2010年4月2日金曜日

韓国哨戒艦沈没 北の攻撃よりG20開催を優先する李明博政権

哨戒艦沈没:李大統領「政治的に利用してはならない」
北朝鮮による攻撃説に対し「現在のところ、証拠はない」


李明博(イ・ミョンバク)大統領は、1日午前に開いた非常経済対策会議と、
南米地域へ派遣された与党ハンナラ党の特別視察団との昼食会の席上で、韓国
海軍の哨戒艦「天安」の沈没事故についての心境を述べた。

李大統領はまず、事故の原因に関し、メディアやインターネット上でさまざま
な推測が出ていることに対し、かなり困惑した様子で「望ましくない、危険な
兆候だ。絶対に(今回の事故を)政治的に利用してはならない。6カ国協議の
当事国として、主要20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国として、責任ある
行動が求められている。国内的な発想だけで行動してはならない。少しでも疑
惑が浮上したり、隙を見せたりしてはいけない。そうしてこそ、国際社会から
信頼を得ることができる。最終的な結論が出るまでは、冷静に待ち続けるべき
だ。それが、国を愛する心というものだ」と述べた。

その上で李大統領は、今回の事故が「北朝鮮による攻撃」だとするうわさが広
まっていることについて、「北朝鮮の攻撃だった可能性も排除していないが、
現在のところ証拠は見つかっていない」と説明した。李大統領は「艦艇には
(事故の当日)特に異常はなかったという。あらゆる可能性があると思うが、
北朝鮮が介入したという証拠はまだ見つかっていない。西海(黄海)で交戦が
ぼっ発したときは、北朝鮮側の動きを示す情報(内部の通信記録や交信など)
がもたらされたが、今回はそうした情報はなかった」と述べた。

大統領府のある幹部は、「今回の事故について、政府が慎重な姿勢を見せてい
るため、一部では“北朝鮮による介入の可能性を意図的に低減しようとしてい
るのではないか”という誤解が生じている。北朝鮮による介入の事実が明らか
になれば、むしろ(今回の事故に関する)政府の姿勢はよりはっきりしたもの
になるところだが、慎重な姿勢を見せるということは、まだ証拠がないという
ことを示すものだ」と語った。

一方、李大統領は、事故の原因を解明するには相当な時間を要するだろう、と
いう見解を示した。李大統領はこの日、オバマ米大統領との電話会談で、「ま
だ原因は明らかになっていない。(事故原因の解明には)高度な技術が必要だ。
結論を出すまでには時間がかかると思う」と述べたという。

(朝鮮日報 2010/04/02)


李政権が、今回の哨戒艦沈没事件に関して、早い段階で、北朝鮮原
因説を抑えこもうとしたのが、どういう理由によるものなのか良く
理解できなかったのですが、この記事を読んで漸く理解する事が出
来ました。

上の記事の中で、李明博大統領は、「六ヶ国協議の当事国として、
主要20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国として、責任ある行動
が求められている」と述べていますが、そこには、予定調和を乱さ
れた困惑は感じられても、指揮下の部下50名を殺された韓国軍最高
指揮官の決意や原因究明に対する強い意思を見る事は出来ません。

つまり、李明博大統領の目下の主要関心事は、今年11月に韓国で行
われる予定のG20首脳会議を議長国として主催する事であって、
それを危うくする様な事態が発生する事は、あってはならないと考
えているとしか判断できないのです。

確かに、韓国は、世界の主要国として遇される事に熱望とも言える
願望があります。それは、少しでも、韓国の新聞を継続して読んで
いれば明らかです。世界ランキングに対する異常な関心は、普通の
日本人を辟易させますが、それも、歴史的に属国の地位に甘んじて
いた期間が長かった事の反動と思えば理解できます。そして、ウォ
ン安のお陰とは言え、他の主要国と比べ、リーマンショックを比較
的短期間で克服出来た事を誇る気持ちも納得できます。その実績を
基に、議長国としてG20を主催する事が、李明博大統領にとって
一生で一度の晴舞台である事も充分に理解できます。

