2010年3月19日金曜日

上海で「繁栄する平壌」を宣伝する飢えた北朝鮮

北朝鮮、上海万博で「繁栄する平壌」宣伝へ

中国国営新華社通信は18日、北朝鮮が5月に開幕する上海万博に「繁栄する
平壌」をテーマに出展、映像や模型などで「朝鮮人民の強盛大国建設」を宣伝
する計画を進めていると伝えた。北朝鮮が国際博覧会に出展するのは初めて。

北朝鮮のパビリオンは平壌の歴史文物や現代建築、民俗文化などを展示する。
万博期間中の9月6日は「北朝鮮デー」の活動も行われる見通しだ。

(産経新聞 2010/3/19)


<北朝鮮>デノミ失敗で責任者処刑か

聯合ニュースは18日、北朝鮮が昨年実施したデノミネーション(貨幣呼称単
位の変更)の実務責任者だった朝鮮労働党の朴南基(パク・ナムギ)前党財政
計画部長(76)が先週、責任を問われて処刑されたと報じた。複数の消息筋
の話として伝えた。朴前部長はデノミ失敗で朝鮮労働党から解任されていた。

報道によると、朴前部長は平壌・順安区域の射撃場で銃殺されたという。貨幣
改革の失敗で民心が悪化し、金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継体制作
りにも悪影響が出たため、反革命分子として処刑したという消息筋の話を伝えた。

北朝鮮は昨年11月末、旧貨幣100ウォンを新貨幣1ウォンとするデノミを
実施。インフレ抑制や計画経済への回帰を狙ったとみられるが、逆に物価暴騰
や流通の停滞を招いた。

(毎日新聞 2010/3/18)


北、デノミ失敗で党幹部逮捕か=韓国紙

17日付の韓国夕刊紙・文化日報は消息筋の話として、北朝鮮が昨年実施したデ
ノミ(通貨呼称単位の変更)の失敗で責任を問われ、労働党計画財政部長を解
任されたと伝えられる朴南基氏が、1月末に逮捕されたと報じた。
同紙によると、朴氏は1月末に平壌で開かれた貨幣改革報告大会の最終日に
「逆賊」と公の場で批判を受け、その場で逮捕された。同氏は、金正日総書記
が1月初めに行った発電所視察に随行して以降、公開活動がなく、後任も確認
されていないという。 

(時事通信 2010/3/17)


日本では、党内では議論が出来ないとマスコミに幹事長の悪口を言
った副幹事長が解任され、それにコメントを求められた党首が愚に
もつかない逃げ口上を言ったりと党内民主主義の欠如を露呈した政
党がありますが、今日、取り上げるのは、そういう事とは関係なく
指導者の失政の責任を部下が代りに取らされたと言うありがちなお
話です。

北朝鮮のデノミの失敗に関しては、このブログでも、過去にも三回
程取り上げています。情報が限られていますので、アバウトな話に
なってしまいましたが、大筋では、想像した通りの状況になってき
ています。

悪い言い方をすれば、北朝鮮は貨幣経済から物々交換経済に退行し
ています。日本でも、第二次大戦後の混乱期に、そういう時期があ
りましたが、強力なインフレ対策が行われた事や、食料の緊急輸入
が行われたこともあって、通常の貨幣経済への回復が実現しました。

つまり、今回の経済混乱を収拾する為には、政治への信頼性を回復
する事が必要であり、その一番の有効な手段は、食料の充分な供給
を政府が責任を持って行う事なのです。政府と政府の発行する貨幣
への信頼が回復すれば、現在は退蔵されている物資が市場に供給さ
れる様になるという訳です。

北朝鮮が、外資規制を緩和し、中国からの資金導入を図ろうとして
いるのも、韓国を脅かして、金剛山観光を再開させようとしている
のも、全ては、餓死者の発生を抑える為に、食料買付を行いたいか
らに他なりません。但し、これらは北朝鮮がすぐにキャッシュを手
に出来ると即効性はありません。(金剛山観光の方は、手早くキャ
ッシュが得られるかも知れません。) 中国からの緊急輸入は手持
ち外貨の範囲行わざるを得ませんでした。しかし、その実態は伝え
られる報道で見る限り、必ずしも充分なものではなかったようです。

金正日は、ルクセンブルグに4800億円相当の資産を退避させている
と報じられています(ルクセンブルグは、その後否定)が、自分のお
金を国民の救済に提供する気はなかったようです。

