2008年12月19日金曜日

泥棒に追い銭。GXロケットを開発し続ける愚。


※CGはGX社サイトからの転載

<宇宙予算>大幅増額 1966億円に

政府は17日、文部科学省が09年度予算編成で要求している中型ロケット
「GX」の開発プロジェクトなど宇宙開発利用予算について、前年度比60億
円(3.1%)の大幅な増額を認める方向で調整に入った。総額は1966億
円となる。来年度を「宇宙基本法元年」と位置付け、宇宙開発を積極的に推進
する姿勢を打ち出すため、例外的な大幅増を認める。

GXロケット関連では、第2段に搭載する液化天然ガス(LNG)エンジン技
術の完成度を高めるプロジェクトの費用として、前年度比51億円増の107
億円が確保される見通しとなった。衛星打ち上げの需要やエンジンテストの成
果をみて、10年度以降の本格的開発に着手するかを判断する。

また、災害監視などに対応する衛星の開発費として10億円(前年度比6億円
増)、地球環境変動観測ミッション(GCOM)を推進する費用として72億
円(26億円増)などを認める。

宇宙基本法は今年8月制定で、内閣に宇宙開発戦略本部が設置された。文科省
の宇宙開発利用予算は07年度が対前年度比1.9%増、08年度が同比
1.8%増だった。【加藤隆寛】

(毎日新聞 2008/12/18)

宇宙開発予算が増額になったのは喜ばしい事ですが、GXロケット
開発の増額の部分を除けば、今年度比略同額。その上、「きぼう」関
連の費用の増加が全体予算を圧迫しますから、惑星探査や天文観測
衛星と言った科学技術関連予算はますます厳しくなったというべき
でしょう。

その中でも、GXロケットの開発に、なお、100億円以上を投入す
る理由が良く判りません。
GXロケットは、当初、官民共同で、実績のあるロシア製の第一段
ロケットの在庫を安く購入し、燃料コストの安い新開発の第二段ロ
ケットを組み合わせ、射場も米国に確保する事で、柔軟な打ち上げ
スケジュールと打ち上げコスト低減を目指すと言う良い事ずくめの
ロケット開発で、しかもJAXAの出費は新開発の第二段エンジン
のみという虫の良いプロジェクトでした。

しかしながら、当初簡単に開発できると思われていた天然ガス燃料
エンジンの開発が難航し、つれて開発コストも高騰しました。加え
て、当初は、安く買い叩ける筈だったロシア製第一段エンジンは別
の会社が購入してしまった為、別のロシア製エンジンを積んだアト
ラスロケットを高値で購入しなければならない事になってしまいま
した。この様に当初の目論見は完全に外れ、お題目も雲散霧消して
しまっており、安全保障つまり情報収集衛星打ち上げ用としてしか
使えない、高コストロケットになってしまっています。

少し考えれば判りますが、アトラスロケットの第二段を値段の高い
エンジンに取り替えた上で、アトラスロケットの打ち上げを日頃行
っている射場から発射するのです。しかもアトラスロケットは、コ
スト競争力ではアリアンに適わず、米国政府の調達専用になってい
るロケットなのです。GXが国際的に通用する訳がありません。

GXロケットは20機を製造した段階で一機75億円を予定している
そうですが、現時点で約90~100億円と見られるH-IIAの
打ち上げ費用と比べても、7割~8割のコストがかかる一方で、低
軌道への投入能力は、2トンでしかなく、最少構成でも10トンと
されるH-IIAと比べ20%程度にしかなりません。
これを低軌道への1トン当たりの打ち上げコストで比較すると、実
にH-IIAの4倍に達するのです。

打ち上げるものもないのに、JAXAのロケット屋が天然ガス燃料
ロケットを作ってみたかったばかりに1000億円以上の予算を投入し、
しかも当初の構想のロケットエンジンの開発に失敗し、追加で、更
に、1000億円を国際的にも競争力のないロケットに注ぎ込むのは、
納税者に対する背信行為であるとしか言えません。

