミは米中二ヶ国の世界支配体制という意味でG2と言う言葉
を多用していますが、実際には、今回の対話は、あくまで、米国に
よる、中国の世界的経済秩序への組み込み過程であると言えます


米国は現状維持勢力であるのに対して、中国は現状打破勢力です。
この現状打破勢力である中国の台頭に対し、まずは、現状維持勢力
の代表である米国が、既存の秩序と体制への協調を指導している場
がこの米中対話であると考えて良いと思われます。であるからこそ、
鳴り物入りで150人を超える大々的な訪問団が米国を訪れた割に成
果が殆どないのです。

中国にとってG2対話は面子を満足させるものではあっても、それ
以外では、必ずしもやって有利な対話とは言えず、逆に米国の政策
決定者に中国の異質さを知らしめる良い機会になるのではないかと
考えます。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年7月29日水曜日

民主が狙う大都市中高年サラリーマンの懐

※朝日新聞サイトより転載

「言われる筋合いない」鳩山氏、財源問題で反論

民主党の鳩山由紀夫代表は28日の宮崎市での街頭演説で、民主党公約に対す
る与党側の「財源が不明確」との批判に「言われる筋合いはない」と強く反発
し、「できるだけ細かく調査をして必要な財源を手当てした。必ず実現する」
と強調した。

自民党が衆院選マニフェスト(政権公約)に明記する方針の「2020(平成
32)年までに世帯あたり可処分所得平均100万円増」に関しては「衆院選
公約は『最大4年間で何をやるか』という国民との約束だ。10年以上先の話
をされても次の総選挙で問えない」と批判した。

(産経新聞 2009/07/28)

「あなた方に言われたくない」公約批判に鳩山民主代表

民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)に対し閣僚から「ばらまき」などの
批判が相次いだことに関して、鳩山由紀夫代表と岡田克也幹事長が28日、そ
れぞれ遊説先の街頭演説で反論した。

鳩山氏は宮崎県西都市で「与党は財源問題をおっしゃるが、あなた方に言われ
たくない。無駄遣いし放題でお金を垂れ流し、足りなければ国債を発行してき
ているではないか」と反論。「私たちはとことん無駄遣いをなくさせることに
力を注ぎ、本当に大事なところに資金的な手当てをしたい」と強調した。

岡田氏は神奈川県三浦市で「与党はしがらみの中でやっているからできないが、
(民主党は)予算を全部見直し何兆円ものお金をつくりだす」と表明。「天下
り団体に対する補助金や、特定の利害関係の人にだけ手厚いさまざまな制度、
そういうものを全部ゼロから見直す」と述べた。

(産経新聞 2009/07/28)


やはり痛い所、明確に反論できない所を突かれると、言葉が荒くな
ってしまうのは誰でも同じようです。

外交的には全方位土下座外交、国内的にも全方位ばら撒き政策と揶
揄されている民主党のマニフェストですが、仔細に眺めると、財源
は大都市居住の中高年サラリーマンであるのが判ります。その中で
も特に、子供が大学生以上になった世帯にしわ寄せが来る事になり
ます。

この世代は、子供の大学の学費や生活費に実際には高額の負担を行
っていますが、年功もあり、管理者層が多い事から、所得も他の年
代に比べ多めになっています。この為、配偶者控除、扶養控除の廃
止が重くのしかかる割りには受益サイドとしては奨学金(学費借入)
程度しかありません。

子育て層が、中学生までは、年額31.2万円、高校生の場合は、公立
高校の授業料無料化、私学の場合でも、年間12万円~24万円の補助
と手厚い教育費、生活費補助を受けるのとは、誠に対象的であると
言えます。

これに加えて、ガソリン税の暫定税率と高速道路の無料化がありま
す。これらの受益者の内、一番大きいのは輸送業者ですが、個人と
しては地方在住者という事になります。都市部で生活の足に車を使
っている人は、高速道路はあまり使いませんし、首都高や阪神高速
は、無料対象から外れています。

実は、この施策に対する財源の裏づけはありません。民主党の一部
議員からは、自動車保有者全員から一台に付き一律5万円徴収する
案が出ている程です。その案がダメな場合は、赤字国債、最終的に
は消費税という事になります。つまり、受益者負担の考え方がなく
なり、多数の都市生活者から少数の地方生活者への大規模な所得移
転が行われる事になります。ここでも、標的は、消費活動が一番活
発な層と言う事になり、結果的に、大都市に生活する中高年サラリ
ーマンが割りを食う事になります。

今回の衆議院選挙で情緒的に政権交代を求めるのも結構ですが、民
主党のマニフェストを見る限り、大都市部の中高年サラリーマンが
標的になっている事は冷静に評価する必要があると思われるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年7月27日月曜日

インドの戦略ミサイル原潜! 完成

※写真は、進水式で演説するシン首相。共同通信サイトより転載

インドに原潜 「浮沈」懸けた

インド海軍は26日、初の国産原子力潜水艦「アリハント」の進水式をマンモ
ハン・シン首相(76)立ち会いの下、南部アンドラプラデシュ州ビシャカパ
トナムの海軍基地で行った。国産原潜の保有は米露中英仏に次いで6カ国目。
潜水艦からの核ミサイル発射能力を確立し、核抑止力の強化を目指すが、中国
の核軍拡に拍車がかかる可能性も否定できず、日本を含む東アジアの安全保障
にも影響が出そうだ。

ロイター通信などによると、インドの国産原潜は全長 112メートルで、排
水量約5500トン。出力80メガワットの加圧水型原子炉が積まれ、核弾頭
搭載可能な射程約 700キロの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)計12
発を装備する。アリハントとは、「敵を撃破するもの」を意味する。

