2009年4月3日金曜日

北朝鮮のミサイル報復は怖くない!




※画像は朝鮮日報サイトより転載

わずかの迎撃の動きにも報復打撃、北朝鮮が発表

【ソウル2日聯合ニュース】北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は2日、「重大報道」
を発表し、北朝鮮の長距離ロケット発射に対する韓米日の対応措置に関し
「わが革命武力は高度の戦闘準備態勢を整えており、敵対勢力がわれわれの平
和的な衛星に対するいささかの『迎撃』の動きでも見せようならば、直ちに正
義の報復打撃を加える」と述べた。
特に日本政府の対応方針を集中非難した。「日本が分別を失い平和的衛星に対
する迎撃行為を敢行するならば、わが人民軍隊は容赦なく、すでに展開されて
いる(日本の)迎撃手段だけでなく重要対象にも断固とした報復の大目玉を食
らわす」と警告した。

続いて米国に対し、被害を負うまいとするならば展開した武力を直ちに撤収さ
せるべきだと促した。韓国に対しては、「米日にへつらい、民族の誇りである
わが衛星の打ち上げを邪魔するまねをすべきでない」と主張した。

参謀部は、宇宙空間を平和的な目的に利用することは誰も干渉することのでき
ない主権国家の合法的な権利で、平和的な衛星打ち上げは国と民族の繁栄と人
類の進歩に向けた正義の事業だと、これまでの主張を繰り返した。

(YONHAP NEWS 2009/4/02)

日本の迎撃は「再侵略」、北朝鮮が軍事対応警告

【ソウル31日聯合ニュース】北朝鮮・朝鮮中央通信は31日、日本が「光明星2号」
を迎撃すれば、これを「再侵略」とみなし「最も威力のある軍事的手段で対応
する」と伝えた。論評を通じ、「日本が冒険的な迎撃に出る場合、われわれの
軍隊はそれを戦犯国日本が第二次世界大戦後約60年ぶりに鳴らす再侵略戦争の
砲声とみなす」と主張した。その上で、「最も威力のある軍事的手段であらゆ
る迎撃手段とその牙城を無慈悲に粉砕してしまうだろう」と警告した。
また、日本が北朝鮮のロケット発射に強硬な姿勢を見せるのは、6カ国協議を
乱し朝鮮半島の非核化を遅らせることで、核武装の野望を合理化することにあ
ると主張した。

(YONHAP NEWS 2009/4/01)

強力な軍事報復を警告=「日本の牙城を無慈悲に粉砕」-北朝鮮

【ソウル31日時事】朝鮮中央通信は31日の論評で、北朝鮮が「人工衛星」と称
して発射の準備を進めている長距離弾道ミサイルを日本が迎撃した場合、北朝
鮮は「再侵略戦争の砲声」とみなし、「最も強力な軍事的手段によってすべて
の迎撃手段とその牙城を無慈悲に粉砕する」と警告した。韓国の聯合ニュース
が伝えた。
論評は、日本が北朝鮮の衛星打ち上げをミサイル開発とみていることについて、
「相互尊重」をうたった2005年9月の6カ国協議共同声明を認めない立場を宣言
し、「6カ国協議のテーブルをひっくり返す行為だ」とけん制した。 

(時事通信 2009/3/31)

韓国PSI参加なら「断固対応」、祖国平和統一委

【ソウル31日聯合ニュース】北朝鮮の対韓国公式窓口、祖国平和統一委員会は
30日、韓国政府が北朝鮮のロケット発射問題を理由に大量破壊兵器の拡散防止
構想(PSI)に参加するならば、それは北朝鮮に対する「宣戦布告」だとし、
「われわれは即時に断固とした対応措置を取ることになると厳粛に宣布する」
と発表した。同日の報道官談話を朝鮮中央通信が伝えた。
談話は、北朝鮮はすでにPSIを「朝鮮半島に戦争の火の雲を呼び込む導火線」
と見ており、決して受け入れられないとの立場を明かしてきていると指摘。韓
国政府がPSI全面参加を検討することは、「われわれの尊厳と自主的権利に対
する乱暴な挑戦」であり「破局に至った北南(南北)関係を完全に壊し、全民
族を核戦争の惨禍に追い込もうという許し難い犯罪行為だ」と非難した。

