【国際情勢分析】中国は責任ある大国か
経済や軍事で力を増す中国と、超大国といわれた米国の不協和音が鳴りやまな
い。イランの核開発問題などで、米国は中国に責任ある行動を求めているもの
の、中国の協力が得られないことが理由の一つだ。米中「G2時代」が到来し
たといわれる中、現実には米国だけでは中国を御することはできないとの指摘
もされている。
■イラン制裁に難色
まずイラン問題。国際社会の制止を無視して核開発を続けるイランは最近、濃
縮度20%のウラン製造に成功したと発表した。国連安全保障理事会は、イラ
ンへの制裁を検討しているものの、拒否権を持つ中国が難色を示している。
このままイランが核武装してしまえば、その責めは誰が負うのか。オーストラ
リア議会外交小委員会委員長のマイケル・ダンビー氏は、2月11日付の米紙
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)・電子版への寄稿で、「もし戦争
が起きたら、その責任の多くは中国政府にあることになろう」と論じた。
貧富の格差が大きい中国では、「国民は生活水準の恒常的向上を期待するよう
になっており、これが中国共産党政権の最大の弱み」(WSJ)である。従っ
て、共産党政権はエネルギー獲得に躍起で、「支配と確実性を手に入れるには、
特定の産油国、できれば、欧米と政治的に対立し、欧米以外の国の擁護と友情
を必要としている国と取引すること」(WSJ)を望んでいる。
国連安保理の議論がまとまらず、イランの暴走を許せば、その軍事力の矛先は
欧米に向くかもしれないし、イスラエルがイランに先制攻撃する恐れもある。
その場合「戦争という重大な危機がもたらされることになる」(WSJ)という。
■台湾情勢への幻想
次に米国の台湾への武器売却問題。バラク・オバマ米政権の売却決定で、中国
は米国に激しく反発している。米シンクタンク、ブルッキングス研究所のリチ
ャード・ブッシュ上席研究員は、2月11日付の米紙ロサンゼルス・タイムズ
(LA)・電子版への寄稿で、米政府が中台統一を妨害しようとしていると中国の
関係者は思いこみがちだが、「これほど間違った見方はない。米国が台湾の防
衛を支援するのは、台湾が不安を抱いているからで、その不安は中国がとった
政策の結果だ」と中国責任論を展開した。
台湾では、独立を模索した陳水扁(ちん・すいへん)政権に代わり、対中融和
派の馬英九(ば・えいきゅう)政権が誕生し、台湾有事の危機が和らいだとみ
る米国は胸をなでおろしている。
だが、実際には中国の軍備増強は休むことなく続いており、ブッシュ氏は、米
中台のいずれの利益にもならないのに、「なぜ中国は、緊張緩和という新たな
プラスの現実に合わせて変わろうとしないのか」(LA)と疑問を投げかけた。
とはいえ、覇権国家への野望が見え隠れする中国にこうした理性を求めるのは
むなしい。さらにそれが、米国で中国、台湾通として知られるブッシュ氏の見
方であるというのだから、米国は台湾情勢に甘い幻想を抱いているのかもしれ
ない。
■「G2論」の空虚さ
米エール大のジェフリー・ガーテン教授は2月9日付の英紙フィナンシャル・
タイムズ・アジア版への寄稿で、「米国は10年前とは比べものにならないほ
ど弱体化している」と指摘。「中国のその凝り固まった立場から動かすことが
できる唯一の方策」は「多国間協定の網を作り上げること」であり、欧州や日
本、新興の大国と協力して当たるべきだと説いた。米国の威光の陰りと中国の
責任感のない対応は、「G2論」の空虚さを物語っている。
(Sankei IZA 2010/02/19)
輝かしい北京五輪の成功、リーマンショックを物ともしない経済の
大躍進、次々に中国企業の手に落ちる世界の資源、中国を更なる成
功に導く共産党の指導力、オバマ民主党政権ですら人権問題を指摘
