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2010年10月5日火曜日

日本は中国を有人月面着陸に向かわせるべき?

中国人の95%が「月面有人着陸は日本より中国が先」探査衛星打ち上げで自信高揚 

中国は1日の国慶節(建国記念日)に合わせ、月探査衛星「嫦娥2号」を打ち
上げたが、これにより自国の宇宙開発技術に対する中国人の自信がおおいに高
揚したようだ。インターネットを通じたアンケート調査によれば、約95%の
中国人が「中国の有人宇宙船は日本より先に月面着陸できる」と考えているこ
とが明らかになった。

調査を実施したのは、中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時
報が運営するウェブサイト、環球ネット。

調査は打ち上げ当日の1日午後から始まり、4日未明までに約1万7千人から
回答が寄せられた。そのうち、中国の有人宇宙船は日本より先に月面着陸する
と考えている人は約1万6200人にものぼった。

アンケートの設問で、宇宙開発の競争相手として、最先端の技術を持つ米国で
はなく、日本が選ばれたのは、9月7日に尖閣諸島付近で起きた中国漁船衝突
事件以降、中国国民の間で日本へのライバル意識が高まったためとみられる。

中国の有人宇宙船が日本より先に月面着陸する理由としては「中国の宇宙開発
技術はすでに世界のトップレベル」「日本の技術は米国からもらっているので、
いつも最先端なものではない」など、いささか首をかしげざるを得ないような
主張も少なくない。

その一方で、「今の日本は確かに技術面で優れているが、中国には発展の勢い
があるので必ず追い越せる」「これからは日本と軍備競争が始まるので負ける
わけいかない」といった“冷静”な意見もある。

(産経新聞 2010/10/04)


日本も将来の人間型ロボット利用による有人月面探査をその長期宇
宙計画に含んでいます。しかし、その有人月面探査は、米国のコン
ステレーション計画を前提としたもので、自前で有人月ロケットを
打ち上げる事は、全く念頭にありません。その意味で、オバマ政権
がコンステレーション計画を破棄した事で、日本の有人月探査計画
はお蔵入りになったと言って過言ではありません。

米国が有人月探査を放棄した事により、有人月探査の長期計画を持
つ国は中国だけになっています。私は、個人的には、中国に是非、
有人月探査を実施して貰いたいと考えています。また、それ以前に
中国が無人探査を重ね、月周回探査から、月面軟着陸、そしてサン
プルリターンを是非実行して欲しいと思います。その様なステップ
を踏むことで、中国国内でも、宇宙計画の次の目標として有人月探
査への期待が高まり、実際にそれが実現する蓋然性が高くなると思
われるからです。また、中国にとってその国威発揚の効果は非常に
大きいと考えられるからです。

高い効果が望まれる有人月探査は、また、非常に多額の費用を要す
るものになる事が確実です。米国のアポロ計画は極めて合理的な計
画でしたが、当時の値段で100億ドル以上を要しました。現在の貨
幣価値に直せば、その数倍に達すると思われます。これは中国でも
変わりません。他国では、社会保障の要求もあるので有人月探査の
予算捻出は実現が難しいかも知れませんが、中国であれば、社会保
障を抑えても有人月探査を実現してくれるに違いありません。

月探査の実現をする事で、中国は、非常に多くの宇宙開発のノウハ
ウを獲得する事になります。しかし、その殆どは、宇宙開発用の突
端技術として、閉ざされた領域での技術開発となると思われます。

また、その技術を利用したスピンアウトも考えられますが、既に、
米国はアポロ計画を経験しており、中国が新たに保有する事になる
技術やノウハウも西側では既知のものである可能性が高いと思われ
ます。言い換えれば、アポロのスピンアウト技術で有用なものは既
に汎用化、商用化が実現されてしまっていると考えて差し支えない
筈です。

つまり、中国は、有人月探査を行う事で、アポロを追体験する事に
巨額の費用支出する事になりますが、それによって技術的な突破が
発生する可能性はかなり低いと思われます。そうであれば、中国の
月探査計画は日本にとって安全であり、中国にその国力を浪費させ
る事ができる訳で、日本にとって望ましい計画であると言えます。
ついでに言えば、米国がそうであった様に、中国が有人月探査と同
時に、地球上でも、ベトナム戦争の様な泥沼に足を突っ込む様なア
レンジが非常に望ましいと思われるのです。


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2010年10月4日月曜日

中国の軍事力 2010 第二章 (3)


中国の軍事戦略

人民解放軍の理論家達は、情報化の条件下での局地的な戦争で、戦闘を行い勝
利できる時間のかかる軍隊の建設を目標とするドクトリンに基いて改革への枠
組みを開発している。それらは、とりわけ不朽の自由作戦とイラクの自由作戦
を含む合衆国が率いた戦役での軍事的経験、ソ連とロシアの軍事理論、人民解
放軍自身の戦闘経験を踏まえた青写真に基づいた、軍事力の全ての領域を亘る
改革である。

改革のペースと規模は、広範囲で余す所のないものである。しかしながら、人
民解放軍は、近代的な戦闘を経験していないままである。作戦経験の欠如は、
中国の軍事改革の進展についての外部からの評価を難しいものにしている。
それと同様の理由で、中国内部から自身の軍事的能力を評価する事も難しいも
のとなっている。中国の軍人ではない指導者達は、近代的な戦闘の直接的経験
のない司令官達のアドバイスや、近代的な戦場の真実味を欠く「科学的」戦闘
モデルに頼らなくてはならない。

権威ある講話や文書の分析によれば、中国は、軍事力の使用と展開を計画し管
理する為の全体的な原則とガイドラインとして「新時代国家軍事戦略ガイドラ
イン」(新時期国家軍事戦略方針)に、従っている事を示唆されている。

作戦可能な、あるいは、ガイドラインの積極防衛の構成要素は、防衛的な軍事
戦略であり、中国は戦争を仕掛ける事や、侵略戦争を行う事はなく、国家主権
と領土保全の場合のみ戦争に関与すると定めている。

海上戦闘

「積極防衛」の海軍の構成要素は、「沿海積極防衛」と呼ばれている。2008年
の防衛白書は人民解放軍海軍を戦略的任務として記述し、「遠海」での作戦能
力を開発中であるとしている。人民解放軍海軍は三つの任務がある。海を経由
する侵攻に対する抵抗、国家主権の防衛、海上権益の保護の三つがそれである。
海洋作戦に対する人民解放軍海軍のドクトリンは、6つの攻撃と防御戦闘に焦
点をあてている。封鎖、海上交通路対する攻撃、海洋からの陸上攻撃、艦船攻
撃、海上輸送保護、海軍基地防衛の六つである。

胡錦濤主席は、2006年の海軍共産党会議での講話で、中国は「シーパワー」で
あり、「力強い人民の海軍は海洋の権利と利益を擁護する」と主唱した。
他の政治指導者や人民解放軍海軍士官の発言、政府の文書、人民解放軍報道機
関は、中国の経済的政治的な力は、海洋への接近と利用が可能であるかによっ
て左右され、強力な海軍は、海洋への接近を保証する上で求められるとしている。
中国から遠く離れた場所での任務に対する考慮が求められてきているが、海軍
は、台湾をめぐる合衆国軍隊との紛争の可能性を強調しながら第一列島線や第
二列島線の内部における作戦への準備に焦点が当てられている。これは北京が
受け入れ可能な形で台湾問題が解決しない限りは、正しい選択であろうと思わ
れる。

地上戦闘

「積極防衛」の下で、地上軍は、中国の国境を守り、国内の安定を確かなもの
とし、地域レベルの戦略展開を試みる事をその役割としている。地上軍は、割
り当てられた軍区の中で、地点確保戦闘、運動戦闘、都市部戦闘、山岳地戦闘、
沿岸防衛戦や上陸戦を行う静的な防衛軍としての存在から、中国の周辺地域で
戦闘可能な装備を持った、より積極的で大きな運動性を持った攻撃的存在に移
行している最中である。

2008年の防衛白書では、地上軍を地域防御軍から地域間移動な可能な軍隊に変
化してきていると記述している。地上軍の変革は、小さく、モジュール式で、
多機能、空陸共同作戦や遠距離移動が可能で、迅速な攻撃と特殊攻撃が可能な
能力を保有する単位を作り上げる事を目標にしていると述べている。人民解放
軍の地上軍の改革はロシアのドクトリンと合衆国軍隊の戦術にならって作られる。
地上軍は、統合した共同作戦を実行する臨時で、多機能な統合戦術編成の実験
を主導している様に見える。2009年の8月と9月に、各地の軍区から集められた
合計5万人以上の軍隊が、人民解放軍のこの種のものとしては、最初の大規模
機動演習となるKuayue(跨越)2009に参加した。

航空戦闘

人民解放軍空軍は、限定的な領土防衛用の軍隊から、合衆国とロシアの空軍を
モデルにした、沿海での攻撃的防御作戦が可能で、より柔軟で機敏な戦力に変
化している。焦点が当てられている主要な領域には、攻撃、対空対ミサイル防
御、早期警戒と偵察、戦略的機動が含まれている。人民解放軍空軍には、統合
対空戦での指導的な役割が割り当てられている。「統合対空戦」は、接近拒否
や地域利用拒否に関する中国の作戦計画の基礎を形作るものである。人民解放
軍の理論では、攻撃と防御の曖昧さを強調して、統合対空戦は、自ずから戦略
的防衛戦であるが、作戦レベルや戦術レベルでは、敵基地攻撃や敵艦船攻撃が
求められるとしている。

人民解放軍の新しい任務は、人民解放軍空軍の将来に関する議論を導く。即ち
中国の世界的な利益を保護する為には、人民解放軍空軍の遠距離輸送能力と補
給能力の増強が必要であるという全般的な合意が形成されている。中国から遠
隔地に航空戦闘部隊を展開するという要件については、あまり議論が行われて
いない。海軍の場合と同様に、次の10年における空軍の主要な焦点は、台湾と
東アジアの合衆国軍隊に対し、確実な軍事的脅威を齎す事ができ、台湾の独立
を変更し、あるいは北京の条件によって紛争を解決するよう台湾に影響を与え
る事ができる様な能力を建設する事である。

宇宙戦闘

人民解放軍の戦略家は、宇宙を近代的な情報戦闘の中心と見ている。しかし、
人民解放軍のドクトリンは、宇宙での作戦を、それ自体独立した作戦可能な
「戦闘」とは考えていない。寧ろ、宇宙作戦は、全ての戦闘に枢要な構成要素
であるとしている。人民解放軍の軍事理論誌「中国軍事科学」は、「情報化時
代の戦争の焦点は、宇宙に集中する事になる」と述べ「特に、宇宙に基礎を置
く通信、情報収集、航法システムは、多軍種共同戦闘を可能とし、更に調整を
可能とする事で、近代戦争を勝利する為に重要である」としている。

それと同時に、中国は敵の宇宙資産を攻撃する能力を開発しており、宇宙の軍
事化を加速している。人民解放軍の文書は、「敵の偵察、通信衛星を破壊し、
損害を与える」必要性を強調しており、偵察衛星、通信衛星、航法衛星、早期
警戒衛星を初期攻撃の対象とし、それへの攻撃により敵の目と耳を奪う事を推
奨している。合衆国と同盟国の軍事作戦についての人民解放軍の分析は、「衛
星や他のセンサーを破壊または捕獲する事は、敵が戦闘のイニシアティブを取
る能力を奪い、精密誘導兵器がその能力をフルに発揮できなくする事ができる」
と主張している。

統合電子ネットワーク戦闘

中国の軍事関係文書では、戦場での成功を確実とするためには、作戦開始後早
期に電磁気的な優勢を獲得しなければならない点を強調している。
人民解放軍の理論家達は、敵側が戦闘継続と兵力展開に使用する戦場情報シス
テムの利用を中断させる為に、電子戦、コンピュータネットワーク運用、運動
弾による攻撃を意味する統合電子ネットワーク戦闘(网電一体戦)という用語を
作りだした。多軍種共同活動の将来のモデルに関する人民解放軍の文書では、
「統合ネットワーク電子戦」を「多軍種統合共同活動」の基本的な形態の1つ
と認識している。そして、人民解放軍の作戦理論では電磁気的な優位の獲得を
戦場支配の中核として提案している。

人民解放軍の機密保持と偽装

人民解放軍の文書は、戦略的偽装の定義として「相手側を誤認させ、そして、
最小の兵力と資材で、計画的組織的に各種の偽情報を作りだし、自身を戦略的
に有利な位置に置くこと」と定義している。情報操作に加え通常のカモフラー
ジュや隠蔽や否定も、戦略と偽装が中国の政治的手法の中で果たした歴史的経
験と伝統的な役割から有効な策としている。

今日、中国の戦略文化に固有の緊張が発生している。軍事的能力や軍事開発計
画を隠し、ごく一部しか認めない根深い傾向は、中国の勃興する力に対する地
域的、世界的な不安に油を注いでおり、それを維持困難にしてきている。

十年以上の間、中国の指導者は、この不安を「中国脅威論」として、中国に反
対する地域的、世界的な強国の聯合を形成する中国の国際的な立場への深刻な
危険と認識している。それに加え、過剰な機密保持は、透明性と情報の自由な
流れを成功する為の要件とする統合された世界経済での中国の役割と一致させ
る事がますます困難になっている。

非対称戦闘

1991年の湾岸戦争と1999年の同盟軍作戦(NATOのユーゴースラビア空襲の作戦名)
以来、人民解放軍の戦略家達は、新しい予想外の可能性に対する軍事機構や戦
略と戦術の構築の緊急性を強調している。彼らは技術的に優越した敵と対する
に当たって、既存の技術と武器システムで戦場での格差を無くす為の革新的な
戦略や戦術を開発する事も強調している。1999年に解放軍報は「絶対的な優勢
を持つ強力な敵であっても弱点が無い訳ではない。我々の軍事敵準備は、強力
な敵の弱点を利用する為の戦術を見つける事に努力を集中する必要がある。」
と記している。

人民解放軍には米国のアプローチと同様の要求があるにも係わらず、その適用
としての作戦要求が米国のそれとは非常に乖離した領域がいくつもある。その
一例として、強力に防御された空域内の目標を攻撃するに当たって、ステルス
機よりも弾道弾と巡航ミサイルにより多くを期待する事が挙げられる。また、
米国の宇宙での優位を中立化する為に情報収集衛星、通信衛星、航法衛星を攻
撃する一連のシステムやコンピュータネットワークから莫大な量の情報を抽出
するアプローチ、近年の攻撃、防御両面での電子戦の強調、それに、「三つの
戦闘」ドクトリンが挙げられる。