これに先立ち、外交通商部の文太暎(ムン・テヨン)報道官は23日の定例会見
で、北朝鮮がミサイルを発射すれば朝鮮半島状況に変化があると述べ、これま
では朝鮮半島状況を考慮し、趣旨と目的に共感しつつも一部参加にとどまって
いたPSIについて、全面参加を検討中だと明らかにしている。

(YONHAP NEWS 2009/4/01)


寝言は寝て言え第四弾です。この処、北朝鮮による、香ばしい発言
が続いています。北朝鮮のこの手の恫喝発言は、北朝鮮の「悲鳴」
と考えれば良いのですから、「お願いだから迎撃しないでね。」と
言っていると解釈すれば良いと私は考えています。今回は間を置か
ずに恫喝発言が続いていますが、これは正しく「三詭九叩」の礼を
行っていると捉えるべきです。流石に「東方君子の国」ですね。
金正日が、這い蹲って日本に頭を下げていると考えると、とても痛
快ではないでしょうか。

私は、そう解釈しているのですが、一部では、北朝鮮の恫喝を真に
受けて、もし、日本が「テポドン」を迎撃すると北朝鮮が大量に配
備している「ノドン」で攻撃してくるのではないかと心配されてい
る方がいます。

元々、日本は、燃え尽きて切り離された、ロケットの各段や、弾頭
本体が、日本の領土、領海に落ちる場合のみ、「迎撃」をすると言
っているのですから、撃ち落されたくなければ、打ち上げに成功す
れば良いという事になります。

それに加えて、北朝鮮が「ノドン」で報復した処で、核弾頭を発射
できなければ、大した損害を与える事は出来ないのです。
一部の報道では、北朝鮮が弾頭の小型化に成功したというものもあ
りますが、常識的に考えて、核実験を行う事もなしに、弾頭小型化
が出来る訳もないのです。

また、「ノドン」自体も、射程距離こそ伸びていますが、弾頭搭載
量は1~1.2トンで、弾道ミサイルの元祖であるV-2号と大差があり
ません。

ちなみに、第二次大戦中、ドイツはロンドンに向け1,308基のV-2号
を発射しましたが、その成果は、死者2,754名、負傷者6,523名でし
かありませんでした。ノドンの配備数は150~200基と言われていま
すので、その全てが日本に発射されれば、十分の一程度の損害、即
ち、死者300名、負傷者700名程度の損害が予想されます。大きな数
字ですが、阪神淡路大震災の被害などとは比べ物にならない数字で
しかありません。日本は十分耐える事が出来ます。

その上、もし、日本を攻撃すれば、北朝鮮は米国による攻撃を覚悟
する必要があります。

ご存知の通り、米国は日本との間に安全保障条約を結んでいるので、
日本が攻撃に晒された場合、米国は反撃する義務があります。
(核報復するか、通常兵器によって攻撃するかは北からの攻撃内容
で決まります。)
もし、そうしなければ、米国が世界の各国と結んでいる相互防衛条
約はただの紙切れになってしまい紛争終了後、米国を信頼する国は
なくなります。

良く言われる、中国が、あるいはロシアが、日本を核攻撃した時に、
米国が自国の都市に対する攻撃を甘受しても条約を本当に履行する
のかという疑問は、実は北朝鮮に対しては当てはまりません。北朝
鮮の核ミサイルが多数、米国に到達する可能性は、今の処低いから
です。米国の諸都市は、未だ、北朝鮮の人質になっているとは言え
ないのです。

であれば、米国は、それ程のリスクを犯さなくても、条約上の義務
を履行し、北朝鮮という「ならず者国家」問題を完全に解決する事
が出来ます。その様に考えれば、現時点では、米国はまず確実に条
約上の義務を履行する事が期待でき、北朝鮮は崩壊する事になります。

しかも、その事を、北朝鮮が知っているという事が重要です。金正
日は、ルーマニアのチャウシェスク体制が崩壊した時のビデオを全
労働党幹部に見せたといいます。彼らにとって、体制崩壊は死であ
る事を徹底した訳です。であれば、日本に対し結果的に体制の死を
招く攻撃を行う事などとても出来ないと言う事になります。

北朝鮮の恫喝が「張子の虎」でしかない事が明らかになったと思い
ます。「ノドン」も怖くはありません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年4月2日木曜日

日刊ゲンダイと「逆神」神浦氏はどこまでトンデモだったか!?


