2010年3月12日金曜日

太平洋での潜水艦軍備競争:米国の海中での優位に対する中国の挑戦(2)




昨日の続きです。

海軍も「海中の脅威の再出現」に直面して、そのASW能力の有効性が減退して
いる点を認めており、将来、より先進的なセンサーや対潜兵器を開発するとい
う目標を決定している。また、米国太平洋艦隊は、すでに伝えられるところで
は対潜訓練を増やしている。これらは、主にして潜水艦と長距離海上哨戒機か
らなる対潜プラットホームの調達という目標と共に、持続していかねればなら
ない重要な努力である。

中国

冷戦の終了以降、中華人民共和国の人民解放軍海軍(PLAN)は、海軍、とり分け
その潜水艦隊の勢力を劇的に増強し、能力を格段に向上した。その潜水艦隊は
「今では、人民解放軍海軍で、最も力強い戦力と考えられている。」
米国国防総省によれば、中国は、アジアで最大の海軍力を保有しているが、攻
撃型潜水艦も60隻(原子力推進6隻、ディーゼル推進54隻)保有している。
デーゼル推進潜水艦の半分以上は、最新型のキロ級、宋級、元級である。ある
専門家は、中国は今やロシアよりも多くの潜水艦を保有しており、その建造速
度は、素晴らしいと述べている。

潜水艦隊の増強

中国は、その沿岸を超えて戦力を投射できる信頼性の高い大洋海軍を建設する
という目標を実現する為に着実に前進している。中国が潜水艦戦に真剣に取り
組んでいる事を把握するには、2002年から2004年に、中国海軍が13隻の潜水艦
を国内で進水させると同時に、前例のない規模でロシアに潜水艦を発注した事
を考えれば充分であろう。実際、中国は、1995年から2005年に31隻の新しい潜
水艦を就役させた。この急速な進化を受けて、近海用に有力で強力なディーゼ
ル潜水艦の配備する事に対する評価も当初の懐疑から尊敬に変わった。
複雑な技術開発に対する中国の可能性について、海外でも、深刻に受取られる
様になった。

中国の攻撃型潜水艦隊の将来規模の予測は、58隻から88隻と幅広く
別れている。この予測の違いは、中国がどれだけ早く老朽潜水艦を
退役させるか、また、どの位、高価な原子力潜水艦を配備するか、
更に、外国製の潜水艦をどの程度購入するかに関して意見が異なっ
ている事による。近年、中国は、国内で設計、建造された四種類の
潜水艦を導入した。それらは、晋級(Type094)SSBN、商級(Type093)
SSN、元級(Type041/039A)SSP、宋級(Type039/039G)SSKである。
商級の後継艦が開発中と伝えられている。この規模の潜水艦の開発
と建造への投資が継続されている事から見て、70隻という予測レン
ジの上の方の数字が、来るべき将来の中国潜水艦隊の構成と考える
べきだろう。

パトロールの増加

中国の攻撃型潜水艦隊は、パトロール率を2006年の2回から2007年には6回に、
更に、2008年には12回に増加させている。これは、訓練の新しい目標が定めら
れ、それは、関係諸国、とり分け米国に対し、中国が太平洋における海軍大国
である事を誇示したいという願望がある事を示している。最近の二つの事件が、
その傾向を強調している。2006年10月26日、宋級潜水艦が沖縄近海で行動中の
空母キティホークの5海里以内に浮上したが、これはエスコート陣形の内側で
あった。また、2009年6月11日、中国の潜水艦が、フィリッピン近海で曳航式
ソナーを展開していたイージス艦ジョン・S・マケインと衝突した。これらの
事実が米国海軍のASW能力の限界と中国潜水艦の能力を示しているかどうかは
別にして、最も有益な情報として分類されるべきものは、これらの事件は、中
国の潜水艦の活動範囲が過去のそれと比べ、明らかに広範囲に配備されており、
また、より攻撃的に運用されている事を示しているという事である。

目的

いくつかの考慮要素と目的を考えると、中国の急速な攻撃型潜水艦隊の増強を
理解しやすくなる。基礎的な中国の防衛ニーズは、中国-台湾関係に「干渉す
る」米国の能力を制限し、太平洋で米国の優位に挑戦し、中国の戦略ミサイル
原潜による核抑止力を保護して、より大きな国際的な威信を得ることである。

まず最初に、中国の富と人口は、その東海岸に集中しており、中国が、その海
岸に沿って強力な海軍抑止力を展開する説得力のある理由を与えている。

それとは異なり、多くの安全保障の専門家は、「中国が潜水艦隊を増強する主
たる目標は、米国が台湾の代りに介入する事を遅延、または阻止する事である」
と主張している。中国は、台湾の「反逆した行政区」によって、苦しめられて
おり、1949年以降、(中国の観点からは)両岸関係に干渉している米国によって
苦しめられている。

台湾海峡を挟む関係が特に緊張した1996年には、米国は台湾に対する中国の攻
撃を阻止するために、二つの空母戦闘団を派遣した。中国がそれ以来、将来に
おける台湾海峡をめぐる紛争において、米国の軍事介入を躊躇させたり、遅延
あるいは妨害する海洋利用拒否能力の開発に高い優先順位を与えた事は驚くに
当たらない。米国防総省は、「キロ級、商級、宋級、元級潜水艦の購入と開発
は、中国人民解放軍の海中戦と通じた海洋利用拒否を重視する姿勢を描き出し
ている」と結論づけている。

人民解放軍海軍は、かってのソ連海軍の戦略、それは、攻撃的能力を保有する
大洋を航行する原子力潜水艦を用いて、急速に(ソ連にとって)好ましからざる
地政学的状況を克服するという戦略を模倣しているとも言える。類似の戦略は、
中国本土を取り囲む列島線による封鎖を打ち破ろうとする人民解放軍海軍の目
的に合致している。

海南島の新しい海軍基地は、人民解放軍海軍に、死活的な国際シーレーンへの
直接的なアクセスを与え、南シナ海の深海に潜水艦を密かに展開する事を可能
にする事で、新たな検討ポイントを付け加える事になる。

核抑止力の一環として、中国は、最大5隻の晋級戦略ミサイル原潜(SSBN)を建
造するものと予想されており、おのおの、中国近海から発射して米国に到達可
能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)12基を装備していると見られている。
これにより、信頼のおける海洋配備の核抑止力が構成される。中国は、戦略ミ
サイル原潜の核抑止パトロールの護衛を攻撃型原潜に期待しているものと思わ
れる。

最後に、中国がグローバルな大国になる意図がある事は明白であり、原子力潜
水艦は、中国が大国の地位にある事の確認を世界に要求している事を示す顕著
な表れである事は、中国の常識と言える。また、強力な攻撃型潜水艦隊は、世
界をめぐる中国商船団を保護する上でも有用である。1993年のイン・ヒー事件
で、米国が化学兵器の原料をイランへ輸送していると疑われた中国の貨物船を
臨検すると譲らなかった時、中国の指導者に「いくら激怒しても、頼るものが
なければ無力だ」という事を再認識させた。

オーストラリア

オーストラリアは6隻のディーゼル電気推進潜水艦を保有しており、より広範
囲な海軍近代化計画の一環として、12隻の巡航ミサイルを装備した最新型通常
動力潜水艦に置き換える事を公表している。オーストラリア政府は、この増強
を中国の海軍力の増強と世界とりわけアジア太平洋地域で安定化の役割を担っ
ている米国の海軍力の優位の減退に対応したものと明白に表明している。

インド

地理的には、太平洋国家ではないものの、インドは、東南アジアと西太平洋に
影響範囲を拡大する事を試みている。インドは16隻のディーゼル推進の攻撃型
潜水艦を保有しており、最近、最初の攻撃型原潜を進水させたが、それは、ロ
シアのアクラ級を元にしたものである。インドは2隻目のアクラ級潜水艦をロ
シアからリースする予定があり、6隻のスコルピオ級ディーゼル潜水艦を建造
中である。インドの潜水艦戦力の増強と更新は、10年で、100隻の戦闘艦を増
強するというより大きな計画の一部である。インド国防省は、この計画につい
て、国家防衛の為の「戦略的必要性」と説明しているが、その多くは中国の海
軍建設に対抗したものと言える。「中国は素晴らしい勢いで海軍戦力を増強し
ている。そのインド洋に対する野心は明白である。」インド自身も大国になる
ことを切望している。そして、潜水艦は、列強の艦隊の肝要な部分とみなされ
ている。

ロシア

ロシアの潜水艦隊は、ソ連邦の崩壊以降、三分の二に縮小している。近年、ロ
シア海軍は、ソビエト後の危機から脱却したが、冷戦時代から残された数十隻
もの原潜を退役させる必要がある。2009年には、ロシアは17隻の攻撃型原潜と
20隻のディーゼル潜水艦を保有していたが、この内、5隻の攻撃型原潜と9隻の
ディーゼル潜水艦が太平洋艦隊に配備されていた。近年の国防予算の大規模な
拡大にも関わらず、「ロシア海軍は、資金不足に取りつかれており、作戦可能
な潜水艦を定期的にオーバホールする事とそれらを戦闘可能状態にするのがや
っとといった状況にある。」

日本

日本は、新しいそうりゅう型AIP潜水艦1隻を含む、最低16隻の最新の潜水艦隊
を維持している。日本は、歴史的に、潜水艦を16年の現役期間で更新してきた
が、それは、他国が潜水艦を退役させるペースに比べ非常に早いものだった。

韓国

韓国は12隻の攻撃型潜水艦を保有しており、2020年までに、潜水艦隊を27隻に
増強する計画がある。

北朝鮮

北朝鮮は、22隻の古い通常動力型潜水艦(この内、何隻が現役かは不明。) と
多くの小型潜水艦を保有している。これらの潜水艦は、理論的には、商船や、
洗練されていない水上艦艇に脅威を与える事できるが、北朝鮮の潜水艦は、海
域管制上、深刻な競争相手とは見なされていない。

台湾

台湾は2隻の攻撃型潜水艦を運用しており、潜水艦隊を増強し、更新する、国
内建造を含む様々な方法を探っている。2001年には、米国は台湾に、8隻の通
常動力潜水艦を含む武器パッケージ輸出を提案したが、米国は、最新の通常動
力潜水艦の設計に関する何らの権利を保有していない事から、この提案は、効
力を失ったものと見なされている。

東南アジア

中国とインドが原子力推進潜水艦を配備した文脈から、東南アジアの殆どの国
が、既存の潜水艦隊の増強の能力向上を図っている。インドネシアは、2隻の
潜水艦を保有しており、2024年までに12隻を建造する計画を発表している。
ベトナムは、6隻のキロ級潜水艦をロシアに発注している。シンガポールは最
近、2隻のアーチャー級AIP潜水艦で既存の4隻の潜水艦の内2隻を置き換えた。
2007年10月に、マレーシアは、フランス建造のスコルピオ級潜水艦1隻の引渡
しを受けた。2隻目は2010年に引渡される事になっている。タイは、現在、潜
水艦を保有していないが、何隻かを調達する事に関心を深めている。


次回は、中国の挑戦に対する米国の対応に関する提言と結論です。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年3月11日木曜日

太平洋での潜水艦軍備競争:米国の海中での優位に対する中国の挑戦(1)


2月12日の以下のエントリー

潜水艦建艦競争が激化するアジア。惰眠を貪る日本?(2010/02/12)
http://ysaki777.iza.ne.jp/blog/entry/1457002/

で取り上げたヘリテージ財団のレポートですが、中国海軍に対する
米国海軍の動きについても、良く書かれているので抄訳する事にし
ました。原文は以下のURLで参照できます。
http://www.heritage.org/Research/NationalSecurity/bg2367.cfm

第一回は、総論と米国の動きについてで、次回は中国や他の諸国の
動きになります。

太平洋での潜水艦軍備競争:米国の海中での優位に対する中国の挑戦
by Mackenzie Eaglen and Jon Rodeback
The Heritage Foundation, February 2, 2010


要約

冷戦の終了以来、中国はその海軍、とりわけ潜水艦隊の拡張を図っており、
1995年以降、数十隻の攻撃型潜水艦を増勢した。同じ期間に、米国の攻撃型潜
水艦隊は、53隻に縮小し、2028年には、41隻に減勢するものと予想されている。
米国の艦隊は、既に、現在行われている作戦の需要で、余裕がなくなってきて
おり、オーストラリア、インド、その他太平洋諸国も、このバランスの移動を
認識して、自らの海軍の拡張、特に潜水艦隊の拡張に入っている。米国が艦隊
の減勢に終止符を打ち、反転させない限り、米国の太平洋における軍事的優位
は、弱まり続け、米国の利益と友好国や同盟国を支援する合衆国海軍のこの地
域での作戦実行能力は、非常に制約を受ける事になるだろう。

2009年4月、オーストラリアは、地域的な安全保障環境の変化、とり分け、太
平洋における米国の覇権の凋落と中国海軍の急速な発展に対応して、「第二次
大戦以降最大の軍備増強」を行う旨発表した。長い間、米国に最も忠実な同盟
国であり、友人であった国の一般向けの声明は、米国議会と米国の上級防衛担
当者に対し、目覚ましのベルと言えるものとなった。