できない程の政治的存在感、ダボス会議で世界に指導的エリートか
らも持て囃されるG2国家の旗頭、胡錦濤主席、温家宝首相。
2008年~2009年の中国は、まさに我が世の春を謳歌していて、全く
陰りがない印象すら与えていました。
しかし、2010年に入ってから、中国を取り巻く環境は一変しました。
コペンハーゲンで行われたCOP15を契機に、中国に対する欧米の風
圧が一変したのです。この会議で、中国は、ベネズエラやキューバ、
スーダンと言った反欧米国家を使って、米欧主導による二酸化炭素
排出規制合意を徹底的に阻みました。また、欧米各国が首脳を送っ
て合意形成に務めたのに対し、中国は交渉担当者しか派遣しないと
いう非礼を敢えてした上で、上記の様に交渉が暗礁に乗り上げる様
に影で糸を引いていた訳です。欧米各国から見て、黒幕は明らかで
あり、その非協調的態度は、欧米各国に中国異質論を再確認するも
のとなりました。
もともと中国の経済発展は、為替レートを市場実勢に任せず、意図
的に人民元を低く抑える事で、他国の市場を奪う近隣窮乏化政策に
よるものでした。また、2009年に鉄鉱石の価格交渉で、鉱山会社リ
オ・ティントの中国駐在員をスパイ容疑で逮捕勾留する等、非常識
とも言える価格交渉態度にでました。それに輪をかけたのが2010年
初に明らかになった中国からGoogleへのサイバー攻撃と違法アクセ
スです。一時は、中国当局の検閲を甘受してでも中国市場に進出し
ようとしたGoogleでしたが、この事実により撤退に向け舵を切りま
した。また、リオ・ティントは2010年の鉄鉱石の価格交渉プロセス
から最大需要家であるにも関わらず中国を排除し、日本との交渉結
果を中国に提示し、受け入れなければ中国への輸出を行わないとい
う態度に出るようになりました。
中国に対する更なる圧力になったのが、米国による台湾向けの武器
売却です。最新鋭戦闘機や潜水艦と言った派手な兵器の供与は手控
えられましたが、パトリオットPAC3は、明らかに台湾に向けられた
中国の弾道ミサイルから台湾を防御する事を目的にしたものでした。
記事にも取り上げられて様に、中台関係の緊張緩和にも関わらず、
戦力の増強を継続する中国に対するオバマ政権からの警告とも言え
る決定でした。
これに対し中国は、米国との軍事交流を停止する他、兵器を供給す
る企業を禁輸対象とする等、過剰反応とも言えるリアクションを見
せました。それに対し、オバマ政権も、今まで控えていたダライ・
ラマ14世との首脳会談を急遽実現する等、政治的エスカレーション
に進んできています。それは、米中二ヶ国による世界支配(パック
ス・シナエ・アメリカーナ)構想である「G2論」の幻想を吹き飛
ばすものであったと言えます。
我が国においても日本経済新聞グループや多くの左翼系メディアの
ように、中国の近年の経済発展に幻惑される企業や人士が多かった
のですが、一歩引き下がって冷静に考えれば、この動きは、まさに
第二次大戦直前に、ドイツの勢力拡大に眩惑され、バスに乗り遅れ
るなと、それまでの対英米協調路線から三国同盟へ国策を誤って行
った経緯を彷彿させる動きであると言えます。
それにしても、民主党政権が発足してから4ヶ月足らずであるにも
関わらず、与党の幹事長が、百数十人の国会議員を引き連れて中国
を訪れ、朝貢外交を行い、米国の大統領が、日本との付き合い方が
分からないと韓国大統領に愚痴る時代になってきました。
残念ながら、民主党には、最低でも、あと3年半、日本を自由に統
治できる権利が与えられています。その時間が日本にとって取り返
しのつかないものにならない様、心から祈りたいと思います。
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