情報収集衛星という名の偵察衛星は、日本の安全保障上、必要であ
ると思いますが、何故、GXロケットで打ち上げる必要があるのか?
何故、米国まで、持っていって打ち上げる必要があるのか判りませ
ん。その一方で、H-IIAは、打ち上げる機会が少なすぎて量産
ができず、打ち上げ作業の簡素化合理化が行えずにいます。GXが
偵察衛星打ち上げ専用ロケットになった処で、年間に1機の打ち上
げ機会が得られるとは限りません。つまり、いつまでたっても、量
産ができず、打ち上げ手順に習熟できない、従って高コスト構造か
ら脱却できないというH-IIAの欠点がGXにも全て当てはまる
事になるのです。
安全保障目的だから予算が青天井だと思っているのだとすれば、も
っての他です。宇宙開発も安全保障も巨額の費用がかかる割りに目
に見えるリターンが少ないだけに、予算の効率的な執行義務は高い
と考えるべきなのです。

GXロケットの速やかな開発中止、及び偵察衛星打ち上げのH-IIA
への一本化、それによる打ち上げコストの削減を強く求めます。


2008年12月18日木曜日

海賊退治でインド洋での存在感を競う中印海軍

※写真は、海賊を臨検するカナダ海軍。AFPサイトから転載

中国、ソマリア海域へ艦艇派遣浮上 「責任大国」アピール

【北京=野口東秀】中国がアデン湾やソマリア海域に海軍艦艇を派遣し、船舶
の保護活動に参加する可能性が浮上している。国営新華社通信を含む中国メデ
ィアが17日、大きく報じた。中国の船舶、乗組員に対する海賊の襲撃が拡大
していることもあるが、軍艦派遣は国内世論の高まりに加え、軍が派遣を「海
洋戦略」を進める一歩としてとらえているようだ。

新華社通信は同日、速報で、ソマリアの海賊問題を討議した16日の国連安保
理会合で中国の何亜非外務次官が艦艇派遣を積極的に検討していることを明ら
かにしたことを伝えた。

何次官によると今年、6隻の中国関連の船舶がソマリア海域で海賊に襲撃され、
今も1隻、17人の中国人が釈放されていない。新華社通信によると、17日
にはソマリア沖のアデン湾を航行していた中国交通建設集団総公司所属の船が
海賊の襲撃を受け、中国人乗組員30人と一時連絡がとれなくなった。

中国現代国際関係研究院の郭暁兵副研究員は軍艦派遣について、「責任大国と
して正常な行動だ」と説明。香港のテレビ局の論説委員も「中国の世界に対す
る義務」とまで主張している。

艦艇派遣により、中国が国際社会での存在感を高めようとしているのは間違い
ない。中国紙「環球時報」は、「軍事力で自国の海上利益を守り、同海域での
海上航行とシーレーン(海上交通路)を守れる意志と能力を示す」と軍事的側
面での意義を強調する専門家の意見を紹介している。

米議会の報告書などで、中国軍は西太平洋での制海権を得るための方策を追求
している-と指摘されている。ソマリア沖への艦艇派遣計画は、軍の海洋戦略
の一環でもある。

(産経新聞 2008/12/17)

第二次大戦後、インド洋の制海権を握ったのは英国でした。インド
洋は、香港、シンガポールを中心とした英国東アジア植民地とイン
ドを中心とした南アジア植民地、中東・アフリカ地域の英国植民地
を結ぶ海上交通網の要として海上の大動脈として機能していたと言
えます。しかしながら、これら英国植民地が第二次大戦後、相次い
で独立した事により、英国はインド洋からの撤退を始めます。そし
て、インド洋の制海権も1971年のスエズ以東の英軍撤退によって事
実上放棄されます。

そして、イギリス海軍の撤退によって生じた空隙に入り込んできた
のが、当時躍進著しかった。ソビエト海軍でした。勿論、巨視的に
は米国海軍の制海権と言う上位の傘が被っていたのですが、ベトナ
ムのカムラン湾やイエメン領のソコトラ島に基地を建設するなど着
実にインド洋でのプレゼンスを強化してきたのです。

