2009年10月6日火曜日

Chinese New Weapon's Delayed Mass Production 実は量産スピードが鈍い中国製新兵器

※写真は99式戦車。Wikipediaより転載

<軍事パレード>「眠れる獅子ついに目覚める」などと、各国メディアが大々的に報道―香港

2009年10月1日、中国は建国60周年を祝う国慶節を迎えた。この日、北京市の
天安門広場では盛大な祝賀行事が行われ、世界各国のメディアがこのもようを
大々的に報じた。香港紙・中国評論新聞が伝えた。

ロシア紙・モスコフスキー・コムソモーレツは「アジアの眠れる獅子が目を覚
ました」と報道。大規模な祝賀行事は「超大国としての威信を示すのが目的」
と評した。AP通信は「民族復興を示すとともに、中華民族としての誇りを国民
に抱かせることができた」と報道。大多数の海外メディアは軍事パレードや閲
兵式を「壮観」「精彩」「注目の的」などと形容した。

シンガポール華字紙・聯合早報は「今年の市民パレードには指導者4人の肖像
画が新たに加わり、政治的スローガンも増加した」と伝えた。ロイター通信は
ウェブサイト上で国慶節の様子を生中継、CNNもこれに追随した。ドイツの国
際メディア研究所のフォルト教授は中国メディアの取材に対し「今や世界は中
国の時代に突入した」とコメント。AFP通信は「中国は建国60周年関連の映画
やテレビドラマ、舞台を続々と制作するなど、ハリウッドスタイルで祝ってい
る」と伝えている。

(Record China 2009/10/3)


国慶節の軍事パレードは、なかなかの迫力だったとは思いますが、
実際には、本当のピッカピカの最新兵器は出場しなかった様です。
これは、最新の晋級戦略原潜が参加しなかった8月の国際観艦式と
同様の方針であると思われます。

中国の軍事力は強大ですし、西側のマスコミもその様に報道してい
ますが、開発している兵器の数が多い割りには、開発した兵器の実
戦配備は遅れています。例えば、軍事パレードでも目立った99G戦
車ですが、配備数は200輌と言います。日本の基準で言えば、200輌
の戦車の配備は大きな数字ですが、大陸軍国の標準で言えば、それ
程大きな数字ではありません。例えば、中国は59式戦車を、6000輌
配備したと言われています。現在でも5000輌が在籍していると見ら
れていますが、普通に考えれば、配備から40年以上経過し、6種類
の新戦車が開発されているにも係わらず、完全な更新に至っていな
いのは不思議な話です。陸軍では、戦車の他、装甲車でも同様の傾
向が見て取れます。また、この傾向は、海軍でも、顕著であり、同
世代の似たような性格の艦船が複数種類並行して建造されています。
その分、一種類毎の建造数は少なくなっています。

多品種少量生産は、規模の経済が働かない点で調達単価が、どうし
ても上昇します。また、修理や保守と言った整備面でも、種類毎に、
保守用部品を準備しなければならず、兵站に負担をかける点、明ら
かに非効率的であると言えます。

その点、米軍の装備の単純化の度合いと量産の規模の大きさは好対
照と言えます。例えば、戦車は、M1シリーズに統一され、四半世
紀に亘り生産されています。艦艇でも、ニミッツ級空母は半世紀に
亘り生産されましたし、ロサンゼルス級潜水艦も20年以上生産が
続きました。(勿論、同一タイプ内で細かな相違はあります。)

米国に比べ、中国の方が、人件費が安い事は事実であり、兵器開発
や調達が容易且つ安価であろうとは想像できますが、同じレベルの
軍備を整備するコストは、中国人の生活水準向上してくるにつれ、
じょじょに収斂していくと考えられます。国際市場に出ている中国
製のロケットや航空機は西側の同種の製品に比べ安価ではあります
が、既に、半分以上の水準になっている事を考えると、他の中国製
新兵器についても同レベルのコストになっているのではないかと想
像されるのです。

この事について中国が気がついていない訳がありません。開発試作
を頻度高く行う事で、開発力、技術力を向上させながら、大規模な
量産化を行わない事で、米国を安心させると言う中国の高等戦術で
あると言えなくもありません。つまり、本気で米国と対抗する気は
ないというメッセージを送り続けていると言う訳です。

中国の軍事力は、改革開放と歩調を合わせて、陸上兵力の規模の縮
小と兵器の近代化が行われています。毛沢東時代の人民戦争論から
の決別とも言えますが、まだまだ絶対的な兵力は他国と比べ大規模
です。その点で、旧式兵器と同時に、旧世代の軍人も退役させる事
で、じょじょに武器と兵士の近代化を行っているのかも知れません。
そうであれば、兵士を一気に入れ替える事ができないのと同様、兵
器も一気に入れ替える事はないと言う事なのかも知れません。
確かに「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」という言葉は兵器にも
当てはまりそうではあります。


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2009年10月5日月曜日

Mitsubishi, the fifth plane manufacturer 四社寡占の壁を突破したMRJ


※CGはMRJサイトから転載

国産「MRJ」米国の空へ 三菱航空機、海外から100機受注

三菱重工業の子会社、三菱航空機は2日、米航空会社2社から開発中の国産初
の小型ジェット機「MRJ」を100機受注したと発表した。発注したのは、
米大手地域航空会社のトランス・ステーツ・ホールディングス(TSH、米ミ
ズーリ州セントルイス)。2014年以降に5~6年で納入する計画だ。“日
の丸”ジェットと期待されるMRJは、航空不況の逆風で、受注はこれまで全
日本空輸からの25機にとどまっていた。海外航空会社から大量受注を獲得し
たことで、競争が激化している小型航空機市場での受注拡大に弾みがつきそうだ。

会見した三菱航空機の江川豪雄(ひでお)社長は「100機もの受注につなが
り、喜ばしい」と述べた。三菱重工の大宮英明社長も「MRJの環境性能や経
済性が理解してもらえた結果」とのコメントを発表した。

受注額については、競争上の理由で明らかにしなかった。

同席したTSHのリチャード・リーチ社長は「正直、厳しい経済環境下だが、
高い技術や優れた運航性能、乗客の快適さなどをみて決定した」と、選定理由
を説明した。

MRJには70席、90席、100席のタイプがあるが、どの機種にするかは
今後の経済情勢などを見ながら判断するという。

TSHは、傘下にトランス・ステーツ・エアラインとゴージェット・エアライ
ンの2社を持ち、米大手航空会社のユナイテッド航空とUSエアウェイズから、
地方都市への路線の運航を請け負っている。米国内の50都市を結び、現在は、
ブラジルのエンブラエルの機材を使用している。

MRJは、「YS-11」以来40年ぶりの日本独自開発となる小型旅客機で、
価格は1機30~40億円程度。客席数が70~90席程度のリージョナルジ
ェットでは、エンブラエルとカナダのボンバルディアが“2強”の地位にある
ほか、中国やロシアの航空機メーカーも参入し、存在感を高めつつある。

MRJの開発には、1500億円以上が投じられたとされるが、新規参入であ
ることに加え、航空不況も重なり、受注活動は苦戦を強いられていた。また設
計変更に伴い初号機の納入が14年1~3月に当初計画から最大3カ月遅れる
見通しになっている。

不況下でも、高効率のリージョナルジェットへの潜在需要は高いとされ、初の
海外受注を契機にさらなる攻勢をかけていく考えだ。

(フジサンケイ ビジネスアイ 2009/10/3)


中型から大型旅客機については、エアバスとボーイングの二強寡占
体制。リージョナル機から小型旅客機については、エンブラエルと
ボンバルディアの事実上の寡占体制が続いていた航空業界ですが、
今回のMRJの大量受注により、その体制の一角に風穴が開けられ
た言える大きなニュースであると思われます。

AP電によれば、TSHは過去5年に亘りMRJの顧客アドバイザ
ーを勤めていたという事ですから、TSHをアドバイザーに引き込
んだ事そのものが、今回の発注に繋がっていると言えるかも知れま
せん。

記事にもある通りTSHは、トランス・ステーツ・エアラインとゴ
ージェット・エアラインの2社を持ち、米大手航空会社のユナイテ
ッド航空とUSエアウェイズから、地方都市への路線、ユナイテッ
ド・エクスプレスとUSエアウェイズ・エクスプレスの運航を請け
負っています。会社規模は、リージョナル航空として全米10位、
独立系のオペレータとしては、全米五位と、リージョナル航空とし
ては中堅の企業規模と言えます。既存の機体として、MRJがライ
バルとするエンブラエルERJ145を29機とCRJ700を
22機保有しています。

この手のオペレータは、大手から運航を請け負っているが故に、運
航請負契約の更新、新規獲得を目指し熾烈な競争を行っています。
今回のTSHの決定も2014年に予定されるユナイテッド・エクスプ
レスとの契約更新を睨んだものであり、今回の取引で、TSHが、
確定発注50機に加え50機のオプション契約を結んでいる処から
も、MRJがTSHの企業規模を倍に出来る高いポテンシャルと経
済性を持っているとTSHが考えている事が判ります。

今から思えば、9月に発表された、三点の変更とそれによる、初号
機納入の三ヶ月延期は、TSHの要求を三菱が受け入れた事による
ものであったと推測できます。勿論、これらの変更点は米国のリー
ジョナル航空の現実を見据えた競争力向上の為に必須のものであっ
た事は言うまでもありません。

客室高の拡大とハットビンの容量増加により、リージョナル機で一
番不足している客室持込貨物のハンドリングが改善する事で、キャ
ビンクルーの労働効率が著しく改善しますし、前方貨物室を排し、
後部に貨物室を集中する事で貨物の取扱は、大幅に改善し、荷捌き
要員の削減も期待できます。主翼の素材を炭素複合材からアルミ合
金に変更する事で、ファミリー機体毎に主翼を変更可能とする事で、
機種拡大が図れると共に機種毎の主翼設計の最適化を図る事ができ
ます。

これらの改善点に加え、元々MRJが特徴としていたGTF(ギア
ード・ターボ・ファン)の高い燃費効率が、MRJを、米国のリー
ジョナル航空業界で高い競争力を持つ機体にしたと言えます。

今回の取引で、TSHは、一機当り30億円(3000万ドル)に近い価格
で契約したと思われます。(恐らく三菱飛行機側では利益は出てい
ない筈です。) この価格であれば、現時点で計画されている機体
でこれ程の経済性を持っている機体はないと言えます。対抗しよう
とした場合は、ボンバルディアは、Cシリーズで対抗するには短胴
型を開発しなければなりませんが、70席や90席用としては贅沢な作
りです。CRJで対抗する場合は、胴体の改設計とGTF対応が必
要となります。エンブラエルの場合も同様です。

これらを考え合わせるとMRJは5年程度はライバル機に先んじた
と言えます。しかしながら、このリードタイムを有効に使えるかど
うかは、今後のMRJの開発を如何にスムースに進められるかにか
かっています。もし、大きな手戻りなく機体開発を進められた場合
三菱の名は、世界の大手航空機製造会社の一角に刻み込まれる事に
なります。まさにこれからが正念場です。日本の航空機産業離陸の
為にその成功を祈りたいと思います。


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2009年10月1日木曜日

Kamei Sizuka, an amateur Minister for Financial Services. 金融がわからない亀井を金融担当大臣にした愚 

※写真は産経新聞サイトから転載

亀井金融相「金融機関の負担を公的資金で支援」 モラトリアム法案で

亀井静香金融相は1日、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済を3年
程度猶予する「モラトリアム法案」について、「貸し手も倒れるようなことは
絶対にあってはいけない」と述べ、公的資金で金融機関の負担を支援する意向
を表明した。地域金融機関を対象としている改正金融機能強化法の活用も視野
に、金利や元本の補てん分を穴埋めする意向だ。

亀井金融相は記者団に対し、「信金信組など経営体力の弱い金融機関が、地域
の中小企業に支援できるかという問題がある」と話し、返済猶予期間中の利子
補給や、借り手が経営破たんした場合の元本保証を検討する方針を示した。こ
れにより「地方の中小金融機関が経営難に陥ることは絶対にない」とした。

改正金融機能強化法は、中小企業向けの貸し渋り、貸しはがし対策として昨年
末に施行された。政府保証のついた12兆円の公的資金枠があり、すでに北洋
銀行など7つの金融機関に合計で約230億円が注入されている。

ただ現行の法制度で「モラトリアム法案」に流用できるかどうかは不透明で、
与党3党の検討チームと金融庁で詳細を詰める。法案の詳細は9日までにまと
め、臨時国会での成立を目指す。

(産経新聞 2009/10/01)


亀井静香がモラトリアムを行う上で、当初は、政府による金融機関
に対する負担軽減策を全く考えていなかったのは明らかです。
「中小企業に対する貸し渋り、貸し剥がしを許さない」が一転して
金融機関の負担を公的資金で支援するなどという生温い、しかも不
充分な対策を急いで取り繕っているのは、モラトリアム発言が金融
機関株に対する売り浴びせを呼び、日本株全体の下落を招いたから
に他なりません。

もともと資本は臆病な存在です。モラトリアム→金融機関の収益毀
損→金融機関の収益予測の悪化→金融機関に対する投資引き上げ→
金融機関の株価下落→日本株全体の株価悪化
という連想が働くのは誠に自然な成り行きと言えます。