“欠陥だらけ”日本のミサイル迎撃システム


来月4日にも発射される北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2」。麻生政
権が初の「ミサイル破壊命令」を出して、マスコミは大騒ぎだ。しかし、騒げ
ば騒ぐほど、国民の血税が防衛費に化ける仕掛けだから冷静になった方がいい。

●「軍事ジャーナリスト」神浦元彰氏に聞いた仰天実情

弾道ミサイルを日本領空で迎撃する――映画のような話だが、結論からいえば、
その事態は「万が一」だし、結局、自衛隊は迎撃ミサイルを撃てない。軍事ジ
ャーナリストの神浦元彰氏が言う。

「北朝鮮は今回のテポドンに自信をもっている。2月2日、イランが人工衛星
打ち上げに成功しましたが、技術はすべて北朝鮮のものでした。だからこそ今
回、北朝鮮は発射期日やロケットの1段目と2段目ブースターの落下予定地点
を事前通告してきた。自信のあらわれです。ミサイルの正体は、北朝鮮が言う
ように試験通信衛星とみていいでしょう。ICレコーダーを入れた球体をミサ
イルの弾頭部に搭載、それが大気圏を突き抜け、地球を回りながら、電波を地
上に発信する。これに成功したら、北朝鮮は“そらみろ、人工衛星打ち上げに
間違いないだろう”と大はしゃぎしますよ」

“成功”されたら、日本の北朝鮮嫌い勢力は形無しだが、万が一、1段目ブー
スター切り離しに失敗したりして、テポドンが日本領空に落下してきた場合も、
「待ってました」とはいかない。

●「命中しない」「撃てない」

「1000キロの上空を飛ぶテポドンに対して、日本の迎撃ミサイルは高度
100キロしか飛ばない。間違って、日本に落下してきた場合だけに迎撃は可
能ですが、発射してもまず命中しない。コースが予測できる場合だけ迎撃は可
能ですが、制御不能になったテポドンを撃ち落とすことは、流れ弾にピストル
を撃つようなものなのです。日本政府はすでに、ミサイル防衛システムに
6400億円もの税金を投入している。命中しなかったら、何を言われるかわ
からない。だから、現場はいろいろと理由をつけて、迎撃ミサイルを撃たない
と思いますよ」(神浦氏)

鴻池官房副長官が「迎撃しても当たりっこない」と発言したのは、予防線とい
うことか。

が、ミサイル防衛に6400億円も血税をつぎ込みながら、役立たずで済むの
か。

「日本政府は、テポドンが失敗しないと踏んでいる。失敗しても、テポドンを
撃った北朝鮮は怖い国とキャンペーンを張ればいいし、さらに問題をミサイル
防衛強化論にスリ替えていくでしょう。実際、防衛省はあと4000億円かけ
て、九州にまで防衛システムを広げようとしています。どっちに転んでも損は
ないという計算ですよ」(神浦氏)

“無用の長物”に血税1兆円! 「フザケるな」ではないか。

そんなことなら、北朝鮮に1兆円差し出して、同盟国にしてしまった方が安上
がりというものだ。

(日刊ゲンダイ2009年3月28日掲載)


日刊ゲンダイは、オトーサンの暇つぶしには、もって来いの話題に
溢れている事が多いのですが、その様な中で、この処、政治外交面
で、トンデモサヨク的な傾向を強めています。馬鹿にして放置して
も良いのでしょうが、大昔に、当時のイエローペーパーの代名詞で
あった米国のハースト系新聞が人種的偏見から日本移民問題を大き
く取り上げ、それが、日米関係の悪化に大きな影響を与え日米戦争
の遠因になった事は、良く知られている事実です。そういう観点か
らすればいくらイエローペーパーであっても反論すべきは反論する
必要があるのかも知れません。