ここで、韓国と北朝鮮の緊張関係がエスカレートすれば、G20の
開催場所が変更されてしまうかも知れないと李明博大統領が恐れる
のも分からない訳ではありません。李明博大統領のみならずG20
を主催する事は、韓国国民全体にとっても、悲願の実現に他ならな
いのかも知れません。

それにしても、自国の軍艦が撃沈され、50名近い死者が出ているに
も拘わらず、G20を主催する為に、敢えて北朝鮮関与の可能性を
軽視し、目を瞑ろうとするのは、為政者としては、致命的な失態で
はないかと思わざるを得ないのです。目前の危機から目を背ける事
で危機がなくなる訳ではありません。それは「駝鳥の平和」に過ぎ
ません。この事件に北朝鮮が関与しているかどうかは別にしても、
北朝鮮にしてみれば、G20首脳会議が終わるまで、韓国は、北朝
鮮が何をしても絶対にエスカレートは回避する事がこの事件のお陰
で判ってしまいました。ある意味、この一年は北朝鮮にとって、絶
好の収穫機会と言う事になります。

歴代の韓国の為政者は、面子や体面、大義名分を実質より重視する
事で、亡国の憂き目にあった事が少なからずあったと思いますが、
韓国が今回もその轍を踏むのではないかと懸念する処です。


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2010年4月1日木曜日

調達機数が10機減になるA400M

※図表はAFPのWebサイトより転載

共同開発参加国との開発遅延に伴なう開発費用の増加について漸く
合意に達したかに見えたA400Mですが、実は、共同開発参加国の全
体調達数を10機以内で削減する事を含んでいるのが明らかになって
きました。調達機数を削減するのは、主として英国(3機)とドイツ
(6機程度)で、フランスは従来通りの機数を調達したいとしていま
す。なお、調達機数が減少した分、共同開発参加国以外からの受注
で補う事で、部材の生産調達効率の低下と費用の増加を避ける計画
です。

UPIの報道を抄訳してみました。

A400M:調達をより少ない機数にしたがっている各国

軍用輸送機A400Mの共同開発参加諸国は、遅延し、資金調達難に陥っているプ
ロジェクトへの開発費用を増やす為に、十機までの範囲で調達機数を減らす見
込みである。

英国は、今週、A400Mの発注数を3機減らし、合計22機とする事を発表した。
フランスは、50機の発注数量を維持する予定であるが、ドイツは、60機の発注
契約を維持するかどうか検討中であるとドイツの新聞が報じた。

他の、共同開発参加国の中では、ベルギー、ルクセンブルグ、スペインとトル
コも機数削減を検討中で、欧州の防衛当局者によれば、新しい契約は、早けれ
ば6月中に結ばれる予定となっている。

この発注機数の削減が、エアバス社の親会社であるEADS社と共同開発参加諸国
との間で結ばれた3月7日の合意の一部である事は明らかと言える。この合意で
は、共同開発参加国は、新たに、27億ドルの追加支出と共に、開発遅延による
新引渡し計画に関して遅延損害金を求めないとしていた。

この総額48億ドルの緊急援助計画は、速やかに財務立て直しが合意されない限
り、A400M軍用輸送機の開発から手を引くと言うEADS社からの脅迫により交渉
が行われたもの。

2003年に結ばれた当初の契約では、180機のA400Mを290億ドルの固定価格で製造
する事となっていた。技術開発の遅延と開発費用の高騰、それに加え政治的失
敗からプロジェクトの大幅な遅延を招き、処女飛行が漸く昨年12月にスペイン
のセビリアで実施された状況にある。

プロジェクトは現在では、当初の計画と比べ、開発コストは五割増しとなり、
開発スケジュールの遅延も3~4年に達している。共同開発参加国は、新輸送
機を真剣に必要としている。英国は、アフガニスタンへの輸送任務で擦り切れ
そうになっている、ハーキュリーズとC-17からなる輸送機隊の近代化を必要と
している。また、フランスとドイツは、製造から40年を経て、低速で柔軟性を
欠くC-160トランザール機の部隊を更新する新輸送機を必要としている。