やらずもがなの前原経産相の日本航空再建問題と言い、通常の支援
をやっていけば問題ない事を、受けを狙って大げさに騒ぎ立てたの
が、尾を引いている構図は両者に共通しているのです。但し、事が
一企業に留まらない点で亀井静香の罪はより重いと言えます。

亀井氏が、銀行を叩けば良いと判断したのは、バブル崩壊とその後
の失われた10年の経験に基づくものでしょうが、少なく共、今回
のリーマンショックやサブプライム問題を契機とした世界同時恐慌
に関して日本の金融機関は、強欲の罪に問われる点はありません。
また、影響がないとは言えませんが、海外に対する投資を減少させ
ていた点で寧ろ直接的な損失は海外の金融機関より余程少なく、上
手く立ち回っているとすら言えます。

バブルからの回復に失われた10年と言われる程に時間を要したのは、
デフレスパイラルの中で、金融機関の体力が失われていったからに
他なりません。逆に言えば、金融機関の体力さえあれば、デフレス
パイラルを食い止める事が可能なのです。今回の不況では、日本の
金融機関の体力は幸いにしてそれ程、損なわれていません。
その状況をぶち壊しにするのが、金融機関に負担を押し付ける形で
行うモラトリアムなのです。モラトリアムを単純に実行すれば金融
機関は貸付による収益を全く得られない事になってしまい営業自体
が不可能となってしまいます。これが金融機関の体力を損なうのは
誰の目にも明らかです。金融機関の体力が損なわれれば、金融機関
が新規に融資を行う事ができなくなってしまいます。
つまり、当初の亀井モラトリアム案は、中小企業対策になるどころ
か日本を再度のデフレスパイラルに叩き込む最悪の政策になりかね
ないものだったのです。

金融庁は銀行の健全性を守るのが役目ですから、その様な無謀な試
みを許す筈もありません。誰が人柱になったのかはわかりませんが、
亀井大臣が遅ればせながらも当初の案を放棄したのは誠に幸いな事
と言えます。
金融機関の負担を公的資金で支援するなどと言った中途半端な事を
いうのではなく、政府が政策としてモラトリアムを実行したいので
あれば、金融機関には影響を及ぼさないよう政府が借り手に変わっ
て金融機関に全ての利息を支払うべきなのです。それに満たない支
援内容であれば、市場は、再度金融機関株を売り浴びせ、民主党政
権を揺さぶるに違いない事を予言しておきたいと思います。


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2009年9月30日水曜日

NASA realy consider Japan's HTV as ISS logistic alternative ? NASAは本当にHTVを購入するか?


先日のHTVの打上げとISS(国際宇宙ステーション)とのバーシ
ング成功は、本当に素晴らしいものでした。
HTVの現在までのミッション達成率は、ほぼ100%であり、日本の
高い技術力を立証したものと言えます。

シャトル退役後、COTSを除いて、共通結合機構(CBM)を用いた
ISSへの補給能力を持つのはHTVのみとなります。ISSへの
補給は、欧州のATVやロシアのプログレス補給機を用いても行え
ますが、ISSへ実験装置を補給する国際標準実験ラック (ISPR)
を使用できるのは、CBMを持つHTVのみと言う事になります。
その意味からすれば、日本のHTVは計らずもISS計画全体の中
で非常に価値のある位置を占めたと言えます。
このブログでも、米国のCOTS計画の如何によっては、NASA
がHTVを購入する可能性があるのではと考えていました。

それでは、NASAはいつ頃、HTVが本当に必要になるのでしょ
うか? 現時点で入手できる情報を元に具体的な実現可能性を考え
てみました。まず、この手の宇宙機は、開発・製造にかなりのリー
ドタイムが必要になります。例え、製造能力や宇宙上げ能力に余裕
があっても、あまりにリードタイムが短いと実際には、NASAの
ニーズに合わない事もありえます。

上のタイムチャートは、ISSの補給機関連のスケジュールを書い
たものですが、確かに、米国の有人宇宙飛行能力については、現在
の予測では7年に及ぶ無能力期間が発生しつつあり、大変大きな問
題がありますが、物資補給については、意外にギャップ期間が短く、
更にシャトル退役をISSの完成年度である2011年に一年延長すれ
ば、余程、COTSの開発が遅延しない限り、NASAがHTVを
必要とする事はないのではないかというのが結論になります。

ちなみにドラゴン補給機は、2010年に初飛行の予定であり、シグナ
ス補給機は、2011年に初飛行を予定していますが、各々一年程度の
遅れであれば、シャトル退役を半年延期できれば、ギャップはカバ
ーできます。両者の開発が2年以上延期した場合は、2012年分の代
替輸送手段が必要になりますが、この需要を賄う為には、恐らく、
現時点でNASAから発注がないと、ロケットとHTVの製造は難
しいものと思われます。

ドラゴン補給機にせよ、シグナス補給機にせよ、両社ともロケット
エンジンには実績のあるものを使用していますが、打上げロケット
そのものは新規開発の機体となります。その意味では、リスクの高
いプロジェクトと言えますが、NASAは正にその革新をCOTS
プロジェクトに賭けているといえなくもありません。

現状の開発状況は、試験機の飛行までにまだ時間がかかる様子です
が、NASAは、進捗に自信を持っているようで、COTSを更に
ISSへの乗員往還サービスにまで拡大する様子です。SpaceX社の
ドラゴン補給機はもともと有人バージョンを念頭に開発されていま
すので、その点では、実用化に一番近い距離にいると言えます。
また、シグナス補給機も、元々与圧区画を持つ点ではHTVを有人
化するのと同程度の負荷で、有人機開発が可能と見込まれます。

以前にNASDAの先端ミッション研究センターでオープンアーキテク
チャーの有人宇宙機「ふじ」が構想され、HTVには、そのアイデ
アの多くが、取り入れられたと言われていますが、宇宙機の設計コ
ンセプトが似ているシグナス補給機とHTVで、共同コンセプトの、
有人宇宙機対応(緊急脱出用ロケットと有人カプセル)を開発するの
も面白いのではないかと考える次第です。


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2009年9月29日火曜日

Korea hurry to develop bigger Rocket. 本格打上げロケットKSLV-IIの開発を急ぐ韓国


※写真は、聨合ニュースより転載

韓国型ロケット開発、2017年目標に来年本格着手

韓国航空宇宙研究院は29日、1.5トン級の実用衛星を搭載し打ち上げる韓
国型ロケット(KSLV-II)の開発に向けた予算が初めて、来年度教育科
学技術部予算案に盛り込まれたと明らかにした。
これでロシアと共同開発した韓国初の人工衛星搭載ロケット「羅老(ナロ)号」
(KSLV-I)に続き、純国産技術で製作する韓国型ロケットの開発事業が
本軌道に乗ることになる。李柱鎮(イ・ジュジン)院長は、「純粋な国産技術
による宇宙ロケットの開発は国力と総体的な科学技術力を象徴する。国の位置
付けと信頼度を向上させ、国民の誇りを高めるものと期待している」と述べた。

研究院は、1.5トン級実用衛星を高度600~800キロメートルの太陽同
期軌道に乗せる韓国型ロケットの開発と打ち上げ事業を、来年から2019年
にかけ進める計画だ。総事業予算は1兆5449億ウォン(約1200億円)
で、事業の主な内容は、ロケットのシステム設計、製作、試験をはじめ▼高推
進力の液体エンジン開発▼ロケット試験および打ち上げ関連施設・装備の開発
と構築▼ロケットの体系整備と運用能力の確保▼ロケットの飛行試験と実用衛
星打ち上げ――など。

事業の中核となる韓国型ロケットの自力開発目標は2017年。この年までに
大型液体推進機関と構造軽量化技術を確保し、ロケット開発に必要な基盤施設
の構築を済ませる必要がある。発射台システムの変更と実用化計画も同年まで
に進める。

全長約50メートル、直径約3メートルの韓国型ロケットは、2段階構造の羅
老号とは異なる3段階構造で、羅老号の完結版ともいえる。

安保・戦略面では、衛星の自力打ち上げ能力を確保することで、国の宇宙開発
計画を安定的・独自的に遂行し、ロケット技術の自主権確立に寄与すると期待
される。また、技術・産業的にも、先端技術と伝統技術の複合体である宇宙ロ
ケット開発技術の確保により、国内関連産業への技術波及効果向上が予想され
る。国際・外交的には、国の経済規模にふさわしい水準の宇宙開発参加、国際
的地位の強化に向けた適正宇宙技術の保有で、韓国の宇宙開発力を国際的に認
められるとともに、国際共同研究開発事業への参加機会が拡大されるものと見
込まれる。

(聨合ニュース 2009/9/29)


羅老号(KSLV-I)による100kg級の科学衛星の打上げに失敗し
た韓国ですが、引き続き、ロシアからの協力を得ながら、本格的な
打上げ用ロケットであるKSLV-IIの開発を予定通り実施する
計画であるようです。

「韓国型」とか、「純国産技術」とかと言った言葉があるので、ロ
シアからの技術導入を止めて、従来計画と全く異なる、別のロケッ
トを開発する事を意図しているのではと言う意見もあろうかと思い
ますが、残念ながら、一からこの規模のロケットを開発をするには、
時間が少なすぎます。

今年から10年で1.5トンの実用衛星を打ち上げるのであれば、羅老
号ではキックモータのレベルに留まった二段目のエンジンを開発す
るのが精一杯という処です。韓国には、この規模のエンジンの実験
場もありませんから、これも建造する必要があります。

二段目用のエンジンと言っても馬鹿にはできません。羅老号では長
さ2.4m、直径1mであったのに対し、KSLV-II用の二段目は長
さが15m程度、直径3mになり、推力も300kNと日本の二段目用エンジ
ンLE-5Bの2倍の推力を発生させる液体燃料エンジンの開発が予定さ
れているようです。一段目にはエンジンをRD151からRD191へ改良し
たアンガラロケット用のCRMが羅老号と同様に使われると思われ
ます。日本のLE-5も当初H-I用に開発された際には、開発完了まで
10年を要していますので韓国が同程度の時間を要してもおかしくは
ありません。

ロシアのアンガラロケットは2010年からは自国内での本格的な打上
げが予定されていますので、KSLV-II用には十分枯れたCRM
が提供されると思われますが、羅老号がフェアリングで失敗した様
に部品点数が飛行機より一桁多く、且つ、信頼性を維持しつつ軽量
化目標も達成しなければならないロケット開発は、多難が予想され
ます。また、KSLV-Iの方もあと一回の打上げが予定されてい
ますが、一号機の失敗を受けた追加発射も行う必要が出てきます。
また、射場運用に8年近い空白を作る事も考え難いので、KARI
(韓国航空宇宙研究院)は、羅老号やKSLV-IIの構成要素の検
証用に更なる追加打上げを行う可能性もありえます。

実際の所、射場にも制約がある韓国が1200億円の巨費を投じて今更
の様に、このレベルの衛星打上げロケットの開発を行う事は、経済
合理性を考えると不要とも思えます
。韓国がこれから開発する液体
燃料エンジンはミサイルへの転用には不適ですし、打上げロケット
であればロシアを始めインド、ブラジル、米国とこのクラスの開発
は目白押しで、韓国が採算の取れる市場シェアが取れるという見方
をする人は多くないからです。それよりも寧ろ輸出実績もある衛星
の製作、製造にリソースを投入するのが賢明とも思えるのです。

それでも、韓国がロケット開発を行うのであれば、本当の純国産技
術を身につける為には、いずれ経験しなければならないビッグプロ
ジェクトと考えるべきなのかも知れません。


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2009年9月28日月曜日

Mr.Tanigaki will be 2nd Non-PM President of the LDP? 谷垣禎一は、首相になれなかった二人目の自民党総裁になるか?


<自民総裁選>谷垣氏が新総裁に 2氏を圧倒

麻生太郎前首相の後継を決める自民党総裁選は28日投開票され、谷垣禎一元
財務相(64)が党所属国会議員票と地方票合せて300票を獲得し党両院議
員総会を経て第24代総裁に選出された。谷垣氏の得票は国会議員票(199
票)のうち120票、地方票(300票)のうち180票といずれも過半数を
占めた。

河野太郎元副法相(46)は計144票(国会議員票35票、地方票109票)。
西村康稔前外務政務官(46)は計54票(国会議員票43票、地方票11票)
だった。無効票は国会議員票で1票。

河野、西村両氏は世代交代や派閥解消などを訴えたが、衆院選惨敗を受け挙党
体制構築を強調した谷垣氏が2氏を圧倒した。

谷垣氏は両院議員総会で「もう一回我が党が国民の信頼を取り戻し、政権復帰
できるように全身全霊を傾けて職務にあたりたい」とあいさつした。谷垣氏は
今後党役員人事に着手する。

谷垣氏は衆院京都5区選出で当選10回。財務相、党政調会長などを歴任。
06年9月の総裁選に出馬し「消費税率10%」による財政再建などを訴えた
が、当選した安倍晋三元首相、麻生前首相に次ぐ3位だった。

(毎日新聞 2009/9/28)


前回エントリーを書いてから10日になりますので、ペースを取り戻
すまで、リハビリを兼ねて少し軽めの話題に軽めのコメントしたい
と思います。

今回の総裁選は、自民党内の実力者が衆議院選挙の大敗北の責任を
とって(?)参加しなかった事もあり、全く盛り上がりの無い小粒な
総裁戦になってしまいました。自民党の総裁は、任期が3年で、再
選が認められていますので、谷垣氏の場合は、4年後になるであろ
う次回の衆議院選挙に勝利できれば、二年間は総理大臣の座を占め
る可能性は残っています。

谷垣氏は、鳩山首相と思想的には、似たようなハト派のアジア主義
者ですから、今後国会で一体、野党党首としてどの様な論戦を行っ
ていくつもりなのか、全く判らないというのが谷垣総裁に対する私
の感想です。思わず、鳩山首相に全面的に賛成ですと言い出すので
はないかと思われる程です。

鳩山内閣の将来を予測するのは現時点では困難ですが、今でも亀井
氏や福島氏の突出発言で閣内不一致が話題に上っている様に、選挙
の大勝と政権奪取に酔っている様な面がありますが、自民党は落ち
る処まで落ちただけに、敵失によって、今後、得点を重ねる場面も
出てくると思われます。ただ、そうなった時に、それを追い風にし
て例えば、参議院選挙で大勝するかと言われれば、谷垣氏を大将に
頂いて自民党が疾駆する姿は想像しがたいと言わざるを得ないのです。

ただ一つ言える事は、今後数年に亘り、靖国神社を訪れる与野党党
首の姿はないと言う事であり、これは、自民党総裁が河野氏であっ
ても同じであったろうという事であり、私の様な保守派にとっては
冬の時代が相当に長く続く事を予見させるものでもあります。

誠に不謹慎ですが「売家と唐様で書く三代目」という言葉に如何に
も谷垣氏が良くお似合いと感じましたが、さて、谷垣禎一氏は、内
閣総理大臣になれるのでしょうか?


