2009年3月24日火曜日

ミサイル防衛 政府高官がこの程度の認識では困ったもの


※写真は防衛庁サイトから転載

政府筋「7、8分たったら終わっている」北ミサイル迎撃に懸念

政府筋は23日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合に備える日本のミサイ
ル防衛(MD)システムについて、「(事前予告がなければ、ミサイル発射か
ら)7、8分たったら、浜田靖一防衛相から麻生太郎首相の所に報告に行った
ら終わってる」と述べ、政府内での迎撃手続きに時間がかかると、撃ち落とす
チャンスがなくなるとの見方を示した。
また、「『鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなもんだ。当たると思うか』と、石
破(農水相)と昔、話したことがある。すると、(石破氏は)『当たると思う』
と答えた」と、石破氏とのやりとりを紹介した。
さらに、政府筋は、「『実験で今から撃ちますよと言って、ぴゅーっと来るか
ら当たるんで、いきなり撃たれたら当たらないよ』と言ったら、石破氏は『そ
れは信じようよ』と語った」とも述べた。

(産経新聞 2009/3/24)


産経新聞と他の新聞のニュアンスは多少違いますが、昨日、政府筋
が、この様な事を述べたそうです。
ここでいう政府筋とは、マスコミ語法であり、内閣官房副長官や内
閣総理大臣秘書官を指します。内閣官房副長官は現在、松本純氏と
鴻池祥肇氏の二名です。発言の中で、石破氏とのやり取りを紹介し
ていますが、概ね同格というイメージを与えますので両氏の内で年
齢的に近い松本氏の可能性が高いのかも知れません。
もっとも、松本氏、鴻池氏共に安全保障関係の経歴はなく、技術的
な面の素養もなさそうです。

さて、この発言は、前段と後段に分かれます。この内、前段につい
ては、全くその通りで、いつ発射されるか判らない弾道ミサイルを
迎撃するミサイル防衛を行う上で、発射から迎撃までのリアクショ
ンタイムを極力短縮する必要があります。ミサイルが発射されてか
ら、防衛相や総理に判断を求めている時間はありません。

米軍の早期警戒衛星情報受信から迎撃完了まで、全自動で行われな
ければ、とてもミサイル防衛などできる訳はないのです。
もしも、人的判断が介在するとすれば、邀撃ミサイルを発射するか
どうかの最終判定の部分程度かと思われます。それも時間をかける
訳には行かないので、手順的要件がなされた事を確認する程度で発
射をGOする形式チェックになると思われます。この辺の判断は、
航空機の領空侵犯時等や米国がミサイル防衛を行う際の手順がある
ので、それを参照して作成される筈です。

政府高官として問題であるのは、後段です。
「鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなもんだ。」とありますが、それ
が可能でないならば、MDなどありえない事になります。
実は、鉄砲の弾は、速度がせいぜいマッハ2程度ですが、MDの場
合はそれより2~3倍の速度の物体を撃ち落す事になります。その
点では、より難易度は高いのですが、実際にそれを行う事が、技術
的に可能となっているのです。米国は三十数回のテストを行い、そ
の内の、8割以上のテストで成功を収めています。その中には、無
警告発射された弾道ミサイル迎撃試験も含まれています。

以前のエントリーでも、取り上げましたが、日本が行った2回の実
射試験でも、1回目は、警告発射でしたが、二回目は無警告発射で
あり、結果的に迎撃に失敗したものの、手順的には、無警告発射に
対しても対応できてていた事が確認されています。SM-3ミサイ
ル本体が、正常に動作していれば、成功となった筈の試験でした。
実戦では、同時に同一目標に一発しか発射されない事もありません
ので、この種の失敗は避ける事が出来ます。

石破氏は、当時は、この政府高官に対して、『それは信じようよ』
と語ったそうですが、現時点であれば、「実験を何度もやって充分
成功しているよ。」と述べる筈です。
その点で、是非、この政府高官には、国民の政府に対する信頼を失
わせる様な発言をする前に、ミサイル防衛に関する知識をアップデ
ートして欲しいものだと思わずにはいられません。


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