※北朝鮮新ウォン紙幣 http://www.kaigai-kouza.com/repo...t_5.html より転載
北朝鮮デノミ:貨幣改革失敗で朴部長解任=日本メディア
毎日新聞は3日、北朝鮮の朴南基(パク・ナムギ)労働党計画財政部長(76)が、
昨年12月に断行された貨幣改革の失敗に関する責任を問われ、先月20日ごろ解
任されたと報じた。同紙は「北朝鮮政権に近い関係者」の言葉を引用し、中国・
北京発の記事でこうした内容を報じた。
同紙は、金正日(キム・ジョンイル)総書記が昨年、住民の労働力を総動員し
た「150日間戦闘」などを挙げ、「デノミネーション(貨幣呼称単位の変更)
の失敗で、(150日間戦闘などの)成果が台無しになった」と語った、と伝えた。
また同紙は、金総書記が朴南基部長の解任を指示したほか、映画や舞台公演を
担当する崔益奎(チェ・イクギュ)労働党映画部長も同時期に解任したと報じた。
この日、韓国の安全保障部局の当局者は、北朝鮮経済を24年間率いてきた朴南
基部長の失脚情報に関連し、「北朝鮮が貨幣改革の失敗を自ら認めたという意
味だ」と語った。「金総書記が激怒したようだ」(北朝鮮消息通)という話も
出ている。
朴南基部長は1986年12月、人民経済を総括する国家計画委員長に登用されて以
降、北朝鮮の計画経済を最前線で指揮してきた。2000年代初めに金総書記が市
場経済の要素を一部導入した際には、朴奉珠(パク・ボンジュ)首相に押され
たこともあったが、市場の弊害が続出したことを受け、05年7月に党計画財政
部長へと復帰した。朴南基部長は06年末、金総書記に対し、「内閣(朴奉珠首
相)が資本主義の幻想を抱いてだめにしたものを直し、再び社会主義の原則に
依拠した経済管理制度を確立する」と報告した。翌年07年4月、朴奉珠首相は
解任され、順川ビナロン(北朝鮮が命名した合成繊維)連合企業所の支配人に
左遷された。
朴南基部長は昨年、金総書記の現地指導に123回随行したが、今年は先月3日以
降、1カ月以上にわたり金総書記の随行者名簿から除かれている。一部では、
朴南基部長は貨幣改革失敗の「スケープゴート」だという分析を提起していた。
幹部クラスのある脱北者は、「90年代中盤に大規模な餓死が起こり、民心が悪
化したことを受け、金総書記は党の農業秘書である徐寛熙(ソ・グァンヒ)を
米国のスパイだと決めつけ、平壌市民の目前で公開処刑し、自分に向けられた
住民の不満を徐寛熙にかぶせたことがある」と語った。
今回の貨幣改革も、実務は朴南基部長が担当していたが、金総書記の指示によ
り、金総書記の三男ジョンウン氏の後見人として知られる張成沢(チャン・ソ
ンテク)労働党行政部長が主導したと分析されている。貨幣改革の失敗に伴う
住民の不満が金総書記や張行政部長に集中することを防ぐため、朴南基部長を
犠牲にした、と観測されている。
一方、毎日新聞の「崔益奎・労働党映画部長更迭」報道と関連し、北朝鮮消息
通は、「まだ不確実な情報の水準で、はっきりしていない」と語った。反面、
韓国政府の当局者は、「崔益奎部長は住民に対する宣伝・扇動業務も担当して
いただけに、貨幣改革を住民にきちんと広報しなかったという責任を問われた
可能性もある」と語った。
(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2010/02/04)蜥蜴の尻尾切りそのものと言われても過言ではないでしょう。今回
のデノミが、金正日の指示と承認の下に行われたのは、確実ですが、
この最高指導者が政策の責任を問われる事は有り得ません。従って、
直接実務を担当する分野の責任者が代わりに責任を取らされると言
う訳です。
前回の市場経済化?の失敗については、首相が責任を取らされたの
に対し、今回は、労働党計画財政部長ですから、格下が責任を取ら
された形になっていますが、これは、記事にも書かれている通り、
責任者が、金正日の妹婿であり、責任を問う訳にいかず、また、そ
れ以外の上級幹部も上手く責任逃れができた結果と言えそうです。
あるいは、デノミによる混乱は、市場経済化?ほど、社会主義経済
の原則に対して大きな影響ではなかったと評価しているのかも知れ
ません。
確かに、市場経済化の行き着く所、中国の様に、資本主義と変わる
処がない様になってしまうのに対し、今回のデノミは、市民の混乱
こそ引き起こしたものの、市中に退蔵されていた旧紙幣を無効化す
るという目的は果たされており、国民の混乱や、経済困難は一時の
ものと割り切る事ができているのかも知れません。
これに関連して、面白いニュースがサーチナで流れています。最近
になって、労働者への給与が旧ウォンと同じ金額の新ウォンで支払
われており、給与が100倍になったと喜ばれているというものです。
これは、デノミ実施後、わずか二ヶ月で価格が100倍になったと言
う事であり、噂されていた激しいインフレが事実として裏付けられ
たものと言えるでしょう。
今回のデノミでは、10万ウォン以上の新ウォンの交換は許されてお
らず、自由市場での商売を通じて市中に蓄えられていた旧紙幣によ
る蓄財をデノミによって国家が取り上げる事が目的の一つになって
います。労働党員や、政府幹部は、外国の銀行に外貨口座を持って
おり、デノミの影響はなかったと言われています。
その一方で、旧貨幣が無効になることが判った時点で、強烈なイン
フレが発生することの影響は無視されていたと言えます。何故なら
ば、無効になるのは、旧ウォンであり、それは予定されたものだっ
たからです。しかしながら、影響は旧ウォンに留まる事はありませ
んでした。旧ウォンが無効にされそうになった段階で物に対する巨
大なニーズが発生します。その結果として売り惜しみが発生し、そ
れは、新ウォンに対しても当てはめられる事になります。物の供給
が、紙幣の発行量に対して少なくなれば、当然インフレになります。
これに加え、新ウォン紙幣の供給が遅れた事で、経済がますます混
乱する事になりました。旧貨幣は無価値なので売買に使用できず、
新貨幣はないのですから、物を買うには物を使うしかありません。
北朝鮮は貨幣経済から物々交換経済に退歩する事になりました。
経済の混乱を見て、新ウォンの交換限度を緩和する彌縫策は、次の
規制緩和を予想させる事で、更に売り惜しみを拍車をかけ、新ウォ
ンに切り替わって後も、インフレを亢進する事になりました。
この様な経済的混乱は、物資の売り惜しみの形で、まだ継続してい
ます。既に、餓死者の発生が、報道されていますが、基本的には物
資退蔵が続く限り、インフレと経済の混乱は継続する事になります。
解決法は、貴重な外貨の流出になってしまいますが、政府による、
物資の中国からの緊急輸入しかありません。そして、それを新ウォ
ンで安価に供給し、新ウォンに対する信頼を回復するしかないと思
われます。
旧ウォンを無効にした事で、巨大な購買力が政府に移転されたので
すから、政府には、それを行う義務がある筈です。そして、それを
行わない限り、北朝鮮が再度、貨幣経済に完全に復帰する事はない
と思われるのです。(貨幣価値が不安定な場合、蓄財の対象として
は物資を選択するしかない為。) そして、それまでの間、北朝鮮
国民の困窮はまだまだ継続すると思われるのです。
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