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2009年9月18日金曜日

Congratulation HTV!! 100% mission success


※ドッキングするHTV。JAXAサイトから転載

<無人補給機>HTVが国際宇宙ステーションとドッキング

国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ日本の無人補給機「HTV」が
18日午前7時26分、上空約400キロを周回するISSとドッキングした。
電気、通信系を接続後の19日未明には、ISSに滞在中の宇宙飛行士が
HTV内に入る。ISSに日本の宇宙船がドッキングするのは初めて。

HTVは11日未明、新開発の国産大型ロケット「H2B」1号機に搭載され、
種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられた。ISSを追いかけるよ
うに地球の周りを飛び、17日、ISSのそばに到達した。

その後、ISSの下約500メートルの位置に潜り込むように移動し、ISS
に取り付けられた鏡にレーザー光を反射させて位置確認をしながら、徐々に接
近した。

18日午前4時51分には、ISSのロボットアームがHTVをつかんだ。ア
ームはゆっくり動き、同7時26分ごろ、HTVをISSに結合させた。

HTVは衣類、食料、ISS用の観測機器など4.5トンを積載している。
ISSに運び込まれた後、11月初旬にISS内の廃棄物などを積んで大気圏
に再突入し、燃え尽きる。【奥野敦史】

(毎日新聞 2009/9/18)


9月10日にH-IIB一号機によって打ち上げられた無人補給機
HTV-1号機が、今朝無事ISS国際宇宙ステーションとドッキ
ングしました。今回のミッションでは、打上げから、ドッキングま
で全てが殆どオンタイムに行われ、打上げロケットもペイロードも
一号機であったにも係わらず、大きなトラブルもないと言う文字通
りの、100%の成功であり、JAXAの高い技術と日本のロケッ
ト、宇宙機製造技術の高さを示したと言えます。

ISSへの無人輸送機による補給は既にロシアのプログレス宇宙機
やESAのATV宇宙機によっても実施されており、珍しいもので
はありません。

しかし、HTVが今回行った、ロボットアームを使用したドッキン
グ方法は、同じハーモニーの共通結合機構(CBM)にドッキングす
る米国で開発中のドラゴン宇宙機やキグナス宇宙機にも適用されま
す。それ故に、同じ方法の第一号であるHTVが成功するかどうか、
について、NASAの今回のHTVミッションに対する注目度が高
かった様に思われます。

スペースシャトルの退役は、当初予定の2010年から2011年に延期さ
れそうですが、その一方で、ドラゴン宇宙機やキグナス宇宙機の打
上げも通例通り、遅延しており、今の処、いつになったら実現する
か目処がたっていません。(最速で2010年という話もありますが、
現状では厳しそうです。) それ故に、NASAではJAXAに、
H2BやHTVの製造能力や打上げ能力を照会しており、H2B-
HTVの年間打上げ回数を現状の倍の二回にできる事を確認してい
ます。

今回は、HTVは初回という事もあり、ISSへの接近とランデブ
ーにじれったくなる程のステップを設け、それを確実にクリアして
いく事で、ISSへのランデブーを成功させましたが、一見簡単な
様に見えて、この軌道上の目標物へのアプローチ、ランデブーの技
術は高度であり且つ重要です。過去に、ソ連-ロシアのミール宇宙
ステーションは、プログレス補給機がランデブーに失敗し、ステー
ションに衝突した事が原因になって放棄に至っています。それだけ
に、安全なステーションへの接近は、両者が地球軌道上を毎秒7.7km
という高速で移動中であるだけに安全への配慮が欠かせないと言え
ます。

日本のランデブー技術は、技術試験衛星VII型(ETS-VII)で確立し
た事になっています。しかし、その後に、ランデブー実験を行って
おらず、また、規模も大きく異なる事からHTVへの実装には、種
々の問題があった筈です。今回、その困難を全く感じさせる事なく、
非常に安定した機動で目標を達成できた事で、例えば、将来の日本
独自のステーション建設といった明日に繋がる技術と経験を今回の
ミッションで得る事ができたと思われるのです。


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2009年9月17日木曜日

真性サヨクを法相に選んだ鳩山由紀夫のセンス


※写真は民主党サイトから転載

千葉法相 死刑執行に慎重、人権救済機関に意欲

千葉景子法相は17日未明の就任記者会見で、思想・言論の自由の制限につな
がると指摘される人権侵害救済機関について「国際的にみても(設置が)当た
り前の機関だ。実現に向けて早急に取り組みたい」と述べ、内閣府の外局とし
て設置する考えを示した。

自民党政権での人権擁護法案は、救済機関を法務省の外局としていたが、「言
論の自由を奪う」などとする党内の強い反発から提出を見送った。民主党案は、
内閣府の外局とすることで官邸直結とし、救済機関の権限・影響力の強化が図
られている。

また、千葉氏は、死刑執行について「死刑は人の命にかかわるので法相の職責
を踏まえて慎重に取り扱う」と慎重な姿勢を示した。死刑制度の存廃について
は「広い国民的議論を踏まえて道を見いだしたい」と述べた。

(産経新聞)

死刑執行、慎重に扱う=千葉景子法相

千葉景子法相 死刑執行については、人の命ということなので、慎重に取り扱
いたい。裁判員制度が導入され、多くの皆さんの深い関心で、できれば国民的
議論を踏まえ、私たちの行く道を探したい。法相に指揮権があることは認識し
ている。ただ、個別事件でどのような権限があるのか。国民の視点に立って検
察の暴走を防ぐための指揮権(ということ)を踏まえ対処する。

(時事通信 2009/09/17)


鳩山首相については、元々自民党だし実はリベラルであってサヨク
ではないよ、そんなに大きな変更はしないよなどという話がありま
したが、この法相の人選を見る限り、日本を左旋回させる意欲がな
いとはとても言えない様に思います。
今回法相に選ばれた千葉景子氏は、まさに真性サヨクそのものとし
か言い様がありませんし、司法の権力を使ってこの国の形を変える
事を意図しているとしか言い様が無い様に思われてならないのです。

法相就任のインタビューの中でも、
人権侵害救済機関の早期成立=人権擁護法案の早期成立を最初にあ
げ、死刑執行に対しては慎重な対処を言明した他、小沢、鳩山の政
治献金疑惑に関連して検察の「暴走」に対する法相指揮権の発動を
言外に匂わせるなど、とても、リベラルな法務大臣の枠に収まると
も思えない発言に終始したのです。更に、それらに加え、国際的な
左翼人権運動との連携を念頭に置いた、我が国が批准を保留中のラ
ディカルな人権規約についても早期批准に積極的な様子を示したの
です。その点では、そのラディカルさが赤裸々になったと言える様
に思うのです。

そして、この様な、過激派の人権屋を法務大臣に任命した鳩山由紀
夫氏の政治的なセンスの無さに愕然とする思いと共に、自民党内閣
であれば、政治資金規制法違反事件に際して、法相が指揮権発動を
匂わせたなら、よってたかって倒閣に追い込んだであろうマスコミ
が、殆どスルーともいえる態度に終始した事にも大政翼賛会的なマ
スコミ人の堕落を感じざるをえないのです。

なお、千葉景子氏の華麗な略歴は以下の通りです。(Wikipediaより抜粋)

1982年(昭和57年)弁護士登録。
弁護士としては、厚木基地爆音訴訟、富士見産婦人科事件、を担当。
1986年(昭和61年)第14回参議院議員通常選挙に社会党公認で神奈
川選挙区から立候補し初当選。以後、当選4回。
社会党副書記長、社会民主党副党首を歴任。
1997年(平成9年)1月に社民党を離党し、民主党に入党。
2007年(平成19年)8月、党総務委員長に就任。

1989年「在日韓国人政治犯釈放の要望書」に署名。
2000年4月福島瑞穂らと共同で戦時性的強制被害者問題の解決の促
進に関する法律案を提出。
002年5月、衆院第二議員会館で開催された「元『慰安婦』の補償と
名誉回復のために! 決起集会」に参加し、戦時性的強制被害者問
題の解決の促進に関する法律案の成立を訴えた。
2004年4月7日、入国管理局の不法滞在外国人通報システムを批判。
2006年11月、法務省入国管理局が難民不認定処分と国外退去処分を
下したイラン人に対して、処分の取り消しを求める運動の呼びかけ
人になる。
2007年2月21日、マイク・ホンダがアメリカ合衆国下院121号決議を
成立させる動きに連動し、米議会の公聴会で慰安婦を名乗り証言し
た李容洙を招いて開催した集会に参加。
2008年4月16日に開催された民団の外国人参政権推進集会に賛同。



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2009年9月10日木曜日

オバマ政権は月探査に引導を渡すのか?


米専門委が火星有人探査への推進提言、月探査は後退

米航空宇宙局(NASA)による有人宇宙飛行計画の審査を進めてきたホワイ
トハウスの専門委員会は8日、2020年までに月探査を再開する計画を見直
し、火星探査に向けた取り組みを進めるよう提言する報告書をまとめた。
NASAが進める月探査計画は、予算総額400億ドル(約3兆7000億円)
のうち、既に77億ドルを投じて新型のロケットや乗組員の移動用カプセルの
開発を進めている。
その一方で、NASAは「ジェネレーション・マーズ」という火星探査構想を
策定。今後30年にわたって、火星への有人探査に向けた準備的なミッション
を重ねながら、技術開発を進めていく計画という。
専門委員会の委員を務めた元宇宙飛行士のリーロイ・チャオ氏は、インタビュ
ーに対し、今は火星探査の実現時期を設定しないとした上で、「まずは、今あ
る予算で今後数年間のうちに何ができるか。いつ火星へ行けるのかが分かるの
は、その次の予算計画になるだろう」と話した。
さらに報告書は、国際宇宙ステーション(ISS)の運用を5年延長し、
2020年までとすることなども選択肢として提案している。

(ロイター 2009/9/10)


今回の専門家委員会の結果を読むと、現在のNASAが抱える問題
が色々と判ってきます。

月探査を行う為の現在のコンステレーション計画は、2010年のシャ
トル退役と2015年の国際宇宙ステーション(ISS)の運用停止を前
提にしていますが、ISSを完成させる為には、シャトルは2011年
まで運用する必要があります。ISSに至っては、完成に20年以上
の歳月と1500億ドルの巨費を投じた人類最大のプロジェクトの成果
を、完成後僅か5年で放棄するものであり、とても許容できるもの
ではないというのが委員会の現状認識になっています。

従って、現状のNASAの予算では、月探査は不可能で、年間30億
ドル程度の追加支出が必要であるというのが委員会の結論となって
います。

委員会の議論は、これを踏まえて、以下の様な諸点を取り上げてお
り全体としては、非常に合理的な議論が行われていると思います。

その中で、コンステレーション計画で最初の目標とされていた月探
査に関しては、その必要性に関して力点がおかれず、代替案として
ラグランジュ点での有人探査や、地球近傍小惑星探査が「柔軟な探
査順路設定」として新たに提案されています。
そして、アレス1の開発に代えて、商業有人打上げサービスの有効
利用が提起されています。(AP通信の報道では、ロシアが提案し
ている宇宙飛行士一人当り50億円のサービスに対し、商業有人打上
げでは一人20億円程度での打上げが可能との事です。)

なお、専門家委員会の提案のサマリーは以下の通りです。

●正しい目標と正しいサイズの組織
NASAの予算は、その目標に見合ったものにする必要がある。
更に、NASAには、国家的重要性のある施設を維持するだけでな
く組織とインフラを形成する能力が与えられなければならない。

●国際協力
米国は、人類による宇宙探査の分野で、全く新しい国際協力をリー
ドする事ができる。各国の積極的な協力があれば、より多くのリソ
ースを投入する事が可能になり、潜在的に国際関係を改善する事に
なる。
(⇒中国、ロシアとの国際協力を想定?)