(Department of Defence 2010/08/16)


Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


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2010年9月30日木曜日

中国の月探査機「嫦娥2号」10月1日打ち上げへ

※CGはsorae.jpから転載

中国の月周回衛星・嫦娥2号、10月1日打ち上げか

27日の中国紙、南方日報(電子版)によると、中国の月周回衛星「嫦娥2号」
のプロジェクト関係者は、嫦娥2号が10月1日に打ち上げられる可能性が高
いとの見通しを明らかにした。

10月1日は中国の建国記念日に当たる国慶節で、同日に打ち上げることで国
威発揚の効果を高める狙いがあるとみられる。四川省の西昌衛星発射センター
で行われている嫦娥2号の打ち上げ準備はほぼ整ったという。

中国は2007年10月、初めて月探査を目的とした月周回衛星「嫦娥1号」
を打ち上げた。2号は1号よりも月に近づいて周回し、月面の撮影を行う予定。

(産経新聞 2010/09/27)


三年前に日中は相前後して月探査機を打ち上げました。「かぐや」
と「嫦娥1号」です。

日本の月探査機の方が高度で多彩な調査を行いましたが、残念なが
ら単発で後続の予定はありません。一方、中国は、前回は写真撮影
が中心の比較的簡素な探査に留まりましたが、今回は前回に比べ着
実に進歩した観測を予定しています。また、中国は、2013年に月面
ローバーを「嫦娥3号」に搭載して打ち上げ、月面軟着陸を目指す
事を予定しています。その為、今回の「嫦娥2号」では、より低高
度を周回する事で着陸候補地の詳細な写真撮影や3D写真撮影を行
うと共に、月面に向けて衝突体を発射し、月の土壌も探査する予定
です。

この様に探査機をシリーズ化して計画的に打ち上げる事は、探査機
を開発し打ち上げるノウハウを蓄積する上で極めて有効です。日本
の場合は、極端に言えば科学衛星は、宇宙開発が目的ではなく、科
学者が論文を書くために打ち上げている面があります。その為、継
続的な観察が必要な地球観測衛星や天文台衛星は、シリーズ化され
ているものの、月惑星探査機は、単発ものとなっています。
その僅かな例外が、「はやぶさ」ですが、これも、確たる国家的な方
針がある訳ではなくどこまでシリーズ化できるか疑問なしとしません。

その点、中国は、国策として長期的な探査機打ち上げ計画が策定さ
れており、着実に探査スキルを改善する事が計画されています。
そして、その点で日本にはない継続性と一貫性が見て取れる様に思
われます。
中国に探査機や打ち上げロケットが日本に比べ安価であるという利
点があるのは勿論ですが、それ以前に宇宙政策レベルでも日本に比
べ遥かに合理的に宇宙開発を進めているように思われてなりません。


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2010年9月29日水曜日

今回の事件からどの様な「教訓を日本はくみ取るべき」なのか

「日本は教訓くみ取るべき」中国・人民日報論評

27日付の中国共産党機関紙「人民日報」は、沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚
島)沖の日本領海内での中国漁船衝突事件について、「日本政府は事件を通し
て教訓をくみ取るべきだ」とする論評記事を掲載し、日本国内で中国脅威論が
一段と高まることをけん制した。

記事は、「日本の一部政治勢力が事件を契機として勢力拡大を狙い、策略を練
ろうとしている」と分析。「(中国脅威論をあおる)政治勢力に対中政策を主
導させてはならない。中日関係の悪化を利用する言動を放置すべきではない」
と主張した。

また、「日本の発展と繁栄は中国と切り離すことはできない。中国と対抗し続
けるなら、その代償に日本は耐えられない」と論じ、対中経済依存が進む日本
に警告した。

(読売新聞 2010/09/27)


日本政府が汲み取るべき教訓

日本側が釣魚島海域で違法に中国漁船を拿捕し、乗組員を拘束したことで、中
日関係の良好な発展基調は深刻に破壊された。事件発生以来の日本側の一部言
動は、日本国内に厳然として存在する一部政治勢力の、事態に乗じて力を振る
い、ある種の目的を達成するために騒ぎを大きくしようとする企みを反映して
いた。我々はこれを存分に暴露しなければならない。

この「企み」には2つの「みみっちい計算」があった。1つは、観念論的な「現
実に背を向けた政策」を講じ、日本の国内法によって事件を処理することで、
いわゆる「裁判の前例」を作り、中国に「既成事実」の受け入れを迫ること。
もう1つは、中国との対立激化を利用して、いわゆる「中国脅威論」を誇張し、
さらに勢いに乗じて「米軍抑止力論」によって普天間飛行場移設問題の解決と
日米同盟の強化を推し進め、防衛戦略と軍事力の配備を調整すること。特に中
国を標的にした南西諸島の防衛強化だ。

中国政府が当初から日本側に、誤った情勢判断をするなと明確に戒告してきた
にも関わらず、日本の一部勢力は過ちを押し通して非を悟らず、独断専行を続
けた。最後になってようやく、彼らはこのような「取らぬ狸の皮算用」が上手
くいかぬことに気がついた。第1に、中国は当初から彼らの「みみっちい計算」
を看破していた。主権、統一、領土保全に関わる問題において中国の立場は断
固たるもので、決して譲歩も妥協もしない。第2に、現在中日は深いレベルの
協力関係にある。日本の発展や繁栄は中国の発展や繁栄と切り離せず、中国と
力比べを続ける事による代償に日本は耐えられない。第3に、米側は日本側に
「強心剤」や「安心薬」を度々与えてはいるものの、自国と中国との関係にも
配慮しなければならない。日本は重大な時期に米国を頼りにできるのかどうか、
十分な自信がないのだ。

歴史上、日本が「対外事件」を利用して騒ぎを起こした先例は決して少なくな
い。その目的は2つしかない。「外を以て内を補う」と「外を以て外を補う」だ。

「外を以て内を補う」例には、菅直人と小沢一郎が選挙演説で共に釣魚島に言
及し、中国を挑発する発言をして、国内の民意を煽動し、丸め込んだ事が挙げ
られる。これがいわゆる「選挙政治」だ。また、2009年に当時民主党副代表の
前原誠司が衆議院で時の首相麻生に「尖閣諸島(注:我々の釣魚島およびその
附属島嶼を指す)に第三国が侵入した場合、日本はどう対応するか」と計算高
く質問し、麻生から「尖閣諸島には日米安保条約が適用される」との発言を引
き出した事も挙げられる。これがいわゆる「議会闘争」だ。

「外を以て外を補う」典型的な例には、今回の事件における右翼保守派と若手
戦略派を中心とする日本の一部勢力による一連の言動が挙げられる。彼らの意
図は、これを機に外交・安全保障政策の調整と突破を達成することにあった。
こうしたやり方の結果、日本の民族主義感情が極端に煽動され、中日両国民の
民意と世論の雰囲気が悪化し、釣魚島問題は一層複雑化した。

今回の事件について日本メディアは、菅直人首相および重要閣僚には外交事件
の処理経験が不足しており、事態を十分に重視しなかった上、場当たり主義の
「近視眼的」対応をとったとの見方で一致している。民主党内の重要議員から
も同様の発言が上がっている。樽床伸二前国対委員長は25日の演説で、現内閣
のやり方については議論が必要だとし、中国漁船を拿捕し、船員を拘束したこ
と自体が「間違っていた」と指摘した。

日本政府は今回の事件から教訓を汲み取るべきだ。一部政治勢力が常に対中政
策を操り、主導することを許してはならない。中日関係を悪化させる言論や行
動を放置または利用し、いわゆる民意を丸め込むことはさらにしてはならない。
このような「みみっちい計算」を続けた場合、最後に壁にぶつかるのも自分な
のだ。(編集NA)

(人民網日本語版 2010/09/27)


一般的な日本人には、多かれ少なかれ中国に対する贖罪意識があり
中国に対しては一歩引き気味の態度を取る事が多いのですが、これ
は戦後のマスコミの偏向報道と日教組と左翼官僚による偏向教育に
よるものであると言えます。勿論、戦前国策を誤らせた一部日本軍
の暴走という要素も大きいのですが、何故、当時の日本国民の間に
「暴支膺懲」のスローガンに対する、一定の支持と理解があったか
を考える必要があります。

つまり、中国は満州事変から日華事変に至る過程で、中国は日本と
の関係で条約上の日本の権利を暴力的に侵害した事が多々あるのです。
つまり、当時列強や日本が中国に持っていた権益に対し、その改定
を交渉によって行う事なく、暴力や軍事力を使って主張をしていた
のが中国なのです。今回の事件で、そういう中国の戦前と変わらな
い姿(北朝鮮の態度にも共通の姿)が多くの日本人の前に赤裸々にな
ったと言えるでしょう。

上に揚げた記事は、読売新聞が報じた中国人民網日本語版の記事で
すが、読売新聞が報道している内容より遥かに居丈高で偏向した主
張である事が判ります。昔、中ソ対立が華やかだった頃、中国がこ
の様な言葉使いでソ連を誹謗中傷していた事を思い出しますし、同
時に、日本に対しても同様の汚い言葉使いで自己主張を行っていた
事を思い出しました。当時、その様な中国の主張に喝采していたの
が、菅総理や仙石官房長官がそうであった様な過激派学生であり、
多くの日本人は、その一方的な主張に辟易していました。

日中国交回復以降、日本は満腔の好意を中国に寄せました。誠に鷹
揚に資本と技術を経済援助やODAの名の下に中国に注ぎ込みました。
しかし、中国はそれに対し、悪意と反日教育で答えたのです。
百年余り前、福沢諭吉は、「脱亜論」の中で東亜の悪しき隣人とは、
距離を置くべきである事を主張し、寧ろ、日本が目指すべき公正と
正義は欧米諸国にある事を論じました。勿論、欧米諸国が無垢であ
る訳もありませんが、中国と比較すれば、まだしも正論と常識とル
ールが通用する土壌が存在する事は事実です。

我々は、それから百年を経た現代においても福沢と同じ感慨を抱か
ざるを得ず、中華民族の性格が百年変わっていないことを改めて認
識せざるを得ず、そういう隣人とは関わり合いを低くせざるを得な
いというのが今回の事件の教訓と思わざるを得ないのです。


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2010年9月16日木曜日

中国網は日本の軍事関連技術をこう評価した

中日の陸海空技術の比較

現在、一部のいわゆる軍事マニアはやはり10年前の視線で中国を見ており、と
くに日本との比較では自らを低く評価しているが、実際、中国と日本の軍事技
術面での格差は、想像するほどではない。人民網軍事コラムが伝えた。

一、航空宇宙技術

中日はいずれもすでに自身の第3世代戦闘機を生産している。日本はF-2、中
国はJ10とJ11。研究・開発と模造を通して、中国は第3世代戦闘機の設計・生
産技術を完全に掌握すると同時に、第4世代戦闘機の研究・製造能力をも備え
た。一方、日本はある技術で世界の先進的地位にあるものの、第3世代戦闘機
の設計・生産技術はまだ完全には掌握しておらず、日本はいかなる新しい戦闘
機であれ、やはり米国に依存しなければならない。次に、具体的な技術上の分
析を通して、中日両国の格差は一体どれほどなのか見ることにする。

第1は、空気動力の設計だ。中国はすでに先進戦闘機の空気動力設計の問題は
基本的に解決している。数多くの型を設計することで、経験を備えた航空エン
ジニアと設計士を育成。日本はエンジニアリングの設計では経験不足であり、
F-2の外型の設計はF-16を模倣しており、同時に大量の設計は米国に依存して
いる。従って、現在のところ日本はまだ、先進空気動力外型では独立した設計
能力は有していない。

第2は、構造と素材だ。両国のレベルは大体相当する。設計ではすでに既成の
設計ソフトがあり、コンピューターを使用した機体の3次元デジタル設計で、
中国はすでに日本を先行している。日本の複合素材技術は比較的先進的であり、
機翼複合素材一体高温固体化技術で世界をリードしている。だが、この技術は
まだ成熟しておらず、製造された翼に亀裂が生じたことがある。中国はロシア
の最先端のチタン合金加工技術を導入、同時に中国の複合素材技術もすでに比
較的成熟しており、先進戦闘機の素材技術は完全に掌握していると言える。

第3は、電子システムだ。日本の航空機搭載のアクティブ・フェイズド・アレイ・
レーダー(APAR)は世界の先端を行く。中国はこの分野で差を付けられている
が、一体化電子システムの設計と整合性の面では差はない。中国はデジタル電
送技術を掌握しているが、日本はまだ掌握していない。

第4は、動力システムだ。中国は先進的なターボファンエンジンを自力で設計・
製造できるが、日本は相応する能力は持たない。

上述の分析から、中国の優位性は完ぺきな航空工業システムを備え、システム
の整合能力も強いということが分かる。一方、日本は基礎工業力が厚く、とく
に電子工業の基礎が厚いことで航空電子の面で優位性を持つ。だが、日本のソ
フト設計技術は中国より遅れており、航空機を自力開発する能力はない。

航空技術上、日本のH2ロケットは中国が現在使用している長征ロケットより先
進的である。だが、中国はロケットの信頼性と宇宙観測・制御、有人飛行で日
本をリードしている。日本は衛星技術で優位性があり、この面で日本の電子工
業の基礎は厚く、一方、中国は西側の技術的制限を受けている。だが、中国の
衛星の応用は日本よりずっと幅広い。総体的に言えば、中国は日本をややリー
ドしている。中国は新世代のロケットに成功すれば、全面的に日本を追い抜こ
すことになるだろう。

二、海上面の技術

日本の最先端の金剛級を中国の170艦と比較してみる。(注:170艦とは旅洋
(LU-YANG)II型を指す)確かな情報によると、170艦が使用するのは航空機搭載
のAPAR。一方、金剛級が使用するのは米国のパッシブ・フェイズド・アレイ・
レーダー(PPAR)だ。ミサイル技術上、170艦は自動主導防空ミサイルを使用し
ており、金剛級は半主動制御ミサイルである。対艦ミサイルの格差はより顕著
であり、170艦はすでに世界の先端レベルに達している。中国は現在、世界先
進レベルの戦艦を完全に自力で製造することができる。一方、日本は作戦シス
テムや艦船用主要機体の面でまだ米国に依存しなければならない。もちろん、
金剛級の優位性はミサイル搭載数で170艦を遥かに上回っていることであり、
対潜能力でも中国より優れている。