余談ですが、この時、一部では、日本がインド洋に進出するのでは
ないかとの観測が持ち上がった事があります。インド洋の海上貿易
ルートに対する日本の依存度が極めて大きいので、日本がその安全
を確保しようとするのは自然であると考えられたからです。日本で
も主として左翼系の学者がソ連の意を受けて懸念を表明しましたが、
戦後の日本が安全保障について如何に近視眼に陥っているかについ
ての無理解から生じた誤解でした。当時海上自衛隊には、艦隊補給
艦が僅か一隻(「はまな」後に「さがみ」に交替)しかなく、その後も
その体制が続いた事からも、日本に進出のその様な意図がない事は
明らかでした。

さて、インド洋の制海権が一見、ソ連海軍に握られた様に見えた時、
インド海軍もまた、着実な発展を見せていました。三度に亘る印パ
紛争で、インド海軍がインド洋でパキスタン海軍に優越した事が、
バングラディシュ独立に役立った事は言うまでもありません。これ
によって、印パの力関係は、大きくインドに傾いた状態で固定しま
した。(バングラディシュが独立した結果、パキスタンは領土の四
分の一、人口の二分の一、ハードカレンンシーを獲得するジュート
など重要輸出商品を失った。)これには、インド海軍の貢献も大き
かったのですが、インド海軍が独立以降、英国海軍の中古艦とは言
え常時、空母を運用していた事を忘れてはなりません。また、1980
年代には、ソ連から、原子力潜水艦をチャーターし、世界で五番目
の原潜運用国(その後、チャーターしたC級原潜が老朽化したので
返却し、再度、新鋭原潜のチャーター導入を計画中)となり、イン
ド洋では米ソを除く諸国と比べ優越したプレゼンスを維持する意図
を明確にしています。

更に、インド海軍は、今回のソマリア海賊対策についても積極的に
対応しており、既に海賊船を撃沈したり、また海賊船を捕獲するな
ど活発な動きを見せています。

これに対し、中国海軍もソマリア海賊制圧に向けて動き出した事は、
中国もインド洋でのプレゼンス拡大に積極的である事を示すものと
言えます。実際、中国はミャンマーに軍港を確保し、本国と陸上ル
ートで結ぶ事で、インド洋への直接アクセスルートを整備し、東シ
ナ海、南シナ海方面が海上封鎖されても、大洋へのアクセスができ
る様に構想している様に思われ、その為にもインド洋で一定のプレ
ゼンスを確保する事が必要なのです。

それに加えて、中国としては、ソマリア海賊対策に対応する事で、
今まで、主として活動していた東インド洋からプレゼンスを西イン
ド洋に拡大する事となり、資源地域として勢力の扶植に力を入れて
いるアフリカ大陸諸国に対しても中国のリーチの長さを認識させる
事による効果も狙える事になります。

上記の記事は、一見、自国の商船に害をなすソマリアの海賊を退治
するお話である様に見えるのですが、実は、戦略的なオイルルート
を担うインド洋での制海権やプレゼンスを競う中印両国の角逐がバ
ックグラウンドに見え隠れしている様に思えるのです。

それにしても、日本の国会では、親中を標榜する党派が日本のソマ
リア海賊対策参加に抵抗を示し続けています。これは中国の行動と
一致しない点で、一見奇異に見えますが、実は、日本がこれ以上イ
ンド洋でのプレゼンスを高める事を歓迎しない中国の意思が働いて
いると考えれば、非常に納得しやすい態度であると思えるのです。

