2009年11月20日金曜日

Immortal spacecraft HAYABUSA!! 不死身の「はやぶさ」!

※イオンエンジンの点火のイメージ。JAXAサイトから転載

探査機「はやぶさ」、奇跡の復活…予定通り帰還へ

奇跡の復活――。4台あるエンジンのうち3台が停止し、小惑星イトカワから
地球への帰還が危ぶまれていた日本の探査機「はやぶさ」について、宇宙航空
研究開発機構は19日、故障していた2台のエンジンを組み合わせて、1台分
のエンジンの推進力を得ることに成功したと発表した。

もう1台のエンジンの温存が可能となり、予定通り来年6月に地球へ帰還でき
る見通しとなった。

はやぶさは、2003年5月の打ち上げ直後に1台のエンジンがトラブルで停
止。その後も様々な機体のトラブルに見舞われたが、05年11月に地球から
約3億キロ・メートル離れたイトカワに着陸した。07年4月には、もう一つ
のエンジンの部品が劣化して、運用を中止した。

満身創痍(そうい)の機体は、残る2台のエンジンを交互に運用して地球への帰
還を目指した。しかし、うち1台が、今月9日に故障していた。

エンジン復活に向け、宇宙機構は、故障した3台のうち、早い段階で運転を中
止したエンジン2台に着目。正常に動く部品同士を電子回路でつなぐ「離れ業」
で、互いの故障を補う形でエンジン1台分の推進力を出すことに成功。電子回
路は、万一に備え、「エンジン間をつないでおいた」ものだった。

復活したエンジンは、順調に作動している。電力、燃料の消費は、2倍になる
が、電力は太陽電池によって補給できる見通し。燃料にも余裕があるという。

宇宙機構の川口淳一郎プロジェクトマネージャは「動いている方が奇跡的だ。
予断を許さないが、万一に備えた回路が功を奏し、電力補給できるという幸運
にも恵まれた」と話している。

(読売新聞 2009/11/19)



下に引用しているのは、2ちゃんねるで定番になっている「はやぶさ」
不死身神話の経緯です。
これを読まれれば、「はやぶさ」が現在運用されているのが、如何に
奇跡的であるか、ご理解頂けると思いますし、「はやぶさ」の運用を
担当しているJAXAの担当チームが、正に超人的なトラブル対応と運
用努力を行ってきた事が判ると思います。今回民主党が行った仕分
けで、JAXAの衛星・探査機関連予算は、10%以上の削減を余儀なく
されると報じられています。
その一方で、愚にも付かない巡回子供劇が子供に夢を与えるからと
100%の予算が確保されました。

技術立国日本にとって、巡回子供劇団に100%の予算を確保するのが
正しいのか、宇宙開発を非常に効率的に実施しているJAXAの予算を
一律10%削るのが正しいのか、私には自明に思えます。しかし、民
主党の考えは違っているようであり、今回の「はやぶさ」復活劇を感
動をもって見守るにつけ、その様なJAXA技術者の努力を正当に評価
できない政党が政権を持っている事が非常に残念であると言わざる
を得ません。

なお、「はやぶさ」について、こんな故障が起こらない様にしっかり
作れば良いという議論をされる方がいますが、「はやぶさ」は小惑星
探査機ですが、MUSES-C“Mu Space Engineering Spacecraft”(ミ
ュー・ロケットで打ち上げる工学実験探査機)のコードネームから
判る様に、将来の本格的なサンプルリターン探査に必須で鍵となる
技術を実証する為の工学技術実証衛星であり、正に、その目的通り
にミッションを遂行していると言えると思います。また、この様に
大変な苦労を通して手に入れたノウハウを簡単に放棄して良い訳が
ないとも思うのです。


◎「はやぶさ」は、本来であればリアクションホイール3個で姿勢制
御を行う様になっています。

● ホイール1個機能停止。
⇒⇒リアクションホイールの残り2個と化学スラスタで制御。
(ここまでは普通の「こんなこともあろうかと」な範囲でしょう。)

● ホイールさらに1個機能停止!化学スラスタも全損!燃料も全部漏れた!
 漏れた燃料が機体内で凍ってる!!通信も途絶!!!バッテリも壊れた。
 太陽電池パネルは常に太陽を向けなきゃなんない!!!
⇒⇒姿勢が狂っても、ほっとけば持ち直すように設計してたんだよね。こんな
  こともあろうかと。1年以内に60%の確率で通信回復するはず。
 (数ヵ月後)ほうら3ヶ月で通信が繋がった!
⇒⇒とりあえずイオンエンジンの中和器から生キセノン吹かして姿勢制御。
  こんなこともあろうと中和器の向きを微妙にずらしてたんだよね。
⇒⇒機体内をヒーターで暖めてベーキング。爆発しないようにゆっくりとね。
  気化した燃料はそのうち機体外に逃げるだろう。