もう一点、元自衛隊員の「逆神」神浦元彰氏についてです。ネット
では、素晴らしい評判を簡単に見つける事が出来ますが、どの程度、
「逆神」ぶりなのか、今回の記事に基づいて少し、確認していきた
いと思います。

まず、使っている単語の問題ですが、試験通信衛星というのは、ど
ういう衛星なんでしょうか。
記事では「ICレコーダーを入れた球体をミサイルの弾頭部に搭載、
それが大気圏を突き抜け、地球を回りながら、電波を地上に発信す
る。」ものを言っている様ですが、通信衛星とは、そういう一方的
な放送をする衛星の事ではありません。一番原始的な通信衛星は、
衛星表面で電波を反射する事で、通常の地上波では届かない場所に
電話を届かせるものです。「北朝鮮のいっている試験通信衛星とは」
とか言った枕詞が欲しかったですね。

次に、これは記者の感想なのでしょうか、「“成功”されたら、日
本の北朝鮮嫌い勢力は形無しだが」と書かれていますが、日本が今
回迎撃態勢を整えているのは、ミサイルが予想の進路を飛ばず、使
用済みの第一段や第二段、あるいは弾頭部が日本に落下する場合に
備えての事です。北朝鮮が衛星打上に成功し、第一段や第二段が予
定の海域に落下するのであれば、当然な事として迎撃は行われない
事になります。

また、北朝鮮嫌いの方の中には、北朝鮮が人工衛星打ち上げに成功
するのを快く思わない方も多いでしょうが、別段「形無し」になら
ないといけない理由はないと思われます。

記事の中にもある通り「イランが人工衛星打ち上げに成功しました
が、技術はすべて北朝鮮のものでした」ので、今回、衛星打上に成
功する可能性は高く、その場合、SM-3が発射されない可能性は
高くなります。

次に、記事は、「万が一、1段目ブースター切り離しに失敗したり
して、テポドンが日本領空に落下してきた場合も、「待ってました」
とはいかない。」と続きます。しかし、これが、その次の神浦氏の
コメントと続かないのです。

神浦氏の発言は、「日本に落下してきた場合だけに迎撃は可能です」
と書かれていますし、「コースが予測できる場合だけ迎撃は可能で
す」と書かれています。現状日本が対処しようとしているのは、正
にこの様な場合に備えての事です。従って、迎撃は可能と解釈すべ
きです。制御不能になったテポドンがどこに落下するのかは予測不
能という意見については、確かに100%予測可能ではないものの、発
射からの飛行コースが捉えられている可能性が高いので、未来位置
の予測も可能なケースである確率が高いと考えられます。

但し、神浦氏の次の発言は当を得たものとは言えません。
「日本政府はすでに、ミサイル防衛システムに6400億円もの税
金を投入している。命中しなかったら、何を言われるかわからない。
だから、現場はいろいろと理由をつけて、迎撃ミサイルを撃たない
と思いますよ」

過去のエントリーにも書きましたが、MDの実験結果は成功率は8
割を超えています。同時に二発発射した場合の成功率は96%に達し
ます。さらに、今回は得がたい実戦訓練の機会であり、MDに投下
した巨額の支出を正当化する絶好の機会なのですから、その得がた
い機会を防衛省が見逃す訳もないのです。

なお、迎撃高度に関する問題ですが、神浦さんは、人工衛星に関し
て詳しいかどうか判りませんが、高度1000キロというのは立派な衛
星軌道です。例えば、国際宇宙ステーションは高度400kmの所に建
設されています。従って、もし、高度1000キロのミサイルを撃ち落
すシステムがあれば、それは衛星攻撃兵器としても使用可能な兵器
と言えます。

テポドンが、第一段、第二段を切り離す高度ですが、今年1月に打
ち上げられたH-IIA15号機のケースでは、第一段切り離し高度は310
kmでした。やや高い高度ですが、H-IIAの場合、第一段切り離しの
前に固体ロケットブースターを切り離しますが、この時の高度は、
54kmです。テポドンの第一段、第二段の切り離し高度は、この大体
54kmから310kmの範囲に入るのではないかと思われます。その点で
は、神浦氏の言うテポドンが高度1000kmを飛ぶという根拠が知りた
い処です。あるいは、総連系の極秘情報なのでしょうか?