中華人民共和国(PRC)は、地域的な海軍大国から世界的な大国へと急速に発展
してきており、「米国と中国、また、中国と日本の間で東アジアにおける安全
保障上の厳しい競争が生起する見通しが強まっている。」この地域の他の太平
洋諸国も、潜水艦の取得予定で明白に示されている様に、この安全保障環境の
変化に留意している。

オーストラリアの軍備増強は、潜水艦隊を現在の6隻から、より大型で、能力
の高い12隻へと増強するものであり、それに加え、「インド、マレーシア、
パキスタン、インドネシア、シンガポール、バングラデシュ、韓国も近代的な
通常動力潜水艦の取得を計画中」である。オーストラリアとインドは、その海
軍増強の少なくとも一部が中国の海軍建設に対する対抗処置である事をはっき
りと述べている。

これとは対照的に、米国の潜水艦隊は2028年まで縮小し続けると予測されてお
りこれによって、太平洋での事件に対する米国の影響力と形成力がさらに制限
される事になる。

米国の攻撃型潜水艦は海洋の支配と覇権の確立に重要な要素であり、他の軍事
資産と交換できるものではない。

その独特の能力は、軍事力に乗数効果をもたらすものであり、「体重を上回る
パンチ力」を可能とする。そして、東アジアと太平洋における米国の利益を保
護し、米国の盟邦を支え、安心させるために、米国は、太平洋で軍事バランス
を維持するより広範な政策の重要な構成要素として潜水艦隊の減勢を中止し増
強へと反転させなければならない。

水中のかくれんぼ

強力な武器システムとステルス能力の結合により、潜水艦には戦略的な抑止、
海洋管制と海洋利用拒否、戦場準備、監視と情報収集、特殊部隊上陸や陸上攻
撃を含む地上作戦に対する支援といった広範囲にわたる任務を成し遂げる特別
の適性がある。

ステルス能力は、効果的な水中活動の主要な成分である。それは、潜水艦が予
想外の方向から、突然の、破壊的な攻撃を行う事を可能とし、幽霊のように作
戦地域に出入する事を可能にしている。また、潜水艦は、発見された場合、攻
撃には脆弱である事から、ステルス能力は潜水艦の主要な防御能力でもある。

潜水艦は四種類に大きく分類される。これらは、ディーゼル電気推進攻撃型潜
水艦(SSとSSK)、原子力推進攻撃型潜水艦(SSN)、原子力推進巡航ミサイル潜水
艦(SSGN)と原子力推進弾道ミサイル潜水艦(SSBN)であり、主要な武装と推進シ
ステムによって区別される。

武装

攻撃型潜水艦の第一の任務は敵国の水上艦艇や潜水艦を発見し、撃沈する事で
海洋の支配力を確立する事である。最新の攻撃型潜水艦は、巡航ミサイルを発
射する事ができるが、これにより陸上攻撃能力が与えられた事になる。

SSGNは、海上覇権を確立する為の水上攻撃目標任務と陸上目標を攻撃する任務
の双方を行う事ができる巡航ミサイルを装備する。SSBNは、SLBM(潜水艦発射
弾道ミサイル)を発射する能力を持ち、米国とロシア、そして遠からず中国の
核抑止力を担っている。

推進機関

どの様な推進機関を保有するかで、航続距離、潜水維持能力、速度、敏捷性、
そして、危険な状況に探知されずに出入する静粛性と言った潜水艦の能力が大
まかに決定される。

多くの国は、ディーゼル電気推進潜水艦を配備している。このタイプの潜水艦
は水上ではディーゼルエンジンで推進され、水中では、電気バッテリーで航走
する。潜水中は、非常に静粛である。ロシアのキロ級潜水艦は、探知を避ける
能力の高さから「ブラックホール」と渾名された。しかしながら、この印象的
なステルス能力も航続距離と速度の制約と数日毎に潜望鏡深度あるいは水上で
バッテリーに充電する必要があるという犠牲によって齎(もたら)されたもので
ある。

いくつかの国は、非核、非大気依存(AIP)推進潜水艦(SSP)を実戦配備している。
その潜水艦は、ステルス性と速力は伝統的なディーゼル電気推進潜水艦と同様
ながら、一時に数週間潜水できる能力を持つ。この長期間潜水する能力は、明
白に、探知機会を減少させ、脆弱性を低下させる事になる。

原子力潜水艦の大きな長所は、そのほとんど無制限とも言える推進力である。
その推進力は、より高速の作戦速度と実質的に無制限の航続距離、及び数ヶ月
に及ぶ潜航能力を実現する。そしてその潜航能力は乗員用の糧食と貯蔵品、乗
員の持久力によってのみ決定される。
原子力潜水艦の大きな欠点は、原子炉がバッテリーパワーで動いている電気モ
ーターより本質的に騒音が高いということである。しかし、これは潜水艦の音
響特性を減少させる材料と設計によって軽減する事が出来る。
原子力潜水艦は、国際的な威信の源にもなっている。実際、国連安保理の常任
理事国五ヶ国以外には僅かな国を除き原子力潜水艦を保有していない。

対潜水艦戦

対潜水艦戦(ASW)とは、艦艇や航空機、潜水艦他を使用して敵国の潜水艦を探知、
追跡し、撃沈する戦闘である。潜水艦は、目標と同じ環境で運用される能力、
及び同程度の戦力と脆弱性を持つ事から、恐らく最高の対潜水艦戦用のプラッ
トフォームである。しかしながら、対潜ヘリコプターと哨戒機は、航続距離と
速度、及び獲物となる潜水艦からの脅威に対して、脆弱でないという有利さを
持つ。水上艦艇は、非常に能力の高い対潜プラットホームではあるが、潜水艦
からの攻撃に対してより影響されやすいと言える。

敵の潜水艦を破壊するか、少なくとも戦場から退場させる為には、まず、探知
する事が必要であり、通常はソナーによって行われる。アクティブソナーは、
第二次大戦時の映画で一般に良く描かれている様に、ピンによって探知目標
(通常は潜水艦)の正確な位置を知る事が出来る。しかし、同時に、それによっ
て、ソナー発振器の位置を露呈し、敵潜水艦に誰かが何かを探している事を警
告する事になってしまう。パッシブソナーは、潜水艦や他の艦艇の特徴的な音
響を音波や超音波を通じて「聞く」事に依存している。
最近のパッシブソナーは、艦艇に曳航されたソナーやソノブイ、その他水中セ
ンサーから得られた音響をフィルターに通したり、翻訳したりするのにコンピ
ュータを使用している。理想的には、パッシブセンサーは、ソナー探知により、
方位と位置とタイプを識別する事ができる。

航空機と衛星は、水面下すぐの処にいる潜水艦を探知する事ができる。また、
衛星は、水中の潜水艦を、水中航走時に水面上の発生する波のパターンによっ
て探知する事ができるが、これは他の要因、通常は荒れた海にによる「雑音」
によって制約を受ける。最新の対潜水艦戦は、高いスキルの専門家と広範囲の
訓練と先進の機器を要する挑戦的で高価な、非常な努力の賜物と言える。

太平洋の潜水艦隊

潜水艦隊とその配備は、冷戦の集結から劇的に変化した。1990年代を通じ、ロ
シアは、その潜水艦隊の殆どを実戦配備から退役させた。そして、米国も潜水
艦隊を着実に減勢した。米国の潜水艦が継続的に減勢している間に、中国は急
速に潜水艦隊を拡張し、更新した。軍事バランスの変化に対応して、他の太平
洋諸国も潜水艦隊を拡張し、近代化している。

米国

米国の攻撃型潜水艦は、1987年の102隻から2009年の53隻へと減少した。この
減少は、レーガン政権時代の600隻海軍(100隻原潜)計画以降、繰り返された海
軍構造改革計画の改訂によって齎された。ジョージ・H・W・ブッシュが唱え
た1991年計画では80隻となり、統合参謀本部1992年兵力研究では、目標を55隻
とされ、1997年の四ヵ年防衛レビュー(QDR)では、バーが更に下げられ、50隻
とされた。2001年のQDRでは、攻撃型原潜数は55隻に戻された。2006年のQDRで
は、2012年まで一年に建造する原潜の数を2隻に引き上げ、潜水艦隊の60%を
太平洋に配備する事で、この地域での米国の利益を保護する事としている。
海軍は、48隻の攻撃型原潜を含む313隻の艦隊を提案しているが、情報に通じ
た専門家は、この数値が米国のニーズに合致したものか疑問に感じている。

1999年の統合参謀本部(JCS)潜水艦戦力構造研究では、最適の攻撃型原潜数と
して、全ての軍事ニーズと情報収集ニーズを合わせると2015年で68隻、2025年
で76隻が必要と結論づけている。2015年で55隻、2025年で62隻の戦力では、安
全保障上、モデレートなリスクがあるとみなされた。しかしながら、現在の53
隻の攻撃型原潜は、2001年9月11日以前に所要とされたモデレートなリスクが
あるとみなされた水準すら下回っている。艦隊は、既に、過剰に展開されてお
り、海軍の長期的な調達計画ですら、攻撃型原潜の数は、2022年から2033年に
は、48隻以下となり、2028年から2029年には、41隻の底を打つこととなっている。

この予想される「潜水艦ギャップ」を軽減するため、海軍はヴァージニア級潜
水艦の建造時間を60ヵ月に短縮し、また、一部のロサンゼルス級潜水艦の耐用
年数を最高で2年間延長し、同様に配備日数を6ヵ月から7ヵ月延ばすことを検
討している。この計画の全てが上手くいけば、潜水艦隊の減勢は44隻~45隻で
底を打つ事となる。但し、この努力は、911以前に計画された、モデレートな
リスクシナリオに対応したものでしかない事には留意する必要がある。

怠られた対潜水艦戦能力整備

攻撃型原潜勢力の縮小は、効果的に水中の抑止力を維持する海軍の能力に挑戦
を強いると同時に、他のASWプラットホームの減少に示される海軍の対潜水艦
戦への努力にも陰を落としている。海軍は、173機の老朽化したP-3C哨戒機を
保有しているが、後継となるP-8Aは、2013年にならないと実戦配備される事は
ない。海軍は同様に、S-3Bバイキングを退役させているが、この機種は、空母
搭載の長距離対潜機としては唯一のものであり、更新は計画されていない。

これに加えて、「海軍はSOSUS-1950年代にソ連の潜水艦を探知する事を目標
に開発された戦域ベースの音響探知システム-の近代的な同等物を欠いている」
という指摘があるが、これは、ASW能力面での広範な弱点の象徴と言える。
冷戦中に配備された多くのシステムは、今日直面している脅威に対しては、限
られた有効性しか持っていない。例えば、冷戦期に設置された固定センサーは、
今世紀に紛争が発生しそうな場所には、設置されていない。さらにまた、より
多くの国が、米国の空母を脅かす事のできる先進の潜水艦を配備しており、米
国が介入する上でのコストをより高いものとしている。

海軍の戦力構造は、この進化する水中の脅威環境に適応したものでなければな
らない。2008年7月、劇的に変化した最近の脅威評価と海軍の戦闘能力に関連
する優先順位付けについて海軍高官が議会で証言した。バリー・マカルー中将
は、脅威環境に対する海軍の新しい認識を解説した。

急速に進化している伝統的あるいは、非対称的脅威は、戦闘指揮官
を増加する挑戦に晒している。国家レベルあるいは以前は限られた
脅威しか持たなかった非国家レベルの対象が、自身の沿岸域を超え
公海での潜水艦任務や、進歩した対艦巡航ミサイルや弾道ミサイル
を使用する能力を獲得しつつある。いくつかの歴史的に、地域的な
軍事的能力を備えているだけだった国が、海軍力を拡張し、グロー
バルな市場で競争する為、実行範囲と影響範囲を拡大している。
我々の海軍は、彼らが拡張する以上のペースで大洋での活動や能力
を拡張する必要がある。これには、海洋利用拒否戦略に対して公海
上での対潜水艦戦及び対弾道ミサイル戦能力の改善を継続する事を
必要とする。



環球閑話日々の徒然まとめサイト

http://space.geocities.jp/ash1saki/






2010年3月10日水曜日

民主党政権に、非核三原則の厳格実施はできない?


