※産経新聞Webサイトから転載
日米関係「最悪の状態」=オバマ外交を批判-ペイリン氏
2008年の米大統領選で共和党の副大統領候補だったペイリン前アラスカ州知事
は6日、南部テネシー州で開かれた保守派連合「ティーパーティー」の全国大
会で演説した。オバマ大統領の外交政策を批判し、日米関係について「日本は
アジアの重要な同盟国なのに、最悪の状態になっている」と述べた。
北朝鮮やイランに対する外交方針に関しても、「オバマ大統領はこの1年間、
敵対する体制に手を差し伸べているが、成果を上げていない」と指摘した。
また、経済対策について、「オバマ大統領とペロシ下院議長の政策は、国の負
債を拡大させ、国を危険にさらす」と批判した。さらに、マサチューセッツ州
連邦上院議員補欠選挙での共和党の勝利は、一層良いことが起きる兆候だと指
摘し、「米国は新たな革命の準備ができている。みなさんはその一翼を担って
いる」と呼び掛けた。
(時事通信 2010/02/08)
大石英司氏の様な民主党を支持する有力なブルガーの中には、普天
間問題を始めとする日米の外交上の不協和音について、あの程度は
米軍が駐留する他国では当たり前の様に起こっており全く問題にな
らないと述べ、殊更に、その影響を過小評価しようとする方がいます。
鳩山民主党政権の外交上の失点と捉えられるのを避けたいという意
向の現れとも思われますが、やはり、鳩山民主党政権発足後、日米
関係は確実に悪化している事は、明確に認識する必要があります。
ペイリン氏の事を、外交を知らない半素人の政治家と揶揄する向き
がありますが、逆に言えば、その様な半素人の目にも日米関係の悪
化がはっきり見える様になっている訳で、日米関係の悪化はそれ程
深刻であると言えます。
二国間関係は、首脳レベル、政府レベル、政党レベル、政治家レベ
ル、企業レベル、国民レベルと重層的な関係になっていますので、
首脳レベルや政党レベルが悪化していても、それ以外のレイヤで強
固な信頼関係があれば、なお、関係悪化を表面化させずにすみます。
日米関係の現状は、首脳レベルや、政党レベルで悪化しているのを、
政府の上級官僚のレベルで悪化を食い止めようとしている段階であ
る様に思います。
しかしながら、例えば、トヨタ問題の様に、日米関係が良好であれ
ば、単なるリコール問題ですんだものが、米国の経済不安の捌け口
としてスケープゴーツ(生贄羊)にする様な動きを米国政府、とりわ
け政治家である運輸長官がとっているのは、日本をその様に扱って
良いと米国政府や政権党が考えている事を示しています。
この様な事態は、小泉-ブッシュ時代には考えられなかった事です。
勿論、共和党時代でも、経済摩擦や貿易摩擦は存在していましたが、
その影響を両国関係全体に波及するのを避けようとする方向に日米
両国政府によるベクトルが働いていました。しかしながら、現在は
そのベクトルが両国で弱まっています。
昨年のCOP15以降、固くなに欧米との協調を拒否しながら近隣窮乏
化政策を続ける中国に対して、欧米各国で中国異質論が表面化して
いるのが、2010年の国際政治の顕著な変化です。オバマ政権も、そ
れまでの協調一辺倒の対中政策から、中国と対抗する事も避けない
方向に外交政策を転換しつつあります。その様な世界的な認識転換
が行われている中で、政権党の書記長(幹事長の英訳はThe chief
secretaryは書記長、総書記になります)が、国会議員百数十名を引
き連れ中国の国家主席に謁見させるのは、日本の外交政策が、大き
く中国に傾斜しつつある事を示すものと米国政府が認識した事に間
違いありません。
この状況は、連戦連勝のナチドイツに擦り寄り、三国同盟を結んで
英米に敵対する事になった第二次大戦直前の状態を、擦り寄る相手
をドイツの代わりに中国にするだけで繰り返している様な気がして
ならないのです。そして、米国が日英同盟破棄に外交努力を傾けた
のと同様に今度は、中国が日米同盟破棄に外交努力を傾けていると
言う訳です。
鳩山首相の外交ブレーンである日本総研の寺島実郎氏が普天間問題
で調整を図ろうと訪問したワシントンで米政府高官から総スカンを
喰らったのは、日米中二等辺三角形外交の提唱者であり、日米同盟
を破棄を画策する中国の手先と目されたからに他なりません。
鳩山首相が意図してかどうかは分かりませんが、結果として、オバ
マ大統領の信頼をトラストミー事件で失った他、訪日中のオバマ大
統領を置き去りにしてシンガポールに出発する等、表面上の言葉は
どうであれ、オバマ大統領に鳩山首相の信頼性について強烈な印象
を与えたと考えるのが普通です。
今回のペイリン前アラスカ州知事の発言は、日米関係の悪化をオバ
マ政権の失政として批判するものですが、冷静に見れば、日米政府
間合意を破棄しようとしている点で、日米関係悪化の原因と責任が
日本側により大きい事は明確です。それだけにペイリン発言は、寧
ろ、今後、方向を変えて米国の政治家、米国民の非難の矛先を中国
と同時に日本に向ける切っ掛けになる可能性すらあるのではと懸念
されるのです。
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