2010年6月21日月曜日

「はやぶさ」の成功を軍事面から眺めてみると

※CGはJAXA Webページから転載

人類初の快挙「はやぶさ」 軍事への応用は周辺諸国への脅威

日本の小惑星探査機「はやぶさ」が3億キロ離れた小惑星イトカワから無事帰
還した。「はやぶさ」の7年間・60億キロの航程は、人類の宇宙史において多
くの新記録を打ち立て、世界一を狙う日本の宇宙技術を示すこととなった。
チャイナネットが「はやぶさ」に対する専門家の見方を紹介した。

「はやぶさ」は技術的な故障で3年ほどコントロールがきかなくなってしまっ
たが、生き残ったエンジンを組み合わせることで起死回生し、人類の遠隔操作
技術において初の快挙を成し遂げた。

香港の軍事評論家である馬鼎盛氏は「もし日本がこれらの成果を軍事面に応用
すれば、中国やその周辺国家にとっては大きな脅威になる」と語った。

ただし、北京のある軍事専門家は「はやぶさなど大したことはない。カプセル
はたった6キログラム、使用したM5ロケットが推力も小さく、軍事用に応用し
たところでどうにもならない。また、日本の宇宙事業は商業的マーケットに乏
しく、中国の宇宙事業の勢いにはかなわない」と語った。

一方で英国の『JANES MISSILES AND ROCKETS』に
よれば、日本のM5ロケットは直径2.5メートルの世界最大級の三段式固体燃
料ロケットで、1.8トンの衛星を250キロメートル、傾斜角31度の楕円軌道に
打ち上げることができる。また、M5ロケットは(その気になれば)大陸間弾
道ミサイルにも使えるという。

日本は電子と半導体の強みを生かし、制御の正確さで他国をリードしている。
米国は日本と協力し、その先進技術を入手すると同時に、ロケット推力技術を
日本と共有している。また、「はやぶさ」は真の宇宙探索を行うために開発さ
れた。飛行中は、先進的なイオンエンジンの運用や、小惑星への自律的接近・
着陸、岩石採集、地球への帰還、回収等を含むさまざまな実験が行われた。

これらにより、日本はその宇宙開発史上において大きな一歩を踏み出したと言
える。「はやぶさ」が達成した任務は、今後、太陽系形成の謎解きや、小惑星
の地球への衝突を低減させるための研究において大いに役立つだろう。

ロシアの専門家、ボフリア(音訳)は『プラウダ』の中でこう警告する。日本
は超大国としての一連の属性を持つ。軍事費は世界第5位、自衛隊はヘリ空母
4艘、艦艇40艘及び先進的防空システムを備えている。軍事装備は大部分が国
内生産化され、技術的装備も常に更新されており、核兵器の生産に必要な技術
も保有している。日本軍は地域における最強武力の一つである。

日本政府は海軍陸戦隊の再編成として「待機部隊」を作り、敵の水際陣地占領
のための演習を繰り返し行っている。また1992年、国際緊急援助の派遣に関す
る法律の開始で、日本は国連の承認を得ずに国際軍事行動に参加することがで
きるようになった。敗戦国のリーダーである日本は「歴史的不公平」を言い訳
にして、度々ロシア、中国、韓国に対し領土要求を行ってきた。

領土問題といえば、日露間の北方領土問題の方が日中間の尖閣諸島(中国名:
釣魚島)問題より、その紛争が激しくなっている。ロシアは中国と韓国を仲間
に引き込み、連携して日本の領土要求を制止したいと考えている。そうなれば、
これら「反日株式会社」の中で最も大きい利益を得るのはロシアだが、そのた
めの投資比率が最も大きいのもロシアということになるだろう。

(Serchina 2010/06/19)
}}}

上記のサーチナの記事はテーマは良いのですが、勉強不足の面があ
ったり、事実誤認の面があったりと食い足りない処が多々あります
ので、少し「はやぶさ」の軍事的側面を補足をしてみたいと思います。

「はやぶさ」を軍事的に考えた場合、主として三つの側面から評価
する事が出来ます。

一つは、「はやぶさ」を打ち上げたビークルの問題です。宇宙ロケ
ットと弾道ミサイルは、性格の違いはあるものの、使用目的の違い
しかないと言ってしまう事ができます。「はやぶさ」を打ち上げた
M-V(ミュー5)型ロケットは全段固体燃料の三段式ロケットです
が、米国のICBMであるピースキーパーを大型化した様なサイズと性
能を持っています。

ただ、衛星発射ロケットとしてある意味当然なのですが、ICBMとし
て使う時の問題点は、発射準備に時間と人手を要する点です。
ICBMの場合は、いつでも発射できなければなりませんので、発射準
備に何日も何週間もかかっているようでは話になりません。
最新のICBMは、トレーラートラックに乗せられる程度に小型化され
且つ、発射準備も数分程度、人手も数名程度で発射できる様になっ
ています。

実は次期固体ロケットと言われているイプシロンロケットでは、打
ち上げコストの削減を目指しており、この発射準備期間の短縮と発
射要員数の削減がメインの開発目標の一つになっています。また、
当初、ロケットは北海道での発射を視野に入れて移動可能とする事
も検討されていました。その点からすれば、Mロケットよりも現在
開発中のイプシロンロケットの方がよりICBMに近い性格を持つ事に
なる様に思います。

二番目は、誘導技術という側面です。ICBMは精密に誘導できれば出
来るほど、攻撃力は同じでも弾頭重量を小型に出来、同じペイロー
ドであれば、多数の弾頭を搭載する事が出来ます。誘導技術の正確
さは、まさにこの精密誘導技術そのものと言えます。地球から二億
キロ離れた、長さ数百mの目標に正確に誘導できたのですから、
ICBMの場合にも、高度の誘導技術を発揮できる事は確実であると言
えます。

三番目は、再突入弾頭の技術です。「はやぶさ」は、7年のブラン
クの後に、地球に接近した処で、帰還カプセルを切り離し、それを
正確にオーストラリアの着陸目標に向け正確に再突入させました。
そして帰還カプセルは着陸目標から5百m以内の誤差で着陸しました。
半発必中界(CEP)500mは、ICBMであってもかなり良い数字です。

「はやぶさ」は惑星間航行速度である毎秒10km以上のスピードで再
突入したので、表面は非常な高温になったのですが、回収後に帰還
カプセルを確認した処では、熱的にも物理的にも全く損なわれてお
らず、昨日作成された様な状態であったと言います。つまり、熱的
な影響は耐熱シールドで完全に食い止める事ができたという事です。
これは、速度が秒速数kmのICBMより余程高い条件をクリアしたと言
えます。

つまり、今回の「はやぶさ」の成功は、日本がICBMの発射と精密な
誘導、熱的影響を受けない再突入体の製造とその突入実験に成功さ
せたのと同義であったと言う事になります。

日本は勿論、国是として核武装を行なう事はないでしょう。しかし、
日本は世界有数の原子力発電大国であり、原子炉関係機器の製造で
もトップクラスの実力を持っている事は、周知の事実です。

ロケット技術、誘導技術、再突入弾頭技術、核分裂性物質の処理加
工技術が合わされば、核武装に必要な要素技術は全て揃っている事
になります。

従来から日本は潜在的な核保有国と言われていましたが、それをよ
り赤裸々に見せつけたというのが、「はやぶさ」の成功を軍事的に
見た時の見方であり、それは、例えば、日本を政治外交的に追い込
む事は、核武装への誘惑を強める事になりかねないと認識させる事
で日本の持つ抑止力の強化に役立つ事になったと解釈すべきである
様に思うのです。


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