2008年12月17日水曜日

5年間お疲れ様!そして、ありがとう!空自C-130輸送隊




※写真は派遣隊のC-130。毎日新聞サイトから転載

空自 イラク撤収開始 献身が生んだ「犠牲ゼロ」

イラクでの任務を終えた航空自衛隊が15日、撤収を始めた。3機のC130
輸送機のうち最初の1機が、日本に向けてクウェートのアリアル・サレム飛行
場を出発。情報収集で、バグダッドの多国籍軍司令部に派遣されていた隊員5
人も帰国した。これまでの国際活動より格段に危険だったイラク派遣では、
C130がロケット弾の標的になりかけたこともある。民主党のイラク特措法
廃止法案は士気に影を落とし、有能なパイロットが自衛隊を去った。1人の犠
牲者も出さずに5年の活動を完遂した裏側で何が起きていたのか。(半沢尚久)
               ◇
米中枢同時テロの発生日と同じ9月11日、町村信孝前官房長官は、唐突に空
自撤収方針を表明した。実は前日の1本の公電がきっかけだった。
《イラク政府は多国籍軍のうち(米英豪など)6カ国を残し、ほかの国は撤収
させる意向だ》
米政府は公電に記し、日本が6カ国に含まれていないことを公表するとも伝え
てきた。主体的判断にこだわる日本政府は待ったをかけ、慌てて撤収方針を表
明したのが真相で、出口戦略のなさを象徴している。

 ■間一髪
空自のC130が攻撃を受け、被害が出たケースはない。だが、隊員が肝を冷
やす場面はあった。C130がバグダッド空港を離陸後、15分遅れで離陸し、
同じルートを飛行した米軍機が対空砲で攻撃されている。同空港の滑走路で要
人を乗せて待機中、C130の上を4発のロケット弾が飛び越えていたことも
弾道計算で判明した。
「非戦闘地域」ではあったが、「治安が悪化した時期には、バグダッド空港へ
の攻撃は月に30件ほどあった」(自衛隊幹部)。クウェートを拠点にイラク
の南部アリ、中部バグダッド、北部アルビルに国連や多国籍軍の人員、物資を
輸送した空自部隊にとって、最も危険度が高かったのは同空港だった。
着陸直前、同空港へのロケット弾攻撃が起き、パイロットが着陸の判断を迷っ
たこともある。「隊員やC130が1発でも撃たれれば撤収論が巻き起こる」
(同)。空自部隊は“完全試合”を求められていた。

 ■高評価
真夏の気温は50度で、エンジン始動前のコックピットは70度にも達した。
とりわけ過酷な任務は、クウェートのアリアル・サレム飛行場からバグダッド
を経由し、アルビルを往復する7時間のフライトだった。その都度、パイロッ
トは3キロやせたという。
「軍法もないのに規律正しい」「C130の稼働率はほぼ100%で、信頼性
は群を抜いている」
空自の働きぶりは多国籍軍からの評価も高かった。飛行の技量や信頼性に加え、
注目されたのが士気の高さ。米軍の輸送機は、9機のうち修理などの影響で稼
働しているのは5機程度だが、空自は徹夜の整備も辞さず、常に全3機が飛行
できる状態を維持したこともその一例といえる。
こうした任務の陰には隊員の献身があった。機長クラスでは派遣回数が5回と
いう隊員がざら。派遣されている間に親が亡くなり、最期に立ち会えなかった
隊員も16人にのぼった。

 ■揺らぎ
「隊員の士気にボディーブローのように効いた」。2度の派遣経験のある空自
幹部がそう指摘するのは、昨年10月のイラク特措法廃止法案提出と、バグダ
ッドへの空輸を違憲とした今年4月の名古屋高裁判決だ。その2つを機に、基
地にデモ隊が押し寄せ、官舎に批判ビラがまかれた。「パパは悪いことをして
いるの?」。妻や子供は疑心暗鬼になり、隊員も揺れた。
実際、廃止法案提出を受け、1人の輸送機パイロットが退職。「自衛隊の任務
は正しくないのかもしれない」。退職願には動揺と戸惑いがつづられていた。
「献身的に支えてくれたご家族に感謝します」。先月、ゲーツ米国防長官から
浜田靖一防衛相に届いたメッセージの一文だが、任務終了決定を受けた麻生太
郎首相談話では、家族へのねぎらいはなかった。「家族へのいたわりを怠り、
自衛官の使命感に頼り切っていると国際任務は破綻(はたん)しかねない」。
防衛省幹部はしみじみと5年を振り返った。
                   ◇
【用語解説】イラク空自派遣
イラク復興支援特別措置法に基づき、空自は平成15年12月に先遣隊を派遣、
翌16年3月から輸送活動を開始した。クウェートを拠点にイラクの首都バグ
ダッドや北部アルビルに国連や多国籍軍の人員、物資を輸送。約210人の隊
員がC130輸送機3機で任務にあたった。空輸実績は821回、輸送物資は
約673トン。政府は撤収理由として国連安保理決議が年末で切れることや、
イラクの安定化傾向を挙げた。