佐藤元首相「核『持ち込ませず』は誤り、反省している」

日米の密約に関する調査で見つかった文書で、核兵器を「持たず、作らず、持
ち込ませず」という非核三原則を提唱した佐藤栄作氏が、その後「『持ち込ま
せず』は誤りであったと反省している」と悔やんでいたことが明らかになった。

この文書は、69年10月7日付の東郷文彦・外務省北米局長(当時)による
「首相に対する報告(沖縄関係)」。沖縄返還後の米国による核の再持ち込み
の可能性などを佐藤首相と議論した際の記録だ。このとき佐藤氏は「難しいこ
とが多いが、この苦労は首相になってみないと分からない」とも漏らしていた。

佐藤氏が最初に非核三原則を表明したのは67年12月の衆院予算委員会。翌
年1月27日の施政方針演説にも盛り込んだ。偶然にも、東郷氏が「持ち込み」
についての日米の理解のずれを記した「東郷メモ」を作成した日のことだった。
佐藤氏は2月5日にこのメモを閲読していた。佐藤氏は首相退陣後の74年
10月、三原則などが評価されて、ノーベル平和賞受賞が決まる。前月の「ラ
ロック証言」で、三原則への疑念が日本中を揺さぶる中での発表だった。

(朝日新聞 2010/03/10)

岡田外相、米に解釈たださず 核寄港「今後考えにくい」

岡田克也外相は密約の調査結果公表にあわせた朝日新聞のインタビューで、米
側との解釈のずれをただす必要はないとの考えを示し、その理由に米政府が水
上艦などへの核兵器の搭載を再開する可能性が考えにくいことを挙げた。

岡田氏は米政府の核政策について、「今は核の役割を低減しようというのが大
きな方向性なので、(水上艦からの核の撤去が)元に戻るということは非常に
考えにくい」と指摘。「それ以上に仮定の議論はすべきではない」とした。

政府はこれまで核搭載艦船の寄港の有無について、核の持ち込みに必要な「事
前協議」が行われていないことを理由に「ない」と説明してきた。だが、今回
の調査でこの立場が崩れたことになり、岡田氏は「なかったと考えたいと思う
が、証明する手だてはない」とした。

また、日本は米国の核の傘のもとにあるが、岡田氏は9日の記者会見で「核の
抑止力を肯定している」と言及。核兵器の存在を肯定も否定もしない米国の
「NCND政策」についても「米国の判断であり、理解している」と述べた。

(朝日新聞 2010/03/10)


もともと、非核三原則の内、「持ち込ませず」というのは、日本国
内に外国の核兵器を配備させないという意思を示したものです。
これに、核兵器の通過や一時保管も含める様な国会答弁をした事、
及び、それが実は、矛盾をはらんでいた事が、今回、「広義の密約」
とされた解釈が、日米間で暗黙に合意された背景にあります。

当時は、戦略核兵器とならんで戦術核兵器が大量に配備されていま
した。小さいものでは、大砲の弾にまで、核兵器が準備されていま
した。また、魚雷の頭部に装備する核弾頭や、潜水艦を攻撃する対
潜ロケットや対空ミサイルにも核弾頭が、配備されていました。

この様に、戦術核兵器が大量に配備されていた理由は、兵力的に西
側自由主義陣営が社会主義陣営に対し劣勢にあった事にあります。
その兵力の格差を核兵器という装備の質と技術によって埋めていた
事になります。

また、戦略思想としても、戦術核兵器であっても、その爆発規模が
通常兵器とは格段に異なる事から、一度使用すると容易に全面核戦
争を招くという認識が広まっていませんでした。その為、核兵器の
位置付けが単なる爆発規模の大きな弾頭という解釈で、幅広く核兵
器が配備されていました。これは、米国のみならず、ソ連について
も同様であり、特に、攻撃型潜水艦への核弾頭の搭載は、ソ連崩壊
まで、継続していました。

では、非核三原則の「持ち込ませず」のどこが矛盾をはらんでいる
のでしょうか?

冷戦下で、日本は被爆国として、非核三原則を振りかざしながら、
自らは手を汚す事なく、実際には、米国の核の傘で、守られている
という矛盾がありました。また、日米の同盟関係は、防衛に関して
は片務的といわれていましたが、アジア大陸での社会主義陣営の拡
大を抑制する自由主義陣営の不沈空母として、アジアに睨みを聞か
せる米軍の足場としての役割を果たす事が、求められていました。
その点で、米国が日本の防衛に抑止力を提供するという負担を行っ
たのと同様に、日本は、米軍の出撃拠点や補給拠点としての負担を
約束していた訳です。

現在では、米軍の艦船や航空機には、この種の戦術核兵器は搭載さ
れていませんし、オバマ政権は、保管中の核トマホーク用核弾頭の
廃棄を明言していますので、非核三原則との矛盾はありません。
しかし、冷戦当時は、米軍の艦艇と一部航空機は、核武装していた
事は確実でした。当時、もし、核搭載艦艇の寄港を日本が拒否して
いれば、出撃拠点、補給拠点としての、日本の価値や有効性は、大
きく損なわれていた筈です。しかも、当時の情勢を考えると、米国
の空母機動部隊を牽制したり、あるいは、米軍基地に戦術的奇襲を
行う為、日本の領海内にソ連の核兵器搭載艦艇が遊弋(ゆうよく)し
ていた可能性も非常に高かったと言えます。つまり、日本が「核を
持ち込ませず」を米国に対し厳格に適用していれば、同盟国には、
非核寄港あるいは通過を強要しながら、逆に敵国の核搭載通過は許
容するという、いびつな対応を余儀なくされる事になってしまい、
究極的には、日米安保体制を危うくするものになっていたに違いあ
りません。

国内の左翼陣営は、勿論、これらの事実を知りながら日米離反を狙
って、国民の核アレルギーを利用して非核三原則の"米国に対する"
厳格適用を狙っていた訳であり、そうする事で、社会主義陣営の利
益になるという認識であった事はいうまでもありません。

先程、記した様に、現在では、米国に関する限り、「持ち込ませず」
が、日米安保体制と矛盾する事はなくなりました。しかし、鳩山民
主党政権が、非核三原則の厳格適用を掲げるのであれば、矛盾は引
き続き残ります。それは、ロシアと中国の戦術核搭載艦艇をどの様
に取り扱うのかという点です。ロシアと中国にとっては、米国の艦
艇は、大きな軍事的脅威です。艦艇を含む通常兵器の質と量が、米
国に対抗できない両国にとって、それに対応する安価な対抗手段は
核兵器しかありません。日本の領海内には定期的に、ロシアと中国
の核搭載原潜が侵入している可能性が高いと考えるべきなのです。

2004年に、中国の漢級原子力潜水艦が我が国領海を侵犯するという
事件がありました。他国の領海を航行する潜水艦は、浮上して国旗
を掲揚する事で、無害航行が認められます。しかし、あの事件の様
に、潜行中の国籍不明の潜水艦が発見された場合は、強制浮上の上、
臨検する必要があります。実際には、日本は強制力のある行動を取
る事ができず潜水艦は自主的に領海から退去する形になりましたが、
あの艦に核兵器がなかった訳がないのです。日本は領海を侵犯され
た上、「非核三原則」を犯された事になります。

中国やロシアの原子力潜水艦が再び、日本の領海を侵犯した時、非
核三原則の厳格適用を主張する鳩山政権は、海上自衛隊に対し、潜
水艦の強制浮上と臨検を命令できるのでしょうか? もし、できな
いのであれば、米国に対してのみ非核三原則の厳格適用を行うのは、
ダブルスタンダードと言わざるを得ないのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/








2010年3月9日火曜日

幻想から覚めた国民に民主党は何を見せる事ができるのか?


「内閣改造の発想ない」 支持率3割台突入で首相 打開策にも言及


鳩山由紀夫首相は8日朝、報道各社の世論調査で内閣支持率が3割台に下落し
たことについて、政治とカネの問題を念頭に「せっかく政権交代したのに民主
党らしさが見えず、前(の政権)と変わらないとの思いが国民の中に広がって
いる。批判を正面から受け止め、打開策を考えていく必要がある」と述べた。
政権浮揚のための内閣改造の可能については「今、内閣改造をするという発想
を持っているわけではない」と否定した。首相公邸前で記者団に答えた。

平野博文官房長官は同日午前の記者会見で「(平成22年度)予算が執行され
れば、政権に対する国民の理解も得られると確信している」と述べた上で、政
治とカネの問題については「党が企業・団体献金の禁止について今国会中に成
案を得るべく努力している。これが見えてくれば国民の理解は大きく得られる」
と語った。

(産経新聞 2010/03/08)


鳩山民主党政権の支持率が低下しています。発足直後には、70%以
上という圧倒的支持を誇った鳩山政権ですが、発足以降のほぼコン
スタントに支持率が低下し、今月始めの報道各社の世論調査でつい
に30%台に下落してしまいました。

上記の記事によれば、その原因と対策が「せっかく政権交代したの
に民主党らしさが見えず、前(の政権)と変わらないとの思いが国
民の中に広がっている。批判を正面から受け止め、打開策を考えて
いく必要がある」というのでは、支持率の下落理由が、良くわかっ
ていないのではという思いを深くします。

鳩山内閣の支持率が低下した原因は色々とあるとは思いますが、ま
ずは、鳩山首相自身の脱税問題に起因している事はいうまでもあり
ません。それを民主党らしさが見えていない事が原因と言うのは、
「からす」を「さぎ」と言う様なものでしょう。

それに加えて、民主党の陰のオーナー然として振舞っている幹事長
の小沢氏の存在があります。党内の権限を全て自分に集中した上、
党内に異論を許さない統制を引いている姿はグロテスクとしか言い
ようがありませんが、ご自身は、北朝鮮マンセーの日教組出身の輿
石氏を腰巾着にして結構幸せなご様子です。その内、誰かが「王様
は裸だ!」と言いそうですが、選挙にさえ勝てれば、そのまま行進
を続けていきそうな勢いです。党内民主主義さえろくに機能してい
ない民主党は、殆ど名前負け状態です。

勿論、小沢さんの政党助成金流用疑惑は国民全体を民主党に対する
疑惑の念を覚えさせていますが、禄な説明をしなかった小沢氏にと
って、その様な国民の思いは、子供手当てをばらまいて札束で横面
を張り倒せば、簡単に覆せる程度のものという認識なのでしょうか?
それでは、あまりに国民を馬鹿にしているとしか言えないのです。

一時は、人気を集めた「事業仕分け」で二番煎じも、用意している
様ですが、先の「事業仕分け」で民主党シンパの巡回人形劇団に、
満額の予算を付けた反面で科学振興予算に大鉈を振るった事で、日
本の将来を深く考えて仕分けを行ったのでは無い事が赤裸々になっ
てしまいました。至る所に無駄があるという選挙前の主張とは裏腹
に、実際の仕分けで出てきた資金は、予定の二十分の一という僅か
なものであり、それも技術立国日本の将来へ向かっての投資を削っ
て捻出したものでしかなかったのです。

もうこれでは、日本の将来をお先真っ暗にするのが、民主党としか
思えないというのが、政権発足後半年の民主党政権の総括ではない
でしょうか?この様な内閣は一日も早く退陣して欲しいものですが、
残念ながら、あと3年半は、この何とも無様な民主党内閣は継続し
ます。民主党の口車に乗った有権者の自民党へのお仕置きは、日本
国民全体に大きなツケを突きつけている様です。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年3月8日月曜日

金星探査機「あかつき」、宇宙帆船「イカロス」打ち上げ日決まる


※上段CGが「イカロス」、下段が「あかつき」。JAXAWebサイトから転載

金星探査機「あかつき」5月18日打ち上げ

宇宙航空研究開発機構などは3日、日本初の金星探査機「あかつき」を搭載し
たH2Aロケット17号機を5月18日午前6時44分、鹿児島県南種子町の
種子島宇宙センターから打ち上げると発表した。

あかつきは、金星表面で吹き荒れる暴風などの謎を解明する狙いがある。ロケ
ットにはこのほか、太陽光を受けて進む宇宙帆船「イカロス」や大学で開発し
た衛星など5機も搭載される。

ロケットの打ち上げ可能期間として、地球―金星間の距離が最も短くなる同日
から6月3日までを設定しており、天候不順などで打ち上げが延びれば、次の
チャンスは1年後となる。

(読売新聞 2010/03/03)


日本初の金星探査機となる「あかつき」と、小型ソーラー電力セイ
ル実証機「IKAROS」が、5月18日に、種子島宇宙センターから、
H-IIA17号機で打ち上げられる事になりました。

金星探査機「あかつき」(PLANET-C)は、失敗した火星探査機「のぞ
み」(PLANET-B)に続く、日本で二番目の惑星探査機で、金星大気の
観測を行う事を目的としています。
(ちなみに、PLANET-Aはハレー彗星探査機「すいせい」であり、小
惑星探査機「はやぶさ」は、MUSES-Cという工学実験探査機です。)

金星は、地球のお隣の惑星で、大きさや重力が地球とほぼ同じであ
るにも関わらず、高温高圧の二酸化炭素の大気に包まれ、硫酸の雲
が浮かぶ、地球とはまったく異なる環境です。地球と金星の環境が
これほど異なった原因を調べるのが「あかつき」の目的であり、そ
の現象と原因が解明される事で、地球環境を人類は、更に詳しく理
解できる事になります。

計画では、「あかつき」は打ち上げられてから、約半年かけて金星
の軌道に到達する予定です。

「あかつき」と同時に打ち上げられる「イカロス」ですが、これは、
「あかつき」とは全く異なり宇宙帆船の先駆けとも言える実験機で
す。小型ソーラー電力セイル探査機は、ソーラーセイル(太陽帆)で、
超薄膜の帆を広げ太陽光圧を受けて進む宇宙船で、今までは、SF
小説の中でしかお目にかかる事が出来ませんでした。ソーラーセイ
ルは欧米でもミッションを検討中ですがまだ実現されていません。
「イカロス」は、光圧を受け止めるソーラーセイルに、同じく超薄
膜の太陽電池を装備し、この電力を用いて高性能のイオンエンジン
を駆動することで、ハイブリッド推進を実現すると言う全く新しい
コンセプトの宇宙機の先駆けと言えます。