●短期的なシャトル計画
シャトルは、安全で慎重な運行がなされなければならない。その上
で運行計画は2011会計年度まで延長される事になるだろう。予算上
もこの手当てが行われるべきである。

●有人宇宙船打上げ能力の欠如期間
現在の状況では、米国が宇宙飛行士を打ち上げる能力がなくなる期
間は少なく共7年に及ぶ可能性がある。委員会はこれを6年以下に
縮める新しい手段を見つける事ができなかった。この期間を大幅に
縮めるにはシャトルの延命が必要である。

●国際宇宙ステーションの延長
ISSの延命によって、米国とパートナー各国の投資回収は著しい
改善が見込まれる。ISSの延命を行わなければ、将来の国際宇宙
協力での米国の指導力は大幅に減退する事になろう。
(⇒2020年までの延命を提案)

●大重量打上げ能力
地球低軌道に大重量を打ち上げる能力は、地球外へ重量物を投射す
る能力を含め、宇宙探査に有益であり、宇宙での国家安全保障や、
科学分野でも有効と思われる。
この大重量打上げ能力の実現には、アーレスロケットや、その派生
型、シャトル改良型、EELV派生型が考えられるが、おのおのに
利点と欠点がある。

●地球低軌道への商業有人打上げ
地球低軌道へ商業的に乗組員を打上げる事は、手の届く範囲にある
と言える。リスクは残るとはいえ、政府がおこなうより少ない初期
投資と生涯費用で、より早期にそれを実現できる可能性がある。
適切なインセンティブ付きの新しい競争が米国の全ての航空宇宙会
社に向かって開かれる。これにより、NASAは、地球軌道外の有
人探査を含む、より挑戦的な目標に専念できる事になる。

●宇宙探査と宇宙商業利用の為の技術開発
探査の前進させる為には、上手く設計され、適切な開発予算が付け
られた宇宙技術開発が重要である。必要となる技術が前もって開発
されているならば、探査戦略はより素早く、より経済的に遂行でき
る事になる。この投資は、無人探査や、米国の商業宇宙産業、政府
のユーザーにとっても有益となる。

●火星への順路
火星は人類の宇宙探査での究極的な目標である。しかしながら、そ
れは最初の目標として適当であるとは言えない。「最初に月を訪問」
する事も「柔軟な探査順路設定」を行う事も探査戦略としては有効
である。両戦略は排他的なものではない。火星への飛行の前に、自
由空間での経験を蓄積しても良いし、月の表面探査の経験を積む事
にも意味がある。

●有人宇宙計画のオプション
委員会は有人宇宙計画について5つの代替案を作成した。その結果
以下の所見を得た。
・2010会計年度の予算では、地球低軌道を超えた有人探査は実行で
きない。
・意味のある有人探査を行うには、全体資源としては2010会計年度
予算対比で年間30億ドル程度を追加したより圧迫度の少ない予算が
必要である。
・増加された予算レベルでは、「最初に月を訪問」する事も「柔軟
な探査順路設定」も共に第一着手が行う事ができ、理に適ったタイ
ムフレームで結果を出す事が可能と見込まれる。


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2009年9月9日水曜日

MI2:消えた貨物船はやはりロシアのミサイルを積んでいた!?

※写真は、「アークティク・シー」。AFPサイトから転載

消えた貨物船 英紙 イランにミサイル密輸 イスラエル機関が阻止

英仏間のイギリス海峡で7月24日に消息を絶ち、8月17日に西アフリカ沖
で発見されたマルタ船籍のロシア貨物船「アークティック・シー」(3988
トン)が、イランに密輸するロシア製対空ミサイル「S300」を積んでいた
と、6日付の英日曜紙サンデー・タイムズがロシアやイスラエル情報筋の話と
して伝えた。

同船にはロシア人乗組員15人が乗り込み、130万ポンド(約2億円)相当
の木材を積んでフィンランドからアルジェリアに向かう途中に姿を消し、世界
中のメディアから「消えた貨物船」として注目を集めた。ロシア海軍が同船を
確認し、乗っ取り犯のロシア人やエストニア人ら計8人を逮捕。犯人は身代金
100万ポンド(約1億5千万円)を要求していたとされたが、その後、箝口
(かんこう)令が敷かれた。

しかし、同紙は情報筋の話として、核開発を進めるイランがイスラエルの空爆
を恐れ、ロシアの犯罪組織から対空ミサイルを密輸しようとしたと指摘。これ
を察知したイスラエルの対外特務機関モサドが介入し、同船をめぐって騒ぎを
起こしてイランに着くのを阻止したとの見方を伝えた。

同紙紙によると、同船が発見された翌日、イスラエルのペレス大統領がモスク
ワを訪れ、メドベージェフ露大統領と4時間にわたって非公式に会談。ペレス
大統領は高性能兵器がイランやシリアに流れるのを阻止するよう要求し、メド
ベージェフ大統領も口頭でこれに応じたという。
(産経新聞 2009/9/08)


以前に「ミッション・インポッシブル」という題名で、この消えた
貨物船についてのエントリーを書きましたが、どうやら真相らしき
ものが判って来たようです。

この真相は、先週末にイギリスの日曜紙サンデー・タイムズがロシ
アやイスラエル情報筋の話として伝えたもので、イランがロシアの
新鋭対空ミサイルS-300入手しようとしてロシア・マフィアと結託
して密輸を図ったのをイスラエルの諜報機関モサドがキャッチし、
工作員に派遣して、S-300を積んだ「アークティク・シー」をハイ
ジャックさせたというものです。

記事にもある通り、ロシア海軍が発見した翌日、イスラエルのペレ
ス大統領とロシアのメドベージェフ大統領が会談をし、事件の再発
防止に合意したという話です。

この話であれば、「海賊」が「アークティク・シー」をハイジャッ
クした理由も、「海賊」8人がロシア海軍に抵抗しなかった事も、
船員を全く傷つけなかった事も、全てに理由がつく事になります。

また、イスラエルが、イランの核武装を警戒している事は衆知の事
実であり、イラクの原子炉を破壊した「オシラク作戦」や、やはり、
核兵器用のプルトニウムを製造する原子炉を建設していたシリアを
爆撃し破壊した実績があります。

それから考えれば、イランが核兵器開発に邁進している現在、イス
ラエルはいつでもイランを攻撃できる様にしたい筈ですし、その時
に作戦遂行の障害になる新型対空ミサイルをイランが入手する事を
阻止する事に明確な利益や理由がある事になります。

ちなみにAP通信の記事によれば、ロシアは、「アークティク・シ
ー」に対空ミサイルが積まれていた事を明確に否定しているそうで
それに疑問を投げかけたジャーナリストが政府の情報筋に脅迫され
るという派生的な事件まで起こっているそうです。この辺は如何に
もロシアらしい話と感じます。


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2009年9月8日火曜日

宇宙ステーションへの輸送を競うHTV


※画像はNew Scientistサイトから転載

最強の双発ロケット 「H2B」11日打ち上げ

国内最強のパワーを持つ新大型ロケット「H2B」の初号機が11日、種子島
宇宙センター(鹿児島県)で打ち上げられる。国産初の双発ロケットで、国際
宇宙ステーション(ISS)の物資補給機「HTV」を運ぶ重要な任務を担う。
世界が注目する中、日本のロケット技術の真価が問われる。

H2Bロケットは国産主力機「H2A」を土台に、宇宙航空研究開発機構
(JAXA)と三菱重工業が共同開発した。最大の特徴は、第1段の主エンジ
ンを2基に増やしたこと。これによりパワーを約4割増強し、普通の人工衛星
の数倍の重さがあるHTVの打ち上げを可能にした。

強力なエンジンを新たに開発するのではなく、すでに実用化したエンジンを2
基搭載することでコストを抑え、設計から4年の短期間で完成にこぎつけた。

主エンジンを複数搭載したロケットは、3基搭載の米スペースシャトルや、20
基も搭載したロシアのソユーズなどがあり、世界の大型機の主流になっている。

ただ、エンジンが増えるとシステムが複雑化し、一般に不具合が起きやすくな
る。H2Bの計算上の信頼度は、H2Aよりわずかに低い。JAXA幹部は
「実質的には同等で不安はない」というが、油断はできない。

国産大型機は初代の「H2」で平成11年、主エンジンの燃料ポンプが破損。
後継のH2Aは15年、側面にある補助ロケットの噴射口に想定外の穴が開き、
いずれも打ち上げに失敗した。

3代目のH2Bは、この2つの事故の防止策を取り入れており、国産大型機の
集大成といえる。開発陣にとっては10年越しの雪辱戦だ。幹部は「過去の失
敗と反省から、努力してここまできた。何とか成功させたい」と意気込む。

ISSに食料や機材を運ぶHTVは日本初の無人宇宙船で、今回が初仕事。シ
ャトルは来年に引退が予定されており、その後の輸送手段のひとつとして重要
な役割を負う。ISSでは滞在飛行士が今年から6人に倍増し、物資需要が増
えている。日本はHTVを27年まで毎年1機ずつ、計7回打ち上げる国際的
な義務があり、責任は重い。

打ち上げ時刻はISSが日本上空を通過する午前2時4分。夜間の発射は中型
ロケットM5による火星探査機「のぞみ」(10年)以来で、大型機は初めて。
国際的な注目度は高く、米航空宇宙局(NASA)の幹部や海外メディアも現
地入りして打ち上げを見守る。(長内洋介)

(産経新聞 2009/9/07)


今週末に行われるHTV打ち上げは日本の宇宙開発にとってエポッ
クメーキングな出来事と言えます。
もともとは、HTV計画は、世界の耳目を集める様なプロジェクト
ではありませんでした。
どちらかと言えば、ISS(国際宇宙ステーション)に接続された、
宇宙実験室である「きぼう」に補給品を持ち込む事を目的とした地
味な計画だったと言えます。

ISSの運用計画では、もともと全体の運用維持に係わる部分の補
給については、NASAがスペースシャトルで行いますが、各国の
モジュールへの補給は、各国が各々手配する事になっていました。
HTVはこの原則に従って開発されたもので、日本以外にも独自の
宇宙研究室を持つ欧州は、同様のATVという独自輸送機を開発し
ており、昨年には一号機がISSへのドッキングに成功しています。

その元々は地味な計画が注目を集める様になったのは、ISSへの
補給の任に当たる事になっていたスペースシャトルがコロンビアの
事故によって2010年には退役する事になってしまった事によります。

シャトル後継機であるオリオン宇宙機は、2014年には、完成する事
になっていますが、計画は遅れ気味です。シャトル退役から、オリ
オン完成までの間は、NASAは、商業軌道輸送サービスを使用す
る事とし、SpaceX社のドラゴン宇宙機とオービタルサイエンシズ社
のシグナス宇宙機を選定して、その開発を進めています。完成は各
々、2009年(今年)と2010年(来年)の予定ですが、今日現在、宇宙機
も打上げロケットも完成しておらず、初飛行にもまだ時間がかかる
見込みです。

HTVの打上げに用いられるH-IIBロケットも、お初である点
は変わりませんが、全く、打ち上げられた事もないロケットと比較
すれば、各コンポーネントはH-IIAで実績を積んだものであり
信頼性は数段高いと言えます。
HTVは、欧州やロシアの宇宙機と違って、自動ドッキング機能は
持ちませんが、その分、機体制御システムを単純化でき、価格を抑
えられる一方で、人間が介在する為、相応の安全性も確保可能です。

また、ATVもロシアのプログレスも、ロシア製モジュールにドッ
キングする為、ロシア規格の小型のドッキング装置を使っているの
で、大型の物資輸送ができませんが、HTVは、米国製のハーモニ
ーと接続する為、共通結合機構(CBM)を使用するので、大型の物
資も搬入可能であったり、船外用物資の輸送も可能であるという特
徴があります。(但し、補給能力そのものはATVの方が上です。)

つまり、NASAにとっては、緊急の際に、JAXAに頼み込めば
シャトルで輸送するのと同じ規格の補給物資をHTVで運ぶ事が可
能である為、商業軌道輸送サービスが使えない時の保険として使用
可能という事になります。また、HTVは、2010年以降2016
年まで、年間一機が製作される事になっており、増産も比較的容易
と考えられる事から、オリオンや商業軌道輸送サービスの開発その
ものが、更に遅延する事になった場合、その間の輸送ニーズを賄う
ことも可能になる訳で、その点でもNASAの期待が高まっている
と言えるのです。

これに加え、日本には、HTVを元にした有人宇宙機を開発する構
想があります。HTVはモジュール設計がされている為、有人カプ
セル部分を開発し、これに与圧部と機械・推進部と組み合わせる事
で比較的容易に有人宇宙機を開発できるというものです。シャトル
退役によるISS向け輸送力不足の中で、人員輸送能力と物資回収
能力が一番深刻ですが、HTVに加え、HTVをベースにした有人
宇宙機を開発する事で、この両者に対応できる事になります。

更に、2016年にISSが退役した後は、日本独自の宇宙ステーショ
ンをHTVを元にして展開する事が構想されています。また、将来
の有人月探査計画などもHTV発展型の有人機構想の延長上にあり
ます。HTVは正に21世紀の日本の宇宙開発の根幹であり、今週
末の打上げの成功を心から祈りたいと思います。(9/8に米国の大統
領諮問会議でISSの退役を2020年まで延長する勧告が行われる見
込みとなっています。)


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2009年9月4日金曜日

またも恫喝政策に転じた北朝鮮 しかし交渉の必要はない!