潜水艦では、中国は専用のディーゼルエンジンはまだ輸入に頼らなければなら
ない。国産ディーゼルエンジンは騒音が大きく、比較効率も低い。日本の技術
は進んでいるが、中国が使用するドイツ製ディーゼルエンジンに比べ技術上の
優位性はない。中国はAIP技術で世界をリードしており、燃料電池の技術でも
世界の先端にある。一方、日本はこの技術は有していない。潜水艦の素材で中
国はすでに世界の先進レベルにあり、騒音制御でも中国は日本に遅れておらず、
ただソナー(水中音波探知器)でやや差がある。フランスやロシアの技術を導
入して以降、この差はやや縮小した。

このほか、中国は2世代の原子力潜水艦を有しているが、日本はない。

以上の分析から、中国は海軍の技術ですでに日本を追い越したようだ。だが過
去、長期にわたり遅れを取り、また債務が過多であることから、中国海軍はそ
の実力でまだ日本に追いついてはいない。中日の海上面での技術の格差は同様
に、中国は完ぺきかつ全面的な軍事工業システムを備え、軍事装備の設計・製
造を自力で完成させることができる。一方、日本は基礎工業力が厚く、ディー
ゼルエンジンやその他の電子技術面でリードしている。だが、米国の一部の技
術サポートに依存しなければ、近代的な軍艦を完ぺきに製造することはできず、
海上での戦闘力をつけることはできない。

三、陸上面の装備・技術

主戦用タンクを例にすれば、大砲や装甲技術で中国は先端を行く。日本は高圧
力大砲を生産する技術は有しておらず、ドイツが生産を許可するタンク砲を導
入するしかない。だが中国はこの面で完全に自主技術を有しており、それはド
イツの技術に匹敵する。日本の優位性は動力システムにあるものの、仮に中国
が1100キロワットエンジンで難関を突破した場合、この分野でも日本に追いつ
くことになる。

四、電子情報技術

日本は世界で電子技術の最も発達した国であり、その基礎工業力は極めて厚い。
これが軍事用の先進的な電子技術をもたらした。だが、日本のハードウエアは
先進的であっても、ソフトウエアは遅れており、かなりの程度、米国に依存し
ている。日本の電子エンジニアのレベルは一般的である。

中国の電子工業の基礎は遅れており、一部の軍用電子デバイスは生産できない、
または低品質、または価格が高すぎることが、軍事電子技術の発展に影響を及
ぼしており、同時に陸海空軍と衛星の電子システムのレベルにも影響を与えて
いる。だが、この数年の間にこうした状況は根本的に変わった。

(中国網日本語版(チャイナネット) 2010/09/14)


上の記事は中国網日本語版の記事です。中国網(チャイナネット)は、
中華人民共和国・国務院直属の中国外文出版発行事業局が管理・運
営するニュースサイトという事になっています。中国では、マスコ
ミは共産党の口舌という事になっていますので、中国国務院は、人
民に、日本の軍事技術について、この様に知って欲しいと思ってい
る事になります。

中国が本当に日本の軍事関連技術をこう評価しているのであれば、
我々は、日本人として少し胸を撫で下ろせるのかも知れません。技
術を正確に評価できる敵とそうでない敵どちらが好ましいかと言え
ば、後者の方が組みやすいと言えるからです。

ただ、中国の軍事専門家に技術評価ができない訳はなく、今回の記
事は、この処、尖閣列島での中国漁船拿捕問題で反日姿勢を強めて
いる中国の世論に迎合した中国政府の「日本恐れるに足らず」キャ
ンペーンの一環と評価すべきではないかと思われます。

評価軸も、自国が導入した外国製兵器については中国の技術として
いるのに対し、日本がライセンス生産や輸入している技術について
は、日本の技術としては評価しておらず、その点で典型的なダブル
スタンダードとなっています。

従って、一部で、首肯できる項目もありますが、全体としては、意
味のある技術比較になっていない様に思われます。
ただ、中国の人民一般には、今後、日本の軍事関連技術を軽視する
見方が広がると考えるべきであると思われます。


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2010年9月2日木曜日

中国の軍事力 2010 第二章 (2)


将来戦略に関する議論

国務委員戴秉国は、2009年7月に、中国の「中心的な利益」を、国家の安全と
国家主権、領土の保全という基本的な仕組みを保護し、安定した経済的、社会
的な発展を継続する事であると定義している。

中国の現在の戦略は、自身の経済発展の助けになることを確実とするために外
部の環境を管理することである。この戦略は、北京の外交政策や安全保障政策
の関係者によって共有されているように見える。しかし、中国がこれらのゴー
ルを達成する方法やそれを近隣国や合衆国との紛争なしに実現する方法につい
て、中国の中の意見の違いが、時折、特に学術的な集まりで表面化する。

ある人は、1990年代初期に元最高指導者の鄧小平によって提供された伝統的な
方針を好む。「静かに観察し、位置を守り、静かに対処し、能力を隠し、時節
を待つ、低姿勢を保ち、リーダーシップを決して要求しない。」
この指示は、鄧小平の中国の外交政策と安全保障戦略についての認識を反映し
たものである。そして、中国が地域や国際的な問題に対処することでより活発
で建設的役割を演じさせようとする人々の注意をそらし、その間に、野心を排
除して国内の発展を促進して中心的な国益を補強しなければならないという鄧
の確信を表したものである。

しかし、別のグループは、中国の国力の成長に伴い、この限定的関与手法は、
もはや適切とは言えないと考えている。このグループは、中国が中国の影響力
を強化し、隣人とより遠い場所にいる列強に対し、中国の台頭が彼らの安全保
障に対して不安定化の脅威をもたらさないことを保証するために地域の国家や
合衆国と活発に協力しなければならないと主張する。

その他の人々は、中国は、その国益を確保し、中国の影響力を束縛しようとす
る合衆国による圧力に抗する為に、他の諸国(例えば台湾、日本、韓国や他の
東南アジア諸国)に対して、より強圧的で断定的に振舞うべきであると信じて
いる。

人民解放軍は伝統的な要請である中国を攻撃から守り、台湾の独立を阻止し、
紛争解決を北京の望む方針で行う様に影響力を行使すること、そして、南シナ
海やその他の場所での領土紛争では中国の主張を防衛すると言う役割を担って
きたが、人民解放軍が、中国の国益を守り発展させる為に、どの様な新しい能
力を発展させるかについて、中国の軍や民間の理論家の間での活発な議論があ
る。幾人かの上級士官や民間の理論家は、人民解放軍の軍事力の展開能力の増
強を主張する。同時に、他のグループは、国際平和維持や人道支援や、災害救
援や海上交通路保護と言った分野の能力をゆっくりと増強する事を主張してい
る。中国の現在の防衛政策と兵力計画に、これらの考慮点がどの様に反映され
ているかは不明である。しかし、これらの考慮点が防衛計画についての中国の
考えに影響を及ぼすであろうことは、ますます明らかになっている。

新しい歴史的任務

中国の指導者は、2004年に軍事部門の基礎的な任務を確立した。公式には、「
新世紀の新段階に於ける軍事部門の歴史的使命」(新世紀新階段我軍歴史使命)
いう表題がつけられている。この新歴史的使命は、主として国際安全保障環境
や国家安全保障の拡張的定義についての中国指導者による評価や調整に焦点が
当てられている。これらの任務は、2007年には、中国共産党憲章の修正として
体系化された。

(Department of Defence 2010/08/16)


Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


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2010年8月31日火曜日

中国の軍事力 2010 第二章 (1)


第二章 中国の戦略の理解

概観


中国は、米国における「国家安全保障戦略、国家防衛戦略、国家軍事戦略」に
相当するものを出版しておらず、その代わりに白書や、講話、記事を、政策や
戦略の議論を交換する主要なメカニズムにしている。中国の軍事、安全保障問
題に関する透明性は、二年置きの防衛白書の発行や、2009年の国防省公式Web
サイトの設置によりここ数年改善している。一番最近の防衛白書(2008)は、中
国の防衛戦略を国家安全保障と統一に対する支持、及び、国家発展の利益を以
下によって確保すると要約している。

●オールラウンドな調整により中国の国防と軍隊の発展を維持する事を達成する。
●主要な測定基準として情報化を用いる事で、軍隊の効率を拡張する。
●積極防衛の為の軍事戦略を実行する。
●自衛の為の核戦略を推進する。
●中国の平和的発展の助けとなる安全保障環境を促進する。

しかしながら、中国は軍事的な投資、戦略や軍事投資の目的がわかる様な選択
の理由、開発中の軍事能力について、より多くを開示する必要がある。
人民解放軍の戦略的な見方の研究は、不確かなままであり、外部の観察者にと
って、中国の軍事建設の基礎となっている公式の戦略、指導者の武力使用に対
する考え方、人民解放軍の編成やドクトリンを形作る非常事態計画、平時と非
常時における戦略的表明と実際の政策決定、等々については、直接的な洞察は
殆どない。しかしながら、伝統、歴史的パターン、公式見解、報告書類、特定
の軍事的側面の強調、主導的な外交努力によって中国の戦略についていくつか
の一般化を行う事は可能である。

中国の戦略的な優先順位

中国の指導者は、いくつかの優先順位の組み合わせに基づいて国家的な意思決
定を行っている様に見える。その優先順位とは、
・中国共産党による支配の継続
・経済成長と発展の継続
・国内の政治的安定の維持
・中国の主権と領土統一の防衛
・強国としての中国の国際的な地位の確保
等である。中国の戦略は、その時々にこれらの優先順位の間でバランスを取る
事である。中国の指導者は、21世紀の最初の10年を「戦略的な機会の窓」と表
現しているが、この意味は、地域あるいは国際的な条件が、概ね、地域的な優
越性や国際的な影響力の面での中国の台頭に好意的であり、この機会の窓を出
来るだけ長期にする事を探っているのである。

中国の指導者は、1978年から始まった中国の全体的な戦略と政策である「改革
と開放」を継続し、支援する事を約束している。しかし、中国の上級指導者達
の声明や論評を見ると、この二つの中核的認識は、いくつかの矛盾と挑戦を生
んでいる様に思われる。

その第一は、改革は、中国の経済的、政治的、軍事的な急速な発展を実現する
が、政治的安定に対しては大きな挑戦となる。
第二に、中国の改革は、もはや孤立しておらず、だんだんと国際的な安全保障
環境に対して影響をあたえる様になっており、また、その逆もある。

この二重の認識は、共産党指導者に、2020年までは、外部との緊張、特に、列
強との関係を管理して、中国の発展に有利な環境を維持する事を結論づけた。

北京の経済力の拡大は、紛争を解決し、地域協力を推進すると同時、部分的に
は、その国益に対する意欲を示す事で、より活発な対外的な姿勢を導く事になる。

中国の2008年の防衛白書は、それ以前の立場から大きく異なり、「中国は、国
際的なシステムと将来に対する重要なメンバーとなっており、中国の運命は、
国際的な共同体により密接に関連する様になっている。他の世界から孤立して
は中国の発展はなく、中国なしでは、世界が繁栄と安定を享受する事もない」
と記している。

それにも関わらず、中国には、指導者さえもコントロールできない力がある。
それらは、内向きで、徐々に強まっており、中国を平和的な路線から引き離す
力がある。

●ナショナリズム
共産党指導者は、中国の経済的な達成と国際的な存在感の増加を基礎として、
党の正当性を、引き続きナショナリズムに頼っている。しかしながら、この手
法は危険性を伴っている。中国の指導者は、世論を操作し、共産党に対する批
判をそらす為に愛国心を煽っているが、これらの力は一度始まれば、制御が困
難で、容易に国に背を向ける事に気がついている。

●経済
経済発展の継続は、党の一般的な正当性の基礎となり、軍事力の裏づけになっ
ている。しかし、資源に対する要求の予期しない増加や、国際的な資源不足や
価格ショック、資源の入手への制約は中国の戦略的な方向性や行動に影響を与
え指導者に対し、軍事力を含む、資源配分の優先順位付けの再評価を行わせる
かも知れない。

●国内的な政治的圧力
体制維持や中国共産党支配の維持の必要は、中国の指導者の戦略的な方向性を
形作り、彼らの多くの選択を導く。共産党は政府の責任を改善したり、透明性
や説明責任と言った体制を弱める事になる長期的な人民の要求に直面する事に
なる。

●人口学的な圧力
人口学的な圧力は将来増加する。そして、高い成長率を支える中国の能力への
構造的な制約となる。

●環境
中国の経済発展は、大きな環境的な犠牲の下に達成された。そして、中国の指
導者は、この問題が経済発展、公衆衛生、社会的安定性と中国国際的イメージ
を脅かすことによって体制の正当性を徐々にむしばむことを気にかけている。

●海峡をまたぐ政治変動
2008年3月に台湾総統に馬英九が選出され、緊張が緩和したにもかかわらず、
台湾との軍事紛争の可能性と米国の軍事介入は、人民解放軍の最も緊急の長期
的関心事のままである。海峡を挟む潜在的な紛争は、中国の指導者が、台湾の
永久的な喪失が深刻な体制の政治的合法性と政治的地位を徐々にむしばむと判
断する事で、人民解放軍の近代化を推進する誘因となる。

●地域的な関心
世界的な「発火点」(例えば、北朝鮮、南沙群島、尖閣諸島、アフガニスタン、
パキスタン)に中国が近接しており、それへの介入によって、地域的な不安定が、
中国の国境全体に広がり、経済的な発展と国内の安定が損なわれる事を防ぎた
いと中国の指導者は考えている。外国の資源を入手し、輸送する中国の能力に
対する脅威や朝鮮半島の混乱といった地域的変動は、中国の軍事力の発展と配
備パターンの変動につながる。そして、近隣の国々もその影響を受ける事になる。

(Department of Defence 2010/08/16)

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2010年8月24日火曜日

中国の軍事力 2010 第一章要約(2)




