※写真、CGは朝鮮日報サイトより転載
人工衛星、覆い外れず失速=韓国
韓国教育科学技術省は26日、人工衛星搭載ロケットの打ち上げ失敗について、
大気圏内の飛行時の摩擦から衛星を防護するフェアリング(覆い)が正常に外
れなかったため失速したことが原因と推定されると発表した。
衛星はロケットから切り離されたが、二つある覆いのうち片方が正常に離脱せ
ず、十分なスピードを得ることができなかった。衛星は落下の過程で燃え尽き
たとみられる。
(時事通信 2009/08/26)
韓国初の人工衛星搭載ロケット打ち上げ、目標軌道に乗らず失敗
韓国は25日、初の人工衛星搭載ロケットを打ち上げたが、計画していた軌道
上に衛星を乗せることができなかった。
安秉万(アン・ビョンマン)教育科学技術相は、衛星は打ち上げから8分後に
2番目のブースターを切り離した後、目標の軌道に入らなかったことを明らか
にした。
プロジェクト関係者は、失敗の原因は特定できないとしつつも、衛星の軌道を
修正する機能がブースターになかったと述べた。
北朝鮮は、韓国のロケット打ち上げに警戒感を示しており、今月に入りロケッ
ト打ち上げやそれに対する各国の反応を注視していると表明していた。
打ち上げは当初8月19日に予定されていたが、圧力計のソフトに異常が発生
したため延期されていた。
今回打ち上げられたロケット「羅老号」(KSLV―I)の開発には、ロシア
の協力を得た。ロシアはロケットの1段目を開発したほか、テストや技術面の
サポートを提供。
ロケットは全長33メートルで2段式。開発費用は5025億ウォン(4億ドル)。
韓国は2018年までに、自力でロケット開発し、2025年までの月探査機
打ち上げを目指している。人工衛星打ち上げのための商業サービス開始も検討
している。
(Reuters 2009/08/25)
七回の打上げ延期を繰り返した上、漸く、昨日打ち上げられ、当初
は、打上げ成功と伝えられた羅老号ですが、残念ながら衛星を軌道
に乗せる事なく、大気圏に再突入し、燃え尽きた様です。
昨日の遅い段階では、予定された軌道に投入できなかったと報道さ
れ、その理由としてフェアリングの片側が外れなかったという見解
が非公式に流れていましたが、それが公式に確認された形になりま
した。上の朝鮮日報作成のCGでは、その時に流れていた失敗原因が
三つあげられています。
さて、通常、ロケットが打ち上げられる際には、ロケットの姿勢や
高度、加速度、ブースターや一段目の切り離し、フェアリングの開
放等のイベントの結果、ロケットに搭載された監視カメラの映像等
をテレメトリー信号として地上に送っています。また、地上からも
目視とレーダーの両方を使って衛星の姿勢、高度、針路、速度等を
観測していますから、どの段階で、計画値と違ってきたかは明確に
識別できていた筈なのです。
フェアリングが外れなかったのが事実であれば、打上げ3分35秒後に
衛星保護カバー分離した段階から、予定された高度、速度とテレメ
トリーや地上からの観測数値の乖離が大きくなってきていた筈です。
予定では投棄される筈のフェアリングの重量が余計に乗っかってい
ますし、ロケットの重心も変わってきます。
衛星を分離した高度が予定よりも30キロ以上高かった事も良い事
ではありません。人工衛星になる為には、水平方向の速度として、
毎秒7.9キロの第一宇宙速度を満足する必要がありますが、予定
以上に上昇するに必要とした加速度は、この水平速度成分を犠牲に
する事で得られているからです。この加速度の違いも当然ながら、
テレメトリーデータに現れていた筈なのです。
日本を例を挙げるのであれば、2003年5月に情報収集衛星を軌道に
載せる為に打ち上げられたH-IIA 6号機が、2本のSRB-A(固体ロ
ケットブースタ)のうち、1本が分離できず、そのままでは、高度
および速度が不足することからロケットを指令破壊しましたが、こ
れと略同様の事が羅老号にも起こっていたと言えるのです。
こういったテレメトリーの数字の計画値との乖離や変化をどの様に
認識するかという点で、初の人工衛星打上げという経験の無さが、
衛星打上の失敗という結論を迅速に出す事が出来ず、本来であれば、
指令破壊を行うべきであった状況であるにも係わらず、それが出来
なかった事につながっているのかもしれません。
羅老号の一部がオーストラリアのダーウィン近郊に落下したという
未確認情報がありますが、これが事実であれば、指令破壊を行うべ
き状況であった事の証明とも言えるでしょう。
今回の打上げは、人工衛星打上げ能力獲得を急ぐ韓国が、従来から
の国内技術開発の方針を転換し、ロシアから一段目ロケットを購入
し、二段目もロシアが設計した固体燃料ロケットの韓国内で製造し
たものです。衛星フェアリングやその分離機構も恐らくロシア設計、
韓国内製造で、ロケット全体の取り纏めもロシアから大きな支援を
得ていたものと思われます。
韓国がロケット技術をロシアから導入する事については、特に文句
はありませんが、まかり間違えば、打上げに失敗したロケットが日
本領土に落下する可能性があるのですから、せめてロケットに異常
が発生した場合の安全性確保については、日本からも強く韓国に申
し入れを行うべきであり、それにきちんと対応するのがロケット打
上げ国の責務であると思われるのです。
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