2010年8月24日火曜日

中国の軍事力 2010 第一章要約(2)




人民解放軍のドクトリンの発展

2009年、人民解放軍は引き続き、より現実的でハイテクな条件下での戦争に対
する訓練と同様に非戦争任務を強調した最近のドクトリンの発展にそった訓練
を強調している。情報武装した各軍種の共同訓練を達成しようとする人民解放
軍の努力は、2008年の防衛白書で強調されたものであり、改正された軍事訓練
評価の枠組みを実現する継続した取り組みとして示されている。この新たな評
価基準は2008年央に出版され、2009年1月1日に人民解放軍全体の標準となった。

軍事能力を拡大する新技術を開発、調達、獲得する中国の努力の発展

中国は外国の技術、軍民両用部材の獲得、及び特定部門に焦点を当てた国内研
究開発によって軍事近代化を推進している。

中国は、大規模で、良く組織された企業、軍事品生産工場、提携された研究所
のネットワークを保有している。また、機密情報と輸出制限技術の収集を容易
にするコンピュータ・ネットワークを運用している。これらの実体は、必ずし
も中国の情報機関や安全保障サービスと常に連携している訳ではない。

中国の軍産複合体を形成する多くの企業や研究所には、軍事と民間、両方の研
究開発機能を持っている。この商業と政府と連携した企業と研究機関のネット
ワークは、しばしば、人民解放軍が、機密技術や軍民両用技術、あるいはそれ
に関する専門家に民間の研究開発の装いの下で接触する事を可能としている。
これらの企業と研究所は、技術会議やシンポジウム、合法的な契約や共同のベ
ンチャー企業、外国企業との提携、特定の共同技術開発の形式でこれを行って
いる。

国家安全保障に関わる核心技術や輸出統制機材、通常の商業ルートや学術ルー
トで獲得できない材料に関しては、中国は、合衆国の法律や輸出管理に違反し
て情報機関や合法活動以外の手段によって獲得している。2008年以降、合衆国
の報道機関は、中国が、技術開発の軍事力の近代化に真に重要と判断した部材
を獲得した方法について幾つかの事例にスポットライトを当てた報道をしてい
る。これらの事例では、合衆国から中国へ、合衆国に在住する個人が違法な技
術移転を起こしたものが主体だが、伝統的なスパイ活動によるものも発生して
いる。

台湾抑止戦力の変化

2009年には、台湾海峡とその周辺では、武力紛争は発生しなかった。また、全
体的な状況は2008年同様安定していた。しかしながら、台湾に対する中国の軍
事力増強と先進兵器の配備は、緊張を緩める事を許さない。

2008年5月に就任以降、馬英九総統は、軍隊を合理化し、プロ化する為のいく
つかの重要で広範囲な改革を実施している。台湾は、いくつかの分野で進歩し
ており、全体的な非常事態対応訓練を改善している。しかしながら、戦力バラ
ンスは引き続き中国本土に優位に傾いている。

中国の宇宙戦、サイバー戦についての能力の変化

宇宙戦、対宇宙戦能力

中国は、情報収集衛星、偵察衛星、調査衛星、航法衛星、通信衛星の編隊を拡
大している。それと併行して、中国には、危機や紛争時に潜在的敵が宇宙空間
に設置した資産(衛星)を使用する事を制限したり妨害する複数のプロジェクト
がある。中国の商業宇宙計画には、非軍事の研究施設があるが、非軍事用の施
設でも軍事用に使用可能な打ち上げや管制能力がある事を示している。

サイバー戦能力

2009年に、合衆国政府が保有しているものを含む、世界中の数多くのコンピュ
ータが、引き続き、中国を発信基地とする侵入攻撃の標的となった。この侵入
攻撃は、情報を取り出そうとするものであったが、その内のいくつかは戦略的
あるいは軍事的な情報だった。これらの侵入攻撃に必要な接近方法やスキルは、
コンピュータネットワークを攻撃する場合に必要とされるものと類似している。
これらの侵入攻撃が人民解放軍や中国政府の他の機関によるものであったり、
支援されたものであるかどうかは判っていない。しかしながら、サイバー戦能
力を開発する事は、権威のある軍事的著作に示された方針と一致している。

中国の海外での軍事的関与

中国の他の国々に対する軍事的関与は、中国が外国との関係改善し、国際的な
イメージを高め、中国の台頭に対する他の国々の懸念を減ずる事による国力の
発展を意図したものである。人民解放軍の活動は、先進的な兵器システムの獲
得やアジア内外での作戦経験の増加、外国の軍事管理訓練、作戦ドクトリン、
訓練方法への参加を通じて、その近代化を促進する事になる。

共同演習

中国の二国間または多国間演習への参加が増大している。人民解放軍は影響力
の拡大とパートナー国や組織との紐帯を強化する事で政治的利益を引き出した。
その様な演習は、テロ対策、機動作戦、補給と言った領域で能力を改善する事
で人民解放軍の近代化に対しても貢献している。人民解放軍は、戦術や命令の
意思決定、先進国の軍隊で使われている機器を観察する事で、実務的な洞察を
得る事が出来る。

平和維持、人道支援、災害救助活動


2002年以降、国連が後押しする平和維持活動への中国の貢献が拡大している。
現在では、全体で22の任務に12,000人が派遣されている中で、2,100人以上の
中国人要員が国連の任務に参加している。中国は、国連安保理常任理事国五ヶ
国の中では平和維持活動に対する最大の貢献国となっている。中国の貢献には、
技術支援、補給、医療部隊、民間警察、監視任務等が含まれている。

中国の軍民の指導者は、人道支援(HA)と災害救助(DR)を地域や世界的なパート
ナー諸国と協力する領域として指定している。

合衆国の関与と安全保障面での協力

軍対軍の紐帯

合衆国と中国の軍と軍との関係は、オバマ大統領と胡主席の合衆国と中国の軍
隊の関係を深め改善し、継続的且つ信頼できる軍軍関係に発展させる為の具体
的な処置を取るというコミットメントにより2009年には改善した。この様な、
指導者レベルでの対話は、国際的安全保障環境と関連する安全保障上の挑戦に
対する共通する見方を創り上げる上での重要な基盤を提供する。

国防総省は、国益の衝突や相違が生じた場合に建設的に討議できる継続的な対
話ルートを構築するよう務め、中国と対話や協議の複数のメカニズムの構築に
努力した。

これらのプラス面の発展にも係わらず、2010年1月にオバマ政権が台湾へ防御
兵器を売却する意図を発表した後、北京は、軍と軍の関係を中断する事を選んだ。

非軍事的な安全保障面での紐帯

合衆国と中国の戦略経済対話の最初のラウンドが、ワシントンDCで2009年7月
27日~28日に行われた。戦略経済対話は、両国が直面する二国間、地域的、全
世界的な短期長期の戦略的経済的利益についての広範囲な挑戦と機会に焦点が
当てられ強調された。戦略経済対話は、米国側は国務長官と財務長官が、中国
側は、戴秉国国務委員と王岐山副総理が主導したが、エネルギー長官や、政務
担当国防副長官、合衆国太平洋軍司令官等、米国の閣僚レベルの高官多数が参
加した。

合衆国と中国は2008年10月に台湾に米国の武器輸出発表の後で中止されていた
核不拡散二国間対話を、2009年9月にワシントンで再開した。双方は、北京で
2009年12月に再会した。国務次官補レベルの討議は全体的な核拡散防止への協
力を強化するものである。

(Department of Defence 2010/08/16)

Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2010
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/2010_CMPR_Final.pdf


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http://space.geocities.jp/ash1saki/










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