ちなみにSM-3は、2008年2月に高度240kmの軌道を飛ぶ衛星の撃墜に
成功しています。1000kmは難しくても、100kmの高度しか届かない
という神浦氏の発言はこの部分では誤りと言えます。

なお、今回北朝鮮が打ち上げようとしているのが小型の人工衛星で
あり、通信衛星である事を考えれば、なるべく高度が低い方が電波
を良く捉える事ができます。また、イランが今年2月に打ち上げた
人工衛星の近地点高度は、258km(遠地点高度は364km)ですから、今
回の打ち上げでも、似たような軌道を通ると想像すれば、日本付近
での高度はSM-3の到達範囲内となる可能性はかなり高いと言えます。

神浦さんは、今回のミサイル迎撃について「流れ弾にピストルを撃
つようなもの」と言っています。MD反対派が良く似たような表現
を使いますが、ピストルは、撃った後、弾道を修正する事はありま
せん。しかしMDに使用される迎撃ミサイルは、飛行中、常に相手
の位置と自分の位置を計算し、飛行コースを変化させていきます。
また、陸海空の各種観測装置がそれをバックアップしているのです
から、鉄砲玉の表現は、全く当てはまらないとすら言えます。この
点でも、神浦氏の表現は、誤りであると言えます。

「北朝鮮に1兆円差し出して、同盟国にしてしまった方が安上がり
というものだ。」
記事の最後に、この一番印象深い言葉がありますが、実はこの言葉
は、前段となる神浦氏の言葉と殆ど繋がりがありません。神浦氏の
見解は全てが間違いという訳ではありませんが、それが全て正しい
ものであったとしても、結論として記事の最後の言葉には結びつき
ません。

何故なら、北朝鮮に一兆円差し出した処で、日本に対する不当行為
を停止する保証は全くないからです。恐らく、その保証はお花畑が
咲き乱れているであろう記者の頭の中にしかないのかも知れません。
しかし、良い実例があります。過去10年に亘り、度重なる北の背
信にも係わらず、無償の援助を続けてきた韓国は、それ以前と比べ
安全になったでしょうか。あるいは、北は南に対する態度を変更し
たのでしょうか?事実は、記者のお花畑の中にはなさそうである様
に思えてなりません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年3月31日火曜日

世界は北の核とどの様に共存するか?


作家の大石英司さんのブログを毎日拝見しているのですが、日曜日
のエントリーに非常に興味深い観測が載っていました。

本文は以下のエントリーを参照して頂きたいと思います。
http://eiji.txt-nifty.com/diary/2009/03/post-a543.html

簡単に要約します。
①米国は北朝鮮が悪戯(核開発や弾道弾開発)をする度にご褒美をあ
げている。
②北朝鮮は、核を自主的に放棄する事は絶対にない。但し、米国向
けの外交的ポーズとして放棄のふりをするかも知れない。
③オバマ政権は現状、北朝鮮問題に深入りする余裕はないが、ヒラ
リーが次期大統領戦を睨んで得点稼ぎに動く可能性はある。但し、
本質的な解決にはならない。
④北の問題の核心は、北の持つ核技術、ロケット技術が世界に<安
く>拡散する事。
⑤北の核技術の拡散で最終的な脅威を被るのはイスラエル。
⑥核とロケット技術の拡散を防ぐには、イスラエルに訴えるしかな
い。また、それをアメリカのユダヤ・ロビーに的を絞って運動する
べき。
⑦それによって、米国政府を宥和策から強攻策に転換させるしかない。


核拡散防止条約(NPT)体制は、核保有国の数が増えれば、増える
程、偶発的な核戦争の可能性が高まる事を認識し、既存の核保有国
だけに核保有の特権を与え、それ以外の国の核保有を査察を通じて
厳格に統制するというシステムでした。

