※写真は、進水式で演説するシン首相。共同通信サイトより転載
インドに原潜 「浮沈」懸けた
インド海軍は26日、初の国産原子力潜水艦「アリハント」の進水式をマンモ
ハン・シン首相(76)立ち会いの下、南部アンドラプラデシュ州ビシャカパ
トナムの海軍基地で行った。国産原潜の保有は米露中英仏に次いで6カ国目。
潜水艦からの核ミサイル発射能力を確立し、核抑止力の強化を目指すが、中国
の核軍拡に拍車がかかる可能性も否定できず、日本を含む東アジアの安全保障
にも影響が出そうだ。
ロイター通信などによると、インドの国産原潜は全長 112メートルで、排
水量約5500トン。出力80メガワットの加圧水型原子炉が積まれ、核弾頭
搭載可能な射程約 700キロの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)計12
発を装備する。アリハントとは、「敵を撃破するもの」を意味する。
インドは現在、ロシア製を中心にディーゼル潜水艦を16隻保有しているが、
純国産はない。原潜の開発には1980年代から着手し、これまでにかかった
費用は総額29億ドル(約2749億円)とされ、原子炉などの試運転を経て
2011年以降に実戦配備する。インドはさらにロシアからアクラII級の原
潜を調達する方針で、アリハントを皮切りに今後10年で核ミサイル搭載可能
な原潜3隻を配備する見通しだ。より射程の長いSLBM搭載の原潜の開発も
進めているとされる。
シン首相は進水式で「国土防衛のために手段を尽くし、世界の最先端技術に遅
れないよう努めることはわれわれの義務である。原潜開発はインドの軍備にと
って歴史的にも画期的な出来事だ」と述べた。
インドの国産原潜保有は、空母建造や新型戦略原潜の配備を進める中国への対
抗を意図したものであることは明白だ。元海軍参謀長のアルン・プラカシュ退
役将校(64)は海軍力の増強を進める中国について、「核弾頭発射能力を持
つ原潜を8隻程度保有しており、潜在的な脅威だ」と述べている。
インドの軍拡は常に中国を意識したものであり、そのインドを常に隣国パキス
タンが追うというのが、地域の軍拡連鎖構造になっている。1962年の中印
国境紛争から2年後に中国は核実験に成功。以降インドは核開発に全力をあげ、
74年に核保有国となった。これでパキスタンも核開発に着手、98年にイス
ラム圏で初の核保有国になった。
今回、核弾頭搭載可能なSLBMを配備する原潜を得たことで、インドの核戦
力は格段に高まる。潜水艦の特性は、敵に見つかりにくい上に攻撃力が高いこ
とにある。たとえ地上の核基地が先制攻撃によって撃滅されても、海底にもぐ
った潜水艦は無傷で残りやすく、敵への報復能力を保つことができる。
このため、保有する核弾頭数が仮想敵より圧倒的に少なく、先制攻撃を受けや
すい状況にあっても、SLBM配備の潜水艦があれば、実効ある核抑止力を維
持できるわけだ。
さらに動力が原子力であれば、航続期間もケタが2つ違うぐらい飛躍的に伸び
る。理論上は、食料が尽きない限り、燃料の補給なしで半年でも1年でも海底
を全速力で跋扈(ばっこ)できる。
(産経新聞 2009/07/27)
インドが、ATV(Advanced Technology Vessel)として、原子力潜水
艦の開発を推進しているのは、良く知られれていましたが、最初に
戦略ミサイル原潜(SSBN)を完成させたのには、少し驚きました。
今の処は、限られられた情報しかないので、大した事は言えません
が、皮肉な事に、今回完成したインド初の戦略ミサイル原潜は、イ
ンドの仮想敵国である中国の第一世代ミサイル原潜である夏級とそ
っくりだと言えます。
表面上のスペックを比べてみます。
●インド アリハント級SSBN
水中排水量 5,500t
全長 112.0m
全幅 ??.?m
主機 原子力ターボ・エレクトリック? 1軸(80MW)
水中速力 20kt以上
最大潜行深度 300m
乗員 100名
弾道ミサイル SLBM(射程700km)/ 垂直発射筒12基
●中国 夏級SSBN
水中排水量 8,000t
全長 120.0m
全幅 10.0m
主機 原子力ターボ・エレクトリック 1軸(90MW)
水中速力 22kt
最大潜行深度 300m
乗員 84名
弾道ミサイル JL-1A(巨浪1/CSS-N-3 射程2150km)/ 垂直発射筒12基
大きさからみれば、SSBNとしては、小型の部類に入ります。
中国の夏級SSBNと比べても若干小型です。但し、搭載するSLBMは、
射程こそ劣りますが、搭載する数は、12基と夏級SSBN同様となって
います。
インドは、1980年代~90年代にソ連のチャーリー級巡航ミサイル原
潜を運用した経験があり、それに加えて原潜の設計・建造について
は深い経験を有するロシアから技術導入を行っていますので、小型
である事は、能力が低い事を意味していません。中国の第一世代原
潜がその騒音で有名であったのとは対照的に、インドの戦略ミサイ
ル原潜は、ロシア製と同程度の騒音レベルを達成している可能性が
あります。少なく共、それを目的とした設計がなされている筈です。
「アリハント」が搭載する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)Sagarika
は射程から見て、現時点では、パキスタンや中国の一部しか狙えま
せんので、第二撃戦力(敵の第一撃から生き残って報復打撃を行う
能力)としては限定的な能力しか持っていません。
しかし、Sagarika SLBMの射程を順次伸延させる事で、パキスタン
のみならず中国に対しても報復打撃力を持たせようとする筈です。
逆に、パキスタンや中国は、アリハント級SSBNを追尾し、有事には
撃沈する体制を整えようとする筈です。隣国であるパキスタンは別
として中国は、現在、スリランカ、ミャンマー、パキスタンに海軍
艦艇が利用できる港湾を設置しようとしていますが、これも、中国
自身のシーレーン防衛と同時に、インドの戦略原潜に備えたものと
言えるのかも知れません。
それに対してインドは、この艦のエスコート用に、国産攻撃型原潜
(恐らくアリハントと同じ設計で、SLBMを持たないコンパクトな艦)
を建造中であり、また、ロシアからはアクラII級攻撃型原潜をリー
スする事になっていますが、これらの直衛艦に加えて、今後は、効
果的な対潜水艦戦を遂行できる水上艦艇や海上航空兵力を順次整備
拡大していくものと思われます。
インド洋の波は今度ますます高くなっていきそうです。
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