無人補給機に帰還カプセル搭載へ 宇宙機構、有人を視野
有人宇宙船に近い形態を採用した「HTV-R」の想像図。機体右側の白い部
分が帰還カプセルにあたる(JAXA提供) 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
は11日、昨年9月に初飛行を成功させた国際宇宙ステーション(ISS)無
人補給機「HTV」の改修型で、ISSからの物資回収を可能とする「HTV-R」
の開発計画を文部科学省の宇宙開発委員会に報告した。来年度概算要求に盛り
込む方針で、JAXAはHTV-Rを日本独自の有人宇宙船の開発につなげて
いくという。
HTV-Rは大型バス程度の大きさの機体に帰還カプセルを搭載。ISSへの
物資補給後、帰還カプセルに実験試料などを積み込んでISSを離れた機体か
ら分離し、大気圏再突入後に海上で回収する。複数の改修案があり、有人宇宙
船に近い形態を採用した場合、約1.6トンの物資が回収可能。開発費は数百
億円で、平成28年度にも国産最強の大型ロケット「H2B」で打ち上げる。
日米露欧など計15カ国で運用するISSからの物資回収手段は、来年2月に
予定される米スペースシャトルの退役後、少量しか運べないロシアのソユーズ
宇宙船だけとなる。大気圏で燃え尽きる現在のHTVと異なり、多量の物資を
持ち帰ることができるHTV-Rへの各国の期待は高い。
JAXAはHTV-Rを有人宇宙船の実現につなげる方針で、HTVの機体改
修も有人化につながる範囲内で実施。一方、厳しい財政状況の下、「現状では
HTV-Rの打ち上げは、今後10年間で1基が精いっぱい」(JAXA関係
者)との声もある。
(産経新聞 2010/08/11)
日本の有人宇宙計画ですが、確かに夢のある計画だと思いますが、
日本の現状を見ると、それ程優先度が高くないのではないかと考え
ざるを得ません。
時期的にも、2011年のシャトル退役と商業有人打ち上げ開始(2015
年頃)までの隙間に間に合えばそれなりのニーズがあったかも知れ
ませんが、今から開発したのでは到底間に合う事はありません。
上記の記事では、HTV-Rは平成28年(2016年)度に完成ですから、更
に5年間かけるとして平成33年(2021年)に有人飛行が実現する事に
なりますが、その頃には、SpaceX社のドラゴン宇宙機により、宇宙
飛行士一人当り20億円程度での打ち上げが実用化されている事にな
ります。もし、4名の宇宙飛行士をカプセル込みで80億円で打ち上
げる事が可能であれば、SpaceX社に対抗できますが、80億円では、
H2Bの打ち上げ費用もまかなえません。従って、日本に有人宇宙飛
行士を軌道に打ち上げるニーズがあったとしても、SpaceX社等の商
業打ち上げサービスを利用するのが合理的であると言えます。
では、そもそも有人宇宙飛行士を軌道に送り込むニーズはどの程度
あるのでしょうか。国際宇宙ステーションは、2015年に、閉鎖され
落下する予定でしたが、取敢えず2020年まで退役は延期され、引き
続き使用される事になりました。その為に、宇宙飛行士を軌道に送
るニーズは存在します。しかし、それ以降に、宇宙飛行士を宇宙に
送るニーズはまだありません。
国際宇宙ステーションを建設し、維持する為には、宇宙飛行士を軌
道上に打ち上げる必要があるのは自明ですが国際宇宙ステーション
が退役した後、有人宇宙飛行が必要なるプロジェクトは必ずしも明
確になっていないのです。オバマ大統領によって、有人月着陸計画
はキャンセルされてしまいましたが、それに変わる計画は、まだ姿
を見せていないのです。日本が、米国の主導する次の有人宇宙計画
に参加するかどうか、また、その時に、日本が独自に宇宙飛行士を
打ち上げる必要があるかどうかは不明確であるとしか言えません。
では、中国の天宮計画の様に、日本独自に宇宙ステーションを作る
必要があるのでしょうか?今は、トーンダウンしていますが、2015
年に国際宇宙ステーションが退役する予定であった時、それに合わ
せて、その一部を使って日本用の小型宇宙ステーションを作り運用
するという構想がありました。しかし、それも構想だけで、そこで
何をするのかという議論は行われませんでした。実際、国際宇宙ス
テーションで当初予定されていた実験の多くが、その建設遅延の中
で、コンピュータシミュレーションで行われてしまい、宇宙実験の
為に、宇宙ステーションを維持するニーズは少なくなってしまって
います。
確かに宇宙飛行士にしか出来ない作業はあります。例えば、ハッブ
ル宇宙望遠鏡の保守作業の様なものがそれです。しかし、ハッブル
望遠鏡の後継機は、ラグランジュ点に設置される予定で、宇宙飛行
士による保守・補修は予定されていないのです。つまり、近い将来
有人宇宙飛行は、自己目的化してしまう可能性が高いと言えるので
はないかと思えるのです。
それに加えて、日本の場合は予算上の問題があります。日本は中国
と違って有人宇宙計画を国家威信の発揚という目的ではどんどん資
金をつぎ込む事は出来ません。現状、国際宇宙ステーションの維持
費用は、HTVの費用も含め、毎年4百億円と言われていますが、
有人計画となった場合、日本用の宇宙ステーション建設が無償で出
来たとしても、有人宇宙機の打ち上げコスト等を考えると、少なく
共、現状の二倍程度の予算が必要となる筈です。日本の宇宙開発予
算の枠は、情報収集衛星も含め毎年二千億円程度しかありません。
追加予算の4百億円は僅かな予算の様に見えますが、JAXAの予算の
二割程度の大きさであり、財政再建の必要性が高まる中で、今後
JAXA予算の二割増しが容易に実現できると考えるのは楽観的に過ぎ
るのではないかと思われます。そうなれば有人宇宙計画で4百億円
が出っ張れば唯でさえ少ない他の予算から4百億円を削るしかあり
ません。それでは、日本が世界に先んじている無人宇宙機によるサ
ンプルリターンであったり、ソーラーセイル衛星による小惑星探査、
外惑星探査などが不可能になってしまいます。勿論、科学観測衛星
のみならず地球観測衛星等の実用衛星にも影響が出てくるでしょう。
そうであるならば、何の役に立つか判らない有人宇宙計画に色気を
見せるのではなく、寧ろ、日本の独自性が発揮できる無人探査機に
よる宇宙探査計画を優先して推進すべきであると思われるのです。
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