人民解放軍のドクトリンの発展

2009年、人民解放軍は引き続き、より現実的でハイテクな条件下での戦争に対
する訓練と同様に非戦争任務を強調した最近のドクトリンの発展にそった訓練
を強調している。情報武装した各軍種の共同訓練を達成しようとする人民解放
軍の努力は、2008年の防衛白書で強調されたものであり、改正された軍事訓練
評価の枠組みを実現する継続した取り組みとして示されている。この新たな評
価基準は2008年央に出版され、2009年1月1日に人民解放軍全体の標準となった。

軍事能力を拡大する新技術を開発、調達、獲得する中国の努力の発展

中国は外国の技術、軍民両用部材の獲得、及び特定部門に焦点を当てた国内研
究開発によって軍事近代化を推進している。

中国は、大規模で、良く組織された企業、軍事品生産工場、提携された研究所
のネットワークを保有している。また、機密情報と輸出制限技術の収集を容易
にするコンピュータ・ネットワークを運用している。これらの実体は、必ずし
も中国の情報機関や安全保障サービスと常に連携している訳ではない。

中国の軍産複合体を形成する多くの企業や研究所には、軍事と民間、両方の研
究開発機能を持っている。この商業と政府と連携した企業と研究機関のネット
ワークは、しばしば、人民解放軍が、機密技術や軍民両用技術、あるいはそれ
に関する専門家に民間の研究開発の装いの下で接触する事を可能としている。
これらの企業と研究所は、技術会議やシンポジウム、合法的な契約や共同のベ
ンチャー企業、外国企業との提携、特定の共同技術開発の形式でこれを行って
いる。

国家安全保障に関わる核心技術や輸出統制機材、通常の商業ルートや学術ルー
トで獲得できない材料に関しては、中国は、合衆国の法律や輸出管理に違反し
て情報機関や合法活動以外の手段によって獲得している。2008年以降、合衆国
の報道機関は、中国が、技術開発の軍事力の近代化に真に重要と判断した部材
を獲得した方法について幾つかの事例にスポットライトを当てた報道をしてい
る。これらの事例では、合衆国から中国へ、合衆国に在住する個人が違法な技
術移転を起こしたものが主体だが、伝統的なスパイ活動によるものも発生して
いる。

台湾抑止戦力の変化

2009年には、台湾海峡とその周辺では、武力紛争は発生しなかった。また、全
体的な状況は2008年同様安定していた。しかしながら、台湾に対する中国の軍
事力増強と先進兵器の配備は、緊張を緩める事を許さない。

2008年5月に就任以降、馬英九総統は、軍隊を合理化し、プロ化する為のいく
つかの重要で広範囲な改革を実施している。台湾は、いくつかの分野で進歩し
ており、全体的な非常事態対応訓練を改善している。しかしながら、戦力バラ
ンスは引き続き中国本土に優位に傾いている。

中国の宇宙戦、サイバー戦についての能力の変化

宇宙戦、対宇宙戦能力

中国は、情報収集衛星、偵察衛星、調査衛星、航法衛星、通信衛星の編隊を拡
大している。それと併行して、中国には、危機や紛争時に潜在的敵が宇宙空間
に設置した資産(衛星)を使用する事を制限したり妨害する複数のプロジェクト
がある。中国の商業宇宙計画には、非軍事の研究施設があるが、非軍事用の施
設でも軍事用に使用可能な打ち上げや管制能力がある事を示している。

サイバー戦能力

2009年に、合衆国政府が保有しているものを含む、世界中の数多くのコンピュ
ータが、引き続き、中国を発信基地とする侵入攻撃の標的となった。この侵入
攻撃は、情報を取り出そうとするものであったが、その内のいくつかは戦略的
あるいは軍事的な情報だった。これらの侵入攻撃に必要な接近方法やスキルは、
コンピュータネットワークを攻撃する場合に必要とされるものと類似している。
これらの侵入攻撃が人民解放軍や中国政府の他の機関によるものであったり、
支援されたものであるかどうかは判っていない。しかしながら、サイバー戦能
力を開発する事は、権威のある軍事的著作に示された方針と一致している。

中国の海外での軍事的関与

中国の他の国々に対する軍事的関与は、中国が外国との関係改善し、国際的な
イメージを高め、中国の台頭に対する他の国々の懸念を減ずる事による国力の
発展を意図したものである。人民解放軍の活動は、先進的な兵器システムの獲
得やアジア内外での作戦経験の増加、外国の軍事管理訓練、作戦ドクトリン、
訓練方法への参加を通じて、その近代化を促進する事になる。

共同演習

中国の二国間または多国間演習への参加が増大している。人民解放軍は影響力
の拡大とパートナー国や組織との紐帯を強化する事で政治的利益を引き出した。
その様な演習は、テロ対策、機動作戦、補給と言った領域で能力を改善する事
で人民解放軍の近代化に対しても貢献している。人民解放軍は、戦術や命令の
意思決定、先進国の軍隊で使われている機器を観察する事で、実務的な洞察を
得る事が出来る。

平和維持、人道支援、災害救助活動


2002年以降、国連が後押しする平和維持活動への中国の貢献が拡大している。
現在では、全体で22の任務に12,000人が派遣されている中で、2,100人以上の
中国人要員が国連の任務に参加している。中国は、国連安保理常任理事国五ヶ
国の中では平和維持活動に対する最大の貢献国となっている。中国の貢献には、
技術支援、補給、医療部隊、民間警察、監視任務等が含まれている。

中国の軍民の指導者は、人道支援(HA)と災害救助(DR)を地域や世界的なパート
ナー諸国と協力する領域として指定している。

合衆国の関与と安全保障面での協力

軍対軍の紐帯

合衆国と中国の軍と軍との関係は、オバマ大統領と胡主席の合衆国と中国の軍
隊の関係を深め改善し、継続的且つ信頼できる軍軍関係に発展させる為の具体
的な処置を取るというコミットメントにより2009年には改善した。この様な、
指導者レベルでの対話は、国際的安全保障環境と関連する安全保障上の挑戦に
対する共通する見方を創り上げる上での重要な基盤を提供する。

国防総省は、国益の衝突や相違が生じた場合に建設的に討議できる継続的な対
話ルートを構築するよう務め、中国と対話や協議の複数のメカニズムの構築に
努力した。

これらのプラス面の発展にも係わらず、2010年1月にオバマ政権が台湾へ防御
兵器を売却する意図を発表した後、北京は、軍と軍の関係を中断する事を選んだ。

非軍事的な安全保障面での紐帯

合衆国と中国の戦略経済対話の最初のラウンドが、ワシントンDCで2009年7月
27日~28日に行われた。戦略経済対話は、両国が直面する二国間、地域的、全
世界的な短期長期の戦略的経済的利益についての広範囲な挑戦と機会に焦点が
当てられ強調された。戦略経済対話は、米国側は国務長官と財務長官が、中国
側は、戴秉国国務委員と王岐山副総理が主導したが、エネルギー長官や、政務
担当国防副長官、合衆国太平洋軍司令官等、米国の閣僚レベルの高官多数が参
加した。

合衆国と中国は2008年10月に台湾に米国の武器輸出発表の後で中止されていた
核不拡散二国間対話を、2009年9月にワシントンで再開した。双方は、北京で
2009年12月に再会した。国務次官補レベルの討議は全体的な核拡散防止への協
力を強化するものである。

(Department of Defence 2010/08/16)

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2010年8月23日月曜日

中国の軍事力 2010 第一章要約(1)





第一章 年次更新

台湾海峡における安全保障状況の展開

2008年3月に馬英九大統領が当選して以降、中華人民共和国(中国)は、台
湾海峡を跨る関係強化を促進している。
北京も台北も、半当局者と半当局者、人民と人民、党と党の接触の拡大や、経
済や文化の紐帯の拡大を強調している。しかしながら、本土側には、台湾の対
岸での中国の軍事的存在感を減らす意味のある動きは全くない。

中国軍事力の規模、位置、能力に関する展開

中国軍事力の長期的で広範囲な変革は、兵力展開能力や、アクセス拒否/地域
利用拒否能力を改善している。台湾海峡での緊急事態への準備に関する短期的
な焦点と整合させながら、中国は、台湾の対岸にあたる軍区(MRs)に最新のシ
ステムを展開している。

弾道ミサイルと巡航ミサイル

中国は、世界で最も活発な地上発射の弾道ミサイルと巡航ミサイルの計画を推
進している。数種類の新型や派生型のミサイルが開発、テストされており、ミ
サイル部隊が追加設置されている。いくつかのミサイル部隊では質的改善が行
われており、弾道ミサイルに対する防衛方法も開発中である。

●人民解放軍は、国産開発で地上発射のDH-10地上目標巡航ミサイル(LACM)、
国産開発の旅洋II型ミサイル駆逐艦(DDGs)に装備された同じく国産の、陸上/
海上発射のYJ-62対艦巡航ミサイル(ASCM)といった、多くの非常に精密な巡航
ミサイルを調達している。また、ロシア製のSS-N-22/サンバーン超音速対艦ミ
サイルが、同じくロシアから調達された中国のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐
艦に搭載されている。そして、ロシア製のSS-N-27B/シズラー超音速対艦巡航
ミサイルがロシアで建造された中国のKILO級ディーゼルエレクトリック潜水艦
に装備されている。

●2009年12月までに、人民解放軍は、台湾の対岸に1,050基~1,150基のCSS-6
とCSS-7短距離弾道ミサイル(SRBM)を配備した。これらのミサイルには、射程、
命中精度、弾頭が改良された三種類の派生型が含まれており、破壊力が向上し
ている。

●中国は、CSS-5準中距離弾道弾(MRBM)の派生型を基にした対艦弾道ミサイル
(ASBM)を開発している。このミサイルは1,500kmを上回る射程を備えており、
終末運動可能な弾頭を装備している。そして、適当な指揮管制システムと統合
されれば、西太平洋で、空母を含む艦船を攻撃する能力を人民解放軍に与える
事になる。

●中国は、より生存性の高い運搬手段を付加する事で、その核戦力を近代化し
ている。例えば、最近、道路移動が可能で固体燃料の大陸間弾道弾(ICBM)であ
るDF-31とDF-31Aの部隊配備が行われている。DF-31Aは、11,200kmを超える射
程があり、米国大陸本土の殆ど場所を標的としてカバーする事ができる。

●中国は、また、新しい道路移動が可能な新型ICBMを開発しているが、これに
は、多目標独立誘導弾頭(MIRV)を搭載可能としているものと思われる。

海軍

人民解放軍海軍は、主要戦闘艦艇、潜水艦、両用艦艇からなるアジアで最大の
戦力を保有している。中国海軍の戦力は、約75隻の主要水上艦艇、60隻以上の
潜水艦、55隻の中型または大型の両用戦艦艇、約85隻のミサイル装備の哨戒艇
からなっている。

●海南島に建設されている人民解放軍海軍の新しい基地の主要部は完成してい
る。この基地は、攻撃型潜水艦と戦略ミサイル潜水艦及び、先進的な水上艦艇
の全てを収容するのに十分な大きさがある。この基地は地下施設で、人民解放
軍海軍に主要な国際海上交通路への直接的なアクセスを提供しており、南シナ
海へ潜水艦を密かに配備する事を可能としている。

●中国には、活発な空母研究開発計画がある。そして、中国の造船産業は、今
年末には国産空母の建造に着手できるものと思われる。中国は、2020年には、
空母と支援艦艇からなる艦隊を複数建造する事に興味を示している。

●人民解放軍海軍は、空母から発進する固定翼機のパイロットを50人養成する
プログラムを開始すると決定したと伝えられている。この最初のプログラムで
は、恐らく、地上での訓練がまず開始され、その後、四年間は、現在、大連の
造船所で近代化改装中の旧ワリヤーグ(ソ連クズネツォフ級空母)を使用した海
上での訓練が行わるものと思われる。

●人民解放軍海軍は、Sky WaveレーダやSurface Waveレーダを用い超水平線(OTH)
目標能力を改善している。超水平線レーダは、偵察衛星と協同し、中国の海岸
線から遠く離れた目標に精密誘導された攻撃、例えば、対艦弾道ミサイルを使
用した攻撃を行う事に用いられるものと思われる。

●中国は、引き続き最新の晋級(094級)原子力推進の戦略ミサイル潜水艦(SSBN)
の建造を継続している。中国は五隻程度まで新型SSBNを配備するかもしれない。
一隻の晋級戦略ミサイル原潜が、二隻の商級(093級)攻撃型原潜、四隻の漢級
攻撃型原潜、及び、それまで中国のただ一隻のSSBNだった夏級SSBNと舷を接し
て就役している。

●中国は、攻撃型ミサイル原潜を更に強化しており、ここ数年中に五隻程度ま
で095級攻撃型原潜(SSN)を追加するものと思われる。

●中国は13隻の宋級(039級)ディーゼルエレクトリック推進攻撃型潜水艦を保
有している。この宋級潜水艦はYJ-82対艦巡航ミサイルを装備している。宋級
の後継は元級で、合計4隻が既に就役しているものと思われる。中国は、この
クラスを更に15隻建造する可能性がある。元級潜水艦は宋級潜水艦と類似し
た武装だが、AIP(大気非依存型推進)機関を装備しているものと思われる。宋
級潜水艦、元級潜水艦及び商級原潜は、現在、開発試験中の新型のCH-SS-NX-13
対艦巡航ミサイルを発射する能力をもっている。

●人民解放軍海軍は、引き続き国産建造の水上艦艇の調達を続けている。これ
らの中には、国産の長射程対空ミサイルであるHHQ-9を装備した旅洋II級(052C級)
ミサイル駆逐艦2隻、ロシア製の長射程対空ミサイルSA-N-20を装備した旅洲
級(051C級)ミサイル駆逐艦2隻、現在開発中の中射程垂直発射型対空ミサイル
であるHHQ-16を装備した江凱II級(054A級)ミサイルフリゲート4隻~6隻が含
まれている。これらの艦艇は、過去、艦隊の弱点とされてきた対空戦闘能力を
強化するという指導部の優先順位付けが反映されている。

●中国は、新型の波浪貫通型カタマラン船体を持つ紅稗級(022級)ミサイル艇
を60隻配備している。各艇は、8発のYJ-83対艦巡航ミサイルを装備している。

空軍及び防空軍

中国は台湾を燃料補給なしで作戦行動半径に収める490機の戦闘用航空機を基
地に配備している。それらの基地は更に数百機を収容する離着陸能力がある。
多くの機体は、古いモデルの機体を能力強化したものである。しかしながら、
新型機や、より先進的な機体の割合が増加してきている。