※写真はロイターサイトより転載

北朝鮮、ウラン濃縮の最終段階にある=KCNA

朝鮮中央通信社(KCNA)によると、北朝鮮は4日、ウラン濃縮の最終段階
にあることを明らかにした。KCNAによると、北朝鮮は国連安保理議長に書
簡を送り、「ウラン濃縮実験は成功裏に行われた。実験は最終段階にある」と
表明した。

米国は以前から、北朝鮮が核兵器向けのウラン濃縮実験を極秘に進めていると
みていた。ただ専門家は、本格的なウラン濃縮には至っていないとの見方を示
している。
北朝鮮が過去に2回行った核実験はプルトニウム型とみられている。
北朝鮮は、ウラン濃縮実験について、国際社会が北朝鮮への制裁を強化してい
ることへの対抗措置だと主張。 
「われわれは対話と制裁の双方の用意がある。一部の安保理常任理事国が対話
よりも制裁を優先させるのであれば、われわれも対話よりも核抑止力の強化を
優先させる」としている。

(ロイター 2009/9/4)


ミサイル実験、第二回目の核実験と瀬戸際政策を続けていた北朝鮮
が、クリントン訪朝以降、拘束していた米国の記者や、韓国の会社
員、漁船員を順次解放したり、各国に会談や訪朝を求めるなど緊張
緩和政策に転じていましたが、今回は比較的早めに、瀬戸際政策に
転換したようです。

もっとも緊張緩和政策と言っても、韓国からも戦術的な転換に過ぎ
ないと見透かされていましたし、オバマ政権からも期待していた、
二国間平和協定交渉に対する言質は得られず、麻生首相への訪朝要
請も速やかに拒否されるという状態であり、期待した様な効果は得
られなかったと言う事かも知れません。

北朝鮮の交渉術の基本は以下の様なものである事が既に判っており、
それは、全く変わっていないのです。

①強面で、要求の10倍をふっかける。
②交渉中に理不尽な事を実行し、それを元に戻す事について代償を
 要求する。
③約束は実行しない。状況の変化で簡単に合意を覆す。
④交渉不成立の場合は全ての責任を相手に押し付ける。
⑤交渉相手の個人的名声・名誉欲をくすぐって譲歩を得ようとする。
⑥交渉を始める事自体に代償を求める。
⑦合意内容を細分化して、その一つ一つに代償を得ようとする。


一言で言えば、交渉相手としては信頼できる相手ではありません。
彼らの理解できる言葉は力しかないのです。力づくでねじ伏せるし
かないと考えるべきなのです。

そして一番重要なのが、次の二項目です。
◎金体制の存続が全てに優先される。
◎その存続を保証するのは核兵器である。

ここまで理解してしまえば、今回のウラン濃縮についての彼らの意
図は明らかです。つまり、交渉に応じる場合であっても、本当にウ
ラン濃縮技術を彼らが開発したのであれば、それを放棄する事は絶
対にありません。北朝鮮は、確実に作動する核兵器が必要ですが、
現在の彼らの技術では、使用済み核燃料から純度の高いプルトニウ
ムを抽出する事ができないのに対し、ウラン濃縮は同じ濃縮プロセ
スを繰り返す事で確実に作動する兵器レベルのウランを抽出する事
ができるからです。この場合、いくら代償を積んだとしても実際に
廃棄される事はなく、交渉を行う価値はない事になります。

逆に、彼らが開発に失敗しているのであれば、開発を放棄する可能
性があるかも知れません。つまり、もっていないものを放棄する事
で代償を得ようとしている事になり、この場合も交渉の価値はない
事になります。

即ち、交渉は北朝鮮が代償を得る為のものでしかなく、核兵器が放
棄される事もまたありません。従って、国際社会は北朝鮮を相手に
する必要はなく、現在実行している経済制裁を着実に実行していく
しかないと言える様に思われるのです。


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2009年9月3日木曜日

22DDHは費用対効果の高い海上航空機整備工場


※元の図は、週刊オブィエクトのHPより転載
赤枠は格納庫の推定位置

昨日は、22DDHの性格が16DDHの全通甲板を持つヘリコプ
ター護衛艦から、他の護衛艦からエスコートされるヘリ空母として
の性格に大きく変化している事を武装の面から少し分析してみました。

それでは、22DDHは、ヘリ空母として、どの程度の整備能力が
あるのでしょうか。16DDHや22DDHと従来のDDHとの比
較として良く使われる例えに、自宅の駐車場と整備工場の違いが使
われます。つまり、自宅の駐車場でも、多少の車の整備はできます
が、エンジン交換を伴う様な整備を行えなえず、整備工場に持ち込
む必要があります。それと同様に、従来のDDやDDHの格納庫は、
自宅の駐車場に相当します。軽度の機体整備はできますが、大きな
整備は困難です。それに対し、16DDHや22DDHは整備工場
に当り、従来に比べ艦載ヘリの大規模な整備も可能になると言う訳
です。

16DDHや22DDHを取得する大きな目的の一つに、この点が
上げられています。

では、その能力を、どの様に推測すれば良いのでしょうか?整備能
力の評価は本来、設備と能力の積で表されると思われますが、現段
階では評価は難しいと思われますし、建造され運用に移ってからも
各艦毎の評価も公表される事はまずないでしょう。従って、単純に
外観から評価する他ありません。という訳で、整備工場のしての大
きさという単純な尺度で測ってみる事にしました。

16DDHの格納庫の大きさは概ねエレベータの間にある二甲板の
高さのある第一格納庫と第二格納庫及び、後部エレベータと艦尾の
間にある三甲板の高さがある第三格納庫の合計になります。第三格
納庫と艦尾の間にはVLS発射機があります。それを前提に格納庫の
大きさを推定すると概ね上図の赤枠の内の矢印になるかと思います。
この大きさは、80mX15m(1200平方米)と推定されます。

実際には、エレベータを上に上げた状態で固定すれば、格納庫と同
じ高さにエレベータの下床?を上げる事で、エレベータ部分を格納
庫として使用する事もできますが、整備しながら、エレベータも使
用する事を考えると、通常の整備に使用できる大きさは上記の程度
と言えます。

同様に、22DDHに当てはめると、格納庫の大きさは、157m
X21m(約3300平方米)
になります。全長が51m延長された
事と舷側エレベータ、それにVLSが無くなった事で、格納庫の大き
さが約3倍弱になっていると思われるのです。

全長の増加は約25%、船体の大きさは約4割増加したのに対し、
格納庫の大きさが3倍近く拡大
した事は、海上航空機整備工場とし
ての、22DDHの能力向上が極めて顕著である事を示しており、
船価が16DDHと略等しい事を考えれば費用対効果が非常に改善
された艦
であると言える様に思うのです。


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2009年9月2日水曜日

ヘリ搭載護衛艦からヘリ空母に近づいた22DDH

※海自 画像は2ちゃんねる 軍事板 「ひゅうが型DDH 94番艦」スレ #667より転載

最大の「空母型」護衛艦配備方針=ヘリ14機、洋上給油も-防衛省

防衛省は31日、海上自衛隊に最大規模のヘリコプター搭載護衛艦(基準排水
量19500トン)1隻を配備する方針を決め、2010年度予算の概算要求
に1166億円を盛り込んだ。艦首から艦尾まで甲板がつながる「空母型」で、
ヘリ5機の同時発着艦のほか、他艦への洋上給油が可能。
同じタイプの「ひゅうが」(13950トン)から機能は大幅にアップするが、
予算を見直すとしている民主党政権の下、無事「船出」できるかは不透明だ。
新たな護衛艦は全長248メートルで、哨戒ヘリ3機が同時発着できるひゅう
がより51メートル長い。甲板と格納庫でヘリ14機を搭載する。
輸送力も増強し、陸上自衛隊のトラック約50台、人員約4000人を運ぶこ
とができる。
護衛艦「しらね」(5200トン)の後継だが、洋上給油もでき、周辺海域で
の継続的な警戒監視、海外派遣や大規模災害時の物資、邦人輸送など、さまざ
まな場面で中枢艦の役割を果たすという。 
新型艦導入について、海上幕僚監部は中国海軍の近代化も背景にあるとし、
「(中国は)巡航ミサイルなど艦艇からの攻撃力を向上させており、ヘリによ
る監視の強化が必要」(幹部)と強調する。
一方、戦闘機などの発着艦について、同省は「その考えはない」としている。

(時事通信 2009/08/31)

        22DDH    16DDH
基準排水量  19500t   13950t
全長       248m     198m
全幅        38m      33m
速力        30kt      30kt
CIWS         2基       2基
SeaRAM        2基        無
VLS           無 16セル(Mk41)
FCS-3改         無        有
アスロック装置     無       1式
3連装短魚雷発射管   無       2基
搭載ヘリ
哨戒ヘリコプター   7機       3機
輸送・救難ヘリコプター2機

ヘリ搭載能力    14機      11機
同時発着能力     5機       4機
同時運用可能ヘリ数  9機       4機

輸送力
 3.5tトラック約50台
洋上給油能力
価格(概算要求時)1166億円   1164億円
                (ひゅうが1057億円)
                (いせ   975億円)

新聞報道に書かれていたスペックを16DDHと並べてみましたが、
ここからだけでも、新しい22DDHの性格が判る様に思われます。
つまり、16DDHが主砲こそないものの、その武装が、従来のヘ
リコプター搭載護衛艦の延長線上にあったのに対し、22DDHで
は、よりヘリ空母としての運用と特性に合致した仕様に変化してい
ると言えます。

例えば、16DDHではヘリがあっても無くても単独で潜水艦を探
知、攻撃できる武装になっていますが、22DDHでは、アスロッ
クも短魚雷もないので、ヘリなくしては単独で潜水艦を攻撃する事
ができません。また、完成予想図から見る限りソナーシステム(OQQ
-21)も16DDHに比べ簡素化が図られているようです。更に、
16DDHではFCS3改とESSMにより限定的な艦隊防空も可
能でしたが、22DDHでは、個艦防御用の装備のみとなっています。

その代わりに、22DDHが得たのは、16DDHに比べ40%も
大きな船体と、二倍以上(4機→9機)となるヘリコプター同時運
用能力と整備能力、そして、船体の大きさの割に安価な建造コスト
です。

16DDHの運用構想では、DDHは対潜グループの中核艦として、
DDG1隻、DD2隻からエスコートされる事になります。艦隊防
空指揮機能はDDGが担いますが、対潜指揮機能は、データリンク
で結ばれる事で、22DDHが持つ充実した司令部機能が担う事に
なります。

22DDHでは、16DDHと比べ、船体の全長が52m長くなっ
た他、舷側エレベータの採用やVLSを搭載しない事で、16DDH
と比べ、エレベータ部分を除いた艦内ヘリ格納庫は、16DDHと
比べて二倍以上
になる筈で、そこに収容可能なヘリ数は、表面上の
収容数の増加よりは、更に大きくなる事は間違いありません。また、
これが整備能力の一段の向上に繋がると考えられます。加えて、こ
の大きくなったヘリ格納庫の活用方法として車両輸送を想定してい
るのだと思われます。

価格面では、船体規模が40%大きくなったにも係わらず、船価は
略同じです。船価の安さはDDと比べると一段とはっきりします。
19DD(750億円)と比べ、船体の大きさが4倍であるにも係わ
らず、取得費用は、五割増に過ぎないのです。

言い換えれば、22DDHはDDのエスコートによる運用を前提と
する事で、16DDHの過剰な機能を削ぎ落とし、より航空機運用
に最適化した艦
になったと言えるのです。


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2009年8月31日月曜日

民主党は国民の期待の高さにいつまで応えられるのか?