今回打ち上げられる「イカロス」は、展開前こそ、直径1.6m、
高さ1m、重量315キロの小型探査機ですが、薄膜を展開すると
一辺20m四方という大きさになります。この正方形の帆の展開と、
薄膜太陽電池による発電の実現、更に、ソーラーセイルによる加速・
減速と膜面の方向を調整する事により、機動を制御する処までを実
証しますが、これらはいずれも世界初か、あるいは世界最先端の技
術実証になります。(残念ながらイオンエンジンは搭載されていま
せん。)

今回の打ち上げでは、「あかつき」「イカロス」の他にも、早稲田
大学、鹿児島大学、創価大学、UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)
が各々製作した小型相乗り衛星も同時に打ち上げられます。この内、
早稲田大学、鹿児島大学、創価大学の小型衛星は、地球周回軌道に
投入されますが、UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)の小型衛星
は、金星へ向かう軌道に投入されます。宇宙機関以外が製作した衛
星が月(38万km)を超えて金星を目指すこと自体、「世界初」の試み
となります。内容面でも金星へ向かう軌道の中で、UNISEC加盟の各
大学が製作した宇宙用コンピュータの内、「誰が最後まで生き残る
か」を競うという興味深いものです。

H-IIA17号機は、これらの非常に興味深いペイロードを打ち上げる
事になります。最近のH-IIAの打ち上げが非常に安定してきている
とはいうものの、米国でも、ロシアでも、中国でも、欧州でも、
何十回成功した後の打ち上げに失敗する事があるというのが、
ロケット打ち上げの宿命と言えます。それだけに、今回の打ち上げ
が無事に成功する事を心より祈りたいと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/









2010年3月4日木曜日

老朽機をとも喰い整備する韓国空軍

※朝鮮日報Webサイトから転載

韓国軍:F5戦闘機は「事故常連機種」
今回の事故原因いまだ不明


2日、一度に2機が墜落した韓国空軍F5戦闘機は、2000年以降だけでも7回事故
を起こしている「事故常連機種」だ。
今回の事故の原因が天候悪化による空中衝突なのか、操縦士の過失なのか、機
体の欠陥によるものなのかはまだ不明だが、事故機はいずれも20-30年以上経
過した古い機種ということで、注目を集めている。事故機のうち、F5E(定員
一人)は1975年に米国から導入されたもので、KF5F(定員二人)は韓国で組み
立て生産、84年に導入されたため、それぞれ35年と26年経過した戦闘機という
ことになる。通常、戦闘機は30年で引退時期と考えられているため、1機はそ
の年数を既に越え、もう1機も間もなく引退しなければならない時期を迎えて
いた。

その上、F5戦闘機2機が空中衝突または同時に墜落するケースもこれまで何回
かあった。2008年11月にF5E戦闘機2機が京畿道抱川市で訓練中、空中で衝突・
墜落。04年3月には西海(黄海)・泰安半島海上で空軍第10戦闘飛行団所属の
F5E戦闘機2機が衝突している。

それより前の03年9月には、忠清北道で空軍第8戦闘飛行団所属のF5E戦闘機2機
が訓練中、突然の天候悪化で山に墜落、操縦士二人が死亡しており、今回の事
故と状況がよく似ている。94年から05年までの11年間に墜落した戦闘機のうち、
F5戦闘機は12件と最も多く、操縦士10人が命を失っている。2日の事故では操
縦士3人が殉職、その中の一人である飛行隊隊長のオ中佐は、空軍士官学校を
首席で卒業したエリートだった。

(朝鮮日報 2010/03/03)


韓国ネチズンの2ちゃんねる攻撃のブーメラン効果の煽りを喰らっ
て墜落したという噂が流れたF-5戦闘機の墜落事故ですが、内容を
よく見ると、韓国軍の派手な正面装備の整備の影で、かなり深刻な
問題が潜んでいる様です。

私は以前から、韓国は、本来は不要と思われる程の、強力な海軍力
を整備する事で、北朝鮮との関係では、本来、整備を必要としてい
る対砲レーダー装備等が疎かになっている事を指摘してきましたが、
今回、事故を起こしたF-5戦闘機も、そういった本来整備しなけれ
ばいけなかったものの一つである様です。

記事でも指摘されていますが、このF-5E/F戦闘機は、2000年以降、
今回も含め、7回墜落事故を起こしており、合計11機が失われてい
ます。韓国はF-5E/Fを輸入または、韓国内でライセンス生産してい
ますが、今回墜落した機体は、各々、製造されてから、35年、26年
が経過しています。飛行機についても耐用年数はありますが、きち
んと整備さえされていれば、製造されてからの年数は関係がないと
いう意見がある反面で、問題の戦闘機の場合は、地上支援を主要目
的としながらも、戦闘機として高G機動をともなう訓練を日常的に
行っている事から、経年劣化が激しいとの意見もあるようです。

ただ、1986年の取得完了から年数がたっており、地上支援目的で、
後継機であるF-15KやF/A-50の導入計画が始まっている事もあって、
既にとも喰い整備に入っていたという指摘があります。その回数も、
同じ朝鮮日報の3/4付社説によれば、2006年だけで1260件に達して
いるようです。本来は、退役までは戦力を維持する為必要があるの
で、機体整備用の部品も整えておく必要があるのですが、正面装備
に優先的にお金をまわす必要から、整備用部品の確保ができず、古
い機種についてはとも喰い整備が行われている訳です。部品を提供
した機体は当然の事ながら飛行できなくなりますから、稼働率は低
下する事になります。

F-5E/F以前に導入された、F-4D/Eについても整備に関する状況は同
じであろう事を考えると、460機に及ぶ、韓国空軍の戦闘機の内、
半数以上に当たる250機(F-5E/F 170機、F-4D/E 80機)が、とも喰い
整備の結果、稼働率が大幅に減少している可能性がある事になります。

この両機種は、北朝鮮の砲兵戦力を迅速に精密攻撃するのを主要任
務としています。停戦ラインに配備された、北朝鮮人民軍の長距離
砲の射程内にあるソウル防衛の為には、この北朝鮮砲兵戦力の破壊
が非常に重要である点からも、両機種の稼働率低下は大きな問題で
あると言えます。

これを、韓国のF-5と導入時期が近いF-1支援戦闘機が既に全て退役
し、機種更新が完了しており、F-4についても後継機種の機種選定
こそ難航しているものの、F-4E自体の近代化改装は完了している日
本の状況と比較すれば、韓国の空軍力整備に問題がある事は明らか
であると思われるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/








2010年3月3日水曜日

北のインフラを整備する国際投資グループ?


北朝鮮、韓国に対話姿勢 デノミ失敗・制裁で食糧不足

韓国と北朝鮮は2日、開城工業団地の通信、通行、通関の「3通問題」につい
て団地内で実務協議をした。韓国政府は北朝鮮が対話を求める背景に、デノミ
ネーション(通貨呼称単位の変更)失敗や国連制裁などによる深刻な経済難が
あると判断。安易な支援には応じない方針だ。

軍が「3通問題」を所管する北朝鮮は当初、軍事実務協議を求めたが、会談場
所は工業団地を指定した。軍事協議は板門店で開くのが慣例。韓国政府関係者
は「工業団地の話だけをしたいという意思表示だ。それだけ経済が厳しい」と
語る。

韓国政府は、昨年の北朝鮮の食糧生産量を約411万トンと推計し、今年の不
足量を約130万トンとみている。同政府関係者などによれば、北朝鮮が海外
から確保した食糧は約30万トンに過ぎず、その半分を中国に頼っている。
昨年、北朝鮮が韓国に南北首脳会談を持ちかけた際、「コメ50万トン、肥料
40万トン」を求める場面もあったという。

さらにデノミが失敗して経済が混乱。北朝鮮は2月から外貨の使用を部分的に
認めたが、デノミ前と比べてコメ価格は20~30倍に上昇、北朝鮮通貨の対
ドルレートは10分の1以下に下落している。

北朝鮮は1月20日、国家開発銀行の設立を決めた。2日付の在日本朝鮮人総
連合会(朝鮮総連)機関紙・朝鮮新報(電子版)によれば、同銀行への出資を
誘致する朝鮮大豊国際投資グループ副理事長は、当初の資本金を100億ドル
(約8900億円)とし、今後10年間で鉄道や道路などの経済基盤を整備する
考えを表明。制裁とは無関係との立場を強調した。

だが、韓国政府は実現可能性が低いと分析すると同時に、北朝鮮が「制裁逃れ」
に躍起になっているとみており、北朝鮮が望む金剛山と開城の両観光事業再開
問題には慎重に対応する構えだ。

また、北朝鮮は2日の協議で、抑留中とする韓国人4人の処遇について「調査
に時間がかかる。最終確認後、正式に通知する」と伝えた。

(朝日新聞 2009/03/03)


一時は、餓死者の発生も報じられていた北朝鮮ですが、中国からの
援助も入り、一息ついた様に見えます。但し、政治的には、大混乱
を来し、金正日まで間接的にではありましたが「国民に食を確保で
きなかった謝罪」をせざるを得なくなったのは、近来にない事件で
あったと言えます。1990年代に、体制維持の為、核開発に予算を投
じ、餓死者を出した「苦難の行軍」時には、金日成は、人民の苦難
は仕方がないものと動じなかったのと比べると随分違っています。

この一因としては、金日成の時は、数十年に亘り、飢餓から無縁で
あった人民が、基本的には政権を信頼していて反抗するという知恵
すらなかったのに対し、今回は、飢餓状態を学習した人民が、経済
合理的な対応(物資隠匿)と政府に対する反抗を行う様になったとい
う違いがあります。また、政権の側も、前回は、社会主義政権崩壊
ドミノに巻き込まれるかどうかという切羽詰った状態であったのに
対し、今回は、国民の富の再分配というやや切迫度の欠けるもので
あった事も影響しているのかも知れません。

但し、その様な違いがあったにしても、貨幣経済が一時的に崩壊す
る程の経済的な大混乱が発生した事に間違いはなく、食料を中心と
した緊急援助に、貴重な外貨や鉱物資源の提供を余儀なくされた事
は間違いありません。しかも、それは、あくまで国民の飢餓状態を
救う為のものであり、国家経済を再建する為のものではありません
でした。

上の記事にある様な、鉄道や道路といったインフラ整備の事業に外
資を導入しなければならなくなったのは、自力更生を旨とする北朝
鮮にとっては、大きな方針変更ですが、これは、通常の形態では経
済建設が出来なくなった事の現れです。

1月に設立された国家開発銀行への出資を誘致する朝鮮大豊国際投
資グループは、香港で設立されている様ですが、実際には、朝鮮労
働党の外資誘致担当部門です。国家開発銀行の資本金100億ドル
の内、いくばくかは、香港で投資に回っていた金正日の個人資金や
朝鮮労働党の秘密資金があてられるのでしょうが、大宗は、中国か
らの出資を仰ぐのだろうと思われます。コマーシャルベースで北朝
鮮向けファンドに投資する人は、まずいない事を考えれば、中国か
らの出資は、政府資金であり、経済援助と殆ど変わりのないものと
言えるのかも知れません。

また、朝鮮大豊国際投資グループという如何にも投資ファンドの様
な外観を保つ事で、ファンドに対する出資とする事で、制裁破りの
非難を回避する事、また、在日朝鮮人や在外同胞からも香港経由で
制裁破りの資金を得たいという北朝鮮の期待を示しているのかも知
れません。(実際には、制裁対象リストにすぐに掲載されるので余
り効果はないと思われます。)

北朝鮮は、これまでにも、経済が不振の時期には、外資の導入を試
みながら、一時的に状況が改善すると、約束を反故にしたり、導入
時の条件を守らなかったりと、不安定な政策に終始してきました。
今回の外資によるインフラ投資も、その例外ではない事はいうまで
もありません。その意味で、その効果にも一定の限界があると思わ
れるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/









2010年3月1日月曜日

地球帰還軌道まであと僅かに迫った小惑星探査機「はやぶさ」

※3/1付けの「はやぶさ」の軌道情報。ISAS Webサイトより転載

今年6月の地球帰還を目指し、小惑星探査機「はやぶさ」が地球帰
還の為の軌道変更を続けています。

一般の衛星の軌道変更は、軌道変更用のロケットモータを噴射する
事によって行われる事が多いのですが、「はやぶさ」の場合は、イ
オンエンジンによって行われています。「はやぶさ」は、元々、4
台のイオンエンジンを持っていますが、予定以上の長旅の為、一台、
また一台と使用不能となり、現在、動作している一台も、実は使用
不能となった別々のエンジンのイオン源と中和器を組み合わせるて
稼働させるというアクロバット的手法で動作しています。

現在、「はやぶさ」は、地球から見て「かに座」の方向から徐々に
地球に近づいています。「はやぶさ」までの距離は、2/25現在で、
31,772,910km。(地球と月との距離の約86倍!) 火星と地球を直線
で結んだ中間点より幾分地球寄りを飛行しています。

