2010年2月17日水曜日

実用に一歩近づいたエアボーン・レーザー

※YAL-1 http://www.sargentfletcher.com/spp.htm より転載

上空からミサイル破壊実験成功=ジャンボ機でレーザー照射-米国防総省

米国防総省は14日までに、上空のボーイング747型ジャンボ機から高出力のレ
ーザーを照射して、発射直後の弾道ミサイルを破壊する実験に成功したと発表
した。ミサイル開発を進めるイランや北朝鮮をけん制する狙いもあるとみられる。

これは発射直後の上昇段階のミサイルを迎撃するエアボーン・レーザー(ABL)
計画の実験。宇宙空間を飛行(ミッドコース)中のミサイルを迎撃するイージ
ス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイルSM3と合わせて、重層的な迎撃体制を構築
することを目指している。

(時事通信 2010/02/14)


地下サイロや移動式発射装置から打ち上げられ、上昇していく禍々
(まがまが)しいICBM(大陸間弾道弾)。上空を飛行するジャンボジェ
ット機。そのジャンボ機の機首から発射される一条の激光。
爆発するICBM。

といったSF小説に出てきそうな情景が浮かんできそうですが、実際
には、現時点のABLは、一撃で、ミサイルを破壊できるものでは、
まだまだ無いようです。現時点のABLが狙っているのは、ミサイル
の外殻をレーザーで熱する事で変形させ、それによってミサイルに
空気力学的な変形を生じさせ破壊に導くというものです。

これは、機上に搭載した燃料から化学反応を通して取り出す事が出
来るエネルギーの密度に限界がある事、また、レーザーを発射する
機体から標的であるミサイルまで空気中をレーザーが通過する事に
より、レーザーの減衰が発生し、ミサイルを瞬間的に破壊できる様
な熱エネルギーを伝達できないことによるものです。

加えて、ABLは、ミサイルの燃料がまだ消費されておらず、速力も
遅いブースト段階を狙いますが、その為には、レーザー発射機は、
ミサイルが発射される場所に可能な限り接近する必要があります。
しかし、ミサイル発射地点は必ずしも国境近くにはなく、場合によ
って相手国領空深く侵入せねばならず、接近する事自体が非常に困
難です。現在、レーザー発射機に使われているのは、ジャンボジェ
ット機ですが、ICBMやIRBMを保有する国が当然保有していると考え
られる近代的防空システムにとっては、比較的簡単に対処が可能な
目標である様に思われます。

勿論、対空システムに対処する為、レーザー発射機以外にも、電子
戦機や、護衛戦闘機が随伴しているかも知れませんが、そういう大
きな編隊を構成していれば、さらに発見は容易になります。そして、
その様な編隊の接近自体がミサイル発射を抑制させると思われるの
です。

今回の実験で、発射直後の弾道ミサイルを破壊する実験に成功した
事自体はABLの完成形に向けての大きなブレークスルーであると評
価できる様に思われます。しかし、対ミサイルレーザーの更なる高
出力化と小型化によって、スティルス機(例えばB-2)に搭載可能に
なれば、本来の使い方が出来るのでしょうが、今の状態では、まだ
まだ実験段階を超えていない様に思われるのです。


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