● 生キセノン吹かしつづけてると地球帰還用の燃料が足らなくない?
⇒⇒あ、風車の原理で太陽光圧を利用して回転させて安定させればよくね?
  こんなこともあろうかと、回転軸が機体の中心を貫くように設計してたんだよ。

● 地球帰還用のカプセルに採取した試料を入れるにはバッテリーの電力が必
 要だなぁ。でも極低温で短絡故障(ショート)してるから下手に充電すると
 爆発しそうだなぁ。
⇒⇒あ、古河電工のおっちゃんが補充電回路で充電する裏技教えてくれた。
  電源オンオフを高速連打すれば良かったんだ、ラッキー。
⇒⇒よし、地球帰還航行開始っと。イオンエンジンは3基生きてるからオッケー。
  ホイールは残り1個だから今のうちに何かいい手を考えておこうっと。

● 地球帰還第一期軌道変換完了。半年お休みして、第二期軌道変換開始。
 イオンエンジンBはどうやら寿命らしい。お疲れさん。残り2基。

● おや、メモリエラー(SEU)か。
⇒⇒良くある良くある。とりあえずセーフホールドモードで指示待ちっと。
  地球から診断してもらってイオンエンジンも再起動出来たので巡航再開。

● 「はやぶさ」イオンエンジン1基に異常」 っっっっきゃーーーっ!
 残りエンジン1基じゃ推進力足らないっ!
⇒⇒スラスタAの中和器とスラスタBのイオン源を組み合せることで、2台合わ
 せて1台のエンジン相当の推進力を得ることができるじゃん、余裕余裕。 ←今回



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2009年11月19日木曜日

Did Hatoyama intend to abandon Japanese claim for Northern territory? 鳩山首相は、北方領土要求を放棄するつもりだったのか?

「北方領土で日ロ会談」を撤回=言葉の軽さ浮き彫りに-鳩山首相

「現実を考えればなかなか難しい。意気込みみたいなものを申し上げた。」 
鳩山由紀夫首相は18日夕、午前中に行った北海道の高橋はるみ知事らとの会
談で、北方領土で日ロ首脳会談を行う案を検討する考えを示したことについて、
記者団に真意をただされるとあっさり撤回した。
首相は会談では「北方四島の択捉島なり国後島で、ロシアのメドベージェフ大
統領と会談できれば、それは一つの考え方だ」と言及。しかし、記者団には「
大統領とそういうところで議論できたら、問題解決に向けて大きく展開するん
じゃないかという思いで申し上げた」と、あくまで意気込みを語ったものだと
釈明した。
主権をめぐりロシアと係争中の北方領土で、首脳会談開催が困難なのは明らか。
首相はそれを承知の上で発言したことを認めた格好で、米軍普天間飛行場移設
問題での発言の迷走と同様、「言葉の軽さ」が問われそうだ。 
(時事通信 2009/11/18)


好意的に考えると鳩山首相としては、日ロの対立の象徴となってい
る北方領土で首脳会談を開く事で、自身の友愛外交を象徴的に歌い
上げたかったのかなと思います。しかし、その様な鳩山首相の思い
とは別に、国際的、外交的な常識としては、領土係争中の土地での
首脳会議に、その領土問題が解決する見込みもないのに参加する事
は、相手側の領土権主張を認めているのに等しい事になります。

昨年の北方領土でのビザなし交流でロシアが出入国カードの提出を
迫ったため、日本側はロシアの北方四島の主権を認める事になると
して拒否し、医療物資を載せたまま根室港に帰航、人道支援事業が
一時中止となる事態となったのも、同じ考え方によるものです。

北海道から選出されている衆議院議員であり、祖父が日ソ国交回復
を実現した功労者である鳩山首相がその事に対して知識がなかった
とは考え難い訳ですから、勘ぐれば、鳩山首相が北方領土を訪問す
るのは、北方領土問題の「全面的解決」に関して余程の成算がある
と想像できる訳で、そうであったからこそ、マスコミが大きく取り
上げたのだと思います。

では、鳩山首相は、どの様な、全面的解決策を考えていたのでしょ
うか。ロシアが、北方領土問題に関して、二島返還論以外の解決を
拒否しているのは、良く知られている処ですし、メドベージェフ大
統領やプーチン首相の「強いロシア」路線からして、三島返還論や
3.5島返還論(領土按分論)であっても、余程、長い交渉が必要と言
うのが大方の見方です。また、鳩山首相の帽子の中に、ロシア製の
手品の種があったとすれば、こんなに簡単に発言を撤回する必要が
逆に無い事になります。つまり、最初の北方領土での首脳会議発言
をした時、鳩山首相は祖父の路線による二島返還論しか頭になかっ
たのではないかと思えるのです。