(産経新聞 2008/12/16)


その内、産経新聞から、派遣隊の実録がでる事を期待しています。
対テロ作戦支援やイラク復興支援の為に、陸海空自衛隊が派遣され
陸は陸なりの、海は海なりの苦労があったと思いますが、空は空な
りに言葉に言い表せない苦労があったのではないかと愚考します。

記事にもありますが、自衛隊の高い士気(モラール)は、どの国に派
遣された場合でも、必ず他国の賞賛の的になっていますが、残念な
事に国内では、それを賞賛する声が未だに少ない様に思えてなりま
せん。

それに加えて、違憲判決を出した名古屋高裁の判事の馬鹿さ加減に
はあきれてしまいますが、文民統制の下に派遣された隊員の留守宅
にビラをまいたり、デモ隊を組織して押し寄せるサヨクにも本当に
恥を知れと言いたいと思います。
イラクに派遣された自衛隊員は国会、即ち国民の指示に基づき派遣
され任務に勤しんでいるのであって、自分の意思で行っている訳で
はありません。それが仕事であるから行っているのです。

言葉は悪いですが、自衛隊は道具に過ぎません。文句を付けるので
あれば、直接的な派遣決議を行った国会議員-政治家に行うべきで
しょう。隊員の家族を脅迫するなど持っての他です。

先日の田母神論文や発言を揶揄する反論が未だに続いていますが、
田母神空幕長は道具が道具としての機能を100%発揮しようとし
ても出来ない様に仕向けられている事を繰り返し指摘している訳で
す。それが判っていない議論をする輩があまりに多すぎる様に思い
ます。

そして、自衛隊員の高いモラルにあまりに頼りすぎているのが政治
の問題であり、やるべき事をやらずに済ませる事で、政治問題化を
回避しているのは判っていても、任務終了決定を受けた談話で、家
族へのねぎらいすら行わない最高指揮官に大きな不満を感じる処で
す。

最高指揮官が、適切な礼を行わないのであれば、政治家を通じてで
はありますが、派遣指示を行った一人の国民として、自衛隊派遣隊
員とそのご家族に心からの感謝を表したいと思います。

「任務完了お疲れ様でした。そして本当にありがとうございました。」


2008年12月16日火曜日

イラク人記者が生きているのも米国のお陰であるという皮肉




※写真はロイターからの転載

根深い「反ブッシュ」 靴投げたイラク人記者は「英雄」扱い

【カイロ=村上大介】イラクの首都バグダッドを14日に訪問したブッシュ米
大統領がマリキ・イラク首相との共同記者会見中に、イラク人のテレビ記者か
ら靴を投げつけられ、「イヌ」と侮辱されるハプニングがあった。

英BBC放送の映像などによると、突然立ち上がった男性記者は「イラク人か
らの別れのキスだ。イヌめ」と叫んで最初の靴を投げ、続いて「これは夫を失
った女性や孤児、イラクで命を失ったすべての人たちのためだ」と言って、履
いていた左右の靴を次々と投げつけた。大統領は身をすくめてかわし、男が取
り押さえられた後、「事実関係を述べるなら、靴のサイズは10だった」と冗
談を飛ばした。

14日夜、この映像が流れると、エジプトの民間衛星テレビ局の女性アナウン
サーがこの記者を「英雄」と呼び、衛星テレビ各局には快哉(かいさい)を叫
ぶ視聴者の声が殺到。ブッシュ大統領への反感の根深さを浮き彫りにした。

