中国は1日の国慶節(建国記念日)に合わせ、月探査衛星「嫦娥2号」を打ち
上げたが、これにより自国の宇宙開発技術に対する中国人の自信がおおいに高
揚したようだ。インターネットを通じたアンケート調査によれば、約95%の
中国人が「中国の有人宇宙船は日本より先に月面着陸できる」と考えているこ
とが明らかになった。
調査を実施したのは、中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時
報が運営するウェブサイト、環球ネット。
調査は打ち上げ当日の1日午後から始まり、4日未明までに約1万7千人から
回答が寄せられた。そのうち、中国の有人宇宙船は日本より先に月面着陸する
と考えている人は約1万6200人にものぼった。
アンケートの設問で、宇宙開発の競争相手として、最先端の技術を持つ米国で
はなく、日本が選ばれたのは、9月7日に尖閣諸島付近で起きた中国漁船衝突
事件以降、中国国民の間で日本へのライバル意識が高まったためとみられる。
中国の有人宇宙船が日本より先に月面着陸する理由としては「中国の宇宙開発
技術はすでに世界のトップレベル」「日本の技術は米国からもらっているので、
いつも最先端なものではない」など、いささか首をかしげざるを得ないような
主張も少なくない。
その一方で、「今の日本は確かに技術面で優れているが、中国には発展の勢い
があるので必ず追い越せる」「これからは日本と軍備競争が始まるので負ける
わけいかない」といった“冷静”な意見もある。
(産経新聞 2010/10/04)
日本も将来の人間型ロボット利用による有人月面探査をその長期宇
宙計画に含んでいます。しかし、その有人月面探査は、米国のコン
ステレーション計画を前提としたもので、自前で有人月ロケットを
打ち上げる事は、全く念頭にありません。その意味で、オバマ政権
がコンステレーション計画を破棄した事で、日本の有人月探査計画
はお蔵入りになったと言って過言ではありません。
米国が有人月探査を放棄した事により、有人月探査の長期計画を持
つ国は中国だけになっています。私は、個人的には、中国に是非、
有人月探査を実施して貰いたいと考えています。また、それ以前に
中国が無人探査を重ね、月周回探査から、月面軟着陸、そしてサン
プルリターンを是非実行して欲しいと思います。その様なステップ
を踏むことで、中国国内でも、宇宙計画の次の目標として有人月探
査への期待が高まり、実際にそれが実現する蓋然性が高くなると思
われるからです。また、中国にとってその国威発揚の効果は非常に
大きいと考えられるからです。
高い効果が望まれる有人月探査は、また、非常に多額の費用を要す
るものになる事が確実です。米国のアポロ計画は極めて合理的な計
画でしたが、当時の値段で100億ドル以上を要しました。現在の貨
幣価値に直せば、その数倍に達すると思われます。これは中国でも
変わりません。他国では、社会保障の要求もあるので有人月探査の
予算捻出は実現が難しいかも知れませんが、中国であれば、社会保
障を抑えても有人月探査を実現してくれるに違いありません。
月探査の実現をする事で、中国は、非常に多くの宇宙開発のノウハ
ウを獲得する事になります。しかし、その殆どは、宇宙開発用の突
端技術として、閉ざされた領域での技術開発となると思われます。
また、その技術を利用したスピンアウトも考えられますが、既に、
米国はアポロ計画を経験しており、中国が新たに保有する事になる
技術やノウハウも西側では既知のものである可能性が高いと思われ
ます。言い換えれば、アポロのスピンアウト技術で有用なものは既
に汎用化、商用化が実現されてしまっていると考えて差し支えない
筈です。
つまり、中国は、有人月探査を行う事で、アポロを追体験する事に
巨額の費用支出する事になりますが、それによって技術的な突破が
発生する可能性はかなり低いと思われます。そうであれば、中国の
月探査計画は日本にとって安全であり、中国にその国力を浪費させ
る事ができる訳で、日本にとって望ましい計画であると言えます。
ついでに言えば、米国がそうであった様に、中国が有人月探査と同
時に、地球上でも、ベトナム戦争の様な泥沼に足を突っ込む様なア
レンジが非常に望ましいと思われるのです。
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