2010年8月4日水曜日

北朝鮮の核は、どちらに向いているか


昨日は、「中国のご機嫌を取る北朝鮮」というテーマで、中国に媚を
売る北朝鮮について触れましたが、今日はその続編です。
現在、開発が進められている北朝鮮の核がどこを向いているかとい
うテーマです。

韓米日を向いているに決まっているという方が多いと思いますが、
私はそれだけではないと思います。つまり中国に対しても向いてい
るのではないかと思うのです。

北朝鮮にとって核兵器は、金日成・金正日体制(あるいは金王朝)を
維持する為の最終兵器です。

開発の契機になったのは、1989年のルーマニアのチャウシェスク政
権の崩壊とチャウシェスク夫妻の処刑を目の当たりにした事が大き
いと言われています。

そして、北朝鮮が体制の最終的保証として見出したのが核兵器と先
軍政治という訳です。核兵器により、外部からの政権転覆を抑止す
ると共に、先軍政治によって体制の全てを軍優先(勿論、最高指導
者を除き)にする事で、軍の支持を確保しようとしたものと見られ
ます。

2002年に、ブッシュ政権は、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」
と名指しした事も、金正日に核開発の正当性を確信させた筈です。
いずれが鶏で卵なのかという議論はありますが、結果的に核を開発
できなかったイラクは、崩壊しましたが、核開発に邁進したイラン
と北朝鮮が生き残っている事は、核兵器が体制を保証している明確
な証拠である北朝鮮が考えても不思議ではないと言えます。

勿論、北朝鮮が実際に核を使用する時は、金正日政権が崩壊する時
となります。現時点で、北朝鮮の核は米国に届きませんし、到達す
る様になっても、ミサイル防衛によって無力化される筈です。日本
や韓国に対して使用すれば、米国による核報復が待っています。
いずれの場合も、金正日政権は崩壊しますから、体制を存続する為
には、核兵器は実際には使えない事になります。

その一方、現在、韓米日に、金正日政権を崩壊させる意思はありま
せん。本来であれば、朝鮮半島統一は韓国の念願する処の筈ですが、
ドイツ統一にかかった負担の大きさから、韓国は、実際には統一に
及び腰であり、統一の負担を負うつもりはないと断定できます。

つまり、北朝鮮は、そろそろ核開発の目的を体制存続から、経済的
補償に移して良い筈なのです。

北朝鮮がそうせず、引き続き核兵器を保有し続けようとしている理
由は、一つには、米国の政権が変わった時に、また、金体制の転覆
を企む可能性がある事と、もう一つ、中国の介入による金政権の転
覆を試みる可能性があるからと考えざるを得ません。

中国が、金正日政権を転覆する事は、韓米日にとっても受け入れ可
能なオプションである事は事実です。

韓国からすれば、北朝鮮が崩壊し、統一の負担、即ち、北朝鮮側の
社会資本の整備や社会保障のコストが、全て韓国に掛かってくる事
は悪夢以外の何者でもありません。米日にしても、より透明性の高
い北朝鮮であれは金正日体制と比べ、十分受け入れ可能という事に
なります。

中国にしても、北朝鮮という緩衝国がなくなり、韓国と直接国境を
接する事になるより、中国の息のかかった、社会主義市場経済化で
も同一歩調の取れる社会主義政権の隣国の方が存在価値が高いであ
ろうと思われるのです。

金正日にすれば、中国にとって、忠誠心のより高い傀儡国家の方が、
関係国全てから歓迎されるであろうことは、容易に想像がつきます。
その様な視点からすれば、今回の哨戒艦撃沈事件を利用しても、中
国との関係を改善し、核兵器の実戦配備を可能とする時間を稼ぐの
は理にかなった行動であると思われるのです。


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