巨視的に見ると、火星軌道の外側から地球軌道の内側の間を飛行す
る小惑星「イトカワ」の軌道から、太陽を回りながら、徐々に地球
軌道に接近する「はやぶさ」に、軌道速度の早い地球が後ろから追
いついていっている形になります。ですから、残りの距離を「はや
ぶさ」が自力で飛行する必要はなく、どんどん、地球の方から近づ
いていく形になります。

上の図ですが、3/1時点で、イオンエンジンが停止した時に、地球
のどの位近くを「はやぶさ」が通過するかを各々が示しています。

上段左の図は、その時点で、慣性飛行した場合の、地球への最接近
距離を示します。3/1現在は、その距離は31万キロとなっています。
この図では3/25頃に最接近距離が零になりますが、これは、この日
からエンジンを停止して慣性飛行しても、地球に帰還できるという
事を示しています。ですから、後、三週間、イオンエンジンが稼働
してくれれば、地球への帰還が実現する事になります。

下段右の図は、地球を上から眺めた図であり、図右上の日付で、エ
ンジンを停止した場合に、地球からどの程度近くを通過するか示し
たものです。図は2/24の水色の線が最新のものですが、既に、月軌
道よりも内側に入ってくる事が確実になっているのが分かります。
目標軌道は、地球の位置で、線が途切れていますが、地球へ帰還す
るので、それ以上飛行しない事を端的に現しています。

また下段左は、上下方向に地球軌道からどの程度、ずれているかを
示していますが、現時点でほぼ地球軌道と同一平面を飛行している
事が分かります。

なお、この図は、以下のURLで毎週月曜日に更新されていますので、
「はやぶさ」帰還までの三ヶ月半、この図を眺めながら、是非、声
援をお願いしたいと思います。

http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/today.shtml


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月25日木曜日

核密約を暴露しながら拡大抑止の有効性を求める民主党の愚

※トマホーク用VLSハッチを開いたロサンゼルス級原潜。
Wikipediaより転載

<米国>日本にトマホークの段階的廃棄伝える

米政府が核巡航ミサイル「トマホーク」を段階的に廃棄する方針を日本政府に
伝えていることが22日、分かった。日本政府関係者が明らかにした。麻生前
政権は抑止力低下の懸念から廃棄に慎重だったが、鳩山政権はオバマ米政権が
進める核軍縮を共に実現するとの姿勢から容認する立場だ。ただ政府内には廃
棄に伴う抑止力への影響を懸念する声もあり、米国が3月1日にも公表する核
戦略の新指針「核態勢見直し」(NPR)の内容が注目される。

トマホーク廃棄は「核のない世界」を提唱するオバマ米大統領の核軍縮政策に
沿ったもので、岡田克也外相が昨年12月、米国のクリントン国務長官に書簡
を送り、核トマホークを廃棄する場合には拡大抑止(核の傘)に及ぼす影響に
ついて説明するよう求めていた。廃棄の方針はこれに答える形で米側から非公
式に伝えられ、今月18日に外務、防衛両省幹部が参加してワシントンであっ
た米側との抑止力戦略に関する協議は、廃棄方針を前提に行われた。

トマホークは冷戦時代の80年代に配備された長距離巡航ミサイルで、潜水艦
やイージス艦などから発射でき、核弾頭の搭載が可能。ブッシュ政権が91年、
トマホークを含む戦術核を艦船、潜水艦に積載しないと宣言。その後は米本土
で有事に再配備可能な状態で保管されており、03年のイラク戦争で使用され
た。【野口武則】

【ことば】トマホーク 冷戦時代の80年代に配備された精密誘導の長距離巡
航ミサイル。潜水艦やイージス艦などから発射でき、核弾頭の搭載が可能。最
大射程は核弾頭搭載型が約2500キロ、通常弾頭型が約1700キロとされ
る。ブッシュ政権は91年、核トマホークを含む戦術核を艦船、潜水艦に積載
しないと宣言。その後は米本土で有事に再配備可能な状態で保管されてきた。

(毎日新聞 2010/02/22)


記事にもある通り、トマホークは、空中発射、水中発射、艦上発射
が可能で、しかも、核弾頭と通常弾頭を使い分けられる高い柔軟性
と生存性を持つ兵器です。その2500キロと言う射程距離は中距離弾
道弾(IRBM)のそれに相当します。米国のロサンゼルス級攻撃型原潜
は、トマホークを装備できる垂直発射装置12セルを保有しており、
攻撃型潜水艦といいながら、核搭載トマホークを装備した場合、戦
略ミサイル搭載原潜に準ずる高い第二撃能力を持っていました。

核搭載トマホークは戦術核兵器という位置付けでしたが、中国を対
象とした場合には、オハイオ級戦略ミサイル原潜に頼らずとも、こ
の核搭載トマホークを装備するロサンゼルス級原潜だけで、十分な
戦略的核抑止力を持っていたと言えます。

核搭載トマホークは、イージス艦などの水上艦艇にも搭載可能です
が、秘匿性や生存性を考えると潜水艦装備のものが主体となります。
通常の場合は、中国の核戦力は、米国の戦略核により抑止されます
が、中国との核交換を行った上で、ロシアの核に対し備える。ある
いは、ロシアと核交換を行った上で、中国の核に対し備える事を考
えた場合、国際緊張が高まった段階で、核兵器搭載の攻撃型原潜は、
日本を基地として、東シナ海や日本海、オホーツク海で戦略パトロ
ールを行う事になっていた筈です。

上記の想定状況が実現した場合、戦略パトロールに従事する核搭載
原潜は、まず確実に日本に寄港する事になりますが、これは、民主
党が暴露した密約の一つである核搭載艦艇の日本寄港に相当します。
今までの自民党の見解であれば、この様な運用は許容されますが、
民主党の見解に従えば、日本への核持ち込みとして拒否せざるを得
なくなります。

つまり、米国の核搭載トマホーク廃棄通告に対し、論理的には、自
民党は、廃棄に対し反対の立場が取れますが、民主党は、元々、日
本周辺の戦略パトロールを行う原潜に対し、日本への寄港を自動的
に拒否する事になる訳で、核搭載トマホークの廃棄に、反対できな
い事になります。

今回のトマホーク廃棄は「核のない世界」を提唱するオバマ米大統
領の核軍縮政策に沿ったものとは言え、実態としては、中国に対す
る米国の核抑止力が大きく後退する事になります。勿論、米国の核
戦力は引き続き中国を大きく凌駕していますので、拡大抑止体制そ
のものには、問題がないと言えますが、日本にとっては、温かい毛
布を取り払われた様なものであり、決して歓迎できるものではあり
ません。そして、その様な事態を許容せざるを得なくなった民主党
の安保政策は、決して、褒められるものではないと思うのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月24日水曜日

今更無意味な日米間の密約探し

※岡田外相。福島新報Webサイトから転載。

半島有事密約など認定へ=核持ち込みは「解釈にずれ」-外務省有識者委

日米両政府間の「密約」に関し、検証作業を行っている外務省の有識者委員会
が、(1)1960年の日米安全保障条約改定時に交わした朝鮮半島有事の際の在日
米軍基地使用(2)72年の沖縄返還時に交わした有事の際の沖縄への核再配備-
について、秘密合意があったと認めることで調整に入ったことが24日、明らか
になった。

一方、焦点の米艦船などによる核兵器の持ち込みは、安保改定時には日米間で
解釈に食い違いがあり、密約の認識まではなかったと指摘する方向だ。有識者
委は3月に報告書を公表する。これを受け政府は、これまで存在を認めてこな
かった密約について、米政府とも意見調整した上で見解を見直す方針だ。

(時事通信 2010/02/24)]


民主党政権は、鬼の首でもとったつもりなのでしょうか。
密約を探し回る事の、政治的意味が、自民党の旧悪を暴露して溜飲
を下げるというレベルに留まっているのであれば、外交的には、全
く無意味な事をしていると言えるでしょう。

上記の記事で取り上げている三件の他に、もう一つ密約疑惑があり
ます。それは、米国が支払うことになっていた地権者に対する土地
原状回復費400万ドルを、実際には日本政府が肩代わりして米国に
支払う約束をしていたというものです。

存在が従来から噂されていた、これら四件の「密約」は、日米安保
体制を円滑に運用したり、沖縄返還を確実に実施する為のものであ
り、今となってみれば、何故にそれを密約という形にしたのか疑問
に思う程度のものでしかありません。今となって見れば、あの程度
の密約しかなかったのであれば、ソ連の影響を受けた当時の左翼勢
力の政治的圧力を回避しながら、日本の進路を正しく維持する上で、
自民党政権は公明正大であったとすら言えるでしょう。

もし、それを問題視するのであれば、民主党の小沢幹事長が、百名
以上の国会議員を引き連れていった朝貢外交で、中国に何を約束し
たのか是非明らかにして欲しいものですし、民主党が、民潭や朝鮮
総連と外国人参政権問題や人権擁護法改正問題で、どの様な密約を
交わして選挙協力を得たのか是非明るみに出して欲しいものです。
また、社民党や共産党については、外国から資金援助を得ていたと
いう噂について明らかにすべきでしょう。

今回の密約暴露に関する日米関係への影響についてですが、今回明
らかになった密約は米国では既に外交文書の公開で明らかになって
いたものも多く、暴露そのもののインパクトは、それ程大きなもの
ではありません。もし、民主党が、密約を暴露した上で、再度、各
々の密約を米国の認識にそった形で正式な合意にするのであれば、
それでも、秘密合意を正式な合意にする事で、日米関係を(わずか
なものとは言え)前進させる事になるかも知れません。しかしながら、
合意を拒絶するのであれば、当時と比べ諸合意のインパクトは弱く
なっているとは言え、民主党政権になって、戦後最悪のレベルにな
ってきている日米の絆を更に弱める効果しか無い事は間違いありま
せん。民主党は、自己満足の為に、普天間問題に引き続き、またま
た、国益を危険に晒したと言わざるを得ないのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月22日月曜日

そもそも朝鮮学校を無償化の対象とするのに無理がある。

※2005年(主体94年)朝鮮大学卒業式

朝鮮学校「文科省がカリキュラムをチェック」 高校無償化で官房長官

平野博文官房長官は22日午前の記者会見で、4月から実施予定の高校無償化
の対象として、在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮学校を含めるかどうかについて、
「無償化にふさわしいカリキュラムかも含め、文部科学省がチェックしなけれ
ばならない。文科省の省令で決めると聞いている」と述べた。また、現段階で
鳩山由紀夫首相から具体的な指示はないことも明らかにした。

(産経新聞iza 2010/02/22)


そもそも所得制限なしに、高校無償化を行う事にしたのは、個々の
家庭ではなく社会全体で、子供を育てる趣旨であった筈です。その
際に民主党が軽視したのは、その教育を、立派な日本国民を養成す
る為の教育ではなく、社会が求める教育という一種の幻想とした事
です。社会、住民と言えば、国民ではない外国人も含まれるという
解釈ですから、日本の文部省のカリキュラムに基づかない、例えば、
朝鮮人学校であっても、無償化の対象としなければならないという
論理です。

その一方で、上記の記事にもある通り、金を出す以上、そのカリキ
ュラムが無償化の趣旨にそったものであるかどうか、チェックした
いという要請が出てくるのは、無償化の原資が税金である以上、こ
れまた当然と言えます。

しかしながら、この要請には、かなり無理なものがあります。
朝鮮学校は、あくまで、朝鮮民主主義人民共和国の在外公民を養成
するのが、設置の趣旨である以上、日本側のカリキュラムに沿った
ものではないだろう事が容易に推測できますし、逆に、朝鮮学校の
カリキュラムが文科省の期待するものであるという結論であれば、
文科省のチェックは実は、形式的なものに過ぎない事の証明になり
ます。

今回は、朝鮮学校が対象になっていますが、高校教育の無償化によ
って日本社会が期待している教育が、他国の公民(例えば、朝鮮民
主主義人民共和国の公民)を養成する教育でない以上、朝鮮学校や
International Schoolを始めとする各国向けの教育を行う学校を無
償化の対象とするのは、やはり大きな無理があると考える次第です。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月19日金曜日

向かい風を受ける様になった中国


【国際情勢分析】中国は責任ある大国か

経済や軍事で力を増す中国と、超大国といわれた米国の不協和音が鳴りやまな
い。イランの核開発問題などで、米国は中国に責任ある行動を求めているもの
の、中国の協力が得られないことが理由の一つだ。米中「G2時代」が到来し
たといわれる中、現実には米国だけでは中国を御することはできないとの指摘
もされている。

■イラン制裁に難色

まずイラン問題。国際社会の制止を無視して核開発を続けるイランは最近、濃
縮度20%のウラン製造に成功したと発表した。国連安全保障理事会は、イラ
ンへの制裁を検討しているものの、拒否権を持つ中国が難色を示している。

このままイランが核武装してしまえば、その責めは誰が負うのか。オーストラ
リア議会外交小委員会委員長のマイケル・ダンビー氏は、2月11日付の米紙
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)・電子版への寄稿で、「もし戦争
が起きたら、その責任の多くは中国政府にあることになろう」と論じた。

