2010年8月18日水曜日

中国の軍事力 2010 全体要約



底なしの中国軍拡に米不安 対中配慮も忘れず 対中年次報告発表

米国防総省は今回の中国軍事報告書で、空母建造など増強を続ける中国の軍拡
への懸念を強く示す一方、オバマ米政権の対中配慮も同時ににじませた。
米国の懸念を裏付けるように、米海軍は原子力空母ジョージ・ワシントンを南
シナ海に派遣するなど、ベトナムとの関係を強化。パラセル(中国名・西沙)
諸島などの領有権をめぐり同国と対立する中国を牽制(けんせい)している。
領有権に関連して今回の報告書で特徴的なのは、軍事力というハードパワーを
背景に、「外交上の利益を得るための軍事力活用の選択肢が増えつつある」点
を挙げたことだ。これは東シナ海の大陸棚開発のほか、中国による尖閣諸島へ
の領有権主張や南シナ海での領有権争いで、優位な外交を展開する能力を向上
させていることを示唆している。
また、中国軍の活動範囲については、昨年言及した「西太平洋地域」をさらに
掘り下げ、「第2列島線を越えた海上作戦」や「台湾をはるかに越えたアジア
地域における軍事作戦の展開能力」を明記し、警鐘を鳴らした。

米国のシンクタンク「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主
任研究員は16日、産経新聞に対し、「多弾頭の新たな陸上移動式ICBM
(大陸間弾道ミサイル)の開発に言及していることは注目に値する。5隻の攻
撃型原子力潜水艦(SSN)の建造にも触れているが、これは日本のシーレー
ン防衛にとって大きな脅威だ」と指摘した。

その一方で、昨年の報告書にはあった表現が削除されて表現が和らげられるな
ど、中国への配慮をにじませてもいる。
たとえば、台湾海峡について昨年の報告書は、「中国が開発中の短距離ミサイ
ルが台湾に軍事的圧力を加え、脅威となっている」と表現していた。
これに対し、今年の報告書からは「圧力、脅威」といった語句が消えた。穏や
かな言い回しを通じて中国への配慮を示すことを狙った“オバマ色”に腐心し
た結果とみられる。
報告書は今年3月に発表する予定だったが、延期され続けたため、議会共和党
が中国への配慮があるのではないかと批判していた。

(産経新聞 2010/08/18)


米国国防総省が例年発表している「中国の軍事力」が、8月16日に
発表になりました。全体の概要は、上の記事で書かれている通り
ですが、原文を見る事も必要なので、全体要約と各章毎の要約、
コラムの一部を抄訳してみる事にします。


中国の軍事力 2010

全体要約

過去30年に亘り、中国は経済的な成長と発展の面で大きく前進した。それに
より、より多くの中国人がより高い生活水準を達成できる様になり、また、中
国の国際的な存在感を増大させた。これらの経済面での業績は、科学技術面で
の発展と相まって、中国が軍事面での広範囲な変革に着手する事も可能とした。
中国の軍事力近代化のペースと範囲は過去10年間で増加しており、中国の軍
隊が、国際的な公共財として提供される事を可能とすると同時に、外交的な優
位や、紛争を自国に優位に解決する事に使用するという選択の可能性も拡大し
ている。

2010年以降、中国は、人民解放軍の役割と任務を自国に直接的に接続する
領域の外に展開するという新しい段階に入っている。これらの任務及び関連す
る能力によって、人民解放軍が国際的な平和維持活動や人道援助、災害救助や
海賊対策に貢献する事を可能としている。合衆国は、これらの貢献を認め、歓
迎している。しかし、それ以外の投資により、人民解放軍は、アクセス拒否戦
略や海域使用拒否戦略を追求する事も可能としている。また、現時点では、遠
隔地に兵力を展開し維持する能力は限られたものでしかないものの、人民解放
軍の遠距離兵力展開能力を改善する事を目的とした投資が行われている様に見
える。2010年の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)では、「中国は、
改良された中距離弾道弾と巡航ミサイルや、改良された兵器を搭載した新型攻
撃型潜水艦、新型の長射程対空ミサイルシステム、電子戦システム及びコンピ
ュータネットワーク攻撃能力、改良された戦闘機、衛星攻撃システムの開発と
展開を図っている」と記載されている。台湾海峡を跨ぐ経済発展と文化的紐帯
の強化は2009年も大きく前進した。これらの肯定的な傾向にも関わらず、
台湾に対抗する中国の軍事力建設は継続された。紛争となった場合に発生する
と考えられる合衆国の台湾に対する支援を阻止、遅延、拒否する事で、台湾独
立を阻止したり北京側の条件で紛争を解決させるよう台湾に影響を与える能力
を人民解放軍は開発している。台湾海峡を跨ぐ軍事力のバランスは、引き続き
大陸に有利に傾いてきている。

人民解放軍は、中国の軍事面や安全保障面での透明性に関して限定的な改善を
みせた。しかし、どの様に拡張された軍事力を使用していくのかを含め、多く
の不確実性が残っている。中国の軍事力と安全保障問題での限られた透明性は、
不確実性を強化し、誤解と誤算への可能性を増大させる。

オバマ大統領が述べた様に、「合衆国と中国の関係は意見の相違と困難が無い
訳ではない。しかし、我々が敵でなければならないという運命が定められてい
る訳でもない」。維持可能で、信頼できる合衆国と中国の軍事部門同士の関係
は、不信を減らし、相互理解と広範な協力を深める事をサポートする。中国が
再三に亘り、軍事部門同士の意見交換を中断した事は、この努力を妨げるもの
である。国防総省は、アジアや世界の共通の安全保障面での挑戦について、中
国が建設的役割を演ずるのを奨励する為に、この相互交流の機会を利用し続け
る。それと同時に、国防総省には、中国の軍事力を監視し、対決を阻止する特
別な責務がある。軍事的姿勢、兵力配置、可能性開発、同盟やパートナーシッ
プを強化する行動を通じて、国防総省は、アジア太平洋地域で、平和と安定を
維持するという合衆国の意思と能力を示していく。

(Department of Defence 2010/08/16)


Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/









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