※写真は毎日新聞サイトより転載

<衆院選>民主党が単独で308議席獲得 自民は歴史的惨敗

第45回衆院選は30日、投開票され、480議席のうち民主党が小選挙区と
比例代表を合わせて単独で過半数(241議席)を大きく上回り308議席を
獲得した。1996年の旧民主党結党以来、13年で悲願の政権交代を果たし
た。93年衆院選で自民党が過半数を割り込み非自民8党派による細川連立政
権が発足したが、2大政党間の政権交代は戦後初めてで、戦後政治の大きな転
換点となる。首相指名選挙をする特別国会は9月14日の週にも開会、民主党
の鳩山由紀夫代表が首相に指名され、同党を中心とした連立政権が発足する。
【高塚保】

与党は自民、公明両党で公示前の計331議席から計191議席を減らし、自
民党は1955年の結党以来、初めて第1党の座を失う大惨敗を喫した。麻生
太郎首相は30日夜、NHKの報道番組で「責任を負わなければならない」と
述べ、自民党総裁の辞任を表明した。

自民党総裁の任期は9月末で、特別国会後に総裁選を実施し新総裁を選出する。
来年夏の参院選に向け党勢の立て直しを迫られるが、新執行部にとって苦難の
船出となる。

民主党は小泉改革で広がった格差への対策として、マニフェスト(政権公約)
に子ども手当の支給、高校教育の無償化、農家への戸別所得補償、高速道路原
則無料化などくらしを重視する政策を盛り込み、実現を訴えてきた。

(毎日新聞 2009/8/31)


民主党にとって、不幸な事は、日本経済が成長期にないという事で
す。民主党が政権を担うであろうここ4年間で見ても、税収が大幅
に増える見込みはありません。寧ろ、リーマンショック後の経済対
策の累積で一息ついていた経済が、民主党の経済財政運営の如何に
よっては失速する可能性すらあります。

何を言いたいかと言えば、民主党が受け継いだ、財布に入っている
お金の量は変わらないのですから、新しい政策を実現する為には、
必ず、どこかに皺寄せが来るという事です。霞ヶ関の埋蔵金なんて
いるのはありません。特別会計に万一の為に蓄えられている資金な
どは使ってしまえばなくなってしまう一過性のものに過ぎません。

民主党の公約である、子供手当てや、高校教育の無償化、農家への
個別所得補償、高速道路無料化は、毎年毎年支出が必要なものです。
一時的な資金で手当てする訳にはいきません。つまり、子供のいる
家庭や農家、あるいは高速道路の利用者に対して、子供のいない世
帯や子育ての終わった世帯、農業以外の勤労者、高速道路をあまり
利用しない国民から、税金を吸い上げ、それを分配する事になります。
その額、実に13兆円に及びますが、これは、消費税を6%上げる
のに等しい増税に相当します。今の処、基礎控除や配偶者控除の廃
止と言う一般人には意味が判りにくい項目を財源にあげていますが、
それだけ取れば、大多数の人にとって増税になる事が明白になって
きます。何故なら、基礎控除や配偶者控除の廃止による増税は、子
育て世代に対しても等しくのしかかってくるからです。これでは、
子供手当支給の喜びも半減してしまいます。

政権を運営していくにつれて民主党は、大きな政府を目指す政権で
ある事がより明確になっていきます。既に社会保険庁の解体を中止
する事を明言していますが、高速道路運営会社も、高速道路無料化
の中で、国営化が検討されていく筈です。更に、郵政民営化につい
ても再度の国営化が行われる可能性があります。また、日教組は、
少人数教室の実現を従来にも増して強力に運動する筈です。そして、
これら政府部門の拡大は、最終的には全て国民の負担によって賄わ
れる事になります。民主党は政府部門の無駄を省くと言っています
し、政府部門に無駄は大いにあるでしょうが、それとは別に政府部
門は肥え太る事になります。

初めての政権交代で政権をとった民主党には、多くの国民から期待
が寄せられています。それは、自民党には出来ないフレッシュな政
治を期待してのものです。しかしながら財布の中にお金はありませ
ん。金の事ばかり言うなという意見もあるでしょうが、現在の政府
の機能は、国民の所得を税の徴収と資金の給付を通じて再分配する
が最も大きな役割であり、それを最少コストで合理的に行う事が政
府に期待されているのです。

そして、諸外国と比較した場合、日本の政府運営は、そこそこ合理
的に少ないコストで行われて来たと言えます。そして、それを更に
合理的に行う事を政府の無駄を省くという公約によって国民から期
待されているのに、実際に民主党がやらねばならない事は、政府部
門の拡大になるのですから、遅かれ早かれ、民主党に対する国民の
失望が表面化するのは確実であると言えます。

更に、民主党政権には、どちらかと言えば、左寄りの勢力から大き
な期待が寄せられています。永住外国人の地方参政権容認問題や、
人権擁護法問題、あるいは国旗国歌問題、靖国問題、中国や韓国と
の歴史認識問題など、処理によっては、国民の少なく共半数に失望
の念を抱かせるに充分な問題にも取り組まざるを得なくなっています。

経済運営、増税問題に加え、民主党政権は、これら多くの問題点を
内在する形で発足を余儀なくされるのであり、まさに至る処に爆弾
を抱えていると言って過言ではありません。

来年夏には、まず参議院選挙が予定されていますが、マスコミの側
面支援も続きますので、ここで民主党が敗退するとは考え難いので
すが、その次には、4年後の2013年に今度は衆参同時選挙が行われ
る可能性があります。それまでの間、国民の失望をどこまで、押さ
え込めるか、民主党に期待を繋ぎとめる事ができるのか、民主党の
真価が問われるのではないかと思われるのです。


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2009年8月28日金曜日

「友愛」よりも「防衛」を選んだ元同盟国

※写真はS-400対空ミサイルシステム

極東に新対空システム配備 露、北朝鮮ミサイルに対応

インタファクス通信によると、ロシア軍のマカロフ参謀総長は26日、北朝鮮
のミサイル実験に対応し、ロシア極東地域に最新型の対空ミサイルシステム
「S400」を配備したと明らかにした。

北朝鮮のミサイル実験を現実の脅威とみなしていることの表れで、ロシアは引
き続き北朝鮮のミサイル発射に厳しい態度を取るとみられる。

参謀総長は、メドベージェフ大統領に同行して訪問したモンゴルのウランバー
トルで記者団に「北朝鮮のミサイル実験場や核施設はロシア国境から極めて近
い」と指摘。S400配備の目的は、北朝鮮のミサイル実験が失敗した場合に
破片などがロシア領に落下することを防ぐためだと説明した。具体的な配備場
所は明らかにしなかった。

S400は射程約400キロで、ロシア軍最新の対空ミサイルシステム。(共同)

(産経新聞 2009/8/26)


同盟国でも、最後の所は信じないというのが、ロシアの生き方とい
うのが世界で一般的なロシアに対する見解であると思いますが、そ
れが元同盟国で、世界から「ならず者国家」と目されている国で、
核ミサイルを開発しているかも知れない国であるならば、対抗措置
を取るのも当然と言えます。

既に以前から、弾道ミサイル防衛用に新型ミサイルを配備するとい
う意向をロシアは表明していましたが、今回明らかになったのは、
配備が始まったばかりの最新型対空ミサイルの極東配備を既に完了
しているというものです。

ロシアのミサイルは、システムの名称であって、弾体や発射機の型
式が異なっても、同じ名称で呼ばれる事がありますが、このS-400
についても同じで、弾体だけでも、3種類があるとされています。
射程距離400kmを誇るのは、40N6と呼ばれる弾体であるようです。
このミサイルは、長射程で、巡航ミサイルを攻撃する能力があり、
弾道ミサイルについても射程3500km、秒速4.8kmまでの中距離弾道
ミサイルであれば迎撃可能と言われています。
(出展、週刊オブイェクト http://obiekt.seesaa.net/article/119400823.html )

そういえば、2006年の北朝鮮のミサイル乱れ撃ちでは、実に7発の
弾道ミサイルがウラジオストック沖の日本海に撃ち込まれましたが、
事前にロシアの承認を得ていたのか定かではありませんでした。そ
の後のロシアの行動が明らかにミサイル迎撃に傾いた処を見ると、
少なく共、北朝鮮からの事前連絡が充分ではなかった可能性が考え
られる様に思われます。

もし、北朝鮮が米国向けに打ち上げたICBMが、万が一故障してロシ
アに落下したとしても、その落下速度はS-400の能力の範囲に収ま
る筈です。如何に元同盟国ではあっても、最悪の事態に対応出来る
様に予め準備しておくというロシアの姿勢は、危機管理の面では当
然と言えるのです。

一方、日本においては、他国との関係は「友愛」で当たると広言す
る政治家を党首とする政党が政権を握る勢いとなっています。
北朝鮮に対しても「対話」と「協調」で当たるそうです。また、こ
の政党は、政府予算から無駄を省く事で、実に13兆円もの資金を
捻出する事を予定していますが、以前は彼らの考える無駄な予算と
して防衛費を上げ、そこから五千億円を圧縮すると主張していた事
もありました。

折りしも、北朝鮮は、米国や韓国に対して宥和攻勢をかけています。
日米韓の結束を破る事を北朝鮮が意図しているのは明白と言えます。
しかし、何故か、日本に対してはアプローチがありません。これが
何故か言えば、自国に宥和的な新政権の発足を待っている事以外は
考えられません。日本に対しては、譲歩なしで制裁解除や経済援助
が獲得可能であると踏んでいる事になります。その上で、日本に対
しては、歴史問題等を楯にして上からの目線で対応すれば、南北の
民衆レベルからも支持喝采が得られると考えているのではないかと
思われるのです。

交渉において、相手が降りると判っている時ほど強い時はありません。
交渉が有利に展開できる事が判っているならば、あとはどれだけ利
益を拡大するかの問題になるだけです。「友愛」、「対話」、「協
調」、「平和」いずれも美しい言葉ですが、くれぐれも国益を蔑ろ
にしない事を祈念せずにはおれないのです。


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2009年8月26日水曜日

奴は斜め上を飛んだ~韓国初の人工衛星打上げに失敗


※写真、CGは朝鮮日報サイトより転載

人工衛星、覆い外れず失速=韓国

韓国教育科学技術省は26日、人工衛星搭載ロケットの打ち上げ失敗について、
大気圏内の飛行時の摩擦から衛星を防護するフェアリング(覆い)が正常に外
れなかったため失速したことが原因と推定されると発表した。
衛星はロケットから切り離されたが、二つある覆いのうち片方が正常に離脱せ
ず、十分なスピードを得ることができなかった。衛星は落下の過程で燃え尽き
たとみられる。 

(時事通信 2009/08/26)


韓国初の人工衛星搭載ロケット打ち上げ、目標軌道に乗らず失敗

韓国は25日、初の人工衛星搭載ロケットを打ち上げたが、計画していた軌道
上に衛星を乗せることができなかった。
安秉万(アン・ビョンマン)教育科学技術相は、衛星は打ち上げから8分後に
2番目のブースターを切り離した後、目標の軌道に入らなかったことを明らか
にした。
プロジェクト関係者は、失敗の原因は特定できないとしつつも、衛星の軌道を
修正する機能がブースターになかったと述べた。
北朝鮮は、韓国のロケット打ち上げに警戒感を示しており、今月に入りロケッ
ト打ち上げやそれに対する各国の反応を注視していると表明していた。
打ち上げは当初8月19日に予定されていたが、圧力計のソフトに異常が発生
したため延期されていた。
今回打ち上げられたロケット「羅老号」(KSLV―I)の開発には、ロシア
の協力を得た。ロシアはロケットの1段目を開発したほか、テストや技術面の
サポートを提供。
ロケットは全長33メートルで2段式。開発費用は5025億ウォン(4億ドル)。
韓国は2018年までに、自力でロケット開発し、2025年までの月探査機
打ち上げを目指している。人工衛星打ち上げのための商業サービス開始も検討
している。

(Reuters 2009/08/25)


七回の打上げ延期を繰り返した上、漸く、昨日打ち上げられ、当初
は、打上げ成功と伝えられた羅老号ですが、残念ながら衛星を軌道
に乗せる事なく、大気圏に再突入し、燃え尽きた様です。
昨日の遅い段階では、予定された軌道に投入できなかったと報道さ
れ、その理由としてフェアリングの片側が外れなかったという見解
が非公式に流れていましたが、それが公式に確認された形になりま
した。上の朝鮮日報作成のCGでは、その時に流れていた失敗原因が
三つあげられています。

さて、通常、ロケットが打ち上げられる際には、ロケットの姿勢や
高度、加速度、ブースターや一段目の切り離し、フェアリングの開
放等のイベントの結果、ロケットに搭載された監視カメラの映像等
をテレメトリー信号として地上に送っています。また、地上からも
目視とレーダーの両方を使って衛星の姿勢、高度、針路、速度等を
観測していますから、どの段階で、計画値と違ってきたかは明確に
識別できていた筈なのです。

フェアリングが外れなかったのが事実であれば、打上げ3分35秒後に
衛星保護カバー分離した段階から、予定された高度、速度とテレメ
トリーや地上からの観測数値の乖離が大きくなってきていた筈です。
予定では投棄される筈のフェアリングの重量が余計に乗っかってい
ますし、ロケットの重心も変わってきます。

衛星を分離した高度が予定よりも30キロ以上高かった事も良い事
ではありません。人工衛星になる為には、水平方向の速度として、
毎秒7.9キロの第一宇宙速度を満足する必要がありますが、予定
以上に上昇するに必要とした加速度は、この水平速度成分を犠牲に
する事で得られているからです。この加速度の違いも当然ながら、
テレメトリーデータに現れていた筈なのです。

日本を例を挙げるのであれば、2003年5月に情報収集衛星を軌道に
載せる為に打ち上げられたH-IIA 6号機が、2本のSRB-A(固体ロ
ケットブースタ)のうち、1本が分離できず、そのままでは、高度
および速度が不足することからロケットを指令破壊しましたが、こ
れと略同様の事が羅老号にも起こっていたと言えるのです。

こういったテレメトリーの数字の計画値との乖離や変化をどの様に
認識するかという点で、初の人工衛星打上げという経験の無さが、
衛星打上の失敗という結論を迅速に出す事が出来ず、本来であれば、
指令破壊を行うべきであった状況であるにも係わらず、それが出来
なかった事につながっているのかもしれません。
羅老号の一部がオーストラリアのダーウィン近郊に落下したという
未確認情報がありますが、これが事実であれば、指令破壊を行うべ
き状況であった事の証明とも言えるでしょう。

今回の打上げは、人工衛星打上げ能力獲得を急ぐ韓国が、従来から
の国内技術開発の方針を転換し、ロシアから一段目ロケットを購入
し、二段目もロシアが設計した固体燃料ロケットの韓国内で製造し
たものです。衛星フェアリングやその分離機構も恐らくロシア設計、
韓国内製造で、ロケット全体の取り纏めもロシアから大きな支援を
得ていたものと思われます。

韓国がロケット技術をロシアから導入する事については、特に文句
はありませんが、まかり間違えば、打上げに失敗したロケットが日
本領土に落下する可能性があるのですから、せめてロケットに異常
が発生した場合の安全性確保については、日本からも強く韓国に申
し入れを行うべきであり、それにきちんと対応するのがロケット打
上げ国の責務であると思われるのです。