貧富の格差が大きい中国では、「国民は生活水準の恒常的向上を期待するよう
になっており、これが中国共産党政権の最大の弱み」(WSJ)である。従っ
て、共産党政権はエネルギー獲得に躍起で、「支配と確実性を手に入れるには、
特定の産油国、できれば、欧米と政治的に対立し、欧米以外の国の擁護と友情
を必要としている国と取引すること」(WSJ)を望んでいる。

国連安保理の議論がまとまらず、イランの暴走を許せば、その軍事力の矛先は
欧米に向くかもしれないし、イスラエルがイランに先制攻撃する恐れもある。
その場合「戦争という重大な危機がもたらされることになる」(WSJ)という。

■台湾情勢への幻想

次に米国の台湾への武器売却問題。バラク・オバマ米政権の売却決定で、中国
は米国に激しく反発している。米シンクタンク、ブルッキングス研究所のリチ
ャード・ブッシュ上席研究員は、2月11日付の米紙ロサンゼルス・タイムズ
(LA)・電子版への寄稿で、米政府が中台統一を妨害しようとしていると中国の
関係者は思いこみがちだが、「これほど間違った見方はない。米国が台湾の防
衛を支援するのは、台湾が不安を抱いているからで、その不安は中国がとった
政策の結果だ」と中国責任論を展開した。

台湾では、独立を模索した陳水扁(ちん・すいへん)政権に代わり、対中融和
派の馬英九(ば・えいきゅう)政権が誕生し、台湾有事の危機が和らいだとみ
る米国は胸をなでおろしている。

だが、実際には中国の軍備増強は休むことなく続いており、ブッシュ氏は、米
中台のいずれの利益にもならないのに、「なぜ中国は、緊張緩和という新たな
プラスの現実に合わせて変わろうとしないのか」(LA)と疑問を投げかけた。

とはいえ、覇権国家への野望が見え隠れする中国にこうした理性を求めるのは
むなしい。さらにそれが、米国で中国、台湾通として知られるブッシュ氏の見
方であるというのだから、米国は台湾情勢に甘い幻想を抱いているのかもしれ
ない。

■「G2論」の空虚さ

米エール大のジェフリー・ガーテン教授は2月9日付の英紙フィナンシャル・
タイムズ・アジア版への寄稿で、「米国は10年前とは比べものにならないほ
ど弱体化している」と指摘。「中国のその凝り固まった立場から動かすことが
できる唯一の方策」は「多国間協定の網を作り上げること」であり、欧州や日
本、新興の大国と協力して当たるべきだと説いた。米国の威光の陰りと中国の
責任感のない対応は、「G2論」の空虚さを物語っている。

(Sankei IZA 2010/02/19)


輝かしい北京五輪の成功、リーマンショックを物ともしない経済の
大躍進、次々に中国企業の手に落ちる世界の資源、中国を更なる成
功に導く共産党の指導力、オバマ民主党政権ですら人権問題を指摘
できない程の政治的存在感、ダボス会議で世界に指導的エリートか
らも持て囃されるG2国家の旗頭、胡錦濤主席、温家宝首相。
2008年~2009年の中国は、まさに我が世の春を謳歌していて、全く
陰りがない印象すら与えていました。

しかし、2010年に入ってから、中国を取り巻く環境は一変しました。
コペンハーゲンで行われたCOP15を契機に、中国に対する欧米の風
圧が一変したのです。この会議で、中国は、ベネズエラやキューバ、
スーダンと言った反欧米国家を使って、米欧主導による二酸化炭素
排出規制合意を徹底的に阻みました。また、欧米各国が首脳を送っ
て合意形成に務めたのに対し、中国は交渉担当者しか派遣しないと
いう非礼を敢えてした上で、上記の様に交渉が暗礁に乗り上げる様
に影で糸を引いていた訳です。欧米各国から見て、黒幕は明らかで
あり、その非協調的態度は、欧米各国に中国異質論を再確認するも
のとなりました。

もともと中国の経済発展は、為替レートを市場実勢に任せず、意図
的に人民元を低く抑える事で、他国の市場を奪う近隣窮乏化政策に
よるものでした。また、2009年に鉄鉱石の価格交渉で、鉱山会社リ
オ・ティントの中国駐在員をスパイ容疑で逮捕勾留する等、非常識
とも言える価格交渉態度にでました。それに輪をかけたのが2010年
初に明らかになった中国からGoogleへのサイバー攻撃と違法アクセ
スです。一時は、中国当局の検閲を甘受してでも中国市場に進出し
ようとしたGoogleでしたが、この事実により撤退に向け舵を切りま
した。また、リオ・ティントは2010年の鉄鉱石の価格交渉プロセス
から最大需要家であるにも関わらず中国を排除し、日本との交渉結
果を中国に提示し、受け入れなければ中国への輸出を行わないとい
う態度に出るようになりました。

中国に対する更なる圧力になったのが、米国による台湾向けの武器
売却です。最新鋭戦闘機や潜水艦と言った派手な兵器の供与は手控
えられましたが、パトリオットPAC3は、明らかに台湾に向けられた
中国の弾道ミサイルから台湾を防御する事を目的にしたものでした。
記事にも取り上げられて様に、中台関係の緊張緩和にも関わらず、
戦力の増強を継続する中国に対するオバマ政権からの警告とも言え
る決定でした。

これに対し中国は、米国との軍事交流を停止する他、兵器を供給す
る企業を禁輸対象とする等、過剰反応とも言えるリアクションを見
せました。それに対し、オバマ政権も、今まで控えていたダライ・
ラマ14世との首脳会談を急遽実現する等、政治的エスカレーション
に進んできています。それは、米中二ヶ国による世界支配(パック
ス・シナエ・アメリカーナ)構想である「G2論」の幻想を吹き飛
ばすものであったと言えます。

我が国においても日本経済新聞グループや多くの左翼系メディアの
ように、中国の近年の経済発展に幻惑される企業や人士が多かった
のですが、一歩引き下がって冷静に考えれば、この動きは、まさに
第二次大戦直前に、ドイツの勢力拡大に眩惑され、バスに乗り遅れ
るなと、それまでの対英米協調路線から三国同盟へ国策を誤って行
った経緯を彷彿させる動きであると言えます。

それにしても、民主党政権が発足してから4ヶ月足らずであるにも
関わらず、与党の幹事長が、百数十人の国会議員を引き連れて中国
を訪れ、朝貢外交を行い、米国の大統領が、日本との付き合い方が
分からないと韓国大統領に愚痴る時代になってきました。

残念ながら、民主党には、最低でも、あと3年半、日本を自由に統
治できる権利が与えられています。その時間が日本にとって取り返
しのつかないものにならない様、心から祈りたいと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/








2010年2月18日木曜日

スター・ウォーズを意識した?国際宇宙ステーション「展望デッキ」



※写真上は、今回国際宇宙ステーションに設置された「展望デッキ」
野口聡一さんの簡易ブログ「ツイッター」より転載。
写真下は、映画「スターワォーズ」からミレニアム・ファルコン号の銃座

国際宇宙ステーションに「展望デッキ」設置

[ケープカナベラル(米フロリダ州) 15日 ロイター] 国際宇宙ステー
ション(ISS)に滞在する宇宙飛行士たちが、現地に「展望デッキ」を設置
した。デッキからは、ISSの全景のほか眼下に地球を一望することができる。

スペースシャトル「エンデバー」のクルーは、ISSのロボットアームを使用
し、イタリア製のモジュールである「キューポラ」を今回地球から持ち込んだ
モジュールの「トランクウィリティー」に接続する作業を行った。

ロボットアームの操作担当者はこれまで直接外の景色を見ることができず、カ
メラからの映像のみに頼って作業を行ってきたが、テリー・バーツ宇宙飛行士
によると、今回の新モジュール設置によって今後は視界が大きく広がるという。

(ロイター 2010/02/16)


映画「スター・ウォーズ」では、この多角形に中央が円形のデザイン
が結構出てきます。例えば、写真で示したミレニアム・ファルコン
号の銃座以外にも、同じミレニアム・ファルコンの操縦席も、八角
形の上半分が透明窓になった形ですし、ダースベイダーの搭乗機で
あるタイ・ファイターの操縦席がやはり、八角形になっています。
探せばもっとあるかも知れません。

材料工学の発展度合の違い(?)を反映してフレームの太さは大分違
いますが、今回、国際宇宙ステーションに展望窓を設置する上で、
隠れ(?)SFファンでもあるデザイナー氏が、意識して「スター・ウォ
ーズ」の八角形のモチーフを少し変えて採用したのではないかと思
いたい処です。

勿論、正式に照会すれば、展望デッキの形状について合理的な理由
が回答として返ってくるとは思いますが、宇宙ファンの多くは、多
かれ少なかれSFファンでもある可能性が高いと思いますので、デザ
イナーも仲間の一人と、国際宇宙ステーションに今までより少し多
めの共感を持って頂ければと思います。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/








2010年2月17日水曜日

実用に一歩近づいたエアボーン・レーザー

※YAL-1 http://www.sargentfletcher.com/spp.htm より転載

上空からミサイル破壊実験成功=ジャンボ機でレーザー照射-米国防総省

米国防総省は14日までに、上空のボーイング747型ジャンボ機から高出力のレ
ーザーを照射して、発射直後の弾道ミサイルを破壊する実験に成功したと発表
した。ミサイル開発を進めるイランや北朝鮮をけん制する狙いもあるとみられる。

これは発射直後の上昇段階のミサイルを迎撃するエアボーン・レーザー(ABL)
計画の実験。宇宙空間を飛行(ミッドコース)中のミサイルを迎撃するイージ
ス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイルSM3と合わせて、重層的な迎撃体制を構築
することを目指している。

(時事通信 2010/02/14)


地下サイロや移動式発射装置から打ち上げられ、上昇していく禍々
(まがまが)しいICBM(大陸間弾道弾)。上空を飛行するジャンボジェ
ット機。そのジャンボ機の機首から発射される一条の激光。
爆発するICBM。

といったSF小説に出てきそうな情景が浮かんできそうですが、実際
には、現時点のABLは、一撃で、ミサイルを破壊できるものでは、
まだまだ無いようです。現時点のABLが狙っているのは、ミサイル
の外殻をレーザーで熱する事で変形させ、それによってミサイルに
空気力学的な変形を生じさせ破壊に導くというものです。

これは、機上に搭載した燃料から化学反応を通して取り出す事が出
来るエネルギーの密度に限界がある事、また、レーザーを発射する
機体から標的であるミサイルまで空気中をレーザーが通過する事に
より、レーザーの減衰が発生し、ミサイルを瞬間的に破壊できる様
な熱エネルギーを伝達できないことによるものです。

加えて、ABLは、ミサイルの燃料がまだ消費されておらず、速力も
遅いブースト段階を狙いますが、その為には、レーザー発射機は、
ミサイルが発射される場所に可能な限り接近する必要があります。
しかし、ミサイル発射地点は必ずしも国境近くにはなく、場合によ
って相手国領空深く侵入せねばならず、接近する事自体が非常に困
難です。現在、レーザー発射機に使われているのは、ジャンボジェ
ット機ですが、ICBMやIRBMを保有する国が当然保有していると考え
られる近代的防空システムにとっては、比較的簡単に対処が可能な
目標である様に思われます。

勿論、対空システムに対処する為、レーザー発射機以外にも、電子
戦機や、護衛戦闘機が随伴しているかも知れませんが、そういう大
きな編隊を構成していれば、さらに発見は容易になります。そして、
その様な編隊の接近自体がミサイル発射を抑制させると思われるの
です。

今回の実験で、発射直後の弾道ミサイルを破壊する実験に成功した
事自体はABLの完成形に向けての大きなブレークスルーであると評
価できる様に思われます。しかし、対ミサイルレーザーの更なる高
出力化と小型化によって、スティルス機(例えばB-2)に搭載可能に
なれば、本来の使い方が出来るのでしょうが、今の状態では、まだ
まだ実験段階を超えていない様に思われるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月15日月曜日

空中警戒管制機の導入進む韓国空軍

※http://www.spyflight.co.uk/737aewc.htmから転載

やや旧聞に属しますが、今月9日に韓国空軍向けの737型空中警戒管
制機の一号機がボーイング社から韓国に引渡されました。但し、こ
の機体は、MESAレーダを装備していないクリーン状態のもので、
これから韓国内で、ノースロップグラマン社製のレーダーと制御装
置、管制卓等を一年をかけて装備される見込みです。以下、これを
報じたUPIの記事を抄訳しました。

韓国が最初の早期警戒機を入手

ボーイング・インテグレーティド・デフェンスシステム社(ボーイングIDS社)
は、空中警戒管制機四機の内の最初の一機を韓国に引渡した。
韓国防衛調達計画監督庁の声明によれば、韓国のKAI社が、来年の韓国空軍へ
の最終引渡しに備え、機体の改造を担当する。
この改造作業の中で、KAI社は、ノースロップ・グラマン社のLバンド多目的電
子スキャンアレーレーダーを装備する。