そして、ここで自身の二島返還論による解決案をはっきりさせてし
まうと、自身と民主党に対する世論の風当たりが懸念されるので、
慌てて撤回したと言う訳です。こう考えると鳩山首相の理想とする
友愛外交とは、すべからく日本の国益放棄を前提にしているの
ではないかと懸念されるのです。


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2009年11月17日火曜日

Just a demonstration! Chinese real size aircraft carrier mockup. 見栄以外の意味はあまりない中国の空母実物大模型


※写真上は、朝日新聞サイトから転載
写真下は、china-defense-mashup.comから転載

中国空母、全長300メートル 武漢に実物大の模型

中国の内陸部、湖北省武漢市にある中国艦船設計研究センターに、実物大の空
母の模型が造られた。中国初の国産空母の建造に向けた動きだ。

同センターは、中国軍が2015年を目標に進める空母建造の6拠点の一つ。
軍関係者によると、模型の建設は08年末に始まり、全長は約300メートル。
レーダーや電気配線が設置され、実際の運用に備え電波の混信を調べるなどの
テストをしている。甲板部分にはシートで覆われたロシア製戦闘機スホイ33
とヘリコプターの模型が置かれている。

訓練用空母として大連で改修している旧ソ連軍のワリャーク(6万トン級)と
同型で、実際に建造する空母もこれと同じになる可能性が高い。

中国軍は空母建造計画を公表していないが、香港在住の軍事評論家、平可夫氏
は「この模型によって空母建造が完全に裏付けられた」と指摘。ロシアの軍関
係者は「取り付けられたレーダーは本物で、建造が順調に進んでいることを示
している」とみている。

(朝日新聞 2009/11/17)


一見、如何にも空母建造の為の準備を行っていますよと言わんばか
りの様に見える空母実物大模型ですが、空母建造にそれ程役に立つ
のか眉に唾をつけた方が良さそうです。

この様な実物大の模型を作った似たような事例は、中国以外でも見
る事ができます。例えば映画製作用の実物大模型です。尾道に作ら
れた「男達の大和」の実物大セットは、一時、話題に上りました。
それ以外にも「タイタニック」や「トラ・トラ・トラ」用にも実物
大や実物大に近い模型が製作されています。

また、博物館等の用途で実物の船を模して建設されたものがありま
す。晴海にある「船の科学館」がその一例ですが、中国にもニミッ
ツ級空母の略実物大の建造物を博物館にしている例があります。
(実際に使われた戦艦、空母、客船を博物館等の施設に利用したも
ありますが、実物大模型ではありませんので、除きます。)

では、船舶の設計を行う上で、この様な実物大模型を作成する事は
意味があるのでしょうか?
部分的な実物大模型やRCSをチェックする為の縮小模型を作成す
る事はありますが、実物の艦船を建造する為に、ここまで大きな模
型を作った例は、私の知る限りではありません。(勿論、私の知ら
ない例が存在する可能性はあります。)
部分的な実物大模型というのは、艦内機器等の配置を確認する為の
モックアップです。新型艦の場合は一番艦の建造時にモックアップ
を用いて機器配置の適切さの検証が行われています。
また、イージスシステムの実戦配備に先立って、イージス巡洋艦の
上部構造物を模した建造物をNY州近郊に建造し、それにイージス
システムのプロトタイプを設置して、全米でも一番と言われる航空
交通量を利用し、航空機の探知・追跡実験を継続的に実施した事が
あります。

モックアップに共通しているのは、実物大模型でしか出来ない実験
を目的的に製作される事です。実験目的に合わない部分は、通常は
徹底的に簡略化されます。ハリボテと言っても良い位です。

今回の中国の空母実物大模型の最大の疑問は、建設目的が良く判ら
ないという一点に尽きると思われます。
空母用の艦橋に設置する電子機器のモックアップとするならば、飛
行甲板部分は不要ですし、空母艦載機のSTOBALの訓練に使用するの
であれば、ビルの屋上に作るのではなく、地上にスキージャンプ部
分を作れば良いだけです。実際にロシアはそうしています。空母に
設置するエレベータの試験施設としては、格納庫の高さが足りません。