●人民解放軍空軍は、2009年11月11日に、創設60周年を祝った。その式典の中
で、中央軍事委員会第一副主席である郭伯雄将軍は、人民解放軍空軍が新兵器
の開発を加速し、補給システムを改善し、多軍種共同作戦行動訓練を改善する
事を訴えた。また、記念日でのインタビューで、人民解放軍空軍司令員許其亮
将軍は、宇宙空間を含む軍備競争は避けられないものであり、本土防衛中心か
ら統合された航空宇宙空間での攻撃防御両面の能力を備えるよう人民解放軍空
軍の変革を強調した。

●中国は、B-6爆撃機戦隊(オリジナル機体は、ロシアのTu-16)の新しい派生型
を開発しており、作戦行動が可能になった時には、新型の長射程巡航ミサイル
を装備する事となる。

●人民解放軍空軍は、長射程で先進的な対空ミサイルシステムの装備を拡大し
ており、現在では、その分野では世界最大の軍隊となっている。過去5年間に
亘り、ロシアが輸出可能な最新の対空ミサイルであるSA-20 PMU2大隊の調達を
図ってきた。また、国産設計開発のHQ-9システムも導入されている。

●中国の航空産業は数タイプの空中早期警戒管制機(AEW&C)を開発している。
これには空中早期警戒管制と同時に情報収集と海洋哨戒を行うY-8型輸送機を
元にしたKJ-200や、IL-76輸送機の改造型が含まれている。

地上軍

人民解放軍の陸上戦力は125万人の兵員からなっており、その内、40万人が、
台湾の対岸に当たる三つの軍区(MR)に配置されている。中国は、地上部隊に近
代的な戦車や装甲兵員輸送車、火砲を配備する事で改善を図っている。人民解
放軍陸軍が新たに獲得または開発中の能力としては、第三世代の99式主力戦車、
新世代の水陸両用戦闘車、200mm、300mm、400mm多連装ロケット発射システム
がある。

●2009年に、人民解放軍は指揮管制、空陸共同、情報戦についての可動性と動
員、攻勢作戦に関して焦点を当てた訓練と演習を行った。

●それに加えて、現役の地上部隊の他、中国は2008年度で50万人の予備役兵力
を保有しており、更に戦時には自身の居住地域での戦闘に動員される大規模な
民兵組織がある。中国は、11次五カ年計画(2006-2010)の終わりには、近代的
に組織された民兵の規模を10百万人から8百万人に縮小する計画だが、18才~
35才までの全ての男性が、現在は軍事組織に属していなくても、技術的には民
兵システムの一部となっている。

(Department of Defence 2010/08/16)

Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf

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2010年8月20日金曜日

中国で墜落した北朝鮮戦闘機が示すもの


※写真上 墜落機 Searchinaから転載。
 写真下 北朝鮮空軍Mig21

遼寧の墜落機、北朝鮮戦闘機が瀋陽空港に着陸試みた可能性

17日午後に、中国遼寧省の撫順県で国籍不明の飛行機が墜落した件で、墜落地
点は瀋陽桃仙国際空港から約27キロメートルの位置であることが分かった。現
場で一般人が撮影したとされる墜落機の様子が、インターネットで発表された。
機体には北朝鮮軍のマークらしい図形が見える。炎上した形跡はない。

これまで当局は、国籍不明機の小型機が遼寧省撫順県に墜落した事実だけを発
表した。詳細は「調査中」という。

地図によると、墜落地点は瀋陽桃仙国際空港から約27キロメートルの位置。瀋
陽市の市街地にも近い。墜落機が北朝鮮国境から最短距離で到達したとすると、
中国領内を160キロメートル程度飛行したことになる。中国のインターネット
では、自国軍は何をしていたとの非難の声が出はじめた。

インターネットでは、ユーザーの投稿による墜落機の写真2点も発表された。
銃撃を受けた痕跡は確認できない。機体が炎上した形跡はない。機体の多くの
部分は、墜落の際にかぶったと見られる土や瓦礫(がれき)に覆われている。
操縦席は見えない。搭乗者も写っていない。機体後部は原形が残っていること
から、機体は地面に比較的浅い角度で突っ込んだ可能性が高い。

写真に炎上した形跡がないことから、墜落機は燃料切れで墜落したとの見方が
成り立つ。写真では、地元住民らが、墜落機にかぶさった瓦礫(がれき)を取
り除く作業をしている。爆発などの危険はないとの判断があったと考えられる。

墜落地点は、瀋陽桃仙国際空港の滑走路の方向から、約23度の角度。墜落機は、
同空港への着陸を試みた可能性がある。

中国のインターネットでは、同機は北朝鮮軍のミグ21戦闘機との見方が発表さ
れた。

(Searchina 2010/8/18)


北朝鮮の軍用機は「故障で侵入・墜落」、中国が公式発表

中国の遼寧省撫順県拉古郷で17日午後、北朝鮮の軍用機が墜落した事故に対し、
新華社通信は19日、「北朝鮮機が中国領空に侵入し、墜落したのは機械系統の
故障によるものだ」と発表した。鳳凰網が報じた。

報道によれば、現在、中国と北朝鮮は事故の処理をめぐって協議を行い、何ら
かの一致を見たという。新華社は詳しい情報については触れず、「北朝鮮側は
中国に『意図しない事故』について謝意を表明した」と報じた。

(Searchina 2010/8/19)


ロシアへの亡命という説も出た北朝鮮戦闘機の中国瀋陽郊外での墜
落事件ですが、中国当局から事故という公式発表が出ました。
公式発表で友好国からの「亡命」とも言えないだろうという意見も
あろうかと思いますが、私は、この件については、本当に事故であ
ったろうと考えています。

しかし、これが事故であったとしても、その意味する処は、北朝鮮
にとって芳しいものとは言えない様に思います。

事故の内容ですが、
鴨緑江付近をパトロール中であった北朝鮮のミグ21で故障が発生
し、約160km離れた中国の瀋陽付近(空港から27km)の位置に墜落し
ました。瀋陽空港の滑走路からの角度は、23度で同空港へ着陸しよ
うとした可能性があります。また、別の報道では瀋陽空港の周りを
二~三回旋回したという話もあります。

墜落した機体は、写真から見る限り、胴体着陸をした様にきれいで
後部の損傷は土に覆われていない所を見る限り、酷いものではあり
ません。爆発や燃料が燃えた様子も見えませんが、パイロットは死
亡したとの事です。

まず、飛行機が空中で何らかの異常を生じた時には、最寄の飛行場
に着陸するのが普通です。今回は、鴨緑江をパトロールしていた訳
で、すぐ近くに北朝鮮の飛行場があった筈です。それにも関わらず
なぜ、160kmも飛行して瀋陽に向かったのかという疑問があります。

また、機体の故障という発表ですが、具体的にどの様な故障が発生
したのかという疑問があります。写真を見る限り、機体は、真っ直
ぐに降りていますので、操縦は可能であったと思われます。また、
機体から発火していませんので燃料がゼロ状態になるまで、エンジ
ンは正常に作動していたと思われます。エンジンが正常で、操縦可
能であって、しかも墜落している訳ですから、離着陸装置関係の異
常が一番考えられます。また、墜落した機体の状況、特に翼を見る
と最初から翼から主脚が出ていなかった様にも見えます。
胴体着陸を行う場合、燃料を全部消費させるのはセオリー通りです
から事故原因は、着陸装置の異常と見て差し支えなさそうです。

では、着陸装置が故障した機体を何故中国に持っていき胴体着陸を
試みたのでしょうか?それは、一番胴体着陸に適した飛行場が、瀋
陽空港の滑走路だったと考えればパイロットは合理的な行動をとっ
た事になります。

パイロット訓練では緊急着陸の手順は、ソロ飛行を行う前に訓練し
ますが、その際に、ベストフィールドを探せと教わります。
機体に応じたベストフィールドを探さないといけませんが、ここで
問題なのは、北朝鮮のパイロットが北朝鮮国内にベストフィールド
を求める事ができなかったという点です。北朝鮮には戦闘機が緊急
着陸できる設備を持った飛行場がないという事になります。余程荒
れた滑走路状態になっているとしか考えにくいのです。

更に、胴体着陸したパイロットが生還できなかった点にも、疑問が
あります。滑走路でない処へ胴体着陸をすれば、大破するのは目に
見えています。それなのに緊急脱出用の射出機でパイロットが脱出
しなかった理由が分かりません。ひょっとすると、北朝鮮の戦闘機
の緊急脱出装置は動作しないようになっているのではないか思われ
るのです。

つまり、北朝鮮の戦闘機は、空中で、離着陸装置の異常を発生し、
緊急着陸しようとしたが、鴨緑江の近くには、緊急着陸に適した自
国の飛行場がなく、中国の瀋陽空港まで飛行したが、胴体着陸に備
え、機内燃料を消費させていた処、空港から27kmはなれた場所で燃
料切れとなり胴体着陸をしようとしたが失敗、緊急脱出用の射出機
は使用できずパイロットは死亡したという事になります。

これが事実であれば、北朝鮮の空軍の実情はお寒い限りであると言
わざるを得ないのです。


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2010年8月18日水曜日

中国の軍事力 2010 全体要約



底なしの中国軍拡に米不安 対中配慮も忘れず 対中年次報告発表

米国防総省は今回の中国軍事報告書で、空母建造など増強を続ける中国の軍拡
への懸念を強く示す一方、オバマ米政権の対中配慮も同時ににじませた。
米国の懸念を裏付けるように、米海軍は原子力空母ジョージ・ワシントンを南
シナ海に派遣するなど、ベトナムとの関係を強化。パラセル(中国名・西沙)
諸島などの領有権をめぐり同国と対立する中国を牽制(けんせい)している。
領有権に関連して今回の報告書で特徴的なのは、軍事力というハードパワーを
背景に、「外交上の利益を得るための軍事力活用の選択肢が増えつつある」点
を挙げたことだ。これは東シナ海の大陸棚開発のほか、中国による尖閣諸島へ
の領有権主張や南シナ海での領有権争いで、優位な外交を展開する能力を向上
させていることを示唆している。
また、中国軍の活動範囲については、昨年言及した「西太平洋地域」をさらに
掘り下げ、「第2列島線を越えた海上作戦」や「台湾をはるかに越えたアジア
地域における軍事作戦の展開能力」を明記し、警鐘を鳴らした。

米国のシンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主
任研究員は16日、産経新聞に対し、「多弾頭の新たな陸上移動式ICBM
(大陸間弾道ミサイル)の開発に言及していることは注目に値する。5隻の攻
撃型原子力潜水艦(SSN)の建造にも触れているが、これは日本のシーレー
ン防衛にとって大きな脅威だ」と指摘した。

その一方で、昨年の報告書にはあった表現が削除されて表現が和らげられるな
ど、中国への配慮をにじませてもいる。
たとえば、台湾海峡について昨年の報告書は、「中国が開発中の短距離ミサイ
ルが台湾に軍事的圧力を加え、脅威となっている」と表現していた。
これに対し、今年の報告書からは「圧力、脅威」といった語句が消えた。穏や
かな言い回しを通じて中国への配慮を示すことを狙った“オバマ色”に腐心し
た結果とみられる。
報告書は今年3月に発表する予定だったが、延期され続けたため、議会共和党
が中国への配慮があるのではないかと批判していた。

(産経新聞 2010/08/18)


米国国防総省が例年発表している「中国の軍事力」が、8月16日に
発表になりました。全体の概要は、上の記事で書かれている通り
ですが、原文を見る事も必要なので、全体要約と各章毎の要約、
コラムの一部を抄訳してみる事にします。


中国の軍事力 2010

全体要約

過去30年に亘り、中国は経済的な成長と発展の面で大きく前進した。それに
より、より多くの中国人がより高い生活水準を達成できる様になり、また、中
国の国際的な存在感を増大させた。これらの経済面での業績は、科学技術面で
の発展と相まって、中国が軍事面での広範囲な変革に着手する事も可能とした。
中国の軍事力近代化のペースと範囲は過去10年間で増加しており、中国の軍
隊が、国際的な公共財として提供される事を可能とすると同時に、外交的な優
位や、紛争を自国に優位に解決する事に使用するという選択の可能性も拡大し
ている。

2010年以降、中国は、人民解放軍の役割と任務を自国に直接的に接続する
領域の外に展開するという新しい段階に入っている。これらの任務及び関連す
る能力によって、人民解放軍が国際的な平和維持活動や人道援助、災害救助や
海賊対策に貢献する事を可能としている。合衆国は、これらの貢献を認め、歓
迎している。しかし、それ以外の投資により、人民解放軍は、アクセス拒否戦
略や海域使用拒否戦略を追求する事も可能としている。また、現時点では、遠
隔地に兵力を展開し維持する能力は限られたものでしかないものの、人民解放
軍の遠距離兵力展開能力を改善する事を目的とした投資が行われている様に見
える。2010年の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)では、「中国は、
改良された中距離弾道弾と巡航ミサイルや、改良された兵器を搭載した新型攻
撃型潜水艦、新型の長射程対空ミサイルシステム、電子戦システム及びコンピ
ュータネットワーク攻撃能力、改良された戦闘機、衛星攻撃システムの開発と
展開を図っている」と記載されている。台湾海峡を跨ぐ経済発展と文化的紐帯
の強化は2009年も大きく前進した。これらの肯定的な傾向にも関わらず、
台湾に対抗する中国の軍事力建設は継続された。紛争となった場合に発生する
と考えられる合衆国の台湾に対する支援を阻止、遅延、拒否する事で、台湾独
立を阻止したり北京側の条件で紛争を解決させるよう台湾に影響を与える能力
を人民解放軍は開発している。台湾海峡を跨ぐ軍事力のバランスは、引き続き
大陸に有利に傾いてきている。

人民解放軍は、中国の軍事面や安全保障面での透明性に関して限定的な改善を
みせた。しかし、どの様に拡張された軍事力を使用していくのかを含め、多く
の不確実性が残っている。中国の軍事力と安全保障問題での限られた透明性は、
不確実性を強化し、誤解と誤算への可能性を増大させる。