それでも、事態は収拾しなければなりません。その対策の一つが、
身代わりの処刑です。デノミの実施担当者に全ての罪が擦り付けら
れ、サーチナによれば、朴前財政計画部長は「大地主の息子。革命
の戦列にもぐりこみ、故意に国家経済を窮地におとしいれた」反革
命分子として処刑されたそうです。ただ、これで、党と指導者の無
謬性が本当に守られたかという点には疑問符がつきます。

もう一つの対策は、敵を外に作る事で、内部の結束を図るという伝
統的な手段です。米韓合同演習を戦争準備と煽ったり、韓国に対し
高圧的に出るのも、敵を外に作って国民の不満を外部に向ける事が
目的に他なりません。

本来は、外国や国際機関に援助を求めるという策もあるのですが、
今回は、残念な事に、国連や韓国に援助を求める事は、口が裂けて
も言えません。昨年秋の段階で国連の申し入れた食糧援助を断って
いるからで、今更、援助を言い出すのは、金正日の面子の問題にな
っているのかも知れません。

国内で餓死者が出ている現状からすれば、一番上の記事の様に、上
海万博に「繁栄する平壌」というテーマで出展するのは、殆どブラッ
ク・ジョークの世界の様に思えますが、自国初開催の万博に過去最
多の参加国を集めたい宗主国様に媚を売ったり、貸しを作る事も、
金正日の中では重要なのでしょう。(物々交換への回帰や、万博へ
の初参加という処にも、百年以上時代が違う様な感じを受けます。)

勿論、朝鮮労働党のエリートしか居住を許されていない平壌は、食
料不足の中でも、繁栄を享受していると言えなくもありません。
北朝鮮国民の「苦難の行軍」は、可哀想な事に、まだまだ終わりそう
にありません。


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2010年3月18日木曜日

なぜ韓国企業は元気で、日本企業はさっぱりなのか?7つの理由

「日本が韓国企業に負ける7つの理由」

●韓国企業は、基礎研究にカネをかけていないから利益率が高い。その点、日
本企業は無駄な投資が多い。
(思えば昔の日本企業も、応用研究だけで楽して儲けていると批難されたもの
であった)。

●韓国企業は、新興国市場でやりたい放題をやっている。その点、日本企業は
コンプライアンス過多になっている。
(お行儀が良くなり過ぎてしまったのでしょうか。商社業界も「不毛地帯」の
頃とは様変わりしておりまして・・・)

●韓国企業は、実効税率が1割程度である。だから内部留保が多く、投資額も
増やせる。その点、日本の法人税は高過ぎる。
(でも、それなら日本企業もシンガポールあたりに本社を移せば良いのである。
それができないドメスチック体質が哀しい。もっとも某有名企業は、海外移転
のシミュレーションをやったそうですが)

●韓国企業は、寡占体質への絞込みが出来ている。その点、日本企業は国内の
競合相手が多過ぎる。
(アジア通貨危機の際に、韓国は「ビッグディール」で企業を絞り込んだ。
だからサムソンとLGが世界ブランドになった。日本は総合電機が今も9社もあ
る。これでは海外に出たときに勝負にならない)

●韓国企業は、大胆に若手社員を海外に出している。その点、最近の日本では
商社や外務省でも若手が海外に行きたがらない。
(日本は国内の居心地が良すぎるのかもしれません。こればっかりは手の打ち
ようがないですな)

●韓国企業は、国内市場が狭いために危機感が強い。官民連携も進んでいる。
その点、日本は中途半端に国内市場があるので本気になれない。
(その国内市場も、少子高齢化で先細っているわけです。その点、韓国には北
朝鮮というワイルドカードがありますからなあ・・・・)

→追記:これに次の項目を加えると、「日本が韓国企業に負ける7つの理由」
が完成します。皆さん、流行らせましょう!

●韓国企業はオーナー社長が多いので即断即決で物事が進むが、日本企業はボ
トムアップ式だから意思決定が遅い。
(オーナー経営者は時代遅れの存在だ、などと思っている人が多いようですが、
国際的に見てもけっしてそんなことはないと思いますぞ)

(溜池通信ダイアリー 2010/03/06)


