※画像は、北朝鮮のミサイルの射程範囲の大きさ 防衛白書から転載
【北ミサイル】3発は新型スカッドか 「特に日本に脅威」韓国紙
韓国紙、朝鮮日報は6日、政府筋の話として、北朝鮮が4日に南東部の旗対嶺
から連続発射した弾道ミサイル7発のうち3発は、射程を千キロに伸ばした新
型スカッドとみられると報じた。事実であれば日本の首都圏近くまで届く射程
で、同紙は「特に日本にとって脅威」と指摘している。
同紙によると、短距離のスカッドC(射程約500キロ)改良型と推定されて
いる。日本のほぼ全域を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約
1300キロ)2発とともに、旗対嶺から約420キロの日本海の同じ水域に
着弾。いずれもわざと短く飛ばしたとみられ、ノドンも精度が向上していると
いう。(共同)
(産経新聞 2009/7/06)
【北ミサイル】命中精度がアップ?
【ソウル=水沼啓子】北朝鮮が4日に発射した弾道ミサイル7発のうち約5発
が、発射台から約450キロ離れた日本海上の同じ地点に着弾していたことが
5日、明らかになった。韓国の聯合ニュースが韓国政府筋の話として伝えたも
ので、誤差が大きいとされていた北朝鮮のミサイルの命中精度が向上している
ことを示している。
同じ地点に着弾したのは、短距離弾道ミサイル「スカッド」(射程300~
500キロ)の改良型と中距離弾道ミサイル「ノドン」(同約1300キロ)
とみられる。発射された7発中3発は飛行速度が極めて速く、ノドンの射程を
短くして発射した可能性が指摘されている。
現在、スカッドは200~300基、日本のほぼ全土を射程に収めるノドンは
約200基が配備済みとみられる。オーストラリアのスミス外相は地元メディ
アに「最大の懸念は(北朝鮮が)射程や精度を向上させていることだ」と述べ、
ピンポイント攻撃には不向きとされてきたスカッドとノドンの性能が改善され
ているとの認識を示した。韓国軍も来年、発射の兆候を探知しにくいスカッド
による攻撃に備え、弾道ミサイル早期警報レーダーを導入する計画だ。
また、聯合ニュースは、4日に発射されたミサイル7発の価格を計3400万
~4600万ドル(約33億~45億円)と推定。北朝鮮が今年発射したミサ
イルの総額は3億4400万ドル(約334億円)を超えるとみられる。
(産経新聞 2009/7/05)
米国では、SCUD-ERという新しいミサイルのコードが付いています
が、北朝鮮が今回発射したミサイルは、射程500キロのスカッドの
射程距離延長型という情報があるようです。実際に飛行した距離は
450kmですから、それを確かめるすべはありません。命中精度が向
上したという話も、北朝鮮が、目標をどこに設定していたのか明ら
かではありませんので、それもどの程度確かなのか不明なのですが、
弾着観測をした韓国が言うのですから、まあ信じる事にしましょう。
では、この射程1000kmのSCUD-ERは、報道の通り、本当に「特に」
日本にとって脅威なのでしょうか?
一般論で言えば、命中精度が向上したり、射程距離が延長される事
は、脅威の増大要素と言えます。しかし、北朝鮮の場合は、今まで
の命中精度が酷すぎたという点が指摘できます。ノドンの場合は、
CEP(半発必中界)は2000m~4000mです。半発必中界というのは、発
射した半分が目標からCEPで示された半径の円内に落ちる(残りは更
に外れる)。という概念ですから、北朝鮮のミサイルの命中精度の
度合いが判ろうというものです。
ちなみにSCUDの方ですが、今までは概ね射程に比例して半発必中界
も広がっており、射程1000kmで計算すると、1400m~2000mになります。
ノドンに比べれば、大分良くなっていますが、それでも、現在の
SRBMとしては、それ程、良好とは言えません。
(ちなみに、米国が1969年に配備を開始したPershing Iミサイルは、
射程、740kmでCEPは150mと言われています。また、これを改良した
Pershing IIは、1984年に配備が開始され、射程1600km、CEPは、30m
という精度を持っていましたが、現在では両方共、既に廃棄されて
います。)
簡単に言えば、北朝鮮のミサイルは、広域目標しか狙えないという
事になります。典型例では都市攻撃には使えるが、例えば、港湾施
設を狙ったり、自衛隊や在日米軍基地、飛行場や原発や製鉄所、工
場をピンポイントで狙ったりするのは不都合という事になります。
それは、ノドンであってもSCUDであっても変わりません。(Pershing
の150mや30mというCEPであれば、それが可能となります。)
命中精度が二倍に向上しても同じです。勿論、核弾頭を装備すれば
多少命中精度が悪くても弾頭威力で、カバーできますが、核弾頭を
使うのであれば、命中精度を向上させる意味がない事いなります。
笑い話の類になってしまいますが、今まではミサイルを迎撃するに
も、どこに飛んでくるのか判らなかったので、狙いをつけるのが困
難であったものが、今度は、ちゃんと目標めがけて飛んでくるので
ミサイル防衛が容易になったとすら言えるかも知れないのです。
それに、上記の記事では、北朝鮮はSCUD200~300基、ノドン200基を
配備済みと書かれていますが、SCUD-ERは、これから数が増えるか、
あるいは、今までのSCUDを改修して再配備する事になります。従っ
て、ある日突然、全てのSCUDが日本に届く様になる訳ではありませ
ん。また、ノドンやSCUD-ERが通常弾頭であるならば、日本に届く
ミサイルの数が200発が300発になっても、それによる損害の増加は
大騒ぎする程のものではありません。命中精度の低い通常弾頭ミサ
イルによる損害の程度は知れています。その一方で、核弾頭装備で
あれば、200発の核弾頭を日本向けに準備しているのであれば、既
にオーバーキル状態であり、それが300発になってもオーバーキル
が変わる訳でもないので、それもあまり意味がないと言える様に思
います。
(例えば、200発の核弾頭で9000万人が死んでいる処へ、100発の核
弾頭を追加して、死者の数を950万人にしても軍事的に見て、あま
り意味のある行為ではないと言う事です。)
従って、今回、北朝鮮のミサイルの精度、射程が向上した事は、北
朝鮮のミサイルセールスの宣伝文句に使うには結構でしょうが、日
本に対する脅威が増加したとパニックになる様な内容では全くない
と言える様に思います。
それよりも寧ろ、中朝国境から釜山や済州島を狙える短距離弾道ミ
サイルが出現したと言う意味の方が大きいと言えるのかも知れません。
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