2009年6月17日水曜日

「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」(下)



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INTERCONTINENTAL BALLISTIC MISSILES(大陸間弾道ミサイル)
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ロシアはICBMに2000個の核弾頭を保持しており、これらのミサイルの殆どは警
戒待機態勢に置かれ、命令があれば数分以内に発射できる状態が維持されてい
る。ロシアのICBM戦力の規模は軍備制限協定や、ミサイルの老朽化、資源制約
のため、減少し続けるが、ロシアは、おそらくアメリカ合衆国外で最大のICBM
戦力を保持し続けると思われる。戦力を維持し、近代化する努力は、進行中で
ある。弾道ミサイル防衛システムに対抗できる設計のSS-27 Mod 1 ICBMは、現
在5つのミサイル連隊(ミサイル48基)で、サイロ配備されている。ロシアは、
2006年にSS-27 Mod 1の道路移動タイプの配備を開始した。MIRV化されたバー
ジョンのSS-27(SS-27 Mod-X-2(RS-24))は、現在、開発中で飛行試験段階
にある。それに加え、ロシアの当局者は、極超音速で飛行し、ミサイル防衛シ
ステムを突破する新しい種類の戦略ミサイルを開発していると主張している。
1994年12月に効力を発した戦略兵器削減交渉(START I)条約は、ロシアと合
衆国が、各々6000個(ICBM、SLBM、重爆撃機を含む)を超えない弾頭数しか保
有しない様に制限している。2002年の戦略攻撃力削減についてのモスクワ条約
では、2012年末までにロシアと合衆国が各々1,700~2,200の配備された弾頭し
か持たない様に制限している。

中国のICBM戦力は、戦略的な核抑止力の実現を意図している。中国は核武装し
た、液体燃料推進で射程に制限のあるCSS-3 ICBMと、合衆国に到達可能なCSS-4
ICBMの比較的小さな戦力を保有している。しかし、中国は、先進的な新型の移
動式で固体燃料推進のICBMの開発と配備を進めている。

道路移動式で、固体燃料推進の、CSS-10 Mod 1と長射程のCSS-10 Mod 2の両方
が、第二砲兵部隊内で数単位配備された。道路移動式ICBMの配備は、中国の戦
略ミサイル戦力の生存性を強化する。
CSS-10 Mod 1はヨーロッパとアジアの全域及びカナダと合衆国北西部の一部を
射程に収めている。より長い射程のCSS-10 Mod 2は合衆国大陸部の殆どを目標
とする事ができる。中国は一部のICBM用にMIRV弾頭を開発することができよう。
そして、合衆国を脅かすことができる中国のICBMの弾頭の数は、次の15年で
100を軽くオーバーする数に増加することになるだろう。

北朝鮮はテポドン2(TD-2)ICBM兼衛星打上ロケットを開発している。そして、
ICBMとして開発されるならば、それは合衆国に到着できる性能を持つ。TD-2の
二回の発射実験は失敗に終わったが、2009年4月の飛行は2006年7月の発射時と
比べ、より完全な性能を示した。

TD-2の開発で示された北朝鮮の継続的な進歩は、長射程弾道ミサイルと人工衛
星打上能力を保有する事への決意を明白に示している。テポドン2は、将来他
の国に輸出されるに違いない。

イランには野心的な弾道ミサイルと人工衛星打上ロケットの開発計画がある。
そして、十分な外国の援助があれば、イランは、2015年までに合衆国に到達す
る事が可能なICBMを開発しテストすることができると思われる。


■ 性能
ミサイル名 段数 弾頭数 推進剤 発射機 最大射程(マイル)* ランチャー数
ロシア
SS-18 Mod 4 2+PBV 10 液体 サイロ 5,500+ 104基
SS-18 Mod 5 2+PBV 10 液体 サイロ 6,000+ (Mods 4 & 5の合計)
SS-19 Mod 3 2+PBV 6 液体 サイロ 5,500+ 122基
SS-25 3+PBV 1 固体 道路移動 7,000 201基
SS-27 Mod 1 3+PBV 1 固体 サイロ又は道路移動 7,000 54基
SS-27 Mod-X-2 3+PBV 複数 固体 サイロ又は道路移動 7,000 配備未済

中国
CSS-3 2 1 液体 サイロ又は移動式 3,400+ 10基から15基
CSS-4 Mod 2 2 1 液体 サイロ 8,000+ 約20基
CSS-10 Mod 1 3 1 固体 道路移動 4,500+ 15基以下
CSS-10 Mod 2 3 1 固体 道路移動 7,000+ 15基以下

北朝鮮
Taepo Dong 2 2 1 液体 不明 3,400+ 配備未済
Note: 射程距離は全て概算
* この推計には、PBVによる射程距離延長が含まれていない。いくつかのPBVは、
射程距離を延長する能力を持つ。

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SUBMARINE-LAUNCHED BALLISTIC MISSILES
(潜水艦発射弾道ミサイル)

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ロシアは、大陸間ミサイルの射程を持つ原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)の
相当な戦力を維持している。ロシアは、冷戦時代の老朽化したシステムに代え
て、新しく、且つ改善されたSLBM兵器システムを開発している。Sinevaと名づ
けられた新ミサイルは、デルタIV級SSBNの既存のSS-N-23を置き換えることを
目的としている。NX-32/Bulava-30 SLBMは、主として新しいドルゴルキー級
SSBNへの配備を目的とした新しい固体燃料推進のSLBMである。ロシアのSLBMは、
浮上中や潜航中のSSBNから、色々な発射場所で、発射可能である。

中国は、現在、12基のCSS-NX-3/JL-1ミサイルを搭載する事を目的とする夏級
SSBNしか保有していない。それに加え、中国は12基のCSSNX-14/JL-2 SLBMを搭
載した新型の晋級SSBNを配備する予定である。このミサイルは、初めて、中国
沿岸のSSBMの行動区域から合衆国の大部分を目標とする事ができる。

インドは、2つの新しい海軍用のシステムを開発している。2010年以降に使用
可能となる見込みのSagarika SLBMと、Prithvi陸上基地発射弾道ミサイルの海
軍バージョンであるDhanush海上発射型弾道ミサイルである。
Dhanushは、インドの海軍水上艦艇からの海上発射飛行試験を実施中である。


■ 性能
ミサイル名 段数 弾頭数 推進剤 搭載潜水艦 最大射程(マイル)* 発射筒数
ロシア
SS-N-18 2+PBV 3 液体 デルタIII 3,500+ 96基
SS-N-20 3+PBV 10 固体 タイフーン 5,500+ 40基
SS-N-23/Sineva 3+PBV 4 液体 デルタIV 5,000+ 96基
SS-NX-32 3+PBV 6 固体 ドルゴルキー 5,000+ 16基 配備未済
(Bulava) (ボレイ)
タイフーン 20基 配備未済

中国
CSS-NX-3/JL-1 2 1 固体 夏 1,000+ 12基 配備未済
CSS-NX-14/JL-2 3 1 固体 晋 4,500+ 12基 配備未済

インド
Sagarika 不明 不明 不明 不明 180+ 不明 配備未済

Note: 射程距離は概算


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LAND-ATTACK CRUISE MISSILES(陸上攻撃巡航ミサイル)
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弾道ミサイルとは異なり、巡航ミサイルは通常、使用目的と最大射程の替わり
に発射モードによって分類される。最も幅広いカテゴリー分けは、陸上攻撃巡
航ミサイル(LACM)と対艦巡航ミサイル(ASCM)である。各々のタイプは、
航空機、艦艇、潜水艦または地上に置かれた発射機から発射する事ができる。
この文書ではLACMについて述べる。

LACMは、無人の武装した飛行体で、固定された、あるいは移動する陸上目標を
攻撃するよう設計されている。それは、予め定められた目標へ前もってプログ
ラムされた飛行経路を飛行するが、任務中の大部分の時間を水平飛行に費やす。
推進力は、通常小型ジェットエンジンによって提供される。
目標の2、3フィート以内にミサイルを命中させる事ができる非常に精密な誘
導装置を装備している事から、最も先進的なLACMは、通常弾頭で武装したとき
でも、非常に小さな目標に対しても効果的に使用する事ができる。LACMの誘導
は、通常3つの段階で行われる。発射時と、飛行中と終末の三段階である。発
射段階では、ミサイルは慣性航法装置(INS)だけを使って誘導される。飛行
段階では、ミサイルは以下のシステムの一つ以上によって更新されるINSで誘
導される。レーダーに基づく地形照合システム(TERCOM)、レーダーまたは光
学的場面照合システム、それと衛星航法システム(例えば合衆国の全地球位置
測定システム(GPS)またはロシアのGLONASSシステム。)
終末誘導段階はミサイルが目標域に入り、より正確な場面照合が使用されるか
目標探知器(通常光学的であるかレーダーに基づくセンサー)が使用される段
階から始まる。

LACMに対する防衛は、対空防御システムに圧迫を加える事になる。巡航ミサイ
ルは、敵のレーダー覆域の下方にとどまり、場合によっては、地形の陰に隠れ
る事ができる様に低高度を飛行できる。より新しいミサイルは、レーダーや赤
外線検出器からも見えない様にするステルス機能を取り入れている。最新の巡
航ミサイルは、最も効率的な方法で目標に接近し、攻撃するようにプログラム
されている。例えば、防空システムを最も弱い部分で圧倒する様に、複数のミ
サイルで同時に異なる方向から目標を攻撃することができる。さらに、LACMは
レーダーと防空施設を避けるように回り道のルートを飛行し目標を攻撃する機
能を持つ。それでも隠蔽が巡航ミサイルの主要な防御手段ではあるが、いくつ
かの開発中のシステムでは、チャフやデコイ(囮)と言った防御層を加えている。

米軍に対する巡航ミサイルの脅威は、次の10年間増加すると思われる。少なく
とも9つの国が次の10年の間にLACMの生産に関与する。そして、LACM製造業者
のいくつかはそれらのミサイルを輸出可能とするだろう。
米国のトマホーク巡航ミサイルの成功は、多くの国で巡航ミサイル獲得に対す
る関心を高めた。購入可能な多くの巡航ミサイルは、精密攻撃任務を果たす可
能性がある。これらのミサイルの多くには、類似した特徴がある。それらは、
モジュール設計(航法機能や弾頭を選択可能とする様に製造する)、ステルス
技術の適用、戦闘機サイズの航空機から発射できる能力、そして、高亜音速で、
低高度を、地形追随しながら飛行する能力などである。


■ 性能
ミサイル名 発射モード 弾頭タイプ 最大射程(マイル)* 配備開始

中国
YJ-63 空中発射 通常 不明 不明
DH-10 不明 通常又は核 不明 不明

フランス
APACHE-AP 空中発射 子弾頭 100+ 2002
SCALP-EG 空中または艦船 貫通体 300+ 2003
Naval SCALP 潜水艦/水上艦 貫通体 300+ 2010+

アラブ首長国連邦
BLACK 空中発射 貫通体 250+ 2006
SHAHEEN*

ドイツ、スウェーデン、スペイン
KEPD-350 空中発射 貫通体 220+ 2004

インド、ロシア
Brahmos-A 空中発射 通常 150+ 2010+

イスラエル
Popeye Turbo 空中発射 通常 200+ 2002

パキスタン
RA'AD 空中発射 通常又は核 200 不明
Babur 陸上 通常又は核 200 不明

ロシア
AS-4 空中発射 通常又は核 185+ 運用中
AS-15 空中発射 核 1,500+ 運用中
SS-N-21 潜水艦 核 1,500+ 運用中
Kh-555 空中発射 通常 不明 不明
New GLCM 陸上 通常 300以下 不明
3M-14E 水上艦/潜水艦/陸上 通常 185+ 不明

南アフリカ
MUPSOW 空中/陸上 通常 125+ 2002
Torgos 空中/地上 通常 185+ 2006+

台湾
Wan Chien 空中発射 通常 150+ 2006
HF-2E 陸上 通常 不明 不明

英国
Storm Shadow 空中発射 貫通体 300+ 2003
Note: 全ての射程距離は概算。射程距離はミサイル本体のみ。発射形態によっ
ては、システムとしての射程距離は大きく伸延する。
*BLACK SHAHEENはSCALP-EGの輸出タイプ


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/






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