アラブ世界では、靴で人をたたいたり、投げつけることは最大の侮辱にあたる。
2003年のイラク戦争でバグダッドが陥落した日、倒されたフセイン元大統
領の像を民衆が靴でたたいて歓喜する光景が世界に流れた。

ブッシュ大統領のイラク訪問は戦後4回目で、任期中最後とみられる。バグダ
ッドでは米軍の地位協定に調印し、15日にはアフガニスタンの首都カブール
入りし、カルザイ大統領と会談した。

(産経新聞 2008/12/15)


最初にお断りしておきますが、私は米国によるイラク侵攻に賛成し
ていますので、それを前提にお読み下さい。勿論、北朝鮮やイラン
やシリアと言った独裁強権国家体制にも反対です。

今回事件を起こしたイラク人記者が、スンニ派で、フセイン体制で
の既得権益層であったのなら今回の行為も理解が出来ます。イラク
のスンニ派≒バース党員が宣伝省の中核をなしていましたし、マス
コミを牛耳っていましたので、今も記者として残っている事に不思
議はありません。既得権益を失った人間の恨み辛みの表出と考えれ
ば理解できなくもありません。

しかし、イラクのシーア派もこの件では、喝采をさけんでおり、記
者の釈放を要求している様です。もし、この記者がシーア派であっ
たのなら、天に唾する行為であると言えます。なぜなら、シーア派
がこういう意見表明をする権利はフセイン時代にはありませんでし
た。もし、フセイン時代であれば、今頃彼はこの世の人ではなかっ
た事でしょう。彼が行った行為が世界に放送され、まだ生きており、
且つ、死刑になる事もないと言う事そのものが、米国がイラクで起
こした変革そのものであると言えます。私の価値基準からすれば、
それはイラクにとって明らかにより良い政治体制である断言できます。

しかし、この政治体制も極めて脆弱な基盤の上に成り立っています。
今、イラクが辛うじて内戦の激化を抑えていられるのは、米国が駐
留しているからに他なりません。既に、イラクに大量破壊兵器の開
発能力がなくなっている事が判明しているのですから、米軍はいつ
でも撤退して良いのです。それをしないのは、フセイン独裁政権を
倒した責任があると米国が意識しているからです。

外からの力ではあっても、イラク人の多数派を抑圧していた強権体
制が倒れたのですから、あとは、イラク人に任せるという選択は大
いにありえます。その上で、世界にとって危険な体制が出来上がっ
た時には、外科手術的攻撃を行う事で、体制崩壊に導くのが、米国
にとって正解に近い行動なのではないかと考えます。

バラク・フセイン・オバマの米国は、よりも内向きになり、他国、
とりわけイラクへの介入から撤退する事は、まず確実であると言え
ます。しかし、それが、イラクにとって、ブッシュの米国より、よ
り良い未来であるのかどうか、実は確実ではない処に一番の皮肉が
あるのかも知れません。


2008年12月15日月曜日

海賊対策もできないなら公明党との連立を解消せよ!




「海賊対策先送り」国際協調足かせも 改正新テロ法成立

インド洋での給油活動を1年間延長する改正新テロ対策特別措置法が成立した
ことで、政府は国際社会が一致して取り組むアフガニスタンでの「テロとの戦
い」の一翼に踏みとどまることができた。ただ、インド洋周辺での各国の活動
が「海賊取り締まり」へとシフトする中で、海賊対策への取り組みは十分な議
論もないまま先送りされた。オバマ新大統領の誕生で米国がさらなる貢献を求
めてくることも確実で、政府は難しい対応を迫られそうだ。(赤地真志帆)

海上自衛隊の補給艦は、インド洋でテロリストや武器・麻薬の流入を防ぐ海上
阻止活動(OEF-MIO)に従事する各国艦艇に補給を実施してきた。だが、
海自の補給海域がある東アフリカ・ソマリア沖のアデン湾では1月以降、海賊
被害が激増。米国は8月から海上阻止活動に従事する艦船・航空機を同海域の
パトロールにあてたほか、各国も活動の軸足を海賊対策に移し始めている。

