2010年3月8日月曜日

金星探査機「あかつき」、宇宙帆船「イカロス」打ち上げ日決まる


※上段CGが「イカロス」、下段が「あかつき」。JAXAWebサイトから転載

金星探査機「あかつき」5月18日打ち上げ

宇宙航空研究開発機構などは3日、日本初の金星探査機「あかつき」を搭載し
たH2Aロケット17号機を5月18日午前6時44分、鹿児島県南種子町の
種子島宇宙センターから打ち上げると発表した。

あかつきは、金星表面で吹き荒れる暴風などの謎を解明する狙いがある。ロケ
ットにはこのほか、太陽光を受けて進む宇宙帆船「イカロス」や大学で開発し
た衛星など5機も搭載される。

ロケットの打ち上げ可能期間として、地球―金星間の距離が最も短くなる同日
から6月3日までを設定しており、天候不順などで打ち上げが延びれば、次の
チャンスは1年後となる。

(読売新聞 2010/03/03)


日本初の金星探査機となる「あかつき」と、小型ソーラー電力セイ
ル実証機「IKAROS」が、5月18日に、種子島宇宙センターから、
H-IIA17号機で打ち上げられる事になりました。

金星探査機「あかつき」(PLANET-C)は、失敗した火星探査機「のぞ
み」(PLANET-B)に続く、日本で二番目の惑星探査機で、金星大気の
観測を行う事を目的としています。
(ちなみに、PLANET-Aはハレー彗星探査機「すいせい」であり、小
惑星探査機「はやぶさ」は、MUSES-Cという工学実験探査機です。)

金星は、地球のお隣の惑星で、大きさや重力が地球とほぼ同じであ
るにも関わらず、高温高圧の二酸化炭素の大気に包まれ、硫酸の雲
が浮かぶ、地球とはまったく異なる環境です。地球と金星の環境が
これほど異なった原因を調べるのが「あかつき」の目的であり、そ
の現象と原因が解明される事で、地球環境を人類は、更に詳しく理
解できる事になります。

計画では、「あかつき」は打ち上げられてから、約半年かけて金星
の軌道に到達する予定です。

「あかつき」と同時に打ち上げられる「イカロス」ですが、これは、
「あかつき」とは全く異なり宇宙帆船の先駆けとも言える実験機で
す。小型ソーラー電力セイル探査機は、ソーラーセイル(太陽帆)で、
超薄膜の帆を広げ太陽光圧を受けて進む宇宙船で、今までは、SF
小説の中でしかお目にかかる事が出来ませんでした。ソーラーセイ
ルは欧米でもミッションを検討中ですがまだ実現されていません。
「イカロス」は、光圧を受け止めるソーラーセイルに、同じく超薄
膜の太陽電池を装備し、この電力を用いて高性能のイオンエンジン
を駆動することで、ハイブリッド推進を実現すると言う全く新しい
コンセプトの宇宙機の先駆けと言えます。

今回打ち上げられる「イカロス」は、展開前こそ、直径1.6m、
高さ1m、重量315キロの小型探査機ですが、薄膜を展開すると
一辺20m四方という大きさになります。この正方形の帆の展開と、
薄膜太陽電池による発電の実現、更に、ソーラーセイルによる加速・
減速と膜面の方向を調整する事により、機動を制御する処までを実
証しますが、これらはいずれも世界初か、あるいは世界最先端の技
術実証になります。(残念ながらイオンエンジンは搭載されていま
せん。)

今回の打ち上げでは、「あかつき」「イカロス」の他にも、早稲田
大学、鹿児島大学、創価大学、UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)
が各々製作した小型相乗り衛星も同時に打ち上げられます。この内、
早稲田大学、鹿児島大学、創価大学の小型衛星は、地球周回軌道に
投入されますが、UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)の小型衛星
は、金星へ向かう軌道に投入されます。宇宙機関以外が製作した衛
星が月(38万km)を超えて金星を目指すこと自体、「世界初」の試み
となります。内容面でも金星へ向かう軌道の中で、UNISEC加盟の各
大学が製作した宇宙用コンピュータの内、「誰が最後まで生き残る
か」を競うという興味深いものです。

H-IIA17号機は、これらの非常に興味深いペイロードを打ち上げる
事になります。最近のH-IIAの打ち上げが非常に安定してきている
とはいうものの、米国でも、ロシアでも、中国でも、欧州でも、
何十回成功した後の打ち上げに失敗する事があるというのが、
ロケット打ち上げの宿命と言えます。それだけに、今回の打ち上げ
が無事に成功する事を心より祈りたいと思います。


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