エアバス社によれば、A400Mは、同じターボプロップ四発で、非常に人気の高
いC-130ハーキュリーズと比べても、二倍の輸送力を持ち、ジェットエンジン
装備のボーイングC-17より燃料効率が高いと主張している。

その一方、共同開発参加国の高官は、プロジェクトに関連する経営管理面での
失敗について厳しく批判している。「組織管理と経営管理面で問題があったの
は明らかだ。」「EADS社とエアバス社は、開発組織に遅延原因があるとしたが、
プログラム管理面で彼らはもっと働くべきだった。」「EADS社は、かれらの企
業文化を一新する大きな努力が必要だろう」とフランス兵器調達局のローラン・
コレビオンは語っている。

(UPI.com 2010/03/31)


http://www.upi.com/Business_News/Security-Industry/2010/03/31/A400m-Nations-want-fewer-planes/UPI-85581270046888/


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2010年3月31日水曜日

韓国哨戒艦沈没事件 マスコミは「不都合な真実」に目をつぶるな!


※図は朝鮮日報より転載

【社説】天安沈没に対し決断の姿勢を

(前略)

今回の問題で当面の課題は二つだ。まず一つは、最後まで生存者を救出する作
業を続けること。二つ目は、沈没原因を徹底して明らかにし、それに応じた対
策に乗り出すことだ。国家としての大韓民国の地位は、この二つを最後までし
っかりとできるかどうかに懸かっている。国を守る任務に就いていた将兵たち
の生死を把握して救助することや、1200トン級の大型艦が目の前で真っ二つに
割れた原因を明らかにすることができないようでは、国際社会で大韓民国は尊
敬を受けることができなくなるだろう。

金泰栄(キム・テヨン)国防部長官は29日に国会で、「政府は今回の事故に北
朝鮮が介入した可能性がないと言ったことはない。あらゆる可能性について調
べ、検討した上で結論を出したい」と発言した。与野党の議員らは、「天安号
沈没当日に大統領府はなぜ、“北朝鮮が介入した可能性は低い”と断定したの
か」「政府は海軍による事故直後の対応がしっかり行われたと説明できるのか」
などと追及した。

政府は今後、天安号が沈没した原因が明らかになった場合、国の内外に対して
取るべき行動について、徹底した準備を行わねばならない。事故の対策につい
ては、時には大韓民国と大韓民国の国民全体に対して、大きな決断を求める可
能性もある。大韓民国は天安号沈没についての真実が明らかになった瞬間、直
ちに確固とした決断を下し、行動する準備をしなければならない。政府と軍に
よる対応の問題点に関しては、今後も徹底して追及する機会はいくらでもある。

(朝鮮日報 2010/03/31)


韓国では、引き続き、沈没した哨戒艦の捜索や事件の原因の追求が
行われていますが、上の朝鮮日報社説に見る様に、事件発生当初の
段階で大統領府が北朝鮮の関与の可能性を排除した事に対する疑問
が提起されてきました。大統領府も、北朝鮮関与の可能性を排除し
ていない事を明言せざるを得なくなっています。

これは、哨戒艦沈没の状況についての生存者の証言から、内部爆発
説がほぼ排除され、外部からの衝撃説が有力になってきている事に
よるものです。外部からの衝撃が自然に発生する訳はなく、当然な
がらNLLに近接した沈没地点から見て、北朝鮮の関与が一番高い原
因となるのは明らかと言えます。

今や批判の矢面に立ちつつある韓国の李明博政権と同様、今回の事
件については、米国も及び腰の態度が目立っていますし、日本の鳩
山政権は事故である事を前提とした様な、状況に対して極めて鈍感
な姿勢に終始しています。

また、脳天気な民主党政権同様、日本のマスコミも、事件の発生は
報道したものの、最初から事故という認識であった為か、その後の
経過に関しては極めて冷淡な姿勢に終始していますが、これは、報
道をしない事で、北朝鮮に協力しているとすら言えるのです。