これに対し、成立した改正法は給油対象を海上阻止活動に限定したままで、厳
密には海賊対策任務船への給油は認めていない。自民党では法目的に海賊対策
を加える意見もあったが、政府は任務拡大を嫌う公明党に配慮し改正案に盛り
込まなかった。

10月末には北大西洋条約機構(NATO)が海上阻止活動とは別に7隻の艦
艇をソマリア沖に派遣、国連関係船舶を警護する作戦を開始した。こうした艦
船への給油は改正法では不可能で、国際協調の足かせとなる可能性もある。

改正法の審議では民主党議員から海賊対策で海自護衛艦を派遣すべきとの提案
がなされ、麻生太郎首相も検討を表明した。ただ、その後に民主党が「衆院選
後、正統な政府ができた上での議論」(直嶋正行政調会長)と態度を硬化、中
身は煮詰まらなかった。

日本の商船を護衛するため、海自艦艇をソマリア沖に派遣することは自衛隊法
の海上警備行動発令で可能だが、「公共の秩序維持」を名目とした同命令での
海外派遣は本来の立法趣旨に反するとの批判も強い。政府・与党は海賊対策に
関する一般法や特措法の検討を進めているが、参院で多数を占める民主党が同
調する見通しは立っていない。

一方で、アフガンへの米軍増派を掲げ、来年1月に大統領に就任するオバマ次
期大統領の関心は「海上より地上作戦にある」(日米関係筋)。ブッシュ現政
権下で日本に対し、大型輸送ヘリCH47などの派遣を求めてきた国防総省の
トップにゲーツ国防長官が留任し、地上派遣圧力はさらに強まるとみられる。

(産経新聞 2008/12/12)


ソマリアの海賊が周辺海域で暴威をふるっている事が世界に知られ
てから久しい。現代の商船は、図体だけは大きいものの、運航の自
動化・合理化が進んでいるので、30万重量トンの超大型タンカーで
も、乗組員の数は40名を切るレベルであり、しかも、航海速度は時
速30キロ程度の低速で、一旦、海賊に小型の高速艇から乗り移つら
れると簡単に制圧されてしまう状態となっている。

海軍が存在する理由は、この様な海賊を取り締まる事にあるし、商
船が、軍艦と出会った時に、掲揚している商船旗を下げ挨拶するの
は、海軍が商船を守る為に存在するからに他ならない。

但し、戦後民主教育の行き届いた日本人乗員の乗る日本船は、自衛
艦に対する礼を行わないことで知られているし、日本漁船や遊漁船
は、自衛艦の進路を妨害する非礼を行う事に抵抗は感じておらず、
それが原因で海難事故を起こしても自衛艦側を非難する事しかしな
い事でも知られているが、皮肉にも、日頃の態度がたたってか、自
衛艦側でも、日本船を海賊を守らない事にしたらしい。

皮肉はここまでにして置くとしても、世界の各国が、ソマリア周辺
海域に海軍艦艇を派遣しつつあるにも関わらず、安全な海上交通の
最大の受益者である日本が、猛威を振るう海賊に対し、まったく何
もしないのでは、諸国の軽蔑しか得られないだろう。政府自民党は、
自衛隊の任務拡大を嫌う公明党に配慮しているつもりだろうが、配
慮せねばならないのは日本の非常識を苦々しく感じている国際社会
ではないか?

勿論と面と向かって問えば、日本の国内事情は斟酌していると答え
てくれるのだろうが、汗を流さない日本が国際社会の尊敬を集めら
れる訳がないのである。

特に、事は侵略でも軍事行動でもない警察行動である。出せる能力
があるならば、海保でも良いのだが、距離がありすぎて、海保のロ
ジスティック能力の手に余るのは明らかである。更に、海賊が既に
得た莫大な身代金で武装しているのが判明しているのであれば、海
上自衛隊が出るべきなのは言うまでもない事である。この様な国際
社会に対する当たり前の貢献活動が出来ないのならば、自民党は公
明党との無用な連立を切るべきなのである。