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2009年8月25日火曜日

ミッション・インポッシブル

※写真は、航行する「アークティック・シー」RIANOVOSTIから転載

積み荷に極秘物資? 露確保の失踪貨物船

【モスクワ=遠藤良介】欧州海域で7月下旬に消息を絶ち、このほどアフリカ
北西部カボベルデ近海でロシア海軍に確保された一隻の貨物船が「謎」を呼ん
でいる。ロシアのセルジュコフ国防相は「海賊に遭った」としているが、ロシ
アが特殊作戦に乗り出してまで船の発見を急いだ理由は何なのか。同船がイラ
ン向け兵器などの“極秘物資”を積んでいたとの憶測が出ている。

問題の船は、マルタ船籍の露木材貨物船「アークティック・シー(北極海)」
(3988トン)。7月23日に木材を積んでフィンランドを出航し、アルジ
ェリアに向かった。しかし、24日にスウェーデン沖から「武装集団に襲われ
た」と報告してきた後、交信が途絶えた。

ロシアのメドベージェフ大統領は今月12日、「北極海」の発見、確保に全力
を挙げるよう軍に厳命を下した。露海軍が多数の艦船などを派遣して捜索した
結果、17日(現地時間16日)に貨物船を発見。ロシア人乗組員15人の無
事を確認するとともにロシア人、エストニア人、ラトビア人の容疑者8人を拘
束した。露高官はこの作戦に伴い、報道操作が行われたことも確認している。

ただ、この貨物船が積載していた木材は180万ドル(約1億7千万円)相当
にすぎないとされる。「海賊」が狙うにも、ロシアが国を挙げて奪還に動くに
も、不自然さが残る。そもそも、欧州海域は警備が厳しく、長らく海賊被害は
報告されていない。

エストニア軍元高官は露大衆紙モスコフスキー・コムソモーレツに対し、「ロ
シアのかくも奇妙な行動は、貨物船に巡航ミサイルが積まれていたことでしか
説明がつかない」と述べた。著名海事専門家のボイチェンコ氏も17日の記者
会見で海賊説に疑問を呈し、「商売上の抗争」や「(国家的な)特殊作戦」の
可能性があると指摘していた。

ロシア内外のメディアでは、貨物船がイランやシリア向けの兵器や核物質を積
んでいたとする説や、麻薬密輸に絡んでいたとする見方が報じられている。

(産経新聞 2009/8/22)


ペルシア湾を航行する北朝鮮の貨物船が臨検され、隠された船倉か
ら、イエメン向けの弾道ミサイルが発見された事がありましたが、
いかがわしさでは、北朝鮮の先輩であった旧ソ連時代からあまり変
わっていないロシアが、またまたいかがわしい武器輸出でやってい
る事が暴露されてしまいました。もし、本当に積荷が、ロシアの言
う通り木材であったのならば、大統領命令で海軍が必死になって捜
索活動を行う必要などありません。

記事にある通り、イラン向けの巡航ミサイルや弾道ミサイルあるい
は、(核燃料棒や)その補給品であったとすれば、必死になった捜索
活動を行った説明がつきます。

ロシアがイランを含む「ならず者国家」に対して融和的であるのは、
今に始まった事ではありません。イランは、軍事演習の中で、ロシ
アの超高速魚雷であるシクバルと同じ技術の産物と思しき武器のデ
モンストレーションを行っています。また巡航ミサイル技術の取得
や弾道ミサイル開発にも熱心な事は良く知られています。なお、巡
航ミサイルについては、長射程のKh-55に関する技術がウクライナ
から流出した事が判明しています。本家のロシアから新しい技術が
流出していても全くおかしくはないのです。

今回の事件で面白いのは、海賊が少ない欧州海域で、問題のある船
舶が狙い撃ちの形でハイジャックされた事です。こんな事が偶然に
発生するわけはありません。ロシアのイランに対する武器輸出をス
トップさせたいどこかの国がスポンサーになっていると考えるべき
であると思われます。正しくミッション・インポッシブルの様な某
国、某機関による特別ミッションの成果と言えるのではないでしょ
うか。

なお、捉えられた海賊8人は、全員がエストニア人の犯罪者という
報道もあります。


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2009年8月24日月曜日

18DDH「いせ」の建造状況(2009/8/23現在)





Ships Location

1
2 DD174 きりしま
3 DD143 しらね
4
5
6 DD182 いせ
7
8
9

18DDH「いせ」が進水したので、久しぶりにIHIマリンユナイテッドに撮影に行
ってきました。16DDH「ひゅうが」進水の時はマスコミや一般の関心も高かっ
たですが、今回は取り上げた新聞社もテレビ局も少なく空母型の護衛艦に対す
るアレルギーはかなり少なくなった様に思われます。

「いせ」と「ひゅうが」を比べても現時点では、外見上の相違点が判らない
ので、新規さがないのが、関心が薄れた理由かもしれません。艦番号の違いが
無ければ、撮影している私でも同じ艦の様にしか見えませんでした。

艤装岸壁には、「きりしま」と「しらね」が係船され、「きりしま」は定期点検中
「しらね」はCICの修復工事を行っていました。
「きりしま」は今年、MD対応の改造が施される予定ですが、定期点検後に実施
するのでしょうか?現時点では目だったら変化はないように思われます。


#1 DD182 いせ 左舷前方から

#2 DD181 いせ 艦首部を左舷から拡大撮影。後方のマストは しらね 

#3 DD174 きりしま 定期点検中の姿

#4 DD143 & DD182  新旧DDHの艦容と大きさの違いが良く判る


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2009年8月20日木曜日

日本人よ、たまには自信を持とう!!

※写真はみなとみらいの夜景
http://ganref.jp/m/outdachs/portfolios/photo_detail/d61953d34990ec9419a584015a70ea48
から転載

かつての超大国!日本はなぜ世界のリーダーになれないのか―米誌

2009年8月18日、米誌「World Policy Journal」夏季号は「日本はなぜ世界の
リーダーになれないのか?」と題した記事を掲載した。新華網が伝えた。

記事は、かつて経済超大国として世界のリーダーにもなり得る存在と目されて
いた日本だが、今や中国やインドなどの台頭によりすっかり影が薄れてしまっ
たと論じた。記事によれば、日本は過去40年間、世界第2位の経済力だけを武
器に国際社会で高い影響力を発揮してきたが、もともと政治や軍事面での実力
は伴っていなかった。第2次大戦後、奇跡的な経済成長を遂げた日本だが今や
その伝説も幻となり、大国としての地位すら危うい。

こうなると国際貢献のあり方も変える必要に迫られると記事は指摘。これまで
のように「何でも金で解決」という訳にはいかなくなるだろう。日本はすっか
り国際社会における自らの役割を見失ってしまった。国内政治も混乱が続いて
おり、今後の見通しは暗い。記事は、これほど短期間で国際地位が暴落した国
も珍しい、と日本の没落ぶりを強調した。(翻訳・編集/NN)

(レコードチャイナ 2009/8/20)


原文は以下のURLで全文が読めます。
http://www.mitpressjournals.org/doi/pdf/10.1162/wopj.2009.26.2.101

著者は、Aurelia George Mulganというオーストラリア人で、ニュー
サウスウェールズ大学の教授です。グレゴリー・クラークと反日日
本人の悪影響を受けすぎた反日学者様であるようです。最初のサマ
リの部分を読みましたが、自説を補強する為に、事実を知っている
のにそれに言及しない態度が見える様に思いました。

自虐的な日本人や日本人学者が多いですし、マスコミはそういう意
見を好んで取り上げます。日本人の多くが反省する事が大好きなの
で、悲観論が溢れかえる事になります。ただ、こういった主張だけ
を大事にするのではなく、これまで日本人が成し遂げてきた事にも
もう少し自信を持っても良いのではないかと思います。

以下は、某巨大掲示場のこの記事のスレッドに何度か書き込まれた
コメントですが、たまには、こういう見方をしても良いのではない
かと思い転載します。


外人が日本人を特別視してるってのは、自分の国の歴史少しでも知ってたら誰
でも分かるだろ。
まず、資源が全くないってことはすごいこと。もう両手両足もがれたぐらいの
ハンデ。
しかもすごいのは、米国の3分の1の人口、わずか25分の1の領土で、
その上ただでさえ極小の国土の7割が山、山、山。なーんにもない、山・・・。
だから農業で輸出して食べていくことすらできない。条件からして最貧国でも
おかしくない国。
そんな国が、100年ほど前で当時世界最強クラスだった露助とか清をあっさり
倒して、非白人国家で普通に白人常任倶楽部仲間入りしちゃってて、おまけに
米国敵に回してガチで戦争して、世界で唯一米国本土爆撃して、英国の無敵艦
隊フルボッコにして、オランダ倒して、世界で唯一原爆落とさせるほどてこず
らせて。
しかも二発だよ。二発。考えられない。
敗戦とか言ってるけど日本のせいでアジアから白人の植民地全部消されたし。
しかも信じられないのは、戦争に負けてただでさえ何にもない国がさらにイン
フラまで全部叩き潰されて、多額の賠償金まで背負わせて100%再起不能に
しといた極貧衰弱国家で、今度こそ生意気なイエローモンキーが消えて数百年
はウザイ顔見ないで済むと思ってたら、
直ちに再び白人社会に経済で参戦して来くさって、参戦どころかごぼう抜きで
たった2,30年であっという間に米国さえ抜いて世界第一位。
東京の土地だけで米国全土が買えるほどの呆れた価値になっちゃう程の超絶経
済力で世界中( ゜Д゜)ポカーン・・・状態。
その後もずーっと二位維持。頭一本でそれ。
しかも経済の80%が内需。内需だけでそれ。
金融とかでまだ全然進出してないし車や家電、工業製品ももまだまだ進出しき
ってなくてそれ。
もうキチガイの域。伸びしろありすぎワロタ。戦後60年一発も打たずに侵略せ
ずにこれ。 何気に世界最長寿国とかなってる。
んで今度は漫画・アニメ・ゲーム。気がつけばハリウッドの規模とっくに超えてる。
アメリカの検索で一位になってるのが日本のアニメとか。
世界中で一番人気の映像作品が日本のアニメとか。
極めつけは世界一長い国号、2000年のどの白人より長い王室ならぬ、
その上の皇室保有。エンペラーに代表される歴史。
普通の神経してたらこんな国怖くて関わりたくない。



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2009年8月19日水曜日

ノーベル平和賞の為に国を売った政治家逝く

※写真は、読売新聞サイトから転載

金大中氏死去 地域対立の象徴 親北・左派、求心力を喪失

【ソウル=黒田勝弘】韓国政治に長く大きな影響力を持ってきた金大中元大統
領の死は、今後の韓国政局に微妙な波紋を呼びそうだ。特に反政府・野党勢力
にとっては求心力を失ったことになり、政権奪還に向けた新しいリーダーの登
場や政界再編成などで紆余(うよ)曲折が予想される。

韓国の現代政治は1980年代以来、30年近く、金大中、金泳三、金鍾泌氏
によるいわゆる“3金時代”が続いた。しかし政界を引退した後、金泳三元大
統領は衰えが目立ち、金鍾泌元首相は病床にある。その中で金大中氏だけは、
健康不安にもかかわらず内外情勢に関し政治的発言を続け、最後まで“生臭さ”
があった。

金大中氏が大統領退任(2003年)後も影響力を維持できたのは、国内で政
治的、社会的に最大の不満勢力である全羅道出身者の絶対的な支持を得ていた
ことと、初の南北首脳会談実現(2000年)を含む対北融和政策などで“親
北朝鮮”的だったからだ。

韓国政治は現在の野党・民主党もそうだが、以前から野党・反政府勢力の中心
は全羅道出身者だ。全羅道が故郷の金大中氏は彼らの間では絶対的な指導者で、
その一挙手一投足は大きな影響を与え、彼らの行方を左右した。

たとえば野党勢力の大統領候補決定には金大中氏の意向が大きく影響し、野党
分裂や新党結成など野党陣営再編でも金大中氏の考えが決定的だった。02年、
盧武鉉前大統領が非全羅道系でダークホースだったにもかかわらず大統領に当
選できたのも、金大中氏の支持のおかげだった。

このため、韓国政治の“病”といわれる地域対立は金大中氏によって深まった
との評もあった。

一方、金大中氏は亡くなる直前まで、保守派の李明博現政権の対北政策を激し
く批判してきた。国際協調を重視し、対北援助に消極的な李政権が気に入らな
かったからだ。時には北朝鮮の韓国非難そのままに「このままでは戦争が起き
る」といわんばかりに李政権批判を続けてきた。

したがって北朝鮮にとって金大中氏は最後まで最大の理解者であり“援軍”だ
った。「李明博政権打倒!」を叫ぶ韓国内の親北・反政府派にとっても最も好
都合の人物だった。

そのため晩年は韓国内の保革・左右対立の焦点になっていた。金大中氏の死は
親北・左派勢力にとっては最大の理解者を失い打撃が大きいが、一方の保守派
は最大ライバルが消えたことでホッとした感じだ。

(産経新聞 2009/8/19)


棺を覆って、金大中の業績は何だったのかと考えれば、IMFショ
ックの後、韓国経済を立て直した一点しか評価できません。それも
通貨危機後、IMFから手取り足取り経済運営について指導があり
それに従った経済運営を行っただけです。