という事で、写真をよく見ると、朝日新聞のサイトから転載した写
真では如何にも実物大模型と言う感じですが、この施設を後方から
写した写真では、実物通りではない事が判ります。つまりこの建物
は、右舷前方からは実物の様に見えますが、艦尾と左舷は、実物と
は違い特に艦尾は実物以上に大きさが取られていると思われるので
す。記事では、「実際の運用に備え電波の混信を調べるなどのテス
トをしている」と書かれています。実際に、そういうテストが行わ
れたのかも知れませんが、実態としては、空母研究センターとして、
諸外国に対するデモンストレーションとして、見栄で空母としての
外観を整えている様に思えてならないのです。


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2009年11月16日月曜日

NASA LCROSS crushlander probe found water in the Moon. 月の水を確認したエルクロス探査機

※CGは朝日新聞サイトより転載

月にまとまった量の水 NASA、体当たり探査機で確認

米航空宇宙局(NASA)は13日、無人探査機L(エル)CROSS(クロ
ス)による観測で「月の南極に近いクレーターに凍った水が存在することがわ
かった」と発表した。「かなりまとまった量」といい、将来、月面基地を建設
したときに宇宙飛行士の飲料水として期待されるほか、電気分解によって呼吸
用の酸素やロケット燃料の水素を作れる可能性がある。

10月9日に探査機から切り離したロケットを秒速2.5キロでクレーターに
衝突させた。舞い上がった土砂などの噴出物を分光計と呼ばれる装置で探査機
本体が観測した結果、水蒸気と氷の存在を示す特徴的な光が確認された。

水蒸気はクレーターに存在する氷が衝突時の熱で昇華してできたと考えられ、
90リットル程度の水に相当する氷がクレーターから噴き上がったとみられる。
月全体でどれだけあるかはさらにデータの分析が必要だが、研究チームは衝突
地点について「極端に乾燥した地域である南米チリのアタカマ砂漠よりは少し
湿潤なのではないか」と話した。

月面は乾燥した世界だと考えられてきたが、月面の極域近くのクレーターの底
には、太陽の光が当たらない陰の部分があり、例えば、氷の核を持つ彗星(す
いせい)の衝突でもたらされた氷などが解けずに残っている可能性が指摘され
てきた。

インドの周回探査機などの観測で、月面の広い範囲の砂の表面に水が結合して
存在していることが確認されているが、まとまった量の水が確かめられたのは
今回が初めて。

(朝日新聞 2009/11/14)


エルクロスについては、10月9日のエントリーで取り上げましたが、
そのデータ分析が終わり、その前のインドの月探査機チャンドラヤ
ーンが検出したのと同様、月の南極の永久影の領域に水の存在する
事が証明された様です。二つの別の方法で証明されたのですから、
これで水の存在は確実になったと言えます。

チャンドラヤーンは、NASAが提供した月面鉱物マッピング装置(Moon
Mineralogy Mapper)を搭載していましたが、この観測によって、月
の南極のかなり広い地域から少量ですが、水の分子を検出しました。

これに対しエルクロスは、自身を打ち上げたセントールロケットを
先に月面に衝突させ、それを観測すると共に自身もその直後に月面
に突入し、先のセントールの衝突と合わせ、月面物質をクレータの
縁より高く吹き上げる事で、今度は地上から直接観測を可能とし、
水の検出を確実に行うという目的を持っていました。その点で、エ
ルクロスは、そのミッションの期待通りの成果を確実に達成したと
言えます。

今回検出された水の分量そのものについては、記事にもある通り、
「アタカマ砂漠より少し湿潤」といった程度なので、微量でしかあ
りません。これをどの程度、有効に活用できるかは、月面でレゴリ
スを収集し、そこから水分を抽出するコストと、地球から持ち込む
コストとの見合いと言う事になります。勿論、両者ともに、技術進
歩によって変動する数字になりますから、現時点で評価しても、あ
まり意味はありません。

また、月面全体でどの程度水が存在するかについても、今後の月探
査の成果待ちと言えますし、その評価の為にも、有人月探査が必要
となるかも知れません。

しかしながら、先日から取り上げている有人探査計画諮問委員会は
今回の発見に関して重要な発見ではあるが、月を有人探査の目標か
ら外すと言う委員会の勧告を変更するものではないと述べています。

しかし、それにしても、将来、月面基地を建設した時に宇宙飛行士
の飲料水として利用可能で、電気分解すれば、呼吸用の酸素やロケ
ット燃料になる水素を作る事ができる水を地球から運ぶ必要がなく
なる可能性があるというのは、今後の人類の月面での活動に計り知
れない利益を齎すものです。その意味でも、エルクロスミッション
は、極めて重要な意味と価値があったと考える処です。


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