三年前に締結された16億ドルの計画の下で、ボーイングIDS社は2012年までに
四機の737早期警戒機を韓国に引き渡す事になっているが、その2012年には、
米軍から韓国に戦時作戦統制権が引渡される事が予定されている。

韓国には北朝鮮からの侵攻の可能性に対処する為に、28500名の米軍が駐留し
ている。南北朝鮮は、1950-53年の朝鮮戦争以降、平和条約ではなく、休戦協
定によって戦争が停止されており、理論的には、戦争状態が続いている。

最初の737型機は、シアトルのボーイング社施設から韓国南部の泗川市にある
KAI社施設に空輸される。
41000ftの高度を最高速度340ktで飛行する能力を持つ同機は、管制乗員向けに
6基の共通管制卓を持つ。専門家によれば、その柔軟性と支援能力は、民間機
の航空管制によく似ていると言う。
「737型空中早期警戒管制機は、韓国が、米国から戦時作戦統制権の移譲を受
け、独自の情報集約と探査監視能力を構築する上での核となる役割を果たす事
になろう」とディフェンスニュース紙は述べている。

この機体は、戦闘機による迎撃や地上の目標物へ低空で侵入する戦術空軍の攻
撃を空中で管制し統制する役割を果たす能力を保有している。
この機体は、この小さな共和国が、無人機、RF-4C偵察機、Hawker800型機によ
る偵察航空団を構築する計画の一翼を担う事になる。

(UPI通信 2010/02/09)


空中警戒管制機は、空軍の主要な戦力倍増要素の一つと言われてい
ます。米国、NATO、日本は、ボーイング707や767をベースとしたE-3、
E-767AWACSを装備していますが、この機体は、新しいだけあって、
E-3とE-767のロートドームとは異なり、レーダーアンテナは可動部
のない固定式の電子走査レーダーを搭載しており、機体は小さいも
のの能力的には既存のAWACSと遜色がないと見られています。
元々は、オーストラリア空軍向けに開発され、韓国空軍の他、トル
コ空軍も導入を予定しています。
(なお、似たような電子スキャンレーダーを持った早期警戒管制機
を中国も開発中です。)

今まで、この種の早期警戒管制機は、北東アジアでは、日本と米国
しか保有していませんでしたが、今回の韓国の737型空中警戒管制
機導入により、日韓の空軍戦力の格差は大幅に縮小する事になるも
のと思われます。

勿論、ハードウェアとしての空中警戒管制機を導入するだけで戦力
が倍増する訳ではなく、空中警戒管制機の能力を100%引き出す為に
は、実際の運用経験を重ねる必要があるのですが、韓国が徐々にそ
の能力を高めていく事は間違いありません。

韓国は、この処、経済危機にも関わらず、陸海空戦力の近代化を急
速に進めています。過去10年、日本は、隣国の軍備拡張や近代化
に関係なく独自の基準で軍備の整備(特にMD整備)を進めてきまし
たが、戦力が相対的なものである以上、そろそろ、北朝鮮以外の隣
国の動きにも対抗したMD以外の戦力整備を行う必要が出てきてい
る様に思われてなりません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/








2010年2月12日金曜日

潜水艦建艦競争が激化するアジア。惰眠を貪る日本?

※朝鮮日報Webサイトより転載

太平洋で激化する潜水艦競争
太平洋の海面下で各国による潜水艦競争が激しくなっている。


米国の保守系シンクタンク・ヘリテージ財団は今月2日に発行した報告書で、
米海軍が衰退する中で、中国と韓国による潜水艦戦力の増強が注目される、と
指摘した。2025年には太平洋で、米国の攻撃型潜水艦は30隻から27隻に減るの
に対し、中国は78隻、韓国は26隻を保有することになるからだ。

同財団のマッケンジー・イーグレン氏とジョン・ローデバック氏は、共同で
『Submarine Arms Race in the Pacific』と題した報告書を作成し、各国の戦
力変化について指摘した。その中で、米国とロシアは退潮、中国と韓国は浮上、
インドやオーストラリアなどが新たに登場すると要約した。太平洋で主導権を
握ろうとする沿岸各国が、相次いでディーゼル潜水艦や原子力潜水艦、巡航ミ
サイル潜水艦(SSGNs)、弾道ミサイル潜水艦(SSBNs)など攻撃型潜水艦を増
やしているとされる。

中でも中国の成長ぶりは著しい。英紙フィナンシャル・タイムズは、中国海軍
は兵力25万5000人、駆逐艦26隻、フリゲート艦49隻、揚陸艦58隻を保有し、規
模の面では既に世界的水準にあると評価した。特に、1995年からは潜水艦の建
造に集中し、2005年までの10年間に31隻を新たに建造した。現在は原子力潜水
艦6隻やディーゼル潜水艦50隻など、計60隻を保有している。

韓国の潜水艦数も大幅に増加した。1993年に209級(1300トン級)の「張保皐
(チャン・ボゴ)艦」を導入して以降、昨年末に配備された214級(1800トン級)
の「安重根(アン・ジュングン)艦」に至るまで、合計12隻を保有している。
また、2012年から2018年までには214級6隻、排水量3000トン級の新潜水艦9隻
などを独自開発し、保有隻数の面では中国に次いでアジア第2位となる。

注目はオーストラリアとインド。両国は、自国の海軍力強化が不可避だと主張
する。これは、アジア太平洋地域で米国の軍事的優位が失われ、中国の海軍力
が急成長しているからだ。オーストラリアは現在6隻ある潜水艦を12隻へ、イ
ンドは17隻を24隻へ拡大する計画だ。その一方で、既存の戦力の維持すら手に
余るロシアと、戦力増強の意思がない日本、旧式の潜水艦を保有する北朝鮮に
ついては、今後大きな影響力はないものと分析した。

米国は、『2010QDR』(4年ごとの国防計画見直し)で、「広い範囲の地域に海
軍力を配備し、軍事力の投射を継続する」と宣言した。そのためには、「潜水
艦基地をハワイやグアムなどに前進配備し、同盟諸国との作戦遂行能力を強化
するとともに、対潜水艦兵器の開発が必須となる」とヘリテージ財団は強調した。

(朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2010/02/06)


記事で言及されているThe Heritage Foundationの報告書は以下で
参照する事ができます。

Submarine Arms Race in the Pacific:
太平洋での潜水艦軍拡競争
The Chinese Challenge to U.S. Undersea Supremacy 
米国の水中での優位に挑戦する中国
http://www.heritage.org/Research/NationalSecurity/bg2367.cfm

まさに表題の通りなのですが、報告書の内容を要約すれば、増大す
る中国の潜水艦戦力に対し、減少していく一方の米海軍の潜水艦戦
力を嘆き、このままでは、米国はアジア太平洋地域で、米国が望む
作戦行動を展開する事が出来なくなるのでは警鐘を鳴らしています。
その中で、中国の戦力拡充に対し、ロシアと日本を除くアジア太平
洋諸国が、潜水艦戦力を拡充し対抗している事を指摘しています。
いわんや米国おやという訳です。

大筋では、論文の内容は首肯できるのですが、多少割り引く必要の
ある部分もあります。その一つは、中国の潜水艦戦力です。ヘリテ
ージ論文では2025年の攻撃型潜水艦の隻数を78隻としていますが、
globalsecurity.orgでは、5隻の戦略原潜と二隻の試験艦を含む
2020年の潜水艦戦力全体で78隻としています。また、この中には、
明級潜水艦12隻が含まれているものと思われますが、このクラスは、
1970年代後半から建造が開始されたもので、近代化改装も行われて
いますが、流石に2020年には、有効な戦力とは言えなくなっている
様に思います。この様な老朽艦や試験艦を差し引くと、2020年段階
では、宋級、元級、キロ級攻撃型潜水艦と商級攻撃型原潜の合計で
ある60隻を比較対象とするべきと考えます。

また、韓国の潜水艦戦力についても、2009年の12隻から2025年に
26隻と二倍以上に増加するとしていますが、この数は、チャン・ボ
ゴ(209)級9隻、ソン・ウォンイル(214)級9隻、KSS-III級8隻を
指している様ですが、KSS-III潜水艦の就役は、2020年からで、そ
の時には、チャン・ボゴ級の艦齢は、25年を超える事から、韓国海
軍はチャン・ボゴ級をKSS-IIIで更新するものと考えられます。
従って、韓国の潜水艦保有隻数は、2025年でも18隻と考えるのが正
しい様に思われます。

この様な、指摘はありますが、潜水艦戦力の近代化を中国が着実に
実行しているのは確かですし、その脅威の増大に対して、アジア太
平洋諸国が対抗しつつあるのも事実です。特に、今まで潜水艦を配
備していなかったベトナムがロシアから6隻のキロ級を導入したり、
マレーシアが、最新鋭のスコルピオ級を増勢しようとしている点、
過去長期に亘って6隻を維持してきた潜水艦隊の倍増を決定した豪
州、ロシア製と国産の原潜を整備し、日本を凌駕する24隻の攻撃型
潜水艦を整備しているインドが注目されます。また、隻数では変わ
らないものの、シンガポールやインドネシアも既存艦の更新や近代
化を実施したり、計画したりと、アジア・太平洋地域は潜水艦に関
しては、世界でも、最もホットな地域になっているのです。

その中で、一見、中国の戦力拡大を全く無視している様に見えるの
が、我が国です。ヘリテージの論文でも、日本は脅威の増大に反応
せず、歴史的な潜水艦枠である16隻を維持するものと予想してい
ます。しかし、実際には、潜水艦そのものは、そうりゅう型の着実
な増勢で能力が向上すると共に、5番艦以降では新型電池装備とな
る事で戦力は格段に強化されます。また、中国の場合は、広大な東
シナ海と南シナ海に面しており、ソ連の時の様なチョークポイント
での待ち伏せが見込めない事から、潜水艦の多少の増勢よりも、寧
ろ、P-2哨戒機の実戦化と配備により、中国潜水艦を検知し、追跡
する能力の向上や、P-2が最大8基装備できる対艦ミサイルによる
中国のシーレーンを威圧する効果の方が、より効率的であると海自
は考えているのかも知れません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月10日水曜日

強襲揚陸艦購入で西側技術の導入に向かうロシア

※ミストラル艦上に着艦したロシア海軍のKa-29強襲輸送ヘリコプター
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/40566572.htmlより転載

ヘリ空母機能持つ仏最新鋭艦、露に売却へ

フランス国防省高官は8日、ロシア政府が購入を打診していた仏海軍の最新鋭
強襲揚陸艦「ミストラル」級(排水量2万1300トン)について、ロシア向
けに1隻を売却する方針を表明、さらに3隻の建造を検討中であることを明ら
かにした。ヘリコプター空母としての機能を持つ攻撃型艦船を北大西洋条約機
構(NATO)加盟国がロシアに売るのは極めて異例。米国やバルト海沿岸の
NATO加盟国に加え、グルジアなどが安全保障上の懸念を表明している。

ロシアは2008年夏にグルジアに侵攻した際、兵員派遣に手間取った経緯が
あり、大量の要員や装備品をヘリで短時間に前線展開できるミストラル級への
関心を強めたとされる。購入は、ロシア軍の展開能力を高めることになるため、
ロシアの周辺国が仏政府に対して懸念を通告していた。

訪仏中のゲーツ国防長官は8日、フランスのモラン国防相と会談した際、「東
欧やバルト海などロシアと接する国々が懸念している」と伝達した。

ミストラル級の推定価格は1隻あたり最大5億ユーロ(約650億円)。仏政
府が売却に応じたのは武器輸出による外貨獲得に狙いに加え、NATO内にあ
っても仏独自の軍事戦略を維持しようとする仏政府の姿勢の表れと見られている。

(読売新聞 2010/02/09)


旧ソ連は、第二次大戦後、様々な種類の艦艇を設計、建造しました
が、最後まで物になら無かったのが、空母と強襲揚陸艦でした。
長くソ連海軍の司令官の職にあったセルゲイ・ゴルシコフはその著
書「海軍戦略」の中で、揚陸戦の重要性について繰り返し述べてい
ますが、実際には、ロシアが大規模な揚陸戦を行ったありませんで
した。その為、揚陸戦の実際について経験が乏しかった事から、建
造した揚陸艦艇も、アリゲータ級の様に米国が第二次大戦時に建造
した戦車揚陸艦(LST)の二番煎じの様な艦や、イワン・ロゴフ級の
様な、中途半端な揚陸艦になってしまいました。

旧ソ連時代には、兵器の開発と製造に人的、物的資源を優先して配
分し、全てを自国開発兵器で揃える事ができましたし、ソ連崩壊後
は数少ない競争力を持つ分野として比較優位を維持出来ていました
が、ロシアが、資本主義経済をもとにした民主主義体制になり、兵
器についても、国際競争の下に置かれる様になった事で、兵器製造
の点でも比較優位が維持できる分野は徐々に縮小してきました。

その中で、ロシアの水上艦艇建造能力は、長年の予算不足の影響も
あって、旧ソ連時代の艦艇設計・建造能力を維持できておらず、
インドと契約したキエフ級空母四番艦アドミラル・ゴルシコフ改め
バクーの売却に伴なう改造も、工期、費用共に大幅な超過を余儀な
くされている状況にあり、特に大型艦艇の建造能力には、疑問符が
つく状態になっているのです。

その様な視点から見れば、今回の「ミストラル」級強襲揚陸艦のフ
ランスからの購入は、ロシア海軍にとって、一番弱く、経験の乏し
い部分を補う上で、非常に合理的な選択であると言えます。その上、
艦艇設計や建造に関わる、西側の設計思想や技術、また最新艦艇に
は必須のC4ISR関連機器やシステムについて、西側技術を大幅に取
り込む事ができると考えられます。今回の契約でロシアがどこまで
電子技術導入を行うか不明ですが、場合によっては、従来のロシア
国産の電子機器・電子兵器に代わって、西側の兵器体系が、ロシア
艦艇に搭載される様になる可能性すらあると考えられるのです。

ヨーロッパ諸国は過去に、中国に、艦艇や技術を売り込んだ事もあ
り、中国の艦艇のCIC設備はイタリア製とフランス製機器のライセ
ンス生産品が混在していると言いますが、ロシアについても、同じ
道を辿るのかも知れません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月9日火曜日

ペイリン発言を軽視するな。日米関係は確実に悪化している!