オバマ大統領が述べた様に、「合衆国と中国の関係は意見の相違と困難が無い
訳ではない。しかし、我々が敵でなければならないという運命が定められてい
る訳でもない」。維持可能で、信頼できる合衆国と中国の軍事部門同士の関係
は、不信を減らし、相互理解と広範な協力を深める事をサポートする。中国が
再三に亘り、軍事部門同士の意見交換を中断した事は、この努力を妨げるもの
である。国防総省は、アジアや世界の共通の安全保障面での挑戦について、中
国が建設的役割を演ずるのを奨励する為に、この相互交流の機会を利用し続け
る。それと同時に、国防総省には、中国の軍事力を監視し、対決を阻止する特
別な責務がある。軍事的姿勢、兵力配置、可能性開発、同盟やパートナーシッ
プを強化する行動を通じて、国防総省は、アジア太平洋地域で、平和と安定を
維持するという合衆国の意思と能力を示していく。

(Department of Defence 2010/08/16)


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2010年8月4日水曜日

北朝鮮の核は、どちらに向いているか


昨日は、「中国のご機嫌を取る北朝鮮」というテーマで、中国に媚を
売る北朝鮮について触れましたが、今日はその続編です。
現在、開発が進められている北朝鮮の核がどこを向いているかとい
うテーマです。

韓米日を向いているに決まっているという方が多いと思いますが、
私はそれだけではないと思います。つまり中国に対しても向いてい
るのではないかと思うのです。

北朝鮮にとって核兵器は、金日成・金正日体制(あるいは金王朝)を
維持する為の最終兵器です。

開発の契機になったのは、1989年のルーマニアのチャウシェスク政
権の崩壊とチャウシェスク夫妻の処刑を目の当たりにした事が大き
いと言われています。

そして、北朝鮮が体制の最終的保証として見出したのが核兵器と先
軍政治という訳です。核兵器により、外部からの政権転覆を抑止す
ると共に、先軍政治によって体制の全てを軍優先(勿論、最高指導
者を除き)にする事で、軍の支持を確保しようとしたものと見られ
ます。

2002年に、ブッシュ政権は、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」
と名指しした事も、金正日に核開発の正当性を確信させた筈です。
いずれが鶏で卵なのかという議論はありますが、結果的に核を開発
できなかったイラクは、崩壊しましたが、核開発に邁進したイラン
と北朝鮮が生き残っている事は、核兵器が体制を保証している明確
な証拠である北朝鮮が考えても不思議ではないと言えます。

勿論、北朝鮮が実際に核を使用する時は、金正日政権が崩壊する時
となります。現時点で、北朝鮮の核は米国に届きませんし、到達す
る様になっても、ミサイル防衛によって無力化される筈です。日本
や韓国に対して使用すれば、米国による核報復が待っています。
いずれの場合も、金正日政権は崩壊しますから、体制を存続する為
には、核兵器は実際には使えない事になります。

その一方、現在、韓米日に、金正日政権を崩壊させる意思はありま
せん。本来であれば、朝鮮半島統一は韓国の念願する処の筈ですが、
ドイツ統一にかかった負担の大きさから、韓国は、実際には統一に
及び腰であり、統一の負担を負うつもりはないと断定できます。

つまり、北朝鮮は、そろそろ核開発の目的を体制存続から、経済的
補償に移して良い筈なのです。

北朝鮮がそうせず、引き続き核兵器を保有し続けようとしている理
由は、一つには、米国の政権が変わった時に、また、金体制の転覆
を企む可能性がある事と、もう一つ、中国の介入による金政権の転
覆を試みる可能性があるからと考えざるを得ません。

中国が、金正日政権を転覆する事は、韓米日にとっても受け入れ可
能なオプションである事は事実です。

韓国からすれば、北朝鮮が崩壊し、統一の負担、即ち、北朝鮮側の
社会資本の整備や社会保障のコストが、全て韓国に掛かってくる事
は悪夢以外の何者でもありません。米日にしても、より透明性の高
い北朝鮮であれは金正日体制と比べ、十分受け入れ可能という事に
なります。

中国にしても、北朝鮮という緩衝国がなくなり、韓国と直接国境を
接する事になるより、中国の息のかかった、社会主義市場経済化で
も同一歩調の取れる社会主義政権の隣国の方が存在価値が高いであ
ろうと思われるのです。

金正日にすれば、中国にとって、忠誠心のより高い傀儡国家の方が、
関係国全てから歓迎されるであろうことは、容易に想像がつきます。
その様な視点からすれば、今回の哨戒艦撃沈事件を利用しても、中
国との関係を改善し、核兵器の実戦配備を可能とする時間を稼ぐの
は理にかなった行動であると思われるのです。


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2010年8月3日火曜日

中国のご機嫌を取る北朝鮮

北朝鮮で「アリラン」開演 今年は中朝親善を追加

北朝鮮のマスゲームと芸術公演「アリラン」が2日夜、平壌のメーデースタジ
アムに約2万3千人の観客を集めて開演した。今年は中国との友好関係を強調
する「親善アリラン」と題した場面が新たに追加された。

金正日総書記が5月に訪中したことや中国人観光客の誘致拡大策が背景にある
とみられるが、韓国哨戒艦沈没で北朝鮮の関与を認めず米韓合同軍事演習に強
く反対している中国への配慮もうかがえる。

人文字では「鴨緑江の青き水とともに朝中親善は永遠に」「根深い朝中親善」
などのスローガンが描かれ、公演にはパンダなどの縫いぐるみや中国の民族衣
装に身を包んだ出演者が中国風の太鼓を抱え踊りを披露した。

10月半ばまで週4回上演され、期間中は中国上海と平壌間でチャーター便も
運航される。

(産経新聞 2010/08/03)


韓国哨戒艦撃沈事件で、最後まで北朝鮮擁護の姿勢を変更しなかっ
た中国に対し、北朝鮮が、外交的に擦り寄っています。単に戦術的
に阿諛っているというより媚びていると言った方が良いのかも知れ
ません。経済制裁が緩和される見込みがなく、軍事演習による米韓
の圧力がそういう動きを加速しています。

その一つの現れが、「アリラン」祭での朝中親善の強調です。北朝
鮮と中国の関係は一定のものではありません。その時々の北朝鮮の
必要に応じて接近・離反を繰り返しています。ある時には、「血で
結ばれた友情」が強調され、ある時には、「朝鮮の独立」が強調さ
れます。一般法則というほどのものではありませんが、概ね、韓国
や米国との関係が緊張緩和した時は、中国に対して強気に出る事が
多く、逆の場合は中国に擦り寄る態度を取ります。

今回の場合は、米韓が、哨戒艦沈没事件に対する報復とも言うべき
大規模軍事演習を北朝鮮近海の日本海で実施しています。北朝鮮は
いつもの通り、「侵略者米帝と一度は決着をつけねばならないと覚
悟していた決戦の時が、軍事優先のわれわれの気概を行動で示す時
が到来した」と大口を叩いていますが、実際には、何も出来ていま
せん。

大規模な軍事演習は、実戦と殆ど同じ準備が行われており、緊張の
レベルが上がっています。韓国の哨戒艦を騙まし討ちした時の様な、
平時のレベルとはかけ離れた緊張感の中にある米韓軍に対して、少
しでも、ちょっかいを出せば、敵対行為として軍事的に報復され敗
北するのは、北朝鮮の側なのです。

そういった場合に、大げさな言葉で戦争に対する自信を表明するの
が、これも北朝鮮の標準的なリアクションであり、逆説的に言えば、
北朝鮮の弱さの証明とも言えます。もし、自国の軍事力に自信があ
るのであれば、黙って、対抗演習を発動するなり、米韓の演習を監
視する事で、電子情報等の収集を図れば良いのです。

そうできずに、大言壮語した上、中国に庇護を求める姿は、とても
核保有国として独り立ちした国の姿と見る事はできません。その点
からすれば、北朝鮮の核開発やICBMの開発、更には実戦配備が必ず
しも順調に進んでいないという事なのかも知れません。


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2010年7月9日金曜日

中国人専門家のトンデモ見解を無批判に垂れ流した朝日新聞


※上はウルムチで観測されたUFO。下はソユーズUロケット。
sorae.jpサイトから転載

新疆の住民がUFOを観測 専門家「米国の大陸間弾道ミサイル」

6月30日の夜に新疆の上空を飛んでいった「未確認飛行物体」についての議
論がここ数日、高まっている。新疆の天文学者が4日に述べたところによると、
「未確認飛行物体」の正体は6月30日に米国が発射した大陸間弾道ミサイル
だという。

6月30日午後11時45分頃、烏魯木斉(ウルムチ)市の紅山停留所で空を
指差す人々の姿を見かけた。指が示す方角を見ると、正体不明の光る円形の物
体が後ろに長い扇形の白い光を伴いながらゆっくりと東の方へ飛んで行くのが
見えた。

「未確認飛行物体」は1日、インターネットで大きな論議をよんだ。烏魯木斉
市、克拉瑪依百口泉、阿勒泰市でもこの飛行物体を目撃した人がいる。

伊寧市の李峻さんはこの「未確認飛行物体」の撮影に成功した。李さんによる
と、車で清伊高速を走っている時に、長い光の尾を引く円形の「未確認飛行物
体」を発見、空に留まっていた時間は短かったという。

新疆天文学会の宋華剛秘書長によると、当該物体が「UFO」または未確認飛
行物体である可能性はなく、実際は6月30日に米国が発射した大陸間弾道ミ
サイルで、新疆の一部では空中を飛行するミサイルが肉眼でも観察できたという。

米軍は6月30日にカリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から大陸間
弾道ミサイルを発射し、7000キロ以上離れた目標に命中させている。

このミサイルは現地時間6月30日未明3時40分(北京時間6月30日午後
6時40)に発射され、大気圏外で太平洋を横断し、マーシャル群島付近の的
に命中した。

(朝日新聞 2010/07/06)


中国新疆で見えた謎の飛行物体は「ソユーズUロケット」

6月30日夜、新疆ウイグル自治区ウルムチ市の上空で謎の飛行物体が目撃され
たことで、ネット上で注目され、UFOやアメリカのミサイル実験ではないのか
との意見が多く、マスコミも報道している。

しかし、目撃写真や目撃時間などから分析すると、謎の飛行物体はUFOでも、
大陸間弾道ミサイルでもなく、その日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げら
れたソユーズUロケットである可能性が極めて高い。

プログレス補給船(38P=M-06M)を載せたソユーズUロケットはモスクワ夏時
間6月30日19時35分(北京時間23時35分)にバイコヌール宇宙基地から打ち上
げられ、打ち上げから約9分後にプログレス補給船(38P)を軌道に投入している。

バイコヌール宇宙基地から打ち上げられたロケットは東に向けて飛行するため、
地図からも分かるように、打ち上げの数分後にウルムチ市の上空を通過する。
また、上の写真は謎の飛行物体を目撃した時の写真で、下の写真はロシア連邦
宇宙局が提供しているソユーズUロケットの写真である。両方を比較すると、
非常に似ていることもよく分かる。

(sorae.jp 2010/07/08)


サーチナの記事でさえ、見出しに「謎の飛行物体が!UFO?それ
とも米国のミサイル?-新疆」と疑問符付きで報じたにも関わらず
それを「新疆の住民がUFOを観測 専門家「米国の大陸間弾道ミ
サイル」と断定的に報じてしまって恥をかいたのが朝日新聞です。

通常、朝日の科学関係記事は、結構しっかりとした記事が多いので
すが、「米国のICBM」という言葉で、朝日新聞の外信部の記者は頭
に血が上ってしまって断定的に報道したのかも知れません。朝日新
聞は、日頃から「中国」の発言を真実として報道する事が多いので
「中国」を100%信頼するという社是でもあるのかも知れません。
今回も「中国の専門家」の発言なので断定的に報道したという訳です。

でも、この記者が、若干の科学的な知識、あるいは軍事に関する知
識があり、地球儀を見て、少し考えれば、中国人の「専門家」の意
見が極めて疑わしいものである事が判った筈なのです。

そもそも、米国のカリフォルニアから発射されたICBMが、ウルムチ
の上空を通過した上で、マーシャル群島に着弾する事など通常は、
ありえません。特に米国のICBMは、ミサイルを小型化し、搭載量を
最大にする為、最小エネルギー弾道を飛行するので、カリフォルニ
アからマーシャルを直線的な飛行経路で飛行した筈です。まして、
記事の中で「大気圏外で太平洋を横断し」とまで書いているのです
から、太平洋を横断したミサイルをウルムチで見えるのであれば、
日本でも見えた筈と簡単に推論できる筈なのです。

ちなみに、カリフォルニア州からウルムチ経由で、マーシャルに着
弾したのであれば、約34,000キロを飛行しており、地球の周
囲を四分の三回っているので、部分軌道爆撃システム(FOBS)に相当
しますが、このFOBSはSALT2で配備が禁止されています。

朝日新聞の記者らしく、米国のSALT2条約違反まで発見したのです
から、「中国の専門家」の発言が事実であれば、朝日の記者は、
大手柄を上げた事になった筈です。

でも、残念ながら、「中国の専門家」の発言は事実ではなく、朝日
新聞のもう一つの心の故郷であるロシアの平和的な国際宇宙ステー
ションへの補給任務のロケットであったという訳です。

朝日新聞さん、日頃から、「中国」の記事を無批判に報道している
と、思わぬ恥をかくという良い実例になりましたね。是非、今後は
慎重な報道を心がけて頂きます様お願いします。(笑)


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2010年7月7日水曜日

F-35は、中国の新兵器により本当に威力を失ったのか?