月曜日での、エントリーでも述べましたが、この事件は、韓国の有
力な哨戒艦(1200㌧のミサイルコルベット艦)が、突然爆沈すると言
う衝撃的な事件であり、死者・行方不明者も46名に達しています。
北朝鮮による攻撃の結果である事が明らかになった場合、韓国世論
の動向によっては、李政権は北朝鮮に対して強硬な姿勢を取らざる
をえず、北朝鮮がそれに武力で答える可能性がある事は容易に想像
出来ます。

そうであるだけに、事故であるという明白な証拠がないにも拘わら
ず、理論上は戦争状態にある隣国で起きた軍艦の爆沈という事実に
対して、意図的、非意図的に拘わらず、ここまで無視してかかるの
は、自国の安全保障に関してあまりに無関心に過ぎると思われてな
らないのです。

この事件の原因が、私の想像している様に北朝鮮の攻撃によるもの
であった場合、普天間基地機能の県外移転など、もっての他という
事になります。朝鮮戦争で米国率いる国連軍と戦ったのは、中国、
北朝鮮であった事は、決して忘れてはならないのであり、現在、極
東で、この両国に軍事的に対峙しているのは米軍に他なりません。

この様な、日本を取り巻く安全保障環境の大きな変化に対して、無
視していれば足りるとする日本のマスコミの態度は、危険に当たっ
て地面に頭を突っ込む事で、安全を確保できたとする「駝鳥の平和」
を意図している事に他なりません。いくら状況が、民主党政権やマ
スコミにとって「不都合な真実」を示していても、これを無視する
事は、国民の安全に対する関心と言う最低限のニーズすら満足する
事が出来ない事を暴露していると言わざるを得ないのです。


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2010年3月30日火曜日

一段高まった「はやぶさ」地球帰還の可能性



※はやぶさ帰還イメージ

地球帰還、ほぼ確実に=小惑星探査機「はやぶさ」-宇宙機構

小惑星「イトカワ」への着陸成功後、数々のトラブルを乗り越えて地球帰還を
目指す探査機「はやぶさ」について、宇宙航空研究開発機構は27日、地球のご
く近くを通過する軌道への投入に成功した。今後も、大気圏突入に向けた軌道
の微調整を続けるが、寿命が懸念されていた航行用のイオンエンジンの連続運
転を終え、目標とする6月の地球帰還はほぼ確実になった。

はやぶさは小惑星の岩石試料を採取し、地球に持ち帰るのが目標。2003年5月
に打ち上げられ、05年11月にイトカワ着地に成功したが、燃料漏れや姿勢制御
装置の故障などが続発。当初の予定を3年延期して今年6月の地球帰還を目指し
てきたが、最後に残ったイオンエンジンも寿命が危ぶまれていた。

27日午後、神奈川県相模原市の運用管制室で、管制チームがイオンエンジンの
運転を止める指令を送信。約5分後に停止が確認されると、管制チームはほっ
とした表情で喜び合った。
はやぶさは地球の高度約1万4000キロを通過する軌道に入っており、今後は、
岩石試料を採取できた可能性のあるカプセルを回収するため、大気圏突入に向
けた微調整を続ける。

(時事通信 2010/03/27)


懸念されていた、綱渡りのイオンエンジン運用が漸く終わりました。
これからは、イオンエンジンを使用しない軌道修正のフェーズに入
ります。現時点で、「はやぶさ」は、地球中心から二万キロ離れた
場所を通過する軌道に入っています。上の記事では一万四千キロと
書かれているのは、二万キロから地球半径である六千キロを差し引
いた数字です。これから、一万四千キロから数百キロに階段を一段
ずつ下りていく様な微妙な軌道修正を行っていく事になります。

「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーであるISASの川口教授は、
3/9のコメントの中で、今後のリスク要因として以下の5点をあげて
います。

1.ホイールの寿命、
2.イオンエンジンの運転性、
3.漏洩燃料の再ガス化、
4.イオンエンジン運転中の軌道決定、
5.耐熱材の状態、火工品の環境、分離バネの経年変化です。