かんべえ先生が、流行らせましょうと呼びかけられている事もあり、
私も経済には、素人ながら少し取り上げてみたいと思います。

カルガリーオリンピックでキムヨナ選手に浅田選手が敗れた事を契
機に、今までも、囁かれていた韓国脅威論が「韓国に学べ論」とし
て表に出てきました。

サムソンが液晶テレビやメモリーデバイス、ヒュンダイが自動車や
造船で日本のメーカーのライバルに成長しているのは、知る人ぞ知
る有名な事実ですが、日本の一般大衆には、ブランドとしての露出
が今まで大きくなかった事もあって知られているとは言えませんで
した。それが、此処へ来て、韓国がリーマン・ショックに上手く対
応出来たと言う評価。それに、日本が民主党政権のゴタゴタの中で、
景気回復が捗々(はかばか)しくない事に加えて、トヨタショックで
今まで磐石と思われた日本製品の質に対する疑問が生じた事による
不安もあって、急速に一般大衆レベルにもそういう認識が広がった
と言える様に思います。(例によって、日経新聞は、連載記事で大
きく「韓国に学べ論」を展開していますが...。)

この「韓国に学べ論」、韓国自身にとっても、耳ざわりの良い議論
であるらしく、早速、韓国マスコミでも大きく取り上げられていま
す。一応、そうは言っても、韓国は日本との貿易収支で大幅な赤字
がある事を指摘して、韓国は日本を凌駕できた訳ではないと慎重な
態度を装っていますが、そこはそれ、そこはかとない誇らしさが匂
って来る記事になっています。

勿論、韓国が今まで達成した事を認めるのに吝(やぶさ)かではあり
ませんが、例えば、今回のリーマン・ショックへの好対応が、一面
でウォン安による輸入品物価の大幅な高騰に喘ぐ国内弱者の犠牲の
上に達成されたものである事や、国内景気自体は、若年失業率が、
十年来の最高水準である事等を考えると中国同様の近隣窮乏化政策
で達成されたものであり、韓国の優位はそれ程磐石なものではない
様に思います。

しかしながら、その一方で、李明博大統領が、EUとのFTA交渉を一
気に妥結させたり、アブダビとの原子炉受注ビジネスに介入して成
功させた事に見られる様に、トップダウン的な政策決定がビジネス
チャンスを作り上げている事もまた事実です。かんべい先生も七つ
の理由の中にもオーナー経営者のトップダウン経営と官民連携の良
さを韓国の勝利要因に上げていますが、日本では、政治が経済の足
を引っ張っているのが実情であり、且つ、官僚も旧態然とした利権
調整の殻を破る事のできない事を見ると、残念な事に、政治セクタ
ーは、どうみても、当分は日本の劣勢は、確定と言わざるを得ない
のです。


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2010年3月15日月曜日

太平洋での潜水艦軍備競争:米国の海中での優位に対する中国の挑戦(3)


※晋級戦略ミサイル原潜。SinoDefence.comより転載

今回は、最終回で、中国の挑戦に対する米国の対応に関する提言と結論です。

米国での水中での優位を維持するには

過去16年間に亘って、中国が潜水艦隊を急速に増強してきたにも拘わらず、ま
た、戦闘司令官達が能力増強を要望していたにも拘わらず、米国はその潜水艦
隊を着実に削減してきた。米国の同盟諸国は、太平洋地域における安全保障環
境の変化に関して、尤もな懸念を表明してきた。

米国も、このバランスの変化を、少なくとも一部は認め、それを強調する様に
なった。海軍は2006年の4ヶ年防衛レビューに示された方針である60%の潜水
艦隊を太平洋に配備する事を正しく実行中である。しかし、縮小しつつある艦
隊の高い割合を配備する事は、潜水艦の合計数を増加させるより有効性が乏し
いのは明らかである。

縮小を停止し、太平洋における米国の海中での覇権の衰退を逆転させる事は、
米国の同盟国を安心させ、支援し、そして、この地域での米国の長期的な利益
を保護する事である。

米国は、以下の諸策を実施すべきである。

・攻撃型潜水艦をよりすばやく建造すること。
議会は、60隻の攻撃型原潜を配備する事を目標とし、ヴァージニア級潜水艦の
調達ペースを少なくとも一年に二隻とすべきである。しかしながら、新しい潜
水艦を新たに一年に二隻調達するだけでは、より急速に退役するロサンゼルス
級潜水艦を更新する事はできない。

・就役期間を延ばすために、ロサンゼルス級潜水艦の一部をオーバーホールし
て、近代化する必要がある。

オーバーホールと近代化には、追加予算が必要である。整備状況の良い古い潜
水艦を、予定通り、退役させるのではなく、就役期間を延長のは、「潜水艦ギ
ャップ」を、短期間で低コストで縮めるには、劇的に潜水艦の建造隻数を増加
させる事より有効だろう。