現在、NPTで認められた五ヶ国以外に、核を保有していると言わ
れている国は、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の四ヶ国
ですが、北朝鮮を除く三国は元々、NPT条約に加盟していません。
これに対し、北朝鮮は、NPTを批准し、それによってアクセスを
許されたIAEAの技術資料を用いて核開発を行うという悪どい条
約破りをやっています。

しかしながら、現時点では、この悪質な条約破りに対する決定的な
罰則は与えられていません。換言すれば、NPTを破っても核武装
の既成事実を作る事ができれば、多少の経済制裁はあっても軍事制
裁はない事になります。
現在までに判明している限りでは、パキスタンのカーン博士を中心
とした闇の核技術シンジケートがあり、北朝鮮の他、イランやシリ
アもメンバーになっており、相互に技術交換が行われていました。
今回のテポドン発射に際しても昨年、人工衛星を打ち上げたイラン
の技術者が招かれていると言います。

さて、北朝鮮からの輸出品で、国際競争力を持つものは多くありま
せん。中国との間で交易は盛んですが、それも、北朝鮮にハードカ
レンシーがある限りという条件がついています。そういう中で、北
のもつミサイル技術と核技術は数少ない有力な輸出品目と言えます。

北朝鮮のミサイルがイエメンに輸出されている事が、判明していた
様に、従来のカーン博士の闇ルートに加え、北朝鮮からの核技術拡
散が、既に始まっていると考えるのが自然です。中東地域は勿論で
すが、世界の紛争地域では北朝鮮の核技術が受け入れられる素地が
あります。

残念ながら、世界の多くの地域では、日本における様な核兵器アレ
ルギーはありません。
例えば、チチェンやグルジアと言った地域であれば、核兵器が提供
されれば、それを梃子に独立を達成しようという勢力が出てきてお
かしくないのです。

極端な事を言えば、海賊行為で資金を蓄積したソマリアの海賊が、
脅迫のネタに核兵器を使ったり、アルカイダが核兵器を入手し米国
を攻撃する事さえ考えられます。

世界に紛争の種は尽きない訳ですから、北朝鮮の核が拡散した世界
は、より不安で不安定なものになる事は間違いないと言えます。

それでは、その様な世界は、日本にどの様な影響を与えるのでしょ
うか。実は、こういった核兵器の拡散が起こっても、日本に対する
影響は意外に軽微なのです。何故なら、隣接国の殆どが、既に核保
有国であり、日米安保条約によって核抑止が長く機能しているから
です。北朝鮮ですら自国の消滅を覚悟する事なしに、日本を攻撃す
る事は出来ません。

日本は原則として、現状の日米同盟を機軸とした全方位外交を継続
していれば、核武装すら必要としないのではないかと思われるので
す。日本にとっては領土問題すら実は死活的重要性は持っていない
のかも知れません。日本の繁栄は領土に依存してはいません。尖閣
諸島、竹島、北方領土に日本の繁栄は全く依存していない事は、万
人の認める処です。最悪の場合、琉球諸島を放棄しても、日本は平
和と繁栄を維持できるのではないかと考える次第です。そこまで譲
ってしまえば、日本が対象となる国際紛争は殆ど考えられなくなり
ます。(まあ、反日教育と言う別の火種は考えられますが、既に解
決済の数十年前の事実に基づいて国際紛争を起こすのは世界から顰
蹙を持って受け留められるだろうと期待したいですね。)

ここまで考えると北朝鮮の核を見逃す事で、不利益を蒙るのは、皮
肉な事に、国内に多様な民族問題を抱える、ロシアや中国であった
り、世界的なヘゲモニーを維持したい米国であるという事になるの
かも知れません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/





2009年3月30日月曜日

弾道ミサイル防衛部隊 実戦配置開始!