※写真は、Japanese.CHINA.org.cnからの転載

中国の新兵器により威力を失うF-35 米軍は調達削減か

米メディアによると、オバマ政権はF35戦闘機2500機の調達計画を見直す考え
だ。中国など米国の潜在的ライバルのレーダーや対空ミサイル分野での驚異的
な進歩を受け、今後10年でF35を配備しても、90年代の設計当初のように「重
大な価値を有する」かどうかを再検討する必要に迫られたからだ。

米戦略予算評価センター(CSBA)のクレピネビッチ所長は「F35の設計完成以
来、世界は大きく変化した。中国など米国の潜在的ライバルの装備構成によっ
て、米軍のその他の航空機、ミサイルシステム、武器プラットフォームが、い
くつかの状況下では、高額なF35よりも有効になった」と指摘。その例として、
ハイテクレーダーや地対空ミサイルなど中国が現在開発・整備中の先進兵器シ
ステムを挙げる。これらはF35にとって十分脅威なので、前方基地や空母から
発進するF35は以前ほど役に立たない。国防総省はF35の調達数を思い切って削
減し、浮いた予算を他の航空機やミサイルの調達に充てるべきか検討する必要
があるというのだ。

クレピネビッチ所長は、こうした政策変更の有用性を指摘する。クレピネビッ
チ所長は米国防政策委員会の重要人物であるうえ、同委員会は多くの重要な問
題について国防長官に直接提言を行うため、国防総省もクレピネビッチ所長の
提言に非常に注目している。

F35はコストの肥大化とプロジェクトの遅れのため、米軍・政府双方にとって
関心の焦点となっている。1機当たりの価格は4500万ドルから1億ドル以上へと
つり上がり、海外の取引先の調達意向にも影響を与えている。だがゲーツ国防
長官や国防総省の一部高官は、F35の直面する難題を解決し、最終的に計画通
り調達することを希望している。

(中国網Japanese.CHINA.org.cn 2010/07/05)


この記事の元ネタですが、Dailytechの以下の記事であるようです。

F-35 Lightning II May Bring Less "Value" to Battlefield than Intended
http://www.dailytech.com/F35+Lightning+II+May+Bring+Less+Value+to+Battlefield+than+Intended/article18888.htm

確かに、中国の様な敵国が採用しようとしている新型レーダーや対
空ミサイルの高性能化がF-35の開発当初に意図した様な、「高性能」
を実現できるかどうかという問題点と、F-35の開発コストが、高騰
しており、2500機を調達するという計画の見直しが米政府内で提起
されているとの指摘があります。

両者を比較して興味深いのは、元の記事にあって、中国側の報道に
ない点や中国の記事で特に強調している点です。

元の記事自体が、具体性を欠くきらいがあるのですが、元記事のポ
イントは、F-35が敵とする国の対空システムの充実により、F-35の
有効性が減少した事に「加え」、米国の軍事予算が、F-35の様な
3820億ドル(約35兆円)も掛かる巨大兵器開発と、退役軍人向けの健
康保険の充実というこちらも巨費のかかる事業を、中東での作戦と
同時には実施できないというものです。

では、F-35に変わって何を採用するのかについては、元記事は、違
う機体によって充足する事が国防総省内部で検討されているとしか
述べられていません。

中国の記事は、中国が開発している新型の対空システムによって
F-35の有効性が低下したという点のみを大きく取り上げた記事にな
っているのです。

それでは、本当に、中国の対空システムの高度化により、F-35の有
効性は、大きく低下したのでしょうか。
中国の兵器は、ロシア(ソ連)の兵器を国産化したものや、一部改良
したものが多いのですが、対空ミサイルシステムもその例に洩れま
せん。現在主力として展開中の最新対空ミサイルシステムは、ロシ
ア製のS-300PMUであり、中国国産では最新のHQ-12は、ごく一部に
しか配備されていません。では、S-300PMUは、ロシアでいつ配備さ
れたのかを調べてみると1992年です。比較的新しく見えますが、同
じシリーズのS-300Pは1980年代から使われており、段階的に性能が
向上しています。これに対しF-35の開発が始まったのが、2000年で
すから、F-35の要求仕様を纏める上で当然、考慮された筈の対抗兵
器という事になります。(なお、ロシアでの最新対空兵器は次世代
のS-400になっています。)

従って、中国の新兵器によって当初想定された威力が低下したと言
う議論は成り立たず、寧ろ、コスト超過によるプロジェクト規模削
減の言い訳に使われていると言える様に思われるのです。

この様に見ると、中国の記事は、米国の記事から中国にとって誇ら
しい部分だけを抜き出したものであり、その内容はミスリーディン
グであると思われるのです。(中国軍部が本気でそうであると信じ
るのであれば、それはそれで対抗兵器を過小評価する事になります
が、中国の軍事専門家を、それ程、無能と想像するのは、不適切で
しょう。)


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2010年6月18日金曜日

戦闘機供与拒否で、中国は、北朝鮮への影響力強化を図る?

※写真はF-15K。Jetpics.comから転載

金総書記が中国に戦闘機供与を要請、拒否される 韓国紙報道

17日付の韓国紙、朝鮮日報は、北朝鮮の金正日総書記が5月に訪中した際、
中国の胡錦濤国家主席に最新鋭戦闘機の無償供与など軍事支援を公式に要請し、
拒否されたと報じた。北朝鮮内の消息筋が明らかにした。

消息筋によれば、中国側は、北朝鮮が攻撃された場合、十分に防御、支援する
ので北朝鮮があえて最新の兵器を保有する必要はないと説得したという。

朝鮮日報は、北朝鮮を脱出した元幹部の言葉を引用しながら、金総書記が哨戒
艦撃沈事件以降、米韓の軍事的攻撃の可能性に相当な危機感を持ち、韓国の
F15、F16戦闘機を防げる中国の最新鋭戦闘機を求めたと分析している。

(産経新聞 2010/06/17)


現在、韓国は最先端の戦闘攻撃機であるF-15Kの導入を推進し
ています。戦闘攻撃機と言いますが、実際には戦術爆撃機であると
言って良いでしょう。戦場で陸軍の攻撃を直接、間接に支援する役
割を持っています。元々F-15は制空戦闘機として開発されまし
たが、その優れた機体性能を利用して、空対空戦闘以外の兵器搭載
能力を強化し戦闘攻撃機とする為の大改造が行われました。その結
果、機体にぴったりとフィットした増加燃料タンクと機外兵装搭載
用パイロンを持つコンフォーマルタンクが増設され、エンジン推力
の増強やレーダーとFCSの機能が強化されたF-15Eが開発さ
れました。その最新型が韓国が導入中のF-15Kという訳です。
既に40機近くが配備されており、更に20機が追加導入される予
定となっています。

韓国は、北朝鮮に対する陸軍での量的劣勢に対し全般的な質的優位
と航空優勢によって対抗していますが、このF-15Kの導入によ
って、戦場での制空権を完全に韓国に奪われてしまうと北朝鮮が懸
念する事は理解できない事ではありません。その点で、金正日が、
中国に最新鋭戦闘機の無償供与を要請したという報道は理解できる
のです。しかしながら、中国もしたたかです。単純な軍事援助では、
一見、供与兵器の部品供給ルートを押さえたと思っていても、北朝
鮮が、イラン、シリアと言った「悪の枢軸」を経由し旧ソ連製兵器
用部品の闇供給ルートを通じて代替部品を取得する可能性も考慮し
たと考えられます。

そして、最新戦闘機を供与する替わりに、中国の戦闘機による抑止
力の傘を提供するという訳です。この場合、抑止力の信頼性は、北
朝鮮の中国に対する態度によって担保される事になります。つまり、
北朝鮮が中国のより強い影響下に入ると考えられるのです。

勿論、北朝鮮は韓国と比べ、量的優勢を確保しているというものの
質的側面では軍事面の全てで老朽化が目立っており、制空能力面で
の劣勢は、その一つに過ぎません。また、北朝鮮は、独自の核開発
を行う事で核抑止という最高レベルの抑止戦略で中国からの離脱を
現在も図っている処です。今回「北朝鮮が攻撃された場合、十分に
防御、支援するので北朝鮮があえて最新の兵器を保有する必要はな
い」と中国が主張したというのが事実であれば、このロジックは核
抑止に関するものと同じであり、中国の北朝鮮に対する嫌がらせと
も言えなくもありません。

そういう面では、北朝鮮への中国の影響力を強化すると言う中国の
施策は、直線的に実現に向かっている訳ではありませんが、北朝鮮
が、軍事の全ての分野で時代に取り残されつつあるのもまた事実で
す。その事実を活用しながら、長期的に目的を達成する事を中国が
考えている様に思われるのです。


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2010年5月12日水曜日

中国空母艦載機「殲15」の完成度



※写真はSu-33。Novosti Webサイトより転載

中国、空母艦載機の試作機製造

カナダの軍事専門誌「漢和防務評論」5月号は、中国が航空母艦の搭載機とな
る国産戦闘機「殲15」の試作機を昨年10月に製造したと報じた。中国は艦
載機としてロシアから「スホイ33」を購入する交渉を進めていたが、ロシア
は技術転用への懸念などから難色を示していた。中国はウクライナから購入し
たスホイ33と同型の艦載機の技術を応用し、国産での艦載機開発を目指すと
みられる。

試作機を製造したのは遼寧省の軍用機メーカー、瀋陽航空機工業。空母に搭載
しやすいように主翼や水平尾翼を折り畳むことができ、関係者は同誌に「技術
の問題は既に解決した」と語った。今年中に試験飛行を計画。外見はスホイ33
に酷似しているという。

中国は空母建造を計画しているが、短距離の滑走で離着陸できる艦載機の技術
などが課題になっている。艦載機の国産開発・生産に成功すれば、空母建造に
向けた準備が一段と進む。

(日本経済新聞 2010/05/10)


中国は当初、ロシアからSu-33を購入する予定でしたが、40
機以上と見込まれた商談が実際には7機(2機という説もある)に過
ぎなかった事から、ロシアは、中国が、残りの機体を技術盗用して
製造する事を懸念して商談を打ち切ったと言います。その後、中国
は、ウクライナが、ソ連崩壊後にロシアから譲渡されたT10K(
Su-33の試作機)一機を、2007年に購入しています。

上記の記事が正しければ、中国は、T10Kを2007年に購入後、
リバースエンジニアリング手法で解析した上、試作機を三年で完成
させた事になります。

中国は、Su-33の原型であるSu-27をライセンス生産して
いますので、生産そのものについては問題はなかったと思われます
が、陸上機を艦載機に改造する事は、実は、容易ではありません。

Su-33でSu-27から改造された点は以下の諸点です。
・前輪を着艦の衝撃に耐えられるよう二重タイヤで強化。
・着艦時の衝撃に対応する機体後部の構造強化と着艦フック装備。
・発艦時の揚力増加と上空での機動性を高めるため主翼前に全遊動
 式のカナード翼を装備。
・長いテールコーンの短縮。
・空母格納庫での運用を考慮し主翼と水平尾翼が折畳み式に改造。

Su-33の場合、試作機が1987年に飛行した後、量産機の初
飛行が1990年、更に運用が開始されたのは、1994年となっ
ています。

中国がウクライナから入手したのは、Su-33の試作機でしかな
く、その後、運用に移されるまでに実施された、おそらくは数百項
目に及ぶ小改造は、当然の事ながら反映されていません。また、
Su-33そのものも、配備されたのは24機に過ぎず、空母での
運用実績も西側の実績には程遠く、完成度十分とは言い難い様に思
われます。

また、既存の機体を改造するケースの例として、日本のF-2を例
に取ると、1990年に開発が開始され、1995年に初飛行、実
戦配備は2000年になっており、更に、実戦配備後も改造が追加
されており、最近になって漸く、期待された性能を満足する様にな
ったとも言われています。

この様な諸点を考えれば、中国が如何に優秀な航空機設計製造能力
を持っていたとしても「殲15」の艦載機としての完成度は、とて
も高いものとは言えない事は、容易に想像がつくと思われるのです。

近年、中国経済の急成長と共に、中国海軍の日本近海での活動が活
発化しており、空母機動部隊の保有も間近いものと思われますが、
我々は、それをいたずらに恐れる必要はないと同時に、それに対す
る冷静で的確な対応が必要であると思われます。


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2010年4月26日月曜日

韓国哨戒艦沈没 魚雷が原因と判っても報復ができない韓国?

哨戒艦沈没:魚雷破片の発見がカギ

金泰栄(キム・テヨン)国防部長官は25日、沈没原因について、「重魚雷によ
るバブルジェット効果(水中爆発による衝撃波効果)が最も(原因に)近いの
ではないかと思う」と述べ、北朝鮮の重魚雷が「捜査線上」に浮上した。
北朝鮮以外の国による魚雷攻撃は想像できないためだ。また、「天安」の破損
状況からみて、弾頭重量が軽い軽魚雷ではなく、重魚雷が使われた可能性が高
いとみられている。韓国軍によれば、北朝鮮が保有している重魚雷は、魚-3G
型、53-59型、53-56型、ET80-A型の4種類あるという。

消息筋は、北朝鮮の魚雷攻撃が原因との結論が出た場合は、中国製の魚-3G型
魚雷が使われた可能性があると指摘した。同型魚雷は1980年代に中国で開発さ
れたもので、船のスクリュー音、航跡を追跡して攻撃する「受動(パッシブ)
音響魚雷」に分類される。北朝鮮がこの魚雷を使用したとすれば、艦船から出
る磁場を感知して爆発する「近接信管」が搭載されていた可能性が高い。ガス
タービン室下部の船体は最も磁場が強く、その付近で船外爆発が起きたとみら
れるからだ。一部では新型の中国製の対艦魚雷の魚-6型が使用された可能性
も指摘されている。

しかし、音響魚雷を目標に正確に命中させるためには、魚雷を発射した潜水艦
による一定の誘導が必要となるため、北朝鮮のサンオ級潜水艦などの性能から
みて、可能性が低いとの指摘も少なくない。そうなると、発射後に直進する
「直走魚雷」の可能性が高まる。一定の水深で爆発するように設定した直走魚
雷に磁気感応センサーを搭載して発射したとの見方だ。53-59型、53-56型魚
雷は、旧ソ連で開発され、中国や北朝鮮に輸出されたもので、直走魚雷に該当
する。

調査団による次の課題は、状況からみてほぼ確実視される魚雷の物証、つまり
破片を発見することだ。これまで軍は沈没現場から約330点の破片を採集し、
確認作業を進めているが、「天安」の破片がほとんどで、魚雷や機雷の破片は
まだ発見されていないという。

軍当局は24日、「天安」の船体引き揚げ作業が終了したことを受け、25日から
は破片採集を最優先に掲げ、海軍准将の指揮下で作戦を展開している。海軍は
沈没現場の海底を器具で掘り起こすけた網漁船を投入し、破片の採集を進める
ことにした。けた網漁船は長さ40センチの鉤(かぎ)50個を5センチ間隔で取
り付けたけた網を利用し、海底に埋まっている破片を掘り起こす。泥であれば
30センチ、砂であれば10-20センチ下に埋まっている破片も採集できる。海軍
は底引き網漁船も捜索作業に投入する。

