2009年12月2日水曜日

実はイランの安全保障を危うくする核兵器開発


※イスラエルのアロー対弾道ミサイル防衛システム

「有言実行だ」 イラン大統領、ウラン濃縮拡大に意欲 

イランのアフマディネジャド大統領は1日、国営イラン放送を通じ、ウラン濃
縮施設10カ所の新設計画について「技術的に不可能だとする指摘があるが、
イランは有言実行だ」と述べ、核兵器開発につながる恐れのあるウラン濃縮活
動の拡大に強い意欲を示した。

欧米が検討する新たな経済制裁を回避するため、対決姿勢を抑えていた大統領
は、同国第2の濃縮施設の建設停止を求めた国際原子力機関(IAEA)定例
理事会の決議に反発。核問題は「終わった話だ」との従来の主張を再び展開し、
制裁は「何の効果もない」と繰り返して強硬姿勢の復活を印象付けた。

決議への報復として「われわれは新たな核施設を建設する際に報告する義務は
ない」として予告なしの建設もあり得ると示唆。IAEAとの「友好的な関係
は終わった」として今後の協力は最小限にするとした。(共同)

(産経新聞 2009/12/02)


イランが核兵器を開発できたその時、アフマディネジャド大統領は
何を感じるでしょうか?核兵器を開発できたイランの科学技術に対
する誇りでしょうか?あるいは、イスラエルの核兵器を抑止できる
様になったという安心感でしょうか?

私はそうではないと思います。逆にイスラエルからの核の恐怖に怯
える毎日がアフマディネジャド大統領やイランの宗教指導者に訪れ
る様になるのではないかと思います。そして、イラクやシリアの核
開発に対して実力を行使したイスラエルが何故、イランの核開発に
対して手を出さないのかという疑問に対する答えにもなると思うの
です。

イランが強大な破壊力を持つ核兵器を手にした時、そして、それを
イスラエルに対して使用できる事になった途端、アフマディネジャ
ド大統領は、イスラエルが、それと同等の核兵器を200発以上持っ
ている事に思いを致さざるを得なくなります。

今まではイランは国際社会の暗黙の応援を感じていたかも知れませ
んが、国際社会がイスラエルに対して、非核兵器国に対する核攻撃
を控える様に圧力を掛けていたのも事実です。紛争相手国が核兵器
を保有していないにも係わらず、その国を核兵器で攻撃する事は道
義的にも人道的にも許される事ではなくなっています。

では、核兵器を保有したイランを、イスラエルが核攻撃する場合は
どうでしょうか?イランはイスラエルの生存を許容していない事を
再三に亘り広言しているのですから、イスラエルがイランからの攻
撃を合理的な根拠から予測し、それを甘受する事が、国家生存に係
わるとものと捉えた時、イスラエルの先制核攻撃を不可とする国際
法はありません。イランが今までの様に、イスラエルの生存を恫喝
すれば、すぐさまイスラエルからの報復核攻撃を予測せざるを得な
くなるのです。

では、イランがイスラエルの核報復を避けながら、イスラエルを核
攻撃する事ができるのでしょうか? 第四次中東戦争で、アラブ連
合軍がイスラエルに対する奇襲に成功した例もあるので、可能性が
ないとは言えませんが、現状では、極めて難しいといわざるを得ま
せん。イスラエルは現在判明しているだけで、F-16戦闘爆撃機と中
距離弾道ミサイル ジェリコー(MRBM,IRBM)という二通りの核兵器
運搬手段を保有しています。イスラエルの核報復を回避しようとす
れば、イスラエル空軍の全ての空軍基地と、核ミサイルを同時に潰
す必要があります。

イランも、イスラエルと同様に弾道ミサイルを開発していますが、
イスラエルのもの程の射程を得られていません。また、イスラエル
は独自開発のアロー対弾道ミサイル防衛システムを保有しているの
で、イランがミサイルによる核先制攻撃を行っても、10分程度の時
間的余裕があるので、弾道ミサイル防衛が可能で、イスラエルの第
二撃能力を破壊できるとは限りません。逆に、イスラエルは現時点
でイランに対する第一撃能力を備えており、その行使を抑制してい
るのは、イランが核を持っていないという要素が一番大きいのでは
ないかと思われるのです。

アフマディネジャド大統領は、核兵器を保有した後になって漸くそ
の事に気が付き、今や自らの上にダモクレスの剣があるのを知る事
になるのではないかと思われるのです。


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