インドは現在、ロシア製を中心にディーゼル潜水艦を16隻保有しているが、
純国産はない。原潜の開発には1980年代から着手し、これまでにかかった
費用は総額29億ドル(約2749億円)とされ、原子炉などの試運転を経て
2011年以降に実戦配備する。インドはさらにロシアからアクラII級の原
潜を調達する方針で、アリハントを皮切りに今後10年で核ミサイル搭載可能
な原潜3隻を配備する見通しだ。より射程の長いSLBM搭載の原潜の開発も
進めているとされる。

シン首相は進水式で「国土防衛のために手段を尽くし、世界の最先端技術に遅
れないよう努めることはわれわれの義務である。原潜開発はインドの軍備にと
って歴史的にも画期的な出来事だ」と述べた。

インドの国産原潜保有は、空母建造や新型戦略原潜の配備を進める中国への対
抗を意図したものであることは明白だ。元海軍参謀長のアルン・プラカシュ退
役将校(64)は海軍力の増強を進める中国について、「核弾頭発射能力を持
つ原潜を8隻程度保有しており、潜在的な脅威だ」と述べている。

インドの軍拡は常に中国を意識したものであり、そのインドを常に隣国パキス
タンが追うというのが、地域の軍拡連鎖構造になっている。1962年の中印
国境紛争から2年後に中国は核実験に成功。以降インドは核開発に全力をあげ、
74年に核保有国となった。これでパキスタンも核開発に着手、98年にイス
ラム圏で初の核保有国になった。

今回、核弾頭搭載可能なSLBMを配備する原潜を得たことで、インドの核戦
力は格段に高まる。潜水艦の特性は、敵に見つかりにくい上に攻撃力が高いこ
とにある。たとえ地上の核基地が先制攻撃によって撃滅されても、海底にもぐ
った潜水艦は無傷で残りやすく、敵への報復能力を保つことができる。

このため、保有する核弾頭数が仮想敵より圧倒的に少なく、先制攻撃を受けや
すい状況にあっても、SLBM配備の潜水艦があれば、実効ある核抑止力を維
持できるわけだ。

さらに動力が原子力であれば、航続期間もケタが2つ違うぐらい飛躍的に伸び
る。理論上は、食料が尽きない限り、燃料の補給なしで半年でも1年でも海底
を全速力で跋扈(ばっこ)できる。

(産経新聞 2009/07/27)


インドが、ATV(Advanced Technology Vessel)として、原子力潜水
艦の開発を推進しているのは、良く知られれていましたが、最初に
戦略ミサイル原潜(SSBN)を完成させたのには、少し驚きました。
今の処は、限られられた情報しかないので、大した事は言えません
が、皮肉な事に、今回完成したインド初の戦略ミサイル原潜は、イ
ンドの仮想敵国である中国の第一世代ミサイル原潜である夏級とそ
っくりだと言えます。

表面上のスペックを比べてみます。

●インド アリハント級SSBN
水中排水量 5,500t
全長 112.0m
全幅 ??.?m
主機 原子力ターボ・エレクトリック? 1軸(80MW)
水中速力 20kt以上
最大潜行深度 300m
乗員 100名
弾道ミサイル SLBM(射程700km)/ 垂直発射筒12基

●中国 夏級SSBN
水中排水量 8,000t
全長 120.0m
全幅 10.0m
主機 原子力ターボ・エレクトリック 1軸(90MW)
水中速力 22kt
最大潜行深度 300m
乗員 84名
弾道ミサイル JL-1A(巨浪1/CSS-N-3 射程2150km)/ 垂直発射筒12基

大きさからみれば、SSBNとしては、小型の部類に入ります。
中国の夏級SSBNと比べても若干小型です。但し、搭載するSLBMは、
射程こそ劣りますが、搭載する数は、12基と夏級SSBN同様となって
います。

インドは、1980年代~90年代にソ連のチャーリー級巡航ミサイル原
潜を運用した経験があり、それに加えて原潜の設計・建造について
は深い経験を有するロシアから技術導入を行っていますので、小型
である事は、能力が低い事を意味していません。中国の第一世代原
潜がその騒音で有名であったのとは対照的に、インドの戦略ミサイ
ル原潜は、ロシア製と同程度の騒音レベルを達成している可能性が
あります。少なく共、それを目的とした設計がなされている筈です。

「アリハント」が搭載する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)Sagarika
は射程から見て、現時点では、パキスタンや中国の一部しか狙えま
せんので、第二撃戦力(敵の第一撃から生き残って報復打撃を行う
能力)としては限定的な能力しか持っていません。
しかし、Sagarika SLBMの射程を順次伸延させる事で、パキスタン
のみならず中国に対しても報復打撃力を持たせようとする筈です。

逆に、パキスタンや中国は、アリハント級SSBNを追尾し、有事には
撃沈する体制を整えようとする筈です。隣国であるパキスタンは別
として中国は、現在、スリランカ、ミャンマー、パキスタンに海軍
艦艇が利用できる港湾を設置しようとしていますが、これも、中国
自身のシーレーン防衛と同時に、インドの戦略原潜に備えたものと
言えるのかも知れません。

それに対してインドは、この艦のエスコート用に、国産攻撃型原潜
(恐らくアリハントと同じ設計で、SLBMを持たないコンパクトな艦)
を建造中であり、また、ロシアからはアクラII級攻撃型原潜をリー
スする事になっていますが、これらの直衛艦に加えて、今後は、効
果的な対潜水艦戦を遂行できる水上艦艇や海上航空兵力を順次整備
拡大していくものと思われます。
インド洋の波は今度ますます高くなっていきそうです。


'''環球閑話日々の徒然まとめサイト'''
http://space.geocities.jp/ash1saki/