2009年1月21日水曜日

オバマ政権 期待度は高いが、支持急落の可能性も高い?


※宣誓するオバマ新大統領。時事通信サイトより転載

オバマ新大統領が就任演説、国民に米国再生への協力促す

米民主党のバラク・オバマ前上院議員(47)は20日正午(日本時間21日午前2時)
過ぎ、ワシントンの連邦議会議事堂で宣誓後、就任演説し、米国の現状につい
て危機のまっただ中にあるがこれを克服し、将来も繁栄した強い国家であり続
けるとの決意を表明した。

新大統領はこの中で、米国は戦時下にあり、経済は弱体化し、短期間で解決出
来る問題ではないと国民の理解を求めた。その上でこれらの問題は必ず解決出
来るとして米国民に奮起を促し、米国再生へ共に取り組むよう呼び掛けた。

経済問題では、景気刺激のための大胆かつ迅速な行動が必要と強調。政府の活
動については、機能するかどうかが重要な問題であるとの認識を示した。

また、対テロ戦争の主戦場と位置付けるアフガニスタンの平和構築に全力を注
ぐと主張。多宗教を尊重し、相互利益や敬意に基づきイスラム社会との新たな
関係構築への希望を述べた。友人やかつての敵と協力しながら「核の脅威」の
ない国際社会を目指すとの考えも強調した。

イラク問題では、駐留米軍の撤退は責任ある形で進めるとも言明。地球温暖化
の進行を押しとどめる決意も述べた。

米国が直面する試練や打ち出す対応策は新しいものかも知れないとしながらも、
成功を生み出す勤勉、正直、勇気、忍耐、好奇心、忠誠や愛国心などの美徳は
昔ながらのものとし、真実でもあると強調。米国の歴史を通して進歩を生む源
の力にもなったとして、現在の試練に立ち向かうにはこの力が今こそ必要であ
ると国民に呼び掛けた。

(CNN.co.jp 2009/01/21)

オバマ氏の支持率は8割、就任時ではカーター氏以降最高

【ワシントン=本間圭一】オバマ次期米大統領の支持率が約8割に上ることが、
18日発表の各種世論調査の結果で分かった。就任時の支持率では、カーター
元大統領以降、最高となった。

18日付ワシントン・ポスト紙によると、カーター氏以降の大統領に関し、1
期目就任時の好感度を尋ねた調査で、オバマ氏は首位の79%。ブッシュ大統
領が62%、最下位はレーガン元大統領の58%。ニューヨーク・タイムズ紙
が18日発表した調査では、カーター氏以降の大統領の1期目就任時に「今後
4年間を楽観視する」と答えた人は、オバマ氏が首位で79%、ブッシュ大統
領が64%で最下位だった。
(読売新聞 2009/01/19)

世論調査では、オバマ氏は非常に高い支持率を得ていますが、この
支持率の高さは、期待度の高さとも言い換えられますので諸刃の剣
として働きます。つまり、オバマ政権の政策について、高率の支持
が得られる半面、期待を充足しない状況が続くと支持率が急低下す
る可能性が高いという訳です。政権発足時の支持率が非常に高かっ
たカーター政権は、イラン人質救出の失敗や人権外交で、支持率が
急低下した事が想起されます。

特にオバマ氏は、当初は、民主党でも、最もリベラルな上院議員と
いう評価を得ていました。ここでいう「最もリベラル」という言葉
は、必ずしも良い意味ではありません。最も左派的な議員という評
価である訳で、日本で言えば、社民党や共産党に相当する投票行動
を議会でとっていたと言う事です。

大統領選挙を勝ち上がっている時には、こういう過去の投票行動は
問題にされませんし、逆に、イラク侵攻に反対した点が評価された
事もありました。また、オバマ氏自身が、そのラディカルな指向を
大統領選挙中には封印したいた事、マスコミもあえてそういう傾向
を取り上げなかった事もありますが、オバマ氏が大統領としてそう
いうカラーを出してきた時には、多くの中間層やオバマ・リパブリ
カンがそっぽを向く可能性はかなり高いのではないかと考えます。

どの評論家も指摘していますが、国民に不評な政策は、政権発足後
100日以内のハニームーン期間に、済ませて置くに越した事はあ
りません。つまり、中高所得層に対する増税です。これには、選挙
期間中にも提起されていましたので、共和党支持層にも一定の支持
があります。しかし、経済が危機的状況の中で、増税をするのは、
大恐慌中に財政均衡を図って失敗したフーバー大統領の二の舞にな
りかねません。また、オバマ政権の経済チームもそういった事はす
る筈もありません。という事は、最初の100日以降に増税を行わざ
るを得ず、それが政権に対する不安要因になる事が考えられます。

更に、イラクやアフガニスタンからの撤退についても、国民の多く
が望んでいる政策ですが、責任を持った撤退を行おうとしても、イ
ラクのマリキ政権もアフガニスタンのカルザイ政権も政権基盤は磐
石とはとても言えない状況であり、下手をすればオバマの在任期間
中にイスラム原理派による政権転覆も起こる可能性も捨て切れませ
ん。そうなった場合にはオバマ政権への批判は高まらざるを得ませ
ん。

また、オバマ政権では、財政赤字対策や新政策財源として、ブッシ
ュ時代に膨張した、内国安全保障予算を削減する事が課題になると
思われます。また、ブッシュ時代に「ならずもの国家」に指定され
ていたイラン、シリア、北朝鮮とも宥和的にアプローチすると思わ
れますが、それを実施した後で、米国内でテロが発生した場合には、
オバマ政権は、窮地に立つ可能性すら考えられるのです。

これらを勘案すれば、オバマ政権は、その期待度の高さと比べ、政
策の自由度はそう高い訳ではなく、特に、オバマ氏がそのラディカ
ル指向を表に出した場合は、政策が裏目に出る可能性が寧ろ高いの
ではないかと懸念する次第です。

唯一、救いのあるのは、オバマ氏が自らをエイブラハム・リンカー
ンになぞらえている事です。リンカーンは自省する事の多かった人
物としても知られています。オバマ氏が、リンカーンのひそみに倣
って、自省を繰り返した上で、後世の批判に耐える政策展開を行う
事を切に希望したいと思います。



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