※市ヶ谷の防衛省に配備されたPAC-3。
毎日新聞サイトから転載

北朝鮮ミサイル 迎撃弾部隊が東北へ 首都圏は設置完了

北朝鮮が「人工衛星」とする弾道ミサイルの万一の落下に備えた自衛隊の部隊
展開は29日も続き、航空自衛隊浜松基地(浜松市)の地上配備型迎撃ミサイ
ル(PAC3)の部隊が、秋田、岩手両県の自衛隊施設に向けて出発。首都圏
主要部を防護する部隊も発射装置の設置を完了させ、全国5カ所へのPAC3
の展開準備が進んだ。

29日朝に出発した浜松基地の部隊は、大型トレーラーに搭載された発射機の
ほか、射撃管制装置、レーダー、電源供給などの特殊車両で編成され、主に清
水港(静岡市)から海路で移動。30日にも、陸上自衛隊新屋(あらや)演習
場(秋田県)と同岩手山演習場(岩手県)などに到着するとみられる。

一方、首都圏では、市ケ谷駐屯地(東京都新宿区)内の防衛省本省横のグラウ
ンドに、PAC3弾頭8発を充てん可能な発射装置計2台が北西方向に向けて
設置された。首都圏ではこのほか朝霞(埼玉)、習志野(千葉県)両駐屯地へ
の展開も完了した。

打ち上げ予定のミサイルは3段式とみられ、北朝鮮は、秋田県の西方沖約130
~380キロの日本海に第1段目を落下させ、その後、東北地方北部上空を通
過すると説明している。守備範囲が半径約20キロで配備数も限られるPAC3
は、都市圏人口の比較的多い秋田、盛岡両都市圏とすでに配備済みの首都圏の
防護を優先する。

(毎日新聞 2009/3/30))


先週末は、政府による「破壊措置命令」を受け、海空の「迎撃部隊」
が配置場所に向かいました。パトリオットPAC-3の配置は一見、
陸自の仕事に見えますが、歴史的な経緯から実は空自の仕事です。
広域防空は空自、戦場防空は陸自と言う区分けになっています。

足の長い、SM-3装備の海自イージス艦は、日本海側の第一段落
下位置に配置され、第一段の落下位置がズレて日本領土、領海、領
空内に入った場合に備え、第二段の落下域に対しては、BMD機能
を持たないイージス艦が配置されました。これは、第二段の落下地
点の確認と第三段と弾頭(人工衛星)の軌道確認用の配置であると思
われます。

これに対し、PAC3は首都圏の三ヶ所に加え、テポドンの予想飛
行コースに当たる東北地方の秋田、岩手両県に配置されています。

SM-3、PAC3の部隊配置については以下のURLを参照して下さい。
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/rireki/2009/03/27siryou3.pdf

一応、北朝鮮の事前予告に従って配置するものの、首都圏の守りも
怠らないという体制ですが、今後、SM-3装備のイージス艦が更
に増えれば、(今年度、来年度に各一隻の追加が予定されています)
首都圏へ飛来しそうなコースについてもSM-3でカバーされる様
になるかも知れません。

在日米軍もSM-3対応のイージス艦5隻を日本海と太平洋に配置
している他、車力、三沢でも、Xバンドレーダーを稼動させている
筈ですし、万が一の場合に備え、アラスカや、ハワイでも、相応の
MD即応対応が取られていると思われます。

以前のエントリーでも、述べましたが、今回のテポドン騒ぎは、
MD実戦演習とでも言うべきイベントになってきています。
通常は机上演習であるとか、指揮所演習とか言った実戦部隊を動か
さない演習で済ませる事が多いのですが、なかなか上から下まで実
戦並みの緊張感を持った演習とは行きません。

その点、今回のテポドン発射は、たとえ、人工衛星打ち上げであっ
ても、過去二回打ち上げに失敗しているロケット(ミサイル)が日本
に向かって飛んでくるだけに探知、追跡、迎撃に手抜かりは許され
ません。

正に実戦に限りなく近い演習であり、配備された日米全部隊全体が
一丸となって対処できるかどうかが試される機会となります。
実際に迎撃されるかどうかは、テポドン次第ですが、これ迄、MD
配備に向け傾けられた努力の成果を是非見せて欲しいと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/