2010年5月12日水曜日

中国空母艦載機「殲15」の完成度



※写真はSu-33。Novosti Webサイトより転載

中国、空母艦載機の試作機製造

カナダの軍事専門誌「漢和防務評論」5月号は、中国が航空母艦の搭載機とな
る国産戦闘機「殲15」の試作機を昨年10月に製造したと報じた。中国は艦
載機としてロシアから「スホイ33」を購入する交渉を進めていたが、ロシア
は技術転用への懸念などから難色を示していた。中国はウクライナから購入し
たスホイ33と同型の艦載機の技術を応用し、国産での艦載機開発を目指すと
みられる。

試作機を製造したのは遼寧省の軍用機メーカー、瀋陽航空機工業。空母に搭載
しやすいように主翼や水平尾翼を折り畳むことができ、関係者は同誌に「技術
の問題は既に解決した」と語った。今年中に試験飛行を計画。外見はスホイ33
に酷似しているという。

中国は空母建造を計画しているが、短距離の滑走で離着陸できる艦載機の技術
などが課題になっている。艦載機の国産開発・生産に成功すれば、空母建造に
向けた準備が一段と進む。

(日本経済新聞 2010/05/10)


中国は当初、ロシアからSu-33を購入する予定でしたが、40
機以上と見込まれた商談が実際には7機(2機という説もある)に過
ぎなかった事から、ロシアは、中国が、残りの機体を技術盗用して
製造する事を懸念して商談を打ち切ったと言います。その後、中国
は、ウクライナが、ソ連崩壊後にロシアから譲渡されたT10K(
Su-33の試作機)一機を、2007年に購入しています。

上記の記事が正しければ、中国は、T10Kを2007年に購入後、
リバースエンジニアリング手法で解析した上、試作機を三年で完成
させた事になります。

中国は、Su-33の原型であるSu-27をライセンス生産して
いますので、生産そのものについては問題はなかったと思われます
が、陸上機を艦載機に改造する事は、実は、容易ではありません。

Su-33でSu-27から改造された点は以下の諸点です。
・前輪を着艦の衝撃に耐えられるよう二重タイヤで強化。
・着艦時の衝撃に対応する機体後部の構造強化と着艦フック装備。
・発艦時の揚力増加と上空での機動性を高めるため主翼前に全遊動
 式のカナード翼を装備。
・長いテールコーンの短縮。
・空母格納庫での運用を考慮し主翼と水平尾翼が折畳み式に改造。

Su-33の場合、試作機が1987年に飛行した後、量産機の初
飛行が1990年、更に運用が開始されたのは、1994年となっ
ています。

中国がウクライナから入手したのは、Su-33の試作機でしかな
く、その後、運用に移されるまでに実施された、おそらくは数百項
目に及ぶ小改造は、当然の事ながら反映されていません。また、
Su-33そのものも、配備されたのは24機に過ぎず、空母での
運用実績も西側の実績には程遠く、完成度十分とは言い難い様に思
われます。

また、既存の機体を改造するケースの例として、日本のF-2を例
に取ると、1990年に開発が開始され、1995年に初飛行、実
戦配備は2000年になっており、更に、実戦配備後も改造が追加
されており、最近になって漸く、期待された性能を満足する様にな
ったとも言われています。

この様な諸点を考えれば、中国が如何に優秀な航空機設計製造能力
を持っていたとしても「殲15」の艦載機としての完成度は、とて
も高いものとは言えない事は、容易に想像がつくと思われるのです。

近年、中国経済の急成長と共に、中国海軍の日本近海での活動が活
発化しており、空母機動部隊の保有も間近いものと思われますが、
我々は、それをいたずらに恐れる必要はないと同時に、それに対す
る冷静で的確な対応が必要であると思われます。


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