昨日の続きです。
海軍も「海中の脅威の再出現」に直面して、そのASW能力の有効性が減退して
いる点を認めており、将来、より先進的なセンサーや対潜兵器を開発するとい
う目標を決定している。また、米国太平洋艦隊は、すでに伝えられるところで
は対潜訓練を増やしている。これらは、主にして潜水艦と長距離海上哨戒機か
らなる対潜プラットホームの調達という目標と共に、持続していかねればなら
ない重要な努力である。
中国
冷戦の終了以降、中華人民共和国の人民解放軍海軍(PLAN)は、海軍、とり分け
その潜水艦隊の勢力を劇的に増強し、能力を格段に向上した。その潜水艦隊は
「今では、人民解放軍海軍で、最も力強い戦力と考えられている。」
米国国防総省によれば、中国は、アジアで最大の海軍力を保有しているが、攻
撃型潜水艦も60隻(原子力推進6隻、ディーゼル推進54隻)保有している。
デーゼル推進潜水艦の半分以上は、最新型のキロ級、宋級、元級である。ある
専門家は、中国は今やロシアよりも多くの潜水艦を保有しており、その建造速
度は、素晴らしいと述べている。
潜水艦隊の増強
中国は、その沿岸を超えて戦力を投射できる信頼性の高い大洋海軍を建設する
という目標を実現する為に着実に前進している。中国が潜水艦戦に真剣に取り
組んでいる事を把握するには、2002年から2004年に、中国海軍が13隻の潜水艦
を国内で進水させると同時に、前例のない規模でロシアに潜水艦を発注した事
を考えれば充分であろう。実際、中国は、1995年から2005年に31隻の新しい潜
水艦を就役させた。この急速な進化を受けて、近海用に有力で強力なディーゼ
ル潜水艦の配備する事に対する評価も当初の懐疑から尊敬に変わった。
複雑な技術開発に対する中国の可能性について、海外でも、深刻に受取られる
様になった。
中国の攻撃型潜水艦隊の将来規模の予測は、58隻から88隻と幅広く
別れている。この予測の違いは、中国がどれだけ早く老朽潜水艦を
退役させるか、また、どの位、高価な原子力潜水艦を配備するか、
更に、外国製の潜水艦をどの程度購入するかに関して意見が異なっ
ている事による。近年、中国は、国内で設計、建造された四種類の
潜水艦を導入した。それらは、晋級(Type094)SSBN、商級(Type093)
SSN、元級(Type041/039A)SSP、宋級(Type039/039G)SSKである。
商級の後継艦が開発中と伝えられている。この規模の潜水艦の開発
と建造への投資が継続されている事から見て、70隻という予測レン
ジの上の方の数字が、来るべき将来の中国潜水艦隊の構成と考える
べきだろう。
パトロールの増加
中国の攻撃型潜水艦隊は、パトロール率を2006年の2回から2007年には6回に、
更に、2008年には12回に増加させている。これは、訓練の新しい目標が定めら
れ、それは、関係諸国、とり分け米国に対し、中国が太平洋における海軍大国
である事を誇示したいという願望がある事を示している。最近の二つの事件が、
その傾向を強調している。2006年10月26日、宋級潜水艦が沖縄近海で行動中の
空母キティホークの5海里以内に浮上したが、これはエスコート陣形の内側で
あった。また、2009年6月11日、中国の潜水艦が、フィリッピン近海で曳航式
ソナーを展開していたイージス艦ジョン・S・マケインと衝突した。これらの
事実が米国海軍のASW能力の限界と中国潜水艦の能力を示しているかどうかは
別にして、最も有益な情報として分類されるべきものは、これらの事件は、中
国の潜水艦の活動範囲が過去のそれと比べ、明らかに広範囲に配備されており、
また、より攻撃的に運用されている事を示しているという事である。
目的
いくつかの考慮要素と目的を考えると、中国の急速な攻撃型潜水艦隊の増強を
理解しやすくなる。基礎的な中国の防衛ニーズは、中国-台湾関係に「干渉す
る」米国の能力を制限し、太平洋で米国の優位に挑戦し、中国の戦略ミサイル
原潜による核抑止力を保護して、より大きな国際的な威信を得ることである。
まず最初に、中国の富と人口は、その東海岸に集中しており、中国が、その海
岸に沿って強力な海軍抑止力を展開する説得力のある理由を与えている。
それとは異なり、多くの安全保障の専門家は、「中国が潜水艦隊を増強する主
たる目標は、米国が台湾の代りに介入する事を遅延、または阻止する事である」
と主張している。中国は、台湾の「反逆した行政区」によって、苦しめられて
おり、1949年以降、(中国の観点からは)両岸関係に干渉している米国によって
苦しめられている。
台湾海峡を挟む関係が特に緊張した1996年には、米国は台湾に対する中国の攻
撃を阻止するために、二つの空母戦闘団を派遣した。中国がそれ以来、将来に
おける台湾海峡をめぐる紛争において、米国の軍事介入を躊躇させたり、遅延
あるいは妨害する海洋利用拒否能力の開発に高い優先順位を与えた事は驚くに
当たらない。米国防総省は、「キロ級、商級、宋級、元級潜水艦の購入と開発
は、中国人民解放軍の海中戦と通じた海洋利用拒否を重視する姿勢を描き出し
ている」と結論づけている。
人民解放軍海軍は、かってのソ連海軍の戦略、それは、攻撃的能力を保有する
大洋を航行する原子力潜水艦を用いて、急速に(ソ連にとって)好ましからざる
地政学的状況を克服するという戦略を模倣しているとも言える。類似の戦略は、
