2008年12月29日月曜日

民間会社が国際宇宙ステーションへ補給。本当に上手くいくの?






※、CG上はSpaceX社のDragon補給機、CG下は、Orbital Sciences社のCygnus補給機。

NASA、国際宇宙ステーションへの補給業務で米民間2社と正式契約

NASAは23日、スペースシャトルの退役が予定されている2010年以降の国際宇宙
ステーション(ISS)への物資補給業務をSpaceX(Space Exploration 
Technologies)とOrbital Sciencesの米民間2社と正式契約を行ったことを発
表した。

SpaceXは契約費用16億ドル(1440億円)で2016年までに12回の打ち上げを実施、
Orbital Sciencesは同19億ドル(1710億円)で2016年までに8回の打ち上げを
実施する見通し。

打ち上げにはそれぞれ、SpaceXはFalcon 9ロケットとDragon補給機を、Orbital 
SciencesはTaurus IIロケットとCygnus補給機を使用する。Falcon 9/Dragon、
Taurus II/Cygnusともに現在のところまだ開発中で初飛行実験も行われていな
いが、Falcon 9ロケットは2009年第1四半期中に、Taurus IIロケットも2009年
末までに最初の打ち上げ実験が行われる予定で、両社共に技術的な裏付けは確
かなものがあることから、実現はほぼ確実と見越したことが今回の正式契約の
運びとなったようだ。

両社のロケット開発が成功した場合、米国の物資の40~70%は、2社のロケッ
ト/補給機によってISSまで届けられることとなる予定。NASAはISSへの補給業
務を米国内の民間企業に委託することにより、ロシアを中核とするISSの国際
パートナーへの依存度を減らす。
(Technobahn 2008/12/24)

上手くいけば、良いのですが、眉に唾をつけそうになってしまうと
いうのが本音です。

実際に、SpaceX社のFalcon 9ロケットとDragon補給機も、Orbital 
Sciences社のTaurus IIロケットとCygnus補給機も完成予想図があ
るだけで、ロケットの試験機すら打ち上げられていないのです。
両者共に、第一段エンジンの地上燃焼テストレベルはクリアしてい
る様ですが、常識に従えば、完成というレベルには、まだ遠い様に
思われます。

しかし、Falcon 9ロケットは2009年第一四半期中(あと三ヶ月!)に、
また、Taurus IIロケットは、2009年末までに、最初の打ち上げ実
験を行われるとの事。開発に全く問題がなかった場合のみ、このス
ケジュールを守れるのでしょうが、宇宙開発はスケジュール遅延の
連続ですから、今回も同様の事態に至らないか、他人事ながら心配
になってしまいます。

それでも、実績のあるロシアのZenitロケットの一段目のロケット
モータを使用するOrbital Sciences社は、まだ良いのです。
SpaceX社のFalcon9は、野心的というより無謀に近いプロジェクト
である様に思います。Falcon9は、Falconロケットの一段目に使わ
れているMarlinエンジンを9本束ねた構成になっています(H-IIBの
一段目に、LE-7Aを二基束ねるのにJAXAが何年かかったかを思い出
せば、困難さを想像できます。)が、肝心のFalconロケットは、今
まで、4回の発射実験で成功したものは一回だけなのです。それでも
契約したNASAの太っ腹の太さに感服してしまいます。

記事にもある通り、SpaceX社は契約費用16億ドル(1440億円)で、
2016年までに12回の打ち上げを実施し、Orbital Sciences社は、同
19億ドル(1710億円)で、2011年から2016年までに8回の打ち上げ
を実施する見通しです。ISS(国際宇宙ステーション)まで輸送する
荷物の量は、各々、20トンになっていますので、一回当たりの輸
送量は、SpaceX社で、1トン弱、Orbital Sciences社は、1.25
トンになります。(但し、Dragon補給機は一回当たり最大で、2.5
トン、Cygnus補給機は、同じく、2.3トンの輸送容量があります。)

これに比べると、日本のHTVの輸送量は、一回で、最大6トン、欧
州のATVは、一回り大きく最大8トン弱ですから、それに比べると、
一回当たりの輸送量はかなり小さくなります。

ただ、その分一回当たりの打ち上げ費用は、補給機込みで、Falcon9
は、1.3億ドル、Taurus IIは、2.4億ドルで、HTVやATVに比べると、
概ねロケット打ち上げ費用のみで、補給機費用込みの打ち上げ費用
が賄える事になります。但し、打ち上げ重量1トン当たりのコスト
では、HTV一号機の場合、46.7億円(H-IIB打ち上げコスト140億円、
HTV本体140億円)に対し、今回の契約では、SpaceX社が72億円、
Orbital Sciences社が85億円で、それ程安くはありません。最大キ
ャパシーで見積もった場合は、各々この半額になりますが、意外に
HTVも健闘していると言う事でしょうか。

民間事業者が安価な打ち上げ手段を持つ事は、宇宙と一般市民の距
離を縮める事にもなりますので、本当に成功を祈りたい気持ちなの
ですが、スケジュールがあまりに野心的すぎる点、逆に、民間事業
の芽を摘む事にならないか懸念する処です。