※産経新聞Webサイトから転載

日米関係「最悪の状態」=オバマ外交を批判-ペイリン氏

2008年の米大統領選で共和党の副大統領候補だったペイリン前アラスカ州知事
は6日、南部テネシー州で開かれた保守派連合「ティーパーティー」の全国大
会で演説した。オバマ大統領の外交政策を批判し、日米関係について「日本は
アジアの重要な同盟国なのに、最悪の状態になっている」と述べた。

北朝鮮やイランに対する外交方針に関しても、「オバマ大統領はこの1年間、
敵対する体制に手を差し伸べているが、成果を上げていない」と指摘した。
また、経済対策について、「オバマ大統領とペロシ下院議長の政策は、国の負
債を拡大させ、国を危険にさらす」と批判した。さらに、マサチューセッツ州
連邦上院議員補欠選挙での共和党の勝利は、一層良いことが起きる兆候だと指
摘し、「米国は新たな革命の準備ができている。みなさんはその一翼を担って
いる」と呼び掛けた。

(時事通信 2010/02/08)


大石英司氏の様な民主党を支持する有力なブルガーの中には、普天
間問題を始めとする日米の外交上の不協和音について、あの程度は
米軍が駐留する他国では当たり前の様に起こっており全く問題にな
らないと述べ、殊更に、その影響を過小評価しようとする方がいます。

鳩山民主党政権の外交上の失点と捉えられるのを避けたいという意
向の現れとも思われますが、やはり、鳩山民主党政権発足後、日米
関係は確実に悪化している事は、明確に認識する必要があります。

ペイリン氏の事を、外交を知らない半素人の政治家と揶揄する向き
がありますが、逆に言えば、その様な半素人の目にも日米関係の悪
化がはっきり見える様になっている訳で、日米関係の悪化はそれ程
深刻であると言えます。

二国間関係は、首脳レベル、政府レベル、政党レベル、政治家レベ
ル、企業レベル、国民レベルと重層的な関係になっていますので、
首脳レベルや政党レベルが悪化していても、それ以外のレイヤで強
固な信頼関係があれば、なお、関係悪化を表面化させずにすみます。
日米関係の現状は、首脳レベルや、政党レベルで悪化しているのを、
政府の上級官僚のレベルで悪化を食い止めようとしている段階であ
る様に思います。

しかしながら、例えば、トヨタ問題の様に、日米関係が良好であれ
ば、単なるリコール問題ですんだものが、米国の経済不安の捌け口
としてスケープゴーツ(生贄羊)にする様な動きを米国政府、とりわ
け政治家である運輸長官がとっているのは、日本をその様に扱って
良いと米国政府や政権党が考えている事を示しています。

この様な事態は、小泉-ブッシュ時代には考えられなかった事です。
勿論、共和党時代でも、経済摩擦や貿易摩擦は存在していましたが、
その影響を両国関係全体に波及するのを避けようとする方向に日米
両国政府によるベクトルが働いていました。しかしながら、現在は
そのベクトルが両国で弱まっています。

昨年のCOP15以降、固くなに欧米との協調を拒否しながら近隣窮乏
化政策を続ける中国に対して、欧米各国で中国異質論が表面化して
いるのが、2010年の国際政治の顕著な変化です。オバマ政権も、そ
れまでの協調一辺倒の対中政策から、中国と対抗する事も避けない
方向に外交政策を転換しつつあります。その様な世界的な認識転換
が行われている中で、政権党の書記長(幹事長の英訳はThe chief
secretaryは書記長、総書記になります)が、国会議員百数十名を引
き連れ中国の国家主席に謁見させるのは、日本の外交政策が、大き
く中国に傾斜しつつある事を示すものと米国政府が認識した事に間
違いありません。

この状況は、連戦連勝のナチドイツに擦り寄り、三国同盟を結んで
英米に敵対する事になった第二次大戦直前の状態を、擦り寄る相手
をドイツの代わりに中国にするだけで繰り返している様な気がして
ならないのです。そして、米国が日英同盟破棄に外交努力を傾けた
のと同様に今度は、中国が日米同盟破棄に外交努力を傾けていると
言う訳です。

鳩山首相の外交ブレーンである日本総研の寺島実郎氏が普天間問題
で調整を図ろうと訪問したワシントンで米政府高官から総スカンを
喰らったのは、日米中二等辺三角形外交の提唱者であり、日米同盟
を破棄を画策する中国の手先と目されたからに他なりません。

鳩山首相が意図してかどうかは分かりませんが、結果として、オバ
マ大統領の信頼をトラストミー事件で失った他、訪日中のオバマ大
統領を置き去りにしてシンガポールに出発する等、表面上の言葉は
どうであれ、オバマ大統領に鳩山首相の信頼性について強烈な印象
を与えたと考えるのが普通です。

今回のペイリン前アラスカ州知事の発言は、日米関係の悪化をオバ
マ政権の失政として批判するものですが、冷静に見れば、日米政府
間合意を破棄しようとしている点で、日米関係悪化の原因と責任が
日本側により大きい事は明確です。それだけにペイリン発言は、寧
ろ、今後、方向を変えて米国の政治家、米国民の非難の矛先を中国
と同時に日本に向ける切っ掛けになる可能性すらあるのではと懸念
されるのです。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/









2010年2月8日月曜日

IRBM(中距離弾道弾)配備を推進するインド

※アグニ3の発射実験。「弾道ミサイル及び巡航ミサイルの脅威」から転載

インド、弾道ミサイル発射実験成功 中距離「アグニ3」

PTI通信によると、インド国防省筋は7日、核弾頭搭載可能な中距離弾道ミ
サイル、アグニ3(射程3千キロ)の発射実験を同国東部オリッサ州沖の島で
実施し、成功したと明らかにした。アグニ3は中国の主要都市の一部を射程に
入れる。

インドのアグニ3発射実験は今回が4回目。2006年7月の最初の実験は失
敗したが、07年4月と08年5月の実験はいずれも成功している。(共同)
(産経iza 2010/02/07)


現在、インドが配備しているアグニ2は、MRBM(準中距離弾道弾)
の射程である1250マイルの射程距離しか持っていない事から、中国
の一部を射程に収めているとは言うものの、まず、パキスタン向け
と言って良いと思います。

これに対し、今回で4回目になるテストを成功させた、アグニ3は
名前こそ、アグニ2と似ていますが、実は、全く異なるミサイルです。
アグニ2が、細長い、如何にも、射程を延長する為に、ロシア製の
SCUDを二段重ねにした様に見えるのに対し、アグニ3は直径がより
大きく、将来ICBM(大陸間弾道弾)に発展する余裕を持たせたミサイ
ルとして開発されている様に思われます。

アグニ3の射程を、米国は2000マイル以上と見積もっていますが、
この射程は、アグニ2に比べ約倍近いとはいうものの、中国の全域
を納めるのに不十分であり、中国向けの弾道ミサイルとしては、中
途半端な印象は免れません。従って、配備当初は、現状の射程距離
であっても、配備後には、更に射程を延長するものと見込まれてい
ます。

インドの弾道弾配備が進むと、実は我が国にも影響が出てきます。
つまり、インドの脅威を受ける様になる中国ですが、対抗上、イン
ドを射程に納めるミサイルを配備する必要が出てきます。インドが
配備可能な弾道ミサイルとしては、アグニ2と同程度の射程を有す
るCSS-2,CSS-5を前進配置するか、貴重なICBMの一部をインド向け
に振り向けるしかありません。

恐らくは、当面は、配備数に余裕のあるMRBMの前進配置で対応し、
その内に、射程3000マイル程度のミサイルを配備するものと思われ
ますが、元々、射程の長いCSS-5の長射程型は、日本向けと見られ
ていました。この為、一時的とは言え、中国の日本向け核戦力の脅
威が、低下する可能性があるのです。

また、相互抑止の観点からすれば、中国にとって、アメリカやロシ
アは、核抑止ゲームのベテランであり、ある意味で中国が見習うべ
きゲームの師匠とも言え、相互抑止の信頼性が高かったのに対し、
中国がゲームに習熟した時、新規に参入するインドやイラン、北朝
鮮の様な、核ゲームの素人は、行動が予測できずリスクが高まる事
になります。中国にとっては、相互確証破壊(MAD)戦略による相互
抑止が効きにくくなる事になります。それへの対抗策としては、核
ミサイルに多めに配備すると同時にMDを配備する事になります。

中国は、今年1/11にMD実験を行っていますが、このMDの対象は、
インドという事なのかも知れません。中国はかって、日本のMD配
備を地域軍拡を促進すると非難してきましたが、インドの核戦力の
充実によって、日本にとっての北朝鮮の核ミサイルがMDを促した
のと同様の立場に立つことになったのは、如何にも皮肉な結果であ
る様に思われるのです。以前、日本のMDを非難した誰かさん達は
中国のMD配備を非難しないんでしょうか。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/







2010年2月5日金曜日

福徳岡ノ場4年半ぶりに噴火 新島できるかな?


※第四紀火山データベースから転載
中央下の尖った島が南硫黄島。その上の平坦な頂上を持った高まりが福徳岡ノ
場、その更に上の高まりは、北福徳堆(たい)。

海底火山 福徳岡ノ場が噴火 4年半ぶり 南硫黄島沖

3日午前7時45分ごろ、南硫黄島(東京都小笠原村)の北北東約5キロにあ
る海底火山「福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)」から白煙が立ち上っているの
を第3管区海上保安本部(横浜市)の巡視船が見つけた。05年7月以来約4
年半ぶりの噴火で、火山活動が活発化している。

3管によると、現場は東京の南約1300キロ。1904年、14年、86年
の3回、海底が隆起して新島を形成したが、いずれも海没した。50年ごろか
ら常に海域が変色しており、昨年12月にも黄緑色に変わったことが確認され
ていた。

(毎日新聞 2010/02/03)


福徳岡ノ場は、日本の海底火山の中でも有数の活発な活動を行って
いる火山です。直径10km、高さ2000mを超える北福徳カルデラの中
央火口丘です。ちなみに南硫黄島は、それ自体は成層火山ですが、
カルデラ縁にできた寄生火山と言える様に思われます。これは福徳
岡の場の北に位置する北福徳堆も同様です。

福徳岡ノ場の活動は活発と書きましたが、火山活動に起因する変色
域の出現は殆ど毎年の事であり、噴火も20世紀に入って以降、7回
起こっています。1904年、1914年、1973年、1974年、1986年、1992
年、2005年の7回で、今回の噴火は8回目と言う事になります。

(1974年以降は、12年+6年の合計18年の噴火サイクルがある様にも見
えます。その噴火サイクルからすれば、今回の噴火は予定より1年
早かったと言えるのかも知れません。)

この内、1904年、1914年、1986年には新島が出現しています。これ
らの新島は、いずれも新硫黄島と命名されています。今回もし、島
が出現しても、同じ名前になるものと思われます。

1914年の際には、一時、高さ300m、周囲11.8kmの堂々たる島に成長
しました。しかし、これは翌々年には消滅しています。一番最近の
1986年の新島も、わずか二ヶ月ほどで消滅しています。

硫黄島の北に位置する西ノ島の1973~74年噴火でもそうでしたが、
火山弾や火山礫が集積しただけの火山島は、太平洋の荒波によって
比較的簡単に侵食されてしまいます。火山島として半永久的に残る
為には、溶岩の噴出でよって、火山礫がしっかりと火山本体に溶着
しなくてはならないのです。

今回の噴火で、新島が出現するかどうかは、五分五分と言った感じ
ですが、新島が島として残る為には、溶岩噴出があるかどうかにか
かっていると言って過言ではない様に思われます。

なお、福徳岡ノ場は、硫黄島の南南東55km、南硫黄島の北北東5kmに
位置しており、完全に我が国の領海内にあります。従って、我が国
にしか領有権がありません。どこかの国が勝手に領有権を主張する
事はありませんのでご心配なく。もっともその分、EEZ(排他的経済
水域)が今以上に広がる事もありません。


環球閑話日々の徒然まとめサイト
http://space.geocities.jp/ash1saki/