(朝鮮日報 2010/04/26)


哨戒艦の沈没原因は、国籍不明の潜水艦から発射された磁気起爆式
長魚雷という見方が強まっています。状況証拠から見て、北朝鮮の
攻撃によるものとほぼ断言できますが、さて韓国は、報復を行う事
ができるでしょうか。

結論を先に述べてしまえば、それは難しいと言わざるを得ません。
それは、沈没原因の証拠として魚雷の一部が、見つかった処で同じ
です。北朝鮮が、使用した魚雷は恐らくは中国製であり、可能性と
言う点では、中国が使用した可能性がゼロではありません。

韓国は、単独で、報復を行う事なく、国連の場に持ち出して多国間
で、北朝鮮を非難するとしていますが、北朝鮮は、自らの関与を否
認している状況では、韓国は、北朝鮮の関与を示す確実な証拠を提
示する必要があります。

国連で安全保障問題を議論する場は、安全保障理事会です。周知の
通り常任理事国五ヶ国が同意しなければ、北朝鮮を非難する議長声
明すら出せません。

中国からすれば、自国産の魚雷の使用をすんなり認めなければなら
ない理由がありません。また、同盟国への制裁に合意する事で、自
国への負担の増加を甘受する理由もありません。中国は、まず確実
に更なる証拠固めの必要を主張し、結論の先送りを狙う筈です。

韓国が本当に報復する必要を感じたのであれば、事件発生後間髪を
入れずに、報復攻撃を行うべきであったし、報復攻撃を行っても、
それをどの国も非難しなかった筈です。韓国国防部は、まず確実に
北朝鮮の攻撃である事を大統領に伝えている事が判っています。韓
国は、理論上、北朝鮮と戦争状態にあり、過去数十年の間、韓国以
外から攻撃を受けた事がなく、両国海軍は過去何度も砲火を交わし
ているからです。

原因が自明であっても、報復を即座に行わないのは、李明博政権に
その気がなかったからに他なりません。その理由は、既に何度か述
べている様に、韓国には、G20のホスト国と言う、事を大きくし
たくない理由があるからです。

亡くなった40名余の水兵には、可哀想ですが、李政権が仇を取っ
てくれる可能性は、限りなくゼロと言わざるをえないのです。


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2010年2月19日金曜日

向かい風を受ける様になった中国


【国際情勢分析】中国は責任ある大国か

経済や軍事で力を増す中国と、超大国といわれた米国の不協和音が鳴りやまな
い。イランの核開発問題などで、米国は中国に責任ある行動を求めているもの
の、中国の協力が得られないことが理由の一つだ。米中「G2時代」が到来し
たといわれる中、現実には米国だけでは中国を御することはできないとの指摘
もされている。

■イラン制裁に難色

まずイラン問題。国際社会の制止を無視して核開発を続けるイランは最近、濃
縮度20%のウラン製造に成功したと発表した。国連安全保障理事会は、イラ
ンへの制裁を検討しているものの、拒否権を持つ中国が難色を示している。

このままイランが核武装してしまえば、その責めは誰が負うのか。オーストラ
リア議会外交小委員会委員長のマイケル・ダンビー氏は、2月11日付の米紙
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)・電子版への寄稿で、「もし戦争
が起きたら、その責任の多くは中国政府にあることになろう」と論じた。

貧富の格差が大きい中国では、「国民は生活水準の恒常的向上を期待するよう
になっており、これが中国共産党政権の最大の弱み」(WSJ)である。従っ
て、共産党政権はエネルギー獲得に躍起で、「支配と確実性を手に入れるには、
特定の産油国、できれば、欧米と政治的に対立し、欧米以外の国の擁護と友情
を必要としている国と取引すること」(WSJ)を望んでいる。

国連安保理の議論がまとまらず、イランの暴走を許せば、その軍事力の矛先は
欧米に向くかもしれないし、イスラエルがイランに先制攻撃する恐れもある。
その場合「戦争という重大な危機がもたらされることになる」(WSJ)という。

■台湾情勢への幻想

次に米国の台湾への武器売却問題。バラク・オバマ米政権の売却決定で、中国
は米国に激しく反発している。米シンクタンク、ブルッキングス研究所のリチ
ャード・ブッシュ上席研究員は、2月11日付の米紙ロサンゼルス・タイムズ
(LA)・電子版への寄稿で、米政府が中台統一を妨害しようとしていると中国の
関係者は思いこみがちだが、「これほど間違った見方はない。米国が台湾の防
衛を支援するのは、台湾が不安を抱いているからで、その不安は中国がとった
政策の結果だ」と中国責任論を展開した。

台湾では、独立を模索した陳水扁(ちん・すいへん)政権に代わり、対中融和
派の馬英九(ば・えいきゅう)政権が誕生し、台湾有事の危機が和らいだとみ
る米国は胸をなでおろしている。

だが、実際には中国の軍備増強は休むことなく続いており、ブッシュ氏は、米
中台のいずれの利益にもならないのに、「なぜ中国は、緊張緩和という新たな
プラスの現実に合わせて変わろうとしないのか」(LA)と疑問を投げかけた。

とはいえ、覇権国家への野望が見え隠れする中国にこうした理性を求めるのは
むなしい。さらにそれが、米国で中国、台湾通として知られるブッシュ氏の見
方であるというのだから、米国は台湾情勢に甘い幻想を抱いているのかもしれ
ない。

■「G2論」の空虚さ

米エール大のジェフリー・ガーテン教授は2月9日付の英紙フィナンシャル・
タイムズ・アジア版への寄稿で、「米国は10年前とは比べものにならないほ
ど弱体化している」と指摘。「中国のその凝り固まった立場から動かすことが
できる唯一の方策」は「多国間協定の網を作り上げること」であり、欧州や日
本、新興の大国と協力して当たるべきだと説いた。米国の威光の陰りと中国の
責任感のない対応は、「G2論」の空虚さを物語っている。

(Sankei IZA 2010/02/19)


輝かしい北京五輪の成功、リーマンショックを物ともしない経済の
大躍進、次々に中国企業の手に落ちる世界の資源、中国を更なる成
功に導く共産党の指導力、オバマ民主党政権ですら人権問題を指摘
できない程の政治的存在感、ダボス会議で世界に指導的エリートか
らも持て囃されるG2国家の旗頭、胡錦濤主席、温家宝首相。
2008年~2009年の中国は、まさに我が世の春を謳歌していて、全く
陰りがない印象すら与えていました。

しかし、2010年に入ってから、中国を取り巻く環境は一変しました。
コペンハーゲンで行われたCOP15を契機に、中国に対する欧米の風
圧が一変したのです。この会議で、中国は、ベネズエラやキューバ、
スーダンと言った反欧米国家を使って、米欧主導による二酸化炭素
排出規制合意を徹底的に阻みました。また、欧米各国が首脳を送っ
て合意形成に務めたのに対し、中国は交渉担当者しか派遣しないと
いう非礼を敢えてした上で、上記の様に交渉が暗礁に乗り上げる様
に影で糸を引いていた訳です。欧米各国から見て、黒幕は明らかで
あり、その非協調的態度は、欧米各国に中国異質論を再確認するも
のとなりました。

もともと中国の経済発展は、為替レートを市場実勢に任せず、意図
的に人民元を低く抑える事で、他国の市場を奪う近隣窮乏化政策に
よるものでした。また、2009年に鉄鉱石の価格交渉で、鉱山会社リ
オ・ティントの中国駐在員をスパイ容疑で逮捕勾留する等、非常識
とも言える価格交渉態度にでました。それに輪をかけたのが2010年
初に明らかになった中国からGoogleへのサイバー攻撃と違法アクセ
スです。一時は、中国当局の検閲を甘受してでも中国市場に進出し
ようとしたGoogleでしたが、この事実により撤退に向け舵を切りま
した。また、リオ・ティントは2010年の鉄鉱石の価格交渉プロセス
から最大需要家であるにも関わらず中国を排除し、日本との交渉結
果を中国に提示し、受け入れなければ中国への輸出を行わないとい
う態度に出るようになりました。

中国に対する更なる圧力になったのが、米国による台湾向けの武器
売却です。最新鋭戦闘機や潜水艦と言った派手な兵器の供与は手控
えられましたが、パトリオットPAC3は、明らかに台湾に向けられた
中国の弾道ミサイルから台湾を防御する事を目的にしたものでした。
記事にも取り上げられて様に、中台関係の緊張緩和にも関わらず、
戦力の増強を継続する中国に対するオバマ政権からの警告とも言え
る決定でした。

これに対し中国は、米国との軍事交流を停止する他、兵器を供給す
る企業を禁輸対象とする等、過剰反応とも言えるリアクションを見
せました。それに対し、オバマ政権も、今まで控えていたダライ・
ラマ14世との首脳会談を急遽実現する等、政治的エスカレーション
に進んできています。それは、米中二ヶ国による世界支配(パック
ス・シナエ・アメリカーナ)構想である「G2論」の幻想を吹き飛
ばすものであったと言えます。

我が国においても日本経済新聞グループや多くの左翼系メディアの
ように、中国の近年の経済発展に幻惑される企業や人士が多かった
のですが、一歩引き下がって冷静に考えれば、この動きは、まさに
第二次大戦直前に、ドイツの勢力拡大に眩惑され、バスに乗り遅れ
るなと、それまでの対英米協調路線から三国同盟へ国策を誤って行
った経緯を彷彿させる動きであると言えます。

それにしても、民主党政権が発足してから4ヶ月足らずであるにも
関わらず、与党の幹事長が、百数十人の国会議員を引き連れて中国
を訪れ、朝貢外交を行い、米国の大統領が、日本との付き合い方が
分からないと韓国大統領に愚痴る時代になってきました。

残念ながら、民主党には、最低でも、あと3年半、日本を自由に統
治できる権利が与えられています。その時間が日本にとって取り返
しのつかないものにならない様、心から祈りたいと思います。


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2009年11月17日火曜日

Just a demonstration! Chinese real size aircraft carrier mockup. 見栄以外の意味はあまりない中国の空母実物大模型


※写真上は、朝日新聞サイトから転載
写真下は、china-defense-mashup.comから転載

中国空母、全長300メートル 武漢に実物大の模型

中国の内陸部、湖北省武漢市にある中国艦船設計研究センターに、実物大の空
母の模型が造られた。中国初の国産空母の建造に向けた動きだ。

同センターは、中国軍が2015年を目標に進める空母建造の6拠点の一つ。
軍関係者によると、模型の建設は08年末に始まり、全長は約300メートル。
レーダーや電気配線が設置され、実際の運用に備え電波の混信を調べるなどの
テストをしている。甲板部分にはシートで覆われたロシア製戦闘機スホイ33
とヘリコプターの模型が置かれている。

訓練用空母として大連で改修している旧ソ連軍のワリャーク(6万トン級)と
同型で、実際に建造する空母もこれと同じになる可能性が高い。

中国軍は空母建造計画を公表していないが、香港在住の軍事評論家、平可夫氏
は「この模型によって空母建造が完全に裏付けられた」と指摘。ロシアの軍関
係者は「取り付けられたレーダーは本物で、建造が順調に進んでいることを示
している」とみている。

(朝日新聞 2009/11/17)


一見、如何にも空母建造の為の準備を行っていますよと言わんばか
りの様に見える空母実物大模型ですが、空母建造にそれ程役に立つ
のか眉に唾をつけた方が良さそうです。

この様な実物大の模型を作った似たような事例は、中国以外でも見
る事ができます。例えば映画製作用の実物大模型です。尾道に作ら
れた「男達の大和」の実物大セットは、一時、話題に上りました。
それ以外にも「タイタニック」や「トラ・トラ・トラ」用にも実物
大や実物大に近い模型が製作されています。

また、博物館等の用途で実物の船を模して建設されたものがありま
す。晴海にある「船の科学館」がその一例ですが、中国にもニミッ
ツ級空母の略実物大の建造物を博物館にしている例があります。
(実際に使われた戦艦、空母、客船を博物館等の施設に利用したも
ありますが、実物大模型ではありませんので、除きます。)

では、船舶の設計を行う上で、この様な実物大模型を作成する事は
意味があるのでしょうか?
部分的な実物大模型やRCSをチェックする為の縮小模型を作成す
る事はありますが、実物の艦船を建造する為に、ここまで大きな模
型を作った例は、私の知る限りではありません。(勿論、私の知ら
ない例が存在する可能性はあります。)
部分的な実物大模型というのは、艦内機器等の配置を確認する為の
モックアップです。新型艦の場合は一番艦の建造時にモックアップ
を用いて機器配置の適切さの検証が行われています。
また、イージスシステムの実戦配備に先立って、イージス巡洋艦の
上部構造物を模した建造物をNY州近郊に建造し、それにイージス
システムのプロトタイプを設置して、全米でも一番と言われる航空
交通量を利用し、航空機の探知・追跡実験を継続的に実施した事が
あります。

モックアップに共通しているのは、実物大模型でしか出来ない実験
を目的的に製作される事です。実験目的に合わない部分は、通常は
徹底的に簡略化されます。ハリボテと言っても良い位です。

今回の中国の空母実物大模型の最大の疑問は、建設目的が良く判ら
ないという一点に尽きると思われます。
空母用の艦橋に設置する電子機器のモックアップとするならば、飛
行甲板部分は不要ですし、空母艦載機のSTOBALの訓練に使用するの
であれば、ビルの屋上に作るのではなく、地上にスキージャンプ部
分を作れば良いだけです。実際にロシアはそうしています。空母に
設置するエレベータの試験施設としては、格納庫の高さが足りません。

という事で、写真をよく見ると、朝日新聞のサイトから転載した写
真では如何にも実物大模型と言う感じですが、この施設を後方から
写した写真では、実物通りではない事が判ります。つまりこの建物
は、右舷前方からは実物の様に見えますが、艦尾と左舷は、実物と
は違い特に艦尾は実物以上に大きさが取られていると思われるので
す。記事では、「実際の運用に備え電波の混信を調べるなどのテス
トをしている」と書かれています。実際に、そういうテストが行わ
れたのかも知れませんが、実態としては、空母研究センターとして、
諸外国に対するデモンストレーションとして、見栄で空母としての
外観を整えている様に思えてならないのです。


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