2009年10月5日月曜日

Mitsubishi, the fifth plane manufacturer 四社寡占の壁を突破したMRJ


※CGはMRJサイトから転載

国産「MRJ」米国の空へ 三菱航空機、海外から100機受注

三菱重工業の子会社、三菱航空機は2日、米航空会社2社から開発中の国産初
の小型ジェット機「MRJ」を100機受注したと発表した。発注したのは、
米大手地域航空会社のトランス・ステーツ・ホールディングス(TSH、米ミ
ズーリ州セントルイス)。2014年以降に5~6年で納入する計画だ。“日
の丸”ジェットと期待されるMRJは、航空不況の逆風で、受注はこれまで全
日本空輸からの25機にとどまっていた。海外航空会社から大量受注を獲得し
たことで、競争が激化している小型航空機市場での受注拡大に弾みがつきそうだ。

会見した三菱航空機の江川豪雄(ひでお)社長は「100機もの受注につなが
り、喜ばしい」と述べた。三菱重工の大宮英明社長も「MRJの環境性能や経
済性が理解してもらえた結果」とのコメントを発表した。

受注額については、競争上の理由で明らかにしなかった。

同席したTSHのリチャード・リーチ社長は「正直、厳しい経済環境下だが、
高い技術や優れた運航性能、乗客の快適さなどをみて決定した」と、選定理由
を説明した。

MRJには70席、90席、100席のタイプがあるが、どの機種にするかは
今後の経済情勢などを見ながら判断するという。

TSHは、傘下にトランス・ステーツ・エアラインとゴージェット・エアライ
ンの2社を持ち、米大手航空会社のユナイテッド航空とUSエアウェイズから、
地方都市への路線の運航を請け負っている。米国内の50都市を結び、現在は、
ブラジルのエンブラエルの機材を使用している。

MRJは、「YS-11」以来40年ぶりの日本独自開発となる小型旅客機で、
価格は1機30~40億円程度。客席数が70~90席程度のリージョナルジ
ェットでは、エンブラエルとカナダのボンバルディアが“2強”の地位にある
ほか、中国やロシアの航空機メーカーも参入し、存在感を高めつつある。

MRJの開発には、1500億円以上が投じられたとされるが、新規参入であ
ることに加え、航空不況も重なり、受注活動は苦戦を強いられていた。また設
計変更に伴い初号機の納入が14年1~3月に当初計画から最大3カ月遅れる
見通しになっている。

不況下でも、高効率のリージョナルジェットへの潜在需要は高いとされ、初の
海外受注を契機にさらなる攻勢をかけていく考えだ。

(フジサンケイ ビジネスアイ 2009/10/3)


中型から大型旅客機については、エアバスとボーイングの二強寡占
体制。リージョナル機から小型旅客機については、エンブラエルと
ボンバルディアの事実上の寡占体制が続いていた航空業界ですが、
今回のMRJの大量受注により、その体制の一角に風穴が開けられ
た言える大きなニュースであると思われます。

AP電によれば、TSHは過去5年に亘りMRJの顧客アドバイザ
ーを勤めていたという事ですから、TSHをアドバイザーに引き込
んだ事そのものが、今回の発注に繋がっていると言えるかも知れま
せん。

記事にもある通りTSHは、トランス・ステーツ・エアラインとゴ
ージェット・エアラインの2社を持ち、米大手航空会社のユナイテ
ッド航空とUSエアウェイズから、地方都市への路線、ユナイテッ
ド・エクスプレスとUSエアウェイズ・エクスプレスの運航を請け
負っています。会社規模は、リージョナル航空として全米10位、
独立系のオペレータとしては、全米五位と、リージョナル航空とし
ては中堅の企業規模と言えます。既存の機体として、MRJがライ
バルとするエンブラエルERJ145を29機とCRJ700を
22機保有しています。

この手のオペレータは、大手から運航を請け負っているが故に、運
航請負契約の更新、新規獲得を目指し熾烈な競争を行っています。
今回のTSHの決定も2014年に予定されるユナイテッド・エクスプ
レスとの契約更新を睨んだものであり、今回の取引で、TSHが、
確定発注50機に加え50機のオプション契約を結んでいる処から
も、MRJがTSHの企業規模を倍に出来る高いポテンシャルと経
済性を持っているとTSHが考えている事が判ります。

今から思えば、9月に発表された、三点の変更とそれによる、初号
機納入の三ヶ月延期は、TSHの要求を三菱が受け入れた事による
ものであったと推測できます。勿論、これらの変更点は米国のリー
ジョナル航空の現実を見据えた競争力向上の為に必須のものであっ
た事は言うまでもありません。

客室高の拡大とハットビンの容量増加により、リージョナル機で一
番不足している客室持込貨物のハンドリングが改善する事で、キャ
ビンクルーの労働効率が著しく改善しますし、前方貨物室を排し、
後部に貨物室を集中する事で貨物の取扱は、大幅に改善し、荷捌き
要員の削減も期待できます。主翼の素材を炭素複合材からアルミ合
金に変更する事で、ファミリー機体毎に主翼を変更可能とする事で、
機種拡大が図れると共に機種毎の主翼設計の最適化を図る事ができ
ます。

これらの改善点に加え、元々MRJが特徴としていたGTF(ギア
ード・ターボ・ファン)の高い燃費効率が、MRJを、米国のリー
ジョナル航空業界で高い競争力を持つ機体にしたと言えます。

今回の取引で、TSHは、一機当り30億円(3000万ドル)に近い価格
で契約したと思われます。(恐らく三菱飛行機側では利益は出てい
ない筈です。) この価格であれば、現時点で計画されている機体
でこれ程の経済性を持っている機体はないと言えます。対抗しよう
とした場合は、ボンバルディアは、Cシリーズで対抗するには短胴
型を開発しなければなりませんが、70席や90席用としては贅沢な作
りです。CRJで対抗する場合は、胴体の改設計とGTF対応が必
要となります。エンブラエルの場合も同様です。

これらを考え合わせるとMRJは5年程度はライバル機に先んじた
と言えます。しかしながら、このリードタイムを有効に使えるかど
うかは、今後のMRJの開発を如何にスムースに進められるかにか
かっています。もし、大きな手戻りなく機体開発を進められた場合
三菱の名は、世界の大手航空機製造会社の一角に刻み込まれる事に
なります。まさにこれからが正念場です。日本の航空機産業離陸の
為にその成功を祈りたいと思います。


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