※写真はロイターより転載
米中、世界経済回復で協力=核問題でも連携確認-初の戦略・経済対話が閉幕
米中両国が経済や安全保障など幅広い分野の課題を討議する初の戦略・経済対
話が28日、2日間の日程を終了した。両国は会議後に共同報道文を発表し、未
曽有の危機に見舞われた世界経済や金融システムの回復で両国の協力が不可欠
だと強調。マクロ経済政策の課題のほか、金融規制や国際金融機関の改革に協
調して取り組む意欲を示した。一方、戦略分野では、イランや北朝鮮の核問題
での緊密な連携を確認、人権対話を継続する方針でも一致した。
経済分野で米側議長を務めたガイトナー財務長官は声明で「米国と中国の強力
な政策が金融システムを崩壊の瀬戸際から救うのに貢献した」との認識を示し
た上で、世界経済回復後にも「持続的かつ均衡した成長をもたらす政策を取る
ことで合意した」と指摘した。
協力の枠組みとして、マクロ経済では、米国は貯蓄率向上や財政赤字の削減な
どを課題として挙げた。中国は内需主導の成長や消費拡大への努力を約束。
また、貿易・投資では保護主義的方策の回避や難航する新多角的貿易交渉(ド
ーハ・ラウンド)の成功に対する意欲を示した。
さらに、国際通貨基金(IMF)などを含む国際金融体制の改革で中国の意見反
映や参画を確実にする目標を打ち出した。
(時事通信 2009/7/30)
米中は、2005年から戦略対話を行ってきました。
最初に実施したのは、外務次官級の米中対話で、これは、Strategic
Dialogue(戦略対話)と呼ばれました。その次に出てきたのが、2006
年に始まった、経済関係次官によるStrategic Economic Dialogue
(戦略経済対話)です。それらを更に発展させたのが今回の外交及び
経済担当閣僚によるStrategic & Economic Dialogue(戦略と経済対
話)です。
マスコミは、中国による米国債保有高が、世界第一位になった事で、
米国が中国に対し膝を屈する様になったという印象を広めています
が、必ずしもそうではありません。中国が外貨準備を積み上げてい
ますが、これは人民元を意図的に安くしている通貨当局の介入の結
果です。米国から見れば、中国の不公正な通貨政策によって恒常的
に大幅な貿易赤字を垂れ流している事になります。中国が米国債を
購入しているのは、その反対給付という面があります。もし、中国
が米国債の購入停止をすれば、米国は即日、対中輸入制限を行うに
違いありません。米国の中国からの輸入の大部分はレアメタルなど
を除けば他国からの輸入により代替可能なものであるからです。そ
ういう意味では、核兵器による相互抑止と同様の均衡が経済面でも
成立していると言えます。米国が一方的に弱みを握られているとい
う解釈は誤りです。
そして、同時に中国から米国への安値輸出は、環境対策や知的所有
権で支払うべき費用を負担していない不公正貿易によって行われて
いるという側面があります。今回、合意はありませんでしたが、環
境対策面の改善を米国が中国に申し入れたのは、世界で第一位と第
二位のCO2排出国であると言う側面以外に、中国に対し環境対策で
国際基準を受け入れる様に米国が促したと言う側面があります。
国連や国際会議の場では、中国は、他のBRICs諸国や発展途上国の
バックアップが得られますが、二ヶ国協議では、その様な外部から
の支援は得られません。
マスコミは米中二ヶ国の世界支配体制という意味でG2と言う言葉
を多用していますが、実際には、今回の対話は、あくまで、米国に
よる、中国の世界的経済秩序への組み込み過程であると言えます。
米国は現状維持勢力であるのに対して、中国は現状打破勢力です。
この現状打破勢力である中国の台頭に対し、まずは、現状維持勢力
の代表である米国が、既存の秩序と体制への協調を指導している場
がこの米中対話であると考えて良いと思われます。であるからこそ、
鳴り物入りで150人を超える大々的な訪問団が米国を訪れた割に成
果が殆どないのです。
中国にとってG2対話は面子を満足させるものではあっても、それ
以外では、必ずしもやって有利な対話とは言えず、逆に米国の政策
決定者に中国の異質さを知らしめる良い機会になるのではないかと
考えます。
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