※写真は産経新聞サイトから転載
亀井金融相「金融機関の負担を公的資金で支援」 モラトリアム法案で
亀井静香金融相は1日、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済を3年
程度猶予する「モラトリアム法案」について、「貸し手も倒れるようなことは
絶対にあってはいけない」と述べ、公的資金で金融機関の負担を支援する意向
を表明した。地域金融機関を対象としている改正金融機能強化法の活用も視野
に、金利や元本の補てん分を穴埋めする意向だ。
亀井金融相は記者団に対し、「信金信組など経営体力の弱い金融機関が、地域
の中小企業に支援できるかという問題がある」と話し、返済猶予期間中の利子
補給や、借り手が経営破たんした場合の元本保証を検討する方針を示した。こ
れにより「地方の中小金融機関が経営難に陥ることは絶対にない」とした。
改正金融機能強化法は、中小企業向けの貸し渋り、貸しはがし対策として昨年
末に施行された。政府保証のついた12兆円の公的資金枠があり、すでに北洋
銀行など7つの金融機関に合計で約230億円が注入されている。
ただ現行の法制度で「モラトリアム法案」に流用できるかどうかは不透明で、
与党3党の検討チームと金融庁で詳細を詰める。法案の詳細は9日までにまと
め、臨時国会での成立を目指す。
(産経新聞 2009/10/01)
亀井静香がモラトリアムを行う上で、当初は、政府による金融機関
に対する負担軽減策を全く考えていなかったのは明らかです。
「中小企業に対する貸し渋り、貸し剥がしを許さない」が一転して
金融機関の負担を公的資金で支援するなどという生温い、しかも不
充分な対策を急いで取り繕っているのは、モラトリアム発言が金融
機関株に対する売り浴びせを呼び、日本株全体の下落を招いたから
に他なりません。
もともと資本は臆病な存在です。モラトリアム→金融機関の収益毀
損→金融機関の収益予測の悪化→金融機関に対する投資引き上げ→
金融機関の株価下落→日本株全体の株価悪化
という連想が働くのは誠に自然な成り行きと言えます。
やらずもがなの前原経産相の日本航空再建問題と言い、通常の支援
をやっていけば問題ない事を、受けを狙って大げさに騒ぎ立てたの
が、尾を引いている構図は両者に共通しているのです。但し、事が
一企業に留まらない点で亀井静香の罪はより重いと言えます。
亀井氏が、銀行を叩けば良いと判断したのは、バブル崩壊とその後
の失われた10年の経験に基づくものでしょうが、少なく共、今回
のリーマンショックやサブプライム問題を契機とした世界同時恐慌
に関して日本の金融機関は、強欲の罪に問われる点はありません。
また、影響がないとは言えませんが、海外に対する投資を減少させ
ていた点で寧ろ直接的な損失は海外の金融機関より余程少なく、上
手く立ち回っているとすら言えます。
バブルからの回復に失われた10年と言われる程に時間を要したのは、
デフレスパイラルの中で、金融機関の体力が失われていったからに
他なりません。逆に言えば、金融機関の体力さえあれば、デフレス
パイラルを食い止める事が可能なのです。今回の不況では、日本の
金融機関の体力は幸いにしてそれ程、損なわれていません。
その状況をぶち壊しにするのが、金融機関に負担を押し付ける形で
行うモラトリアムなのです。モラトリアムを単純に実行すれば金融
機関は貸付による収益を全く得られない事になってしまい営業自体
が不可能となってしまいます。これが金融機関の体力を損なうのは
誰の目にも明らかです。金融機関の体力が損なわれれば、金融機関
が新規に融資を行う事ができなくなってしまいます。
つまり、当初の亀井モラトリアム案は、中小企業対策になるどころ
か日本を再度のデフレスパイラルに叩き込む最悪の政策になりかね
ないものだったのです。
金融庁は銀行の健全性を守るのが役目ですから、その様な無謀な試
みを許す筈もありません。誰が人柱になったのかはわかりませんが、
亀井大臣が遅ればせながらも当初の案を放棄したのは誠に幸いな事
と言えます。
金融機関の負担を公的資金で支援するなどと言った中途半端な事を
いうのではなく、政府が政策としてモラトリアムを実行したいので
あれば、金融機関には影響を及ぼさないよう政府が借り手に変わっ
て金融機関に全ての利息を支払うべきなのです。それに満たない支
援内容であれば、市場は、再度金融機関株を売り浴びせ、民主党政
権を揺さぶるに違いない事を予言しておきたいと思います。
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