最強の双発ロケット 「H2B」11日打ち上げ
国内最強のパワーを持つ新大型ロケット「H2B」の初号機が11日、種子島
宇宙センター(鹿児島県)で打ち上げられる。国産初の双発ロケットで、国際
宇宙ステーション(ISS)の物資補給機「HTV」を運ぶ重要な任務を担う。
世界が注目する中、日本のロケット技術の真価が問われる。
H2Bロケットは国産主力機「H2A」を土台に、宇宙航空研究開発機構
(JAXA)と三菱重工業が共同開発した。最大の特徴は、第1段の主エンジ
ンを2基に増やしたこと。これによりパワーを約4割増強し、普通の人工衛星
の数倍の重さがあるHTVの打ち上げを可能にした。
強力なエンジンを新たに開発するのではなく、すでに実用化したエンジンを2
基搭載することでコストを抑え、設計から4年の短期間で完成にこぎつけた。
主エンジンを複数搭載したロケットは、3基搭載の米スペースシャトルや、20
基も搭載したロシアのソユーズなどがあり、世界の大型機の主流になっている。
ただ、エンジンが増えるとシステムが複雑化し、一般に不具合が起きやすくな
る。H2Bの計算上の信頼度は、H2Aよりわずかに低い。JAXA幹部は
「実質的には同等で不安はない」というが、油断はできない。
国産大型機は初代の「H2」で平成11年、主エンジンの燃料ポンプが破損。
後継のH2Aは15年、側面にある補助ロケットの噴射口に想定外の穴が開き、
いずれも打ち上げに失敗した。
3代目のH2Bは、この2つの事故の防止策を取り入れており、国産大型機の
集大成といえる。開発陣にとっては10年越しの雪辱戦だ。幹部は「過去の失
敗と反省から、努力してここまできた。何とか成功させたい」と意気込む。
ISSに食料や機材を運ぶHTVは日本初の無人宇宙船で、今回が初仕事。シ
ャトルは来年に引退が予定されており、その後の輸送手段のひとつとして重要
な役割を負う。ISSでは滞在飛行士が今年から6人に倍増し、物資需要が増
えている。日本はHTVを27年まで毎年1機ずつ、計7回打ち上げる国際的
な義務があり、責任は重い。
打ち上げ時刻はISSが日本上空を通過する午前2時4分。夜間の発射は中型
ロケットM5による火星探査機「のぞみ」(10年)以来で、大型機は初めて。
国際的な注目度は高く、米航空宇宙局(NASA)の幹部や海外メディアも現
地入りして打ち上げを見守る。(長内洋介)
(産経新聞 2009/9/07)
今週末に行われるHTV打ち上げは日本の宇宙開発にとってエポッ
クメーキングな出来事と言えます。
もともとは、HTV計画は、世界の耳目を集める様なプロジェクト
ではありませんでした。
どちらかと言えば、ISS(国際宇宙ステーション)に接続された、
宇宙実験室である「きぼう」に補給品を持ち込む事を目的とした地
味な計画だったと言えます。
ISSの運用計画では、もともと全体の運用維持に係わる部分の補
給については、NASAがスペースシャトルで行いますが、各国の
モジュールへの補給は、各国が各々手配する事になっていました。
HTVはこの原則に従って開発されたもので、日本以外にも独自の
宇宙研究室を持つ欧州は、同様のATVという独自輸送機を開発し
ており、昨年には一号機がISSへのドッキングに成功しています。
その元々は地味な計画が注目を集める様になったのは、ISSへの
補給の任に当たる事になっていたスペースシャトルがコロンビアの
事故によって2010年には退役する事になってしまった事によります。
シャトル後継機であるオリオン宇宙機は、2014年には、完成する事
になっていますが、計画は遅れ気味です。シャトル退役から、オリ
オン完成までの間は、NASAは、商業軌道輸送サービスを使用す
る事とし、SpaceX社のドラゴン宇宙機とオービタルサイエンシズ社
のシグナス宇宙機を選定して、その開発を進めています。完成は各
々、2009年(今年)と2010年(来年)の予定ですが、今日現在、宇宙機
も打上げロケットも完成しておらず、初飛行にもまだ時間がかかる
見込みです。
HTVの打上げに用いられるH-IIBロケットも、お初である点
は変わりませんが、全く、打ち上げられた事もないロケットと比較
すれば、各コンポーネントはH-IIAで実績を積んだものであり
信頼性は数段高いと言えます。
HTVは、欧州やロシアの宇宙機と違って、自動ドッキング機能は
持ちませんが、その分、機体制御システムを単純化でき、価格を抑
えられる一方で、人間が介在する為、相応の安全性も確保可能です。
また、ATVもロシアのプログレスも、ロシア製モジュールにドッ
キングする為、ロシア規格の小型のドッキング装置を使っているの
で、大型の物資輸送ができませんが、HTVは、米国製のハーモニ
ーと接続する為、共通結合機構(CBM)を使用するので、大型の物
資も搬入可能であったり、船外用物資の輸送も可能であるという特
徴があります。(但し、補給能力そのものはATVの方が上です。)
つまり、NASAにとっては、緊急の際に、JAXAに頼み込めば
シャトルで輸送するのと同じ規格の補給物資をHTVで運ぶ事が可
能である為、商業軌道輸送サービスが使えない時の保険として使用
可能という事になります。また、HTVは、2010年以降2016
年まで、年間一機が製作される事になっており、増産も比較的容易
と考えられる事から、オリオンや商業軌道輸送サービスの開発その
ものが、更に遅延する事になった場合、その間の輸送ニーズを賄う
ことも可能になる訳で、その点でもNASAの期待が高まっている
と言えるのです。
これに加え、日本には、HTVを元にした有人宇宙機を開発する構
想があります。HTVはモジュール設計がされている為、有人カプ
セル部分を開発し、これに与圧部と機械・推進部と組み合わせる事
で比較的容易に有人宇宙機を開発できるというものです。シャトル
退役によるISS向け輸送力不足の中で、人員輸送能力と物資回収
能力が一番深刻ですが、HTVに加え、HTVをベースにした有人
宇宙機を開発する事で、この両者に対応できる事になります。
更に、2016年にISSが退役した後は、日本独自の宇宙ステーショ
ンをHTVを元にして展開する事が構想されています。また、将来
の有人月探査計画などもHTV発展型の有人機構想の延長上にあり
ます。HTVは正に21世紀の日本の宇宙開発の根幹であり、今週
末の打上げの成功を心から祈りたいと思います。(9/8に米国の大統
領諮問会議でISSの退役を2020年まで延長する勧告が行われる見
込みとなっています。)
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