勿論、IMFの処方箋は非常に厳しいものでしたから、その政策に
国民の協力を取り付ける事ができたのは、大統領としての金大中の
実力によるものと言えば、言えるでしょう。しかしながら、リーマ
ンショック後の世界不況に自国経済を破綻させる事なく対応してい
る現在の李明博政権の方が、破綻後の再建のみを行った金大中政権
よりも、寧ろ困難な課題を実行しているのかも知れません。

では、それ以外の点ではどうだったのでしょうか。金大中が韓国の
民主化の旗手であったのは事実ですが、民主化は、韓国経済の発展
と軍事政権側の譲歩によって実現したのであって、金大中が勝ち取
ったものではありません。韓国内の民主化に関しても、上記の記事
にもある通り、金大中の存在によって、地域対立は深まったのであ
り宥和が進んだ訳ではありません。

更に、彼の唱えた「民主」が結局は、「親北」に過ぎなかった事が
問題でした。彼がノーベル平和賞を獲得した契機となった南北和解
は、韓国から北朝鮮への数百億円とも一千億円との言われる一方的
な資金援助や譲歩の結果でしかなく、結果的に北朝鮮の核開発を加
速したに過ぎなかった事が明らかになっています。つまり、金大中
はごく短期間の南北協調を演出する為に、長期的には、韓国を大変
な安全保障上のリスクに晒したと言えます。

更に、金大中の問題点は、国民を精神的にも北朝鮮に対して武装解
除してしまった点です。金大中は、民族「統一」の旗印を下ろした
最初の政治家であり、北朝鮮の抑圧された民衆に対しては、何の貢
献も行う事は無く、国家の金を使ってノーベル平和賞を買った売国
政治家と断じざるを得ないのです。

金大中は結局の所、韓国に打ち込まれた北朝鮮の楔以外の何者でも
なく、その後を継いだ盧武鉉と相次いで世を去ったのも、核開発に
成功した北朝鮮にとっての存在価値を喪失した結果と言えるのかも
知れません。


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2009年8月17日月曜日

燃費リッター97キロの謎

※写真はUS News & World Reportから転載

燃費計算「世紀の誇張」か GM新型車で米誌

米消費者団体専門誌コンシューマー・リポート電子版は15日までに、米自動
車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が家庭で充電可能な新型のプラグインハ
イブリッド車「シボレー・ボルト」の燃費を「ガソリン1ガロン当たり230
マイル」(1リットル当たり約97キロ)と発表したことについて「世紀の誇
張の可能性がある」と酷評した。
GMはボルトを経営再建の切り札と期待。米メディアは、燃費効率が「米国の
新基準ではトヨタ自動車のハイブリッド車『プリウス』の4倍程度」と伝えて
いた。ボルトは40マイル(約64キロ)までは家庭で充電した電池で走行で
き、その後は再充電のためガソリンエンジンが動力源となる。
同誌は、GMがボルトの詳細を明らかにした11日の発表を「誇大広告」と指
摘。最初の40マイルに使う電気の料金を考慮に入れると「ガソリン1ガロン
当たり100マイル相当」の方が妥当などと列挙した。(共同)

(産経新聞 2009/8/15)

写真を見るとプリウスに良く似た車に見えますが、これが、今、米
国自動車業界で話題のハイブリッド車であるシボレー・ボルトです。
車の形がプリウスに似ているのには、理由があります。
ホンダのインサイトもそうですが、車体中央部から後部にバッテリー
を配置しており、バッテリーの上にトランクを作り、燃費を上げる
為に空気抵抗を下げようとすると、特徴のあるヒップアップの形に
なるという訳です。今時、通常のガソリン車と同じ車体にハイブリ
ッド機構が搭載されている例も多いですから、必ずしも、ハイブリ
ッド用車の形がある訳ではありませんが、ハイブリッド専用車で燃
費を良くする事を考えると合理的な形状は決まってくると言えます。

さて、シボレー・ボルトが、話題を集めているのは、プリウスに似
た形をしている為ではありません。その一つは、プラグインハイブ
リッドという電気自動車に近い機構を搭載した事と、もう一つは、
リッター97キロ、プリウスの4倍というその圧倒的な燃費性能を
実現した事にあります。正に新生GM期待の星という訳です。
もっとも、このリッター97キロという燃費は公式のものではあり
ません。GMが仮に燃費性能として公表したものに過ぎません。
悪くいえば、GMが消費者に燃費性能を高く印象付けたいが為に、
公表した数字であるとも言えます。その為に、コンシューマーレポ
ートが「世紀の誇張」である可能性を指摘している訳です。

この様に燃費が問題になるのは、プラグインハイブリッド車(や電
気自動車)の燃費をどう測定するかについて、まだ公式の燃費測定
法が定まっていない事が、その理由になっています。ちなみに、米
国日産自動車は電気自動車のReefの燃費をシボレー・ボルトより更
に高い「ガソリン1ガロン当たり367マイル」(1リットル当た
り約164キロ)と発表しています。

シボレー・ボルトの場合、通常は、家庭の一般用電源プラグにコン
セントを差し込んで充電する事で、最初の40マイル(約64キロ)
までは充電した電池で走行できます。そして、その後は再充電のた
めガソリンエンジンが動力源として稼動する事になります。
米国でも、一般の家庭であれば、毎日40マイル走る事はあまりあ
りません。その為、40マイルを超えて走る事がなければ、ガソリ
ンエンジンが動く事がないので、燃費は無限
という事になります。
GMが公表した数字は、この40マイルを超えて走る場合と40マ
イルを超えて走る場合の燃費(公表されていませんが、US News &
World Reportはリッター当り15キロ弱と推定しています)の割合
を調整して公表したと言えます。

なお、試しに家庭での充電を無料と計算し、シボレー・ボルトのガ
ソリンタンクの大きさを30リットルとすれば、充電で2500キ
ロ、ガソリンエンジンで450キロを走れば、燃費97キロが実現
する事になります。(この場合、毎日平均で75キロ走り、その内、
64キロを充電で、残り11キロをガソリンで走る計算です。)

こうなりますと、従来の燃費計算は無意味になってしまいますので
日本の10モード燃費に相当するEPA燃費を計測し公表している米国
環境保護庁では、100マイル当りで使用する電力量(キロワット/時)
を測定し、その数字からガソリンの使用量を一定の割合で逆算し、
それによって、電気自動車の燃費もガロン当り何マイルと表示する
方法を検討しているそうです。


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2009年8月11日火曜日

そして靖国は首相が行けない場所になった。


首相、靖国参拝見送りへ 中韓との関係考慮

麻生太郎首相は10日夜、終戦記念日の8月15日前後の靖国神社参拝につい
て「最も政治やマスコミの騒ぎから遠くに置かれてしかるべきだ。(靖国神社
は)静かに祈る場所だ」と述べ、事実上、参拝を見送る意向を明らかにした。
官邸で記者団の質問に答えた。

首相は外相当時も中国、韓国両国に配慮して参拝を見送っており、今回も同様
の判断とみられる。「15日に参拝するか」との質問には直接答えず「国家の
ために尊い命をささげた人たちを政争の具にするとか新聞のネタにするのは間
違っている」とも指摘した。

首相は就任後の昨年10月の衆院予算委員会で、参拝について「行くとも行か
ないとも答えるつもりはない」と述べ、態度を明確にしない「あいまい戦略」
を取る考えを示していた。

今年4月、首相が靖国神社の春季例大祭に合わせて供物を奉納した際、中国側
は強い不快感を表明。首相は5月に北京で行われた日中首脳会談で「(過去の
侵略などへの痛切な反省と心からのおわびを表明した)1995年の村山富市
首相談話などから何ら変更はない」と釈明した。

首相の靖国参拝をめぐっては、2006年8月に当時の小泉純一郎首相が参拝
したが、後継の安倍晋三、福田康夫両首相は見送っている。

首相は、同年8月、宗教法人としての靖国神社の自発的解散を前提に、設置法
を制定して特殊法人「国立追悼施設靖国社(招魂社)」に移行、実質的に国営
化するとの私案を発表している。

(時事通信 2009/8/10)


改めて言うまでもなく、中韓が幾ら文句を言った処で、日本と言う
国の命により出征し、その命を捧げた軍人を祀る施設に、国家の代
表者が参拝できない状態を作るというのは、愚の骨頂でしかありま
せん。
中韓に配慮と言っていますが、元々中韓の主張が理不尽な内政干渉
でしかなく、それへの配慮を行うという事は、自国への内政干渉を
認める事に他なりません。

特に韓国、朝鮮などは、日本と戦争をした訳でもなく、首相の靖国
参拝に文句をつける理など全くないと言っても過言ではないのです。

8月15日が参拝に適当でないというのであれば、首相として適当と
思う時期に参拝すれば良いのです。しかし、安部、福田両首相同様、
麻生首相も参拝しないのでは三代続いて首相の靖国神社参拝がない
事になり、これでは、政権交代後に民主党の首相が参拝しなくても、
自民党が野党として批判する事ができなくなります。民主党の首相
が何代続くかは判りませんが、首相が靖国神社を参拝できない事が
完全に定着し、日本国内に首相が行けない場所を作ってしまうと言
う今以上の国辱問題になってしまうと考えます。

麻生首相は、マスコミの揚げ足取りとバッシングの結果とは言え、
身から出た錆びで、政権交代を余儀なくされつつあります。総選挙
で自民・公明の連立与党が多数を占める可能性は略なくなっていま
す。麻生首相が選挙後も政権を担当する可能性は無いと言っても過
言ではありません。

そうであれば、麻生首相は、後世に残す最後の善行として、せめて、
靖国参拝だけは、首相として断固実行し、他国の内政干渉を排除す
る姿勢を明確にすべきであったと思われてなりません。日本という
国の為に誠に残念であったと言わざるを得ません。


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2009年8月10日月曜日

北方領土を回復したいのであれば、人道支援も拒否すべき

※写真は国後島。根室支庁のサイトから転載

ロシア、北方領土への支援拒否 「日本が四島買収」と住民も支持

ロシア外務省が、日本側から北方領土への人道支援の受け入れ停止を表明した
ことについて8日、国後、択捉両島のロシア人住民からは「(支援は)もう必
要ない」との声があがった。

「助けてくれてありがとう」。択捉島の無職マリヤ・イワノワさん(68)は、
ディーゼル発電所、医療機器など、これまでの人道支援に感謝する。だが「支
援は日本が四島を買収するためのもの。ロシアは貧しくはない」として、人道
支援を事実上拒否したロシア政府の判断を支持した。

択捉島の無職アレクサンドル・プラズニコフさん(56)も「人道支援は屈辱
的。日本は政治目的に利用している」と厳しい。

一方で、支援の全面的な停止を心配する声も聞かれた。国後島の会計士タチア
ナ・ヤキモワさん(59)は「日本で子どもを治療させたい親はたくさんいる」
と話す。ロシア政府は、人命にかかわるケースでは柔軟に対処するとしている
が、ヤキモワさんは「子どもの医療支援だけは続けてほしい」と強調した。

(北海道新聞 2009/08/09)

平たく言えば、今までの人道支援には相応の意味があったと思いま
す。つまり住民に日本の援助があれば、(あるいは日本領になれば)
生活が楽になるのを理解させる事はできた訳です。鈴木宗男氏が意
図した様な日本依存にさせる事は、元々実現に無理があったと言わ
ざるえないと思います。しかしながら、これまでの援助を通して繁
栄する日本が海峡を挟んだ身近に存在する事を認識させた事は大き
い効果と言えます。

そういう理解に立った上で、今度は医療に関する人道援助も含め一
切の援助を断つべきなのです。つまり、北方四島の住人に、日本の
援助なく生活する事の辛さを思い出させ、かつ、この処のリーマン
ショックで資源安に直撃されているロシア政府には、北方四島を保
持する経済的な負担の大きさを認識させるべきであるという事なの
です。

住民は、中止される事になった日本の援助に相当する物質的援助を
ロシア政府に要求する筈です。人間は一度、覚えた利便性を損なわ
れると、その利便がなかった時には耐えられた苦痛にも耐え難く感
じる様になります。その結果、北方四島から、ロシア本土に帰還す
る人間が増えれば、ロシア政府の北方四島での入植政策を失敗に導
く事も可能になります。また、ロシア本土への移住に至らないまで
も、日本の人道援助の復活や、対日強硬政策を取る、ロシア政府や、
地方政府に対する批判に繋がれば、それはそれで政治的な効果があ
ったと言える様に思います。また、ロシア政府が、北方四島の住民
への物質的な援助を行えば、北方四島の維持コストを増加させた事
になり、それはそれで大きな意味があります。

ロシアにとっては、北方領土は、一辺境に過ぎません。米ソ対決時
代に比べ、米国の軍事力と直接対峙する前線と言う、軍事的な重要
度は、大幅に減じています。勿論、軍事的な重要性があるのは変わ
りませんが、死活的に重要という訳ではなく、領土を維持する経済
的な負担より遙に大きな利益と、大国として対面を満足できる名分
があれば、北方領土問題の解決も全く不可能な状況ではないと考え
ます。

我々は、今回のロシアの「北方領土への支援拒否」という如何にも
ロシアらしい居丈高な態度を正に奇貨と捉え、それを活用して、北
方領土返還へ結びつけていく方向に活用すべきと考える次第です。


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