・より多くの潜水艦を前方展開すること。
現在、グアムに配備されている三隻に加え、東アジアに接近した場所、つまり、
グアム、ハワイ、可能であれば日本に、配備する事は、それらが一番必要とさ
れる場所での配置時間を極大化すると共に、その海域への往復時間を、極小化
する事になる。海軍は、潜水艦母艦を調達する事を考慮すべきである。潜水艦
母艦は、潜水艦にとって臨時の前進基地であり、乗員の交換や武器の補給を可
能とする。

・ディーゼル潜水艦の使用を再検討すること。
議会は、海軍に、地域司令官の要望と使用可能な潜水艦の隻数のギャップを埋
める為に、AIP推進攻撃型潜水艦の有効活用に関する研究を指示すべきである。
短期的には、国内生産が整うまでの間、同盟国から潜水艦を購入しても良い。
米国で通常型潜水艦の使用法を確立する事で、よりしっかりとした対潜訓練を
行う事ができ、米国に、先進的なディーゼル潜水艦を台湾に販売するというオ
プションを与える事になる。

・水中での戦力倍加要素の研究・開発・配備を進めること。
無人海中車両(UUV)により、既存の海中兵器、プラットホーム、センサーは、
航続力、可能性、強力さを増大することができる。しかしながら、UUVは、攻
撃型潜水艦を置き換えるものと考えてはならない。米国は、引き続き、予見で
きる将来に亘って、有人潜水艦を配備する事が必要であろう。そして、潜在的
な脅威の発達に対抗して、その能力を改善し拡張する必要がある。

・対潜水艦戦(ASW)能力を強化すること。
萎縮してしまった米国のASW能力は、とりわけ懸念材料である。訓練されたASW
要員を養成するには、数年に亘る集中的な訓練が必要とされる。議会は、ASW
能力を質的にも量的にも拡充する為、安定的でかつ十分な予算を手当てしなけ
ればならない。とりわけ、議会は、ASWプラットホームを量的に拡大するため、
P-8計画の加速と、DDG-1000級の建造や曳航式ソナーを装備したDDG-51級の改
装により、より多くの水上艦艇の建造を行うべきである。

・同盟国や友好国の潜水艦戦および対潜水艦戦能力を向上する為の共同訓練を
行うこと。

これらの努力は、より頻度の高い集中的な多国間演習や機動演習、技術の共有
や共同計画を包含するものである。友好的な外国海軍の能力や可能性を高める
事は、米国にとって、特定の緊急事態や作戦への米国の資源の割り当てを削減
できる事になり、それゆえ、米国の潜水艦を別の緊急の用途へ転用する事を可
能にする。

・軍事担当者間のチャネルを用いて、安全保障問題に関して、中国が透明性を
高める方向に勧奨すること。

軍事面に関して、中国が透明性を拡大することは、中国の海軍建設に関する懸
念や問題を解決したり緩和するのに役立つに違いない。より深く理解する事で、
将来発生する米国と中国の軍隊が関係する事件を防止できたり、緊張を弱める
事ができるかもしれない。中国が、国際的な共通慣行に反して、米国の軍事担
当者に、最近のミサイル防衛試験についての事前通知を行わなかったことは、
透明性を高める努力を弱め、答える事のできない多くの疑問を導くことになった。

結論

太平洋地域と東アジアにおける安全保障環境の変化は、米国の同盟諸国と友好
諸国に深刻な懸念を生じさせている。いくつかの国は、積極的な海軍建設に乗
り出しており、オーストラリアは、公けに、その軍事増強を太平洋における中
国と米国のバランスの変化に対応したものであると関連づけている。

米国海軍は引き続き、世界で最強であり、もっとも訓練が行き届き、もっとも
有力な潜水艦隊を保有している。しかし、その隻数は減少しており、その戦力
は、既存の作戦と、他に与えられた任務で余裕がなくなっている。とりわけ、
米国潜水艦隊が今以上に継続的に縮小すれば、米国の太平洋の海中での覇権が
脅かされ、それゆえ、東アジアや太平洋地域で海軍が効果的に作戦を実行する
能力が深刻に蝕まれる事態も考えられる。

米国がその潜水艦隊を再建し、海軍の対潜水艦戦能力が改善しなければ、太平
洋での米軍の優位は、引き続き、弱まっていくことになる。そして、それは、
米国と同盟国と友好国を、本来は、避ける事ができる政治的、経済的な危機に
導くかもしれない。


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