この内2.と4.のイオンエンジンの運転性と軌道決定については今回
の運転終了でクリアする事が出来ましたが、残る3点については引
き続き残っています。

そして、それに加えて、これからの運用、その一つ一つが、これま
でとは違い、やり直しの効かない一回しかチャンスの無いものにな
る難しさを指摘されています。「シャトルの再突入に延期はありま
すが、「はやぶさ」の再突入には延期はないのです」という言葉は、
それを端的に表したものと言えるでしょう。

「はやぶさ」は第二宇宙速度(約11.2km/秒)を超える惑星間航行速
度で飛行しています。そして、その速度のまま、地球大気に突入す
る事になります。予定されたタイミングで帰還カプセルの放出が行
われれば、首尾よく地表での回収が可能ですが、突入角度が少し変
わるだけで、角度が深ければ、燃え尽きる可能性が出てきますし、
加工品(爆発ボルト)が作動しなくなる懸念も出てきます。逆に、角
度が浅ければ、再度宇宙に跳ね返される可能性があります。

今まで、NASAが行った再突入に比べても、「はやぶさ」の再突入は、
より厳しい条件と言えます。しかも、帰還カプセルに「イトカワ」
のかけらが入っているとは限らないのです。

ただ、たとえそうであっても、「はやぶさ」の帰還カプセルを回収
する事は現時点での、日本の宇宙往還技術と総合科学としての宇宙
工学の頂点を示すものになる事は間違いありません。
「はやぶさ」の無事な帰還を心から祈念したいと思います。


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2010年3月29日月曜日

韓国コルベット艦沈没事件 あえて北朝鮮主犯説を唱える

※ポハン(浦項)級コルベット globalsecurity.orgより転載

哨戒艦、爆発で二つに=船尾の位置確認急ぐ-韓国

韓国軍合同参謀本部当局者は28日、同国が黄海上の軍事境界線と位置付ける
北方限界線(NLL)の南側海域で沈没した海軍の哨戒艦「天安」(1200
トン級)が、直前の爆発で船体が二つに割れたことを明らかにした。船尾部分
はそのまま沈んだが、船首部分は潮で流されているという。
爆発の原因は不明だが、韓国政府は北朝鮮の関与よりも、何らかの事故に遭っ
た可能性が高いとみている。

聯合ニュースによると、船首部分は沈没地点から南東方向に約7キロ流されて
おり、転覆した船体の一部が海上に出ている。しかし、行方不明者46人の多
くが取り残されているとみられる船尾部分は発見できていない。
海軍潜水部隊が同日、周辺海域で捜索を試みたが、潮の流れが速く、本格的な
活動ができなかった。今後、海中の物体を探知できる掃海艦を投入するなどし、
位置確認を急ぐ。

(時事通信 2010/03/28)


今回、沈没したのはポハン(浦項)級コルベット14番艦PCC-772
「チョナン(天安)」です。1200㌧の小さな船体に、オットー・メ
ララ 76mm単装速射砲二門、同じくオットー・メララ 70口径40mm連
装機関砲「コンパクト」二基。ハープーン対艦ミサイル4基。ミス
トラル対空ミサイル単装発射機一基。三連装短魚雷発射機二基。と
いう日本の大型護衛艦にも匹敵する重武装の艦です。また、電子兵
装、やソナーも相応に装備しています。その艦が、哨戒中に乗員の
半数近い46名と共に爆沈したというのです。

流石に、韓国では大きく取り上げられていますが、日本では、隣国
の軍艦が一隻爆沈したのに、マスコミは通り一遍の報道しかありま
せん。その上、この事件について、韓国でも、日本でも、驚く程、
北朝鮮関与説を避けています。本当にそれで良いのでしょうか?
私は北朝鮮が今回の爆沈事件に関与した可能性は、意外に高いので
はないかと考えています。

今の処、原因については、各種の推測が出ている状態です。本日の
報道では、乗組員の約半数と共に、艦首部より先に沈没していた爆
発の起こった艦尾部の所在が確認されたそうです。艦の内部で爆発
があったのか、外部で爆発があったのかは、艦尾部を調査すれば、
判明する筈です。(当然の事ですが、内部爆発の場合は、船体の穴
は、内側から外側にあきますが、外部爆発の場合は、穴は内側に向
かって空くことになります。)

過去、日本海軍も含め軍艦が戦闘によらず停泊中に爆沈した事例は
数多くあります。有名な処では、米西戦争の原因になった、メイン
号事件、日本海海戦後に爆沈した戦艦三笠。太平洋戦争前には当時
の第一級戦艦であった河内が沈没していますし、太平洋戦争中には、
謎の爆沈を起こした戦艦陸奥の例もあります。これらは、古いもの
は、搭載火薬の自然発火が原因とされています。また河内や陸奥の
例では、乗組員による自殺覚悟のサポタージュを原因とする見方が
あります。

第二次大戦後は、爆薬の安定性の改善の管理手法の改善があり、謎
の爆沈事件は世界的に少なくなっています。通常の航行中の爆沈事
件は、衝突に伴なうもの以外では、ロシア原潜クルスクの爆沈事故
程度しか思いつきません。特に、水上戦闘艦については、第二次大
戦以降ダメージコントロールが飛躍的に改善されていますので、平
時の沈没騒ぎは、本当に聞かなくなっています。

そこで出てくるのが、外部要因説です。韓国は理論的には北朝鮮と
戦争状態にあります。今は戦闘を一時停止しているに過ぎないので
す。北朝鮮が、仕掛けてきたとしても全くおかしくはありません。
ですから、北朝鮮による雷撃あるいは、あるいは、北朝鮮が敷設し
た機雷によるものと考えても不自然ではないと思われます。

雷撃の場合は、北朝鮮の魚雷艇あるいは、潜水艦が発射プラットホ
ームと考えられます。北朝鮮は、その両方を保有しています。
ただ、今回事件があった場所は、水深が20~30mと浅いので、潜水艦
の活動には不適です。魚雷艇の場合は、コルベット艦「天安」の対
水上レーダーで容易に探知可能であった筈ですので、これも対象か
ら外れます。

残った原因は、機雷によるものです。日本海海戦で、日露双方は、
旅順港閉塞戦の中で、機雷を積極的に使用しており、特に相手側の
進出経路を予想して機雷敷設を行い成果を上げました。この結果、
日本は、初瀬、八雲の二戦艦を失い、ロシア側も、高名なマカロフ
提督座乗の戦艦ペトロパブロフスクを失っています。

今回の事件で、韓国側コルベット艦がダメージコントロールが出来
ずに沈没した事で明らかになった様に、今まで、南北の衝突が、小
型艦艇同士の戦いに終始していた事もあり、韓国側の、コルベット
艦による哨戒は、ルーチンワークとなっており、その進路を北朝鮮
に容易に推測できるものとなっていた可能性があります。

その場合は、予想進路に事前に機雷を敷設する事は、何の問題もあ
りません。100年前の海軍が出来た事を北朝鮮が、今、やれない訳
がないのです。

それでは、北朝鮮が、食料危機の中で、何故、韓国艦を攻撃せねば
ならなかったのでしょうか?私は、2009年11月12日のエントリー
「南北海上衝突 北は面子を守る為に報復攻撃を行う 」
http://ysaki777.iza.ne.jp/blog/folder/23378/
の中で、以下の様に述べています。

『今回の衝突は、第一次延坪海戦と比べても小規模なものですが、
この反応では、第四次延坪海戦は必至と言える様に思います。但し、
そうは言っても、北朝鮮は、政治が優先するお国振りですから、韓
国側に報復しても南北関係でも国際的にも影響がない時期を選ぶも
のと思われます。前回は二年間、報復の時期を待っています。その
様に考えれば、北朝鮮の韓国への報復は、ここ数年の内に、南北の
緊張が緩和している状態の中で、偶発的衝突に見える様な形で行わ
れると思われます。』

今回の事件は、正しく、この条件を満たすものであると考える次第
です。

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