中国本土を取り囲む列島線による封鎖を打ち破ろうとする人民解放軍海軍の目
的に合致している。
海南島の新しい海軍基地は、人民解放軍海軍に、死活的な国際シーレーンへの
直接的なアクセスを与え、南シナ海の深海に潜水艦を密かに展開する事を可能
にする事で、新たな検討ポイントを付け加える事になる。
核抑止力の一環として、中国は、最大5隻の晋級戦略ミサイル原潜(SSBN)を建
造するものと予想されており、おのおの、中国近海から発射して米国に到達可
能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)12基を装備していると見られている。
これにより、信頼のおける海洋配備の核抑止力が構成される。中国は、戦略ミ
サイル原潜の核抑止パトロールの護衛を攻撃型原潜に期待しているものと思わ
れる。
最後に、中国がグローバルな大国になる意図がある事は明白であり、原子力潜
水艦は、中国が大国の地位にある事の確認を世界に要求している事を示す顕著
な表れである事は、中国の常識と言える。また、強力な攻撃型潜水艦隊は、世
界をめぐる中国商船団を保護する上でも有用である。1993年のイン・ヒー事件
で、米国が化学兵器の原料をイランへ輸送していると疑われた中国の貨物船を
臨検すると譲らなかった時、中国の指導者に「いくら激怒しても、頼るものが
なければ無力だ」という事を再認識させた。
オーストラリア
オーストラリアは6隻のディーゼル電気推進潜水艦を保有しており、より広範
囲な海軍近代化計画の一環として、12隻の巡航ミサイルを装備した最新型通常
動力潜水艦に置き換える事を公表している。オーストラリア政府は、この増強
を中国の海軍力の増強と世界とりわけアジア太平洋地域で安定化の役割を担っ
ている米国の海軍力の優位の減退に対応したものと明白に表明している。
インド
地理的には、太平洋国家ではないものの、インドは、東南アジアと西太平洋に
影響範囲を拡大する事を試みている。インドは16隻のディーゼル推進の攻撃型
潜水艦を保有しており、最近、最初の攻撃型原潜を進水させたが、それは、ロ
シアのアクラ級を元にしたものである。インドは2隻目のアクラ級潜水艦をロ
シアからリースする予定があり、6隻のスコルピオ級ディーゼル潜水艦を建造
中である。インドの潜水艦戦力の増強と更新は、10年で、100隻の戦闘艦を増
強するというより大きな計画の一部である。インド国防省は、この計画につい
て、国家防衛の為の「戦略的必要性」と説明しているが、その多くは中国の海
軍建設に対抗したものと言える。「中国は素晴らしい勢いで海軍戦力を増強し
ている。そのインド洋に対する野心は明白である。」インド自身も大国になる
ことを切望している。そして、潜水艦は、列強の艦隊の肝要な部分とみなされ
ている。
ロシア
ロシアの潜水艦隊は、ソ連邦の崩壊以降、三分の二に縮小している。近年、ロ
シア海軍は、ソビエト後の危機から脱却したが、冷戦時代から残された数十隻
もの原潜を退役させる必要がある。2009年には、ロシアは17隻の攻撃型原潜と
20隻のディーゼル潜水艦を保有していたが、この内、5隻の攻撃型原潜と9隻の
ディーゼル潜水艦が太平洋艦隊に配備されていた。近年の国防予算の大規模な
拡大にも関わらず、「ロシア海軍は、資金不足に取りつかれており、作戦可能
な潜水艦を定期的にオーバホールする事とそれらを戦闘可能状態にするのがや
っとといった状況にある。」
日本
日本は、新しいそうりゅう型AIP潜水艦1隻を含む、最低16隻の最新の潜水艦隊
を維持している。日本は、歴史的に、潜水艦を16年の現役期間で更新してきた
が、それは、他国が潜水艦を退役させるペースに比べ非常に早いものだった。
韓国
韓国は12隻の攻撃型潜水艦を保有しており、2020年までに、潜水艦隊を27隻に
増強する計画がある。
北朝鮮
北朝鮮は、22隻の古い通常動力型潜水艦(この内、何隻が現役かは不明。) と
多くの小型潜水艦を保有している。これらの潜水艦は、理論的には、商船や、
洗練されていない水上艦艇に脅威を与える事できるが、北朝鮮の潜水艦は、海
域管制上、深刻な競争相手とは見なされていない。
台湾
台湾は2隻の攻撃型潜水艦を運用しており、潜水艦隊を増強し、更新する、国
内建造を含む様々な方法を探っている。2001年には、米国は台湾に、8隻の通
常動力潜水艦を含む武器パッケージ輸出を提案したが、米国は、最新の通常動
力潜水艦の設計に関する何らの権利を保有していない事から、この提案は、効
力を失ったものと見なされている。
東南アジア
中国とインドが原子力推進潜水艦を配備した文脈から、東南アジアの殆どの国
が、既存の潜水艦隊の増強の能力向上を図っている。インドネシアは、2隻の
潜水艦を保有しており、2024年までに12隻を建造する計画を発表している。
ベトナムは、6隻のキロ級潜水艦をロシアに発注している。シンガポールは最
近、2隻のアーチャー級AIP潜水艦で既存の4隻の潜水艦の内2隻を置き換えた。
2007年10月に、マレーシアは、フランス建造のスコルピオ級潜水艦1隻の引渡
しを受けた。2隻目は2010年に引渡される事になっている。タイは、現在、潜
水艦を保有していないが、何隻かを調達する事に関心を深めている。
次回は、中国の挑戦に対する米国の対応に関する提言と結論です。
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