2009年2月27日金曜日

テポドン発射は、得がたいMD演習の機会 大いに利用すべし


※画像は防衛庁サイトから転載

テポドン迎撃を検討 防衛省、MDシステム初実戦

北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の改良型を日本に向けて発射す
れば、ミサイル防衛(MD)システムで迎撃する検討を防衛省が始めたことが
26日、分かった。迎撃するのはイージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイ
ル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)で、導入から初の運用
となる。ただ、迎撃は重大な政治決断を伴うため、首相官邸などと慎重に調整
を進める。

政府は平成15年、米国が開発したMDシステムの導入を決定した。MDによ
る対処は2段構えで、まず海上自衛隊のイージス艦がSM3で大気圏外で弾道
ミサイルを撃ち落とし、失敗した場合は航空自衛隊が地上で運用するPAC3
で迎撃する。

海自はSM3を搭載したイージス艦として19年度に「こんごう」、20年度
に「ちょうかい」を配備。空自も19年3月に入間基地(埼玉県)へPAC3
を配備したのを皮切りに、昨年3月までに首都圏の4カ所に配備を終え、26
日には岐阜基地にも配備した。

こんごうは19年12月に米ハワイ沖で発射試験に成功したが、ちょうかいは
昨年11月、より難易度の高い試験に失敗。空自は昨年9月、米ニューメキシ
コ州でPAC3の初の発射試験を行い、模擬ミサイルの迎撃に成功している。

北朝鮮が18年7月にテポドン2号を含む弾道ミサイル7発を発射した際、自
衛隊は迎撃システムを備えていなかった。こんごうとちょうかいの2隻も日本
海と太平洋側に展開したものの、弾道ミサイルの探知・追尾だけが任務だった。

テポドン2号改良型の迎撃に踏み切る場合、MDシステム導入で自衛隊法に新
たに規定した「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を初適用することになる。
破壊措置には、(1)燃料注入など発射の兆候がある場合、防衛相が首相の承
認を得て自衛隊の部隊に迎撃を命令(2)明確な兆候はないものの、ミサイル
実験などへの警戒が必要な際、防衛相はイージス艦などを展開させておき、あ
らかじめ作成された「緊急対処要領」に沿って迎撃する-の2つの運用方式が
ある。

北朝鮮は24日、実験通信衛星「光明星2号」の打ち上げ準備を行っていると
の談話を発表。人工衛星発射を“隠れみの”にテポドン2号改良型を発射して
くる可能性が高いため、迎撃に向けた政治決断とともに、どちらの運用方式で
迎撃を命じるかも今後の政府内の調整の焦点となる。

(産経新聞 2009/2/27)

昨年、「ちょうかい」がハワイ カウアイ島沖でMD訓練するのに約
60億円の訓練費用がかかりました。このJFTM-2というコードネー
ムのついたそのテストでは、実戦に近い条件を想定し、「ちょうか
い」に対して、いつ発射するかを事前に知らせる事なく標的ミサイ
ルを発射し、それを「ちょうかい」のイージズシステムで探知し、
SM-3ミサイルを発射、誘導し、標的ミサイルに直撃させるとい
うシナリオになっていました。
「ちょうかい」は、米軍の早期警戒衛星からの情報を元に、標的ミ
サイルの探知、誘導を正確に行いましたが、最終フェーズでSM-3
に搭載された標的を識別し誘導するセンサーが標的を見失い、結果
的に標的撃破に失敗しました。しかし2007年に行われた「こんごう」
の演習(JFTM-1)がミサイル発射時に発射通知されたものであった事
と比べると実戦に即した演習となっていたのは事実です。

今回の北朝鮮のテポドン発射と、上記のJTFM-2演習を比べると、当
然ではありますがシナリオが一致する事に気がつきます。
今回のテポドン対応でイージス艦がどこに配置されるかにもよりま
すが、打ち落とすべきミサイルがミッドコースフェーズ(巡航中)なのか
ターミナルフェーズ(降下中)なのかの違いこそあるものの、米軍早
期警戒衛星情報→イージス艦によるミサイル探知→ミサイル追跡→
ミサイル照準→SM-3発射→SM-3誘導→撃破という基本的な
対応手順は全く変わらないのです。いつ発射されるかわからないと
いう状況まで同じです。あとは、実際にSM-3を発射するか、し
ないかだけの違いでしかないのです。テポドンを打ち落とすという
決定がでれば(実戦でもないのに手の内を全て晒すのは私は愚策と
思いますが)、全く同じになってしまいます。

寧ろ、ハワイへわざわざ艦艇を派遣する必要もなく、実戦時に必要
とされる海上自衛隊の艦艇をはじめとするリソース全てが利用でき
ますから、更に実践的な総合的演習が可能とすら言えます。しかも、
ミサイルもダミーではなく、本物のテポドンが使われ、訓練費用も
請求されないのですから、これ以上お誂えの演習は考えられない程
です。

勿論、北朝鮮が本物の弾頭をつければ実戦になってしまいますが、
今回については、人工衛星を打ち上げると北朝鮮自らが宣言してお
り、米軍も既に動き出していますので、北朝鮮が戦術的な奇襲を行
う事はまず考えられません。従って、自衛隊は、テポドン発射を全
てが整ったお誂えのむきのMD演習の機会と捉えて問題ない事にな
ります。

今回のテポドン演習を演習と捉えれば、色々とやって欲しい事があ
ります。自衛隊、米軍だけでなくミサイル発射時の政府首脳や各関
係省庁への連絡体制等も含め、今まで整備してきた実戦に即した手
順等の確認を是非やって欲しいと思います。この点は正に実戦なの
ですから当然と言えます。

この得がたい無償の訓練機会を是非実戦に生かし、北朝鮮の費用で
対北朝鮮ミサイル防衛を実のあるものにするという痛快な機会